給料未払いのストライキ|法的に正しい進め方と賃金の扱い、解雇リスク
給料未払いが続き、生活に困窮する中でストライキを検討しているものの、法的な手続きやリスクが分からず不安を感じることはありませんか。給料未払いは労働者の権利を侵害する重大な問題ですが、正しい手順を踏まなければ、ストライキは法的に保護されず、かえって不利な状況を招く可能性があります。この記事では、給料未払いを理由にストライキを実行するための法的根拠から具体的な手順、ストライキ中の賃金の扱いや法的な保護までを、労働組合の有無といった状況別に解説します。
給料未払いストライキの法的根拠
憲法が保障する団体行動権
ストライキは、労働者に認められた正当な権利です。これは、日本国憲法第二十八条が保障する「労働三権」の一つである団体行動権の行使にあたります。労働者は使用者に対して立場が弱くなりがちであるため、団結して交渉する権利が憲法で保障されているのです。
ストライキは団体行動権の中核をなす行為であり、労働組合が主体となって労務の提供を一時的に停止することで、会社の業務に影響を与え、交渉を有利に進めるための強力な手段となります。会社は、この正当な権利行使を妨害することはできません。
- 団結権:労働組合を結成または加入する権利
- 団体交渉権:使用者と労働条件などについて交渉する権利
- 団体行動権:要求を実現するためにストライキなどを行う権利
給料未払いは正当な理由か
給料の未払いを理由とするストライキは、正当な争議行為として法的に認められます。労働組合法では、ストライキの目的は労働条件の維持改善など、労働者の経済的地位の向上に関するものである必要があると定めています。
賃金は、労働契約における最も重要な労働条件です。労働基準法第二十四条では「賃金全額払いの原則」が定められており、給料の未払いは明確な法令違反となります。したがって、未払い賃金の支払いを求めて行われるストライキは、その目的の正当性が極めて高く、法的に保護される権利行使です。会社の経営不振などが理由であっても、その正当性は揺らぎません。
ストライキ実行の具体的な手順
労働組合がある場合の手順
社内に労働組合がある場合、ストライキは個人の判断ではなく、民主的かつ法的な手続きに沿って計画的に実行されます。
- 会社へ未払い給与の支払いを求める要求書を提出し、団体交渉を申し入れます。
- 会社と誠実に交渉を行いますが、決裂した場合に争議行為の検討に入ります。
- 組合の規約に基づき、組合員の直接無記名投票を実施し、過半数の賛成を得てストライキ権を確立します。
- ストライキの日時や範囲を明記した事前通知を会社に行います。
労働組合がない場合の手順
社内に労働組合がない場合でも、外部の労働組合に加入することでストライキを実行できます。団体行動権は、社内組合の有無にかかわらず全ての労働者に保障されています。
- 地域の合同労働組合(ユニオン)など、個人で加入できる外部の労働組合に加入します。
- 加入した労働組合が会社に対し、団体交渉を申し入れます。会社は社外の組合であっても交渉を拒否できません。
- 交渉が決裂した場合、労働組合の規約に従ってストライキの実施を決議します。
- 会社に対してストライキの事前通知を行います。
一人でもストライキは可能か
労働者が一人だけで業務を放棄しても、法的な意味でのストライキとは認められません。ストライキは、労働者が団結して集団で行う「争議行為」であることが前提です。
一人の判断で仕事を休んだ場合、ストライキとしての法的保護は受けられず、単なる無断欠勤として扱われます。その結果、懲戒処分や損害賠償請求の対象となるリスクがあります。一人で行動したい場合でも、必ず外部の合同労働組合(ユニオン)に加入し、組合の決定に基づいて行動することで、初めてその行為が法的に保護される争議行為となります。
会社への事前通知の方法と時期
ストライキを実行する際は、会社への事前通知が不可欠です。予告なしの「抜き打ちストライキ」は、会社に不測の損害を与えるため、争議行為の正当性が否定されるリスクがあります。
| 対象事業 | 通知時期の目安 | 法律上の義務 |
|---|---|---|
| 一般企業 | 実施の数日前~1週間前程度 | 法律上の明確な規定はないが、実務上の慣行として必要 |
| 公益事業(医療、運輸など) | 実施の少なくとも10日前 | 労働関係調整法により、労働委員会と知事等への通知が義務 |
通知する際は、ストライキの目的、日時、場所、参加者の範囲などを書面で明確に伝えることが重要です。
ストライキ中の団結を維持するための注意点
ストライキを成功させるには、組合員の強固な団結が不可欠です。組織の統制が乱れると、会社への交渉力が弱まってしまいます。
- 闘争委員会などを組織し、組合員の行動を統制する。
- 会社施設への立ち入りなど、ストライキ中の行動ルールを事前に明確にする。
- ストライキの目的や正当性を全員で共有し、参加者の士気を維持する。
- 不安を抱える組合員を孤立させないよう、精神的なサポート体制を整える。
ストライキ中の賃金の扱い
ノーワーク・ノーペイの原則
ストライキに参加して働かなかった期間について、会社は賃金を支払う義務を負いません。これは「ノーワーク・ノーペイの原則」と呼ばれる労働契約の基本原則に基づくものです。
労働の提供がない以上、その対価である賃金も発生しないという考え方です。たとえストライキが適法な権利行使であっても、賃金請求権は発生しません。この経済的負担を軽減するため、労働組合によっては組合費から争議手当などを支給する場合がありますが、労働者は一時的な収入減を覚悟しておく必要があります。
賃金カットが許される範囲
会社がストライキを理由に賃金をカットできるのは、あくまで労働の対価にあたる部分に限られます。
| カットの可否 | 賃金の性質 | 具体例 |
|---|---|---|
| 可能 | 純粋な労働の対価 | 基本給、職務手当など(不就労時間に応じて日割り・時間割りで計算) |
| 要検討 | 生活保障的な性質を持つ手当 | 家族手当、住宅手当など(就業規則や労働協約の定めによる) |
生活保障的な手当については、その支給要件が実際の労働日数と連動していない場合、会社が一方的に全額カットすることは違法と判断される可能性があります。賃金カットの範囲は、就業規則や労働協約の定めに厳格に従う必要があります。
ストライキ参加者の法的保護
解雇など不利益取扱いの禁止
適法なストライキに参加したことを理由に、会社が労働者を解雇したり、その他の不利益な扱いをしたりすることは、法律で固く禁じられています。これは労働組合法第七条に定められた「不当労働行為」に該当します。
- ストライキ参加を理由とする解雇や減給、降格
- ストライキの首謀者に対する報復的な配置転換
- 賞与(ボーナス)の査定を意図的に低く評価すること
正当なストライキへの参加は、就業規則上の職務放棄にはあたらないため、懲戒処分の理由とすることもできません。労働者は、適法な手続きを踏む限り、雇用に関する不利益から法的に保護されます。
刑事免責(刑事罰の免除)
正当なストライキは、形式的には会社の業務を妨害する行為ですが、これによって刑事責任を問われることはありません。労働組合法第一条第二項により、正当な争議行為は刑法上の違法性がないと定められているためです。
ただし、この刑事免責が適用されるのは、平和的な手段で行われる場合に限られます。会社の役員や他の従業員に暴力をふるったり、設備を破壊したりする行為は、正当な活動の範囲を逸脱しており、個人の犯罪行為として処罰の対象となり得ます。
民事免責(損害賠償の免除)
正当なストライキによって会社に売上減少などの経済的損害が発生しても、労働組合や参加した労働者がその損害を賠償する責任を負うことはありません。労働組合法第八条は、使用者が正当な争議行為による損害の賠償を請求することを禁止しています。
ストライキによる生産停止や納期遅延は、会社が甘受すべきものとされています。ただし、刑事免責と同様に、この民事免責も暴力行為や器物損壊を伴う場合には適用されないことがあります。平和的かつ適法な手段を守ることが、労働者自身を法的に守るための大前提です。
ストライキのデメリットと注意点
賃金が支払われない期間の発生
ストライキの最も直接的なデメリットは、ノーワーク・ノーペイの原則により、実施期間中の賃金収入がなくなることです。給料未払いを解決するための行動が、さらなる収入減につながるという厳しい現実に直面します。ストライキが長期化すれば、生活が困窮し、組合員の団結が揺らぐ原因にもなり得ます。
職場内での人間関係の変化
ストライキは、職場内の人間関係に深刻な亀裂を生じさせるリスクがあります。ストライキに参加する従業員と、参加せずに業務を続ける従業員との間で感情的な対立が生じやすいからです。ストライキが終結した後も、一度生じたしこりが残り、職場の雰囲気や業務連携に長期的な悪影響を及ぼす可能性があります。
会社の経営に与える影響
ストライキによる業務停止は、会社の経営に深刻なダメージを与えます。売上の減少や生産の停止は、顧客や取引先からの信用を失う原因となります。
- 売上の直接的な減少
- 納期遅延などによる取引先からの信用失墜
- 顧客離れによる将来的な収益基盤の喪失
- 企業イメージの悪化による採用活動や資金調達への支障
会社の経営体力が失われれば、結果的に未払い賃金の支払い能力も低下するという悪循環に陥る危険があります。
会社の倒産リスクと権利行使のバランス
給料未払いが発生している会社は、既に深刻な経営難に陥っているケースが少なくありません。そのような状況で大規模かつ長期のストライキを行えば、会社が倒産に追い込まれるリスクがあります。会社が倒産すれば、未払い賃金の回収が困難になるだけでなく、全ての従業員が職を失うという最悪の事態を招きます。権利を主張するだけでなく、会社の経営実態を冷静に分析し、会社の存続と要求実現のバランスを取ることが重要です。
ストライキ後の交渉を見据えた要求のまとめ方
ストライキは、あくまで交渉を有利に進めるための手段であり、それ自体が目的ではありません。ストライキ中も会社との交渉の扉は開いておき、現実的な落としどころを探る姿勢が求められます。
例えば、未払い給与の一括払いが困難な場合は、分割払いの計画を提示するなど、会社側が受け入れ可能な妥協案を準備しておくことが、早期解決につながります。ストライキ後の労使関係の再構築を見据え、感情的にならず、戦略的に交渉を進めることが大切です。
よくある質問
ストライキは何日前までに通知が必要ですか?
一般企業の場合、法律上の明確な定めはありませんが、実務上は数日前から1週間前に通知するのが通例です。一方、医療や運輸などの公益事業では、労働関係調整法に基づき、ストライキ実施の少なくとも10日前までに労働委員会と都道府県知事(または厚生労働大臣)への通知が義務付けられています。
パートやアルバイトでも参加できますか?
はい、雇用形態に関わらず参加できます。憲法で保障されている団体行動権は、正社員だけでなく、パートタイマーやアルバイトなど全ての労働者に平等に認められています。ただし、参加するには社内または社外の労働組合に加入していることが前提となります。
不参加者の給料はどうなりますか?
ストライキに参加せず、働く意思を示していた従業員に対しては、原則として通常通り賃金が支払われます。ただし、ストライキの影響で事業所が閉鎖されるなど、会社の都合で働けなくなった場合は、会社は労働基準法に基づき、平均賃金の6割以上の休業手当を支払う義務があります。
ストライキ以外に給料未払いを解決する方法は?
ストライキは最終手段であり、その前に試みるべき解決策は複数あります。
- 労働基準監督署への申告:行政指導による支払いを促します。
- 弁護士を通じた交渉:内容証明郵便の送付や直接交渉を行います。
- 労働審判:裁判所で迅速な解決を目指す手続きです。
- 少額訴訟:請求額が60万円以下の場合に利用できる簡易な訴訟手続きです。
ストライキのデメリットには何がありますか?
ストライキには、権利を実現する可能性がある一方で、参加者にとって無視できないデメリットも存在します。
- ノーワーク・ノーペイの原則により、期間中の賃金が支払われない。
- 参加者と不参加者の間で対立が生まれ、職場の人間関係が悪化する。
- 会社の業績や信用が悪化し、結果的に自らの雇用が不安定になるリスクがある。
- 最悪の場合、会社が倒産し、職と未払い賃金の両方を失う可能性がある。
まとめ:給料未払いストライキを法的に正しく実行し権利を守るために
給料未払いを理由とするストライキは、憲法で保障された労働者の正当な権利ですが、必ず労働組合を通じて法的な手続きを踏む必要があります。ストライキ期間中は賃金が支払われない「ノーワーク・ノーペイの原則」が適用されるものの、適法な争議行為であれば、参加を理由とした解雇や不利益な扱いから法的に保護されます。ただし、ストライキは自身の収入減や会社の倒産リスクも伴う最終手段であるため、会社の経営状況を冷静に分析し、交渉による解決の可能性も探ることが重要です。
具体的な行動を検討する際は、まず社内外の労働組合に相談するか、弁護士など他の専門機関への相談も視野に入れましょう。個別の状況に応じた最適な対応は異なるため、最終的な判断は必ず労働問題の専門家にご相談ください。

