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車の差し押さえはどうなる?手続きの流れと回避・解除の法的対処法

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税金やローンの滞納により「車の差し押さえ」に直面し、法的な手続きやその後の影響について不安を感じていませんか。この問題を放置すると、ある日突然車が使用できなくなり、通勤や事業、日々の生活に深刻な支障をきたす可能性があります。差し押さえがどのような流れで進むのか、そしてどうすれば回避・解除できるのかを正確に理解することが重要です。この記事では、車が差し押さえられる原因から具体的な手続き、実行された場合の影響、そして法的な対処法までを網羅的に解説します。

車が差し押さえられる主な原因

税金の滞納によるケース

自動車税や住民税などの税金を滞納すると、地方税法国税徴収法に基づく滞納処分として車が差し押さえられます。税金滞納による差し押さえは、裁判所の手続きを経ずに行政機関の権限で直接実行されるため、手続きが迅速に進む点が特徴です。納付期限を過ぎて督促状が送付され、そこに記載された期限を過ぎると、行政機関はいつでも財産調査の上で差し押さえが可能となります。一般的な債権回収よりも迅速に実行されるリスクがあるため、税金の滞納には特に注意が必要です。

ローン・借入金の返済滞納

自動車ローンやカードローンなどの返済が滞ると、債権者によって車が差し押さえられることがあります。これには主に2つのパターンが存在します。

ケース 主な手続き 根拠となる権利 概要
自動車ローン(所有権留保) 車両の引き上げ ローン会社の所有権 完済まで所有権がローン会社にあるため、契約不履行を理由にローン会社が車両を回収する。
その他の借入金 強制執行(差し押さえ) 債権者の債権 裁判で判決などの債務名義を得た債権者が、債務者の財産として裁判所を通じて強制的に差し押さえる。
返済滞納による車両への措置の違い

裁判所の判決等に基づく強制執行

貸金や損害賠償などの民事裁判で敗訴し、判決で命じられた支払いを履行しない場合、債権者は強制執行を申し立てて車を差し押さえることができます。強制執行を行うには、債権者が債務名義を取得している必要があります。

債務名義の主な種類
  • 確定判決
  • 仮執行宣言付支払督促
  • 和解調書
  • 調停調書

債務名義を持つ債権者が裁判所に申し立てると、登録自動車は「自動車執行」、軽自動車などは「動産執行」の手続きに則って差し押さえられ、最終的に換価処分(売却)されて債権の回収に充てられます。

差し押さえ手続きの具体的な流れ

督促から差押通知書の送付まで

滞納が発生してから実際に差し押さえに至るまでには、段階的な通知が送られてきます。通知を無視し続けると、事態は着実に進行します。

差し押さえに至るまでの一般的な通知の流れ
  1. 督促: 電話や普通郵便による書面で、滞納額と新たな支払期限が通知されます。
  2. 催告: 督促に応じない場合、内容証明郵便などでより強い警告がなされ、一括返済を求められることもあります。
  3. 財産調査: 債権者や行政機関が、債務者の財産(預貯金、不動産、自動車など)の状況を調査します。
  4. 差押予告通知書: 「指定期日までに支払いがない場合、財産の差し押さえを実行します」という最終通告が送付されます。

執行官による現況調査と車両の占有

裁判所に強制執行の申し立てが認められ、開始決定が下されると、裁判所の執行官が車両の調査と占有のために現地へ赴きます。執行官は公的な権限を持っており、その職務を妨害することはできません。

執行官の主な職務内容
  • 車両の保管場所を訪れ、車両の形状や損傷の有無、占有状況などを確認する(現況調査)。
  • 債務者に対して車両の引き渡しを命じ、鍵や書類を受け取って車両を占有する。
  • 調査のために債務者や関係者に質問をしたり、必要に応じて敷地に立ち入ったりする。
  • 引き渡しを拒否された場合、強制的に鍵を開錠するなどの必要な処分を行う。

公売(競売)と売却代金の配当

執行官によって占有された車両は、最終的に売却され、その代金が債権の返済に充てられます。この売却手続きは、行政機関が主導する場合は「公売」、裁判所が主導する場合は「競売」と呼ばれます。

差し押さえ後の換価・配当プロセス
  1. 評価: 評価人が車両の状態を査定し、売却の基準となる価額を決定します。
  2. 公告: 裁判所の掲示板やインターネットサイト(BITなど)で、車両情報や入札期間が公開されます。
  3. 入札・開札: 定められた期間内に入札が行われ、最も高い価格を提示した者が落札者(買受人)となります。
  4. 代金納付と所有権移転: 買受人が裁判所や行政機関に代金を納付した時点で、車両の所有権が移転します。
  5. 配当: 納付された売却代金は、手続き費用を差し引いた後、滞納していた税金や借金の返済に充てられます。

執行官の調査・占有に対する現場での正しい対応

執行官が調査や占有のために来訪した際は、冷静かつ誠実に対応することが、法的なリスクを最小限に抑える上で重要です。感情的な抵抗は事態を悪化させるだけです。

執行官への正しい対応
  • 執行官の身分証明書の提示を求め、本人であることを確認する。
  • 調査に関する質問には、正直かつ正確に回答する。
  • 車両の鍵や自動車検査証(車検証)などの引き渡しを求められた場合は、速やかに応じる。
避けるべき不適切な対応
  • 調査や引き渡しを実力で拒否・妨害する(公務執行妨害罪に問われるリスクがあります)。
  • 車両を隠したり、意図的に損傷させたりする(強制執行妨害目的財産損壊等罪に問われるリスクがあります)。

車両を差し押さえられた場合の影響

車両の使用や運転が制限される

差し押さえが実行されると、車両の自由な使用や運転が事実上不可能になります。執行官によってタイヤロックが取り付けられたり、レッカー車で別の場所へ移動されたりするため、物理的に動かすことができなくなります。通勤や業務、家族の送迎など、生活に不可欠な場合であっても、差し押さえの効力によって使用は一切認められません。

所有権を失い自由に処分できなくなる

差し押さえられた車両は、法的に自由な処分が一切できなくなります。所有者であっても、車両を売却したり、他人に譲渡したり、廃車にしたりすることは許されません。また、運輸支局の自動車登録ファイルには「差押」の登記がなされるため、第三者への名義変更や抹消登録といった手続きも受理されなくなります。

信用情報への記録と今後の契約への影響

借金の返済滞納が原因で差し押さえに至った場合、その事実は信用情報機関に金融事故情報として登録されます。これは、いわゆる「ブラックリストに載る」状態を指し、一度登録されると完済後も5年~7年程度は情報が残ります。この期間中は、以下のような影響が考えられます。

信用情報への記録による主な影響
  • 新規のクレジットカード作成ができない。
  • 新たな自動車ローンや住宅ローンの審査に通らない。
  • スマートフォン本体の分割払い契約ができない場合がある。

法人名義の車両差し押さえが与える事業上の信用リスク

法人名義の車両が差し押さえられると、事業活動そのものと会社の信用に深刻なダメージを与えます。営業車や運送用トラックが使用不能になれば、日々の業務やサービス提供が直接的に滞ります。さらに、差し押さえの事実が取引先や金融機関に知られると、財務状況への懸念から信用が著しく低下し、新規融資の停止や既存の取引契約の解除につながるリスクが高まります。

差し押さえを回避・解除する対処法

滞納分の一括納付または分納の相談

差し押さえを回避・解除するための最も確実な方法は、滞納している税金や借金を一括で納付することです。しかし、それが困難な場合は、通知を放置せず、速やかに債権者や行政機関の担当窓口に分納の相談をすることが極めて重要です。

誠実な支払い意思を示し、現実的な分割返済計画を提示することで、交渉に応じてもらえる可能性があります。特に税金の場合は、事情によって「納税の猶予」や「換価の猶予」といった制度が適用され、計画的な納付を条件に差し押さえを待ってもらえることがあります。

債権者との直接交渉による和解

金融機関からの借金が原因の場合、弁護士などの専門家に依頼して任意整理を行うことも有効な手段です。任意整理は、裁判所を介さずに債権者と直接交渉し、将来利息のカットや返済期間の延長(通常3年~5年)について和解を目指す手続きです。債権者にとっても、強制執行には費用と時間がかかるため、実現可能な返済案であれば交渉に応じる可能性があります。専門家が介入することで交渉がスムーズに進み、差し押さえを回避できる可能性が高まります。

債務整理(自己破産・個人再生)の検討

多額の負債を抱え、分納や任意整理での解決が困難な場合は、裁判所を利用した法的な債務整理手続きである自己破産個人再生を検討します。これらの手続きを裁判所に申し立て、開始決定が出ると、債権者による個別の強制執行は中止または失効します。

手続き 概要 車両の扱い(ローン完済済みの場合)
自己破産 裁判所の免責許可により、原則として全ての借金の支払義務が免除される手続き。 価値が一定額(一般的に20万円)を超える車両は、換価処分され手放すことになる。
個人再生 借金を大幅に減額(例:5分の1)し、残額を原則3年で分割返済する手続き。 車両の評価額を清算価値として弁済額に上乗せするなどの条件を満たせば、手元に残せる可能性がある。
自己破産と個人再生における車両の扱いの比較

ただし、いずれの手続きでも自動車ローンが残っている場合は、所有権留保に基づきローン会社に車両を引き上げられるのが一般的です。

差し押さえの例外と禁止事項

差し押さえ対象外となる車両の条件

すべての車が差し押さえの対象となるわけではありません。法律上、債務者の生活や事業の維持に不可欠な財産は、差し押さえが禁止されています。

差し押さえが禁止または見送られる主なケース
  • 財産的価値が極端に低い車両: 年式が非常に古いなど、売却しても執行費用を賄えないと判断される場合。
  • 事業に不可欠な車両: 農業を営むための軽トラックや、個人タクシーの営業車両など、その車がなければ生計の維持が著しく困難になる場合(民事執行法第131条)。

所有権留保が付いた車両の扱い

ローンを返済中の車両には、完済まで所有権がローン会社にある「所有権留保」が付いているのが一般的です。この場合、車両の所有者は債務者ではないため、他の債権者は原則としてその車両を差し押さえることはできません。ただし、ローン自体の返済を滞納すれば、所有者であるローン会社が車両を引き上げます。また、税金の滞納処分においては、所有権留保が付いている車両であっても例外的に差し押さえの対象となるため注意が必要です。

名義変更など不正行為のリスク

差し押さえを免れる目的で、差し押さえの直前に車両の名義を家族や知人に変更する行為は、財産隠しとみなされる極めてリスクの高い行為です。このような行為は、債権者から詐害行為取消権を行使されて名義変更が無効になるだけでなく、強制執行妨害目的財産損壊等罪などの刑事罰に問われる可能性もあります。法的な手続きから逃れようとする不正行為は、事態をさらに深刻化させます。

リース契約中の社用車は差し押さえの対象か?

リース契約中の社用車は、所有権がリース会社にあるため、利用している企業の財産ではありません。したがって、利用企業が他の債務や税金を滞納したとしても、第三者の債権者がそのリース車両を差し押さえることはできません。ただし、リース料金自体の支払いを滞納した場合は、リース会社が契約に基づいて車両の返還を求め、引き上げを実施します。

車の差し押さえに関するよくある質問

仕事用の車も差し押さえ対象ですか?

個人事業主などが使用する事業用の車両でも、原則として差し押さえの対象となります。ただし、その車両がなければ事業の継続や生計の維持が著しく困難であると認められる場合は、民事執行法上の差押禁止財産に該当し、差し押さえが禁止される可能性があります。最終的な判断は、事業内容や車両の代替性などを考慮して個別に下されます。

競売はいつ、どこで行われますか?

競売は、その車両が所在する地域を管轄する地方裁判所で実施されます。執行官による現況調査と評価人の評価が終わると、裁判所書記官が入札期間や開札日を決定し、その情報は裁判所の掲示板やインターネット上の不動産競売物件情報サイト(BIT)などで公告されます。通常、公告から入札開始まで数週間の期間が設けられます。

差し押さえの実行を拒否できますか?

できません。差し押さえは、裁判所の命令や法律の規定に基づく強制的な手続きであり、債務者の意思で拒否することは認められません。執行官の職務を実力で妨害した場合、公務執行妨害罪などの刑事罰に問われる可能性があります。差し押さえに不服がある場合は、法的に定められた不服申し立ての手続き(執行抗告など)によって主張する必要があります。

家族名義の車まで対象になりますか?

差し押さえの対象となるのは、債務者本人名義の財産に限られます。したがって、たとえ債務者が日常的に使用していても、配偶者や親、子など家族の名義で登録されている車両が差し押さえられることはありません。ただし、その家族が債務の連帯保証人になっている場合は、保証人自身の財産として差し押さえの対象となります。

まとめ:車の差し押さえを回避し、生活と信用を守るための知識

本記事では、税金やローンの滞納による車の差し押さえ手続き、その影響、そして具体的な対処法について解説しました。差し押さえは、督促から財産調査、執行官による占有、そして公売(競売)へと法的に進行し、一度実行されると車両の使用や処分はできなくなり、信用情報にも影響が及びます。最も重要な判断の軸は、督促や通知の段階で問題を放置せず、早期に行動を起こすことです。一括での支払いが困難な場合は、速やかに債権者や行政機関へ分納の相談をすることが、事態の悪化を防ぐ鍵となります。もし自力での交渉や返済が難しい状況であれば、弁護士などの専門家に相談し、任意整理や自己破産、個人再生といった債務整理手続きを検討することが有効です。本記事で解説した内容は一般的な情報であり、個別の状況に応じた最適な解決策については、必ず専門家にご相談ください。

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