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給料未払いで裁判?4つの法的手続きと費用・期間を法務視点で整理

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会社からの給料未払いが続き、裁判(訴訟)を考えているものの、手続きや費用が分からずお困りではないでしょうか。未払い給与の請求には、証拠集めなどの事前準備が不可欠であり、請求権には時効もあるため迅速な行動が求められます。この記事では、通常訴訟、少額訴訟、労働審判、支払督促という4つの法的手続きについて、それぞれの流れ、期間、費用を具体的に比較解説し、状況に応じた最適な解決策を見つける手助けをします。

裁判の前に準備すべきこと

まずは未払いの証拠を確保する

未払い給与の請求において、客観的な証拠は極めて重要となります。裁判所は提出された証拠に基づいて事実認定を行うため、証拠が不十分だと請求が認められない可能性があります。請求を有利に進めるためには、以下のような証拠をできる限り集めておくことが不可欠です。

有効な証拠の例
  • 労働条件を示すもの:雇用契約書、就業規則、労働条件通知書など
  • 労働時間を示すもの:タイムカード、出勤簿、業務日報、PCのログイン・ログオフ記録など
  • 給与額や支払い状況を示すもの:給与明細書、源泉徴収票、銀行口座の振込記録など
  • 業務実態を示すもの:業務上のメールやチャットの送受信履歴、業務指示書など

手元に十分な証拠がない場合は、会社に開示請求を行ったり、裁判所の手続き(証拠保全)を利用したりして収集することも検討します。

内容証明郵便で会社に請求する

証拠が揃ったら、内容証明郵便で会社に未払い給与の支払いを請求します。これは、誰が、いつ、どのような内容の文書を送ったかを郵便局が証明する制度で、法的に重要な意味を持ちます。

内容証明郵便による請求の主な効果
  • 会社への心理的圧力:支払いに応じなければ法的措置に移ることを明確に伝え、交渉を促します。
  • 請求の証拠化:請求した事実が公的に証明され、後の裁判で有力な証拠となります。
  • 消滅時効の完成猶予:送付することで時効の完成を6ヶ月間猶予させる効果があります。

請求書には、未払い額の計算根拠、支払期限、振込先口座などを明確に記載し、配達証明を付けて送付することが重要です。

労働基準監督署への申告も検討

会社が支払いに応じない場合、労働基準監督署(労基署)への申告も一つの方法です。賃金未払いは労働基準法違反にあたるため、労基署が会社に対して調査や是正勧告を行うことがあります。ただし、労基署はあくまで行政機関であり、個人の代理人として未払い賃金を直接回収してくれるわけではない点に注意が必要です。

労働基準監督署の役割と限界
  • 役割:労働基準法違反の調査、会社への事情聴取、是正勧告や指導を行う。
  • 限界:個別の金銭トラブルに介入し、代理で請求や回収を行うことはない。

そのため、労基署への申告は会社への圧力をかける手段と位置づけ、並行して裁判などの法的手続きの準備を進めることが賢明です。

遅延損害金・付加金も請求できることを知る

未払い給与を請求する際は、本来の賃金に加えて、遅延損害金付加金も請求できる場合があります。

請求できる付随的な金銭
  • 遅延損害金(在職中):民法の法定利率である年3%が適用されます。
  • 遅延損害金(退職後):「賃金の支払の確保等に関する法律」に基づき、利率が年14.6%に上がります。
  • 付加金:裁判において、会社の支払いが悪質だと判断された場合に、未払い賃金(割増賃金を含む)と同額までの支払いを命じられる制裁金です。

これらの権利を正しく理解し、請求額に含めることで、最終的に受け取れる金額が大きく変わる可能性があります。

通常訴訟(裁判)の手続き

訴訟提起から判決までの流れ

通常訴訟は、裁判所が双方の主張と証拠を慎重に審理し、最終的な判決を下す厳格な手続きです。当事者間の対立が深刻で、他の手続きでの解決が困難な場合に選択されます。

通常訴訟の基本的な流れ
  1. 訴状の提出:原告(労働者)が訴状と証拠を裁判所に提出して訴えを提起します。
  2. 答弁書の提出:被告(会社)が訴状に対する反論を記載した答弁書を提出します。
  3. 口頭弁論・弁論準備手続:月1回程度の期日が開かれ、双方が書面で主張・反論を繰り返します。
  4. 証拠調べ:争点が整理された後、証人尋問や当事者尋問が行われます。
  5. 和解勧告:審理の途中で裁判官から和解が試みられることも多くあります。
  6. 判決:和解が成立しない場合、裁判所が最終的な判決を言い渡します。

解決までにかかる期間の目安

通常訴訟は、双方の主張が出尽くすまで審理が行われるため、解決までに長期間を要します。労働関係の訴訟では、第一審だけでおおむね平均15ヶ月から17ヶ月程度かかるのが実情です。争点が複雑な事件や相手が徹底的に争う場合は、さらに期間が延びる可能性があります。判決に不服があれば控訴・上告となり、解決まで数年を要することもあります。

訴訟費用と弁護士費用の内訳

通常訴訟を利用するには、裁判所に納める実費(訴訟費用)と、依頼する場合の弁護士費用が必要です。

訴訟にかかる費用の内訳
  • 訴訟費用:請求額に応じて決まる収入印紙代と、書類送付用の郵便切手代です。
  • 弁護士費用(着手金):依頼時に支払う費用で、おおむね30万円~50万円程度が目安です
  • 弁護士費用(報酬金):勝訴して経済的利益を得られた場合に支払う費用で、おおむね回収額の10%~20%程度が一般的です

その他、弁護士の日当や交通費などの実費が発生することもあります。提訴前には、費用と回収見込み額のバランスを検討することが重要です。

勝訴後の強制執行と会社の財産状況

勝訴判決を得ても、会社が任意に支払わない場合は、自動的に給与が振り込まれるわけではありません。その場合は、強制執行の手続きを取る必要があります。これは、判決書を債務名義として裁判所に申し立て、会社の財産を差し押さえる手続きです。

差し押さえの対象となる主な財産
  • 銀行預金
  • 取引先に対する売掛金
  • 不動産や自動車

ただし、会社に差し押さえる財産がなければ、強制執行をしても回収できないリスクがあります。また、会社が破産手続きを開始すると個別の強制執行はできなくなります。提訴前から相手の財産状況を把握しておくことが望ましいでしょう。

少額訴訟の手続き

少額訴訟のメリット・デメリット

少額訴訟は、60万円以下の金銭請求に限定された、簡易で迅速な裁判手続きです。しかし、その手軽さゆえのデメリットも存在します。

少額訴訟のメリット
  • 迅速な解決:原則として1回の期日で審理が終わり、即日判決が言い渡されます。
  • 費用が安い:手続きがシンプルなため、弁護士に依頼せず本人で進めることも可能です。
少額訴訟のデメリット
  • 控訴ができない:判決に不服があっても、上級の裁判所に控訴することはできません(異議申立ては可能)。
  • 証拠準備が重要:1回の期日で全てが決まるため、事前に完璧な証拠を揃える必要があります。
  • 通常訴訟への移行:相手方(会社)が希望すれば、無条件で通常訴訟に移行します。

対象となる条件と手続きの流れ

少額訴訟を利用するには、以下の条件を満たす必要があります。

少額訴訟の利用条件
  • 請求金額が60万円以下の金銭支払請求であること。
  • 同じ簡易裁判所での利用が、年間10回までであること。

手続きは以下のように進みます。

少額訴訟の手続きの流れ
  1. 訴状と証拠を簡易裁判所に提出します。
  2. 裁判所が審理の期日を指定し、相手方を呼び出します。
  3. 相手方が通常訴訟を希望した場合、手続きは通常訴訟に移行します。
  4. 期日では、円卓を囲んで話し合い形式で審理が行われます。
  5. 話し合いで解決(和解)できなければ、その日のうちに判決が言い渡されます。

労働審判の手続き

労働審判制度の仕組みと特徴

労働審判は、裁判官と労働問題の専門家(労働審判員)が間に入り、個別労働紛争を迅速・柔軟に解決するための制度です。

労働審判の主な特徴
  • 専門性の高い判断:労働審判官1名と、労使双方の立場を理解する労働審判員2名で構成される委員会が審理します。
  • 迅速な手続き:原則として3回以内の期日で審理を終え、平均2~3ヶ月で結論が出ます。
  • 調停による解決が中心:まずは話し合いによる解決(調停)を目指し、まとまらない場合に委員会が判断(審判)を下します。
  • 非公開での審理:手続きは非公開で行われるため、プライバシーが保護されます。

申立てから審判までの流れ

労働審判は短期間で集中的に審理が行われるため、申立て側も相手側も迅速な対応が求められます。特に、最初の期日で心証が大きく固まる傾向があります。

労働審判の申立てから審判までの流れ
  1. 労働者が裁判所に申立書を提出します。
  2. 裁判所から会社へ、申立書と呼出状が送られます。
  3. 会社は指定された短期間内に、反論をまとめた答弁書と証拠を提出します。
  4. 第1回期日で、委員会からの質疑応答(審尋)と、調停の話し合いが行われます。
  5. 調停が成立しない場合、委員会が事案の実情に応じた審判を下します。
  6. 審判内容に不服がある当事者は、2週間以内に異議を申し立てることができます。異議が出されると、手続きは通常訴訟に移行します。

支払督促の手続き

支払督促の概要と利用条件

支払督促は、裁判所での審理を経ずに、書類審査のみで相手方に支払いを命じてもらうことができる非常に簡易な手続きです。相手方が支払いを認めている場合に有効です。

支払督促の概要と利用条件
  • 手続きの対象:金銭の支払いを求める請求に利用できます(請求額の上限なし)。
  • 申立て先:相手方の住所地を管轄する簡易裁判所の書記官に申し立てます。
  • 審理方法:法廷での弁論や証拠調べはなく、申立書の内容のみで審査されます。
  • メリット:裁判所に出向く必要がなく、費用や時間を大幅に節約できます。

申立て方法と相手方の異議申立て

申立ては、書面またはオンラインで行うことができます。裁判所書記官が支払督促を発付し、相手方に送達されます。しかし、この手続きには大きな注意点があります。相手方が支払督促を受け取ってから2週間以内に異議を申し立てた場合、支払督促は効力を失い、自動的に通常訴訟へと移行します。相手方が争う姿勢を見せている場合は、この手続きは適していません。異議が出なければ、次に仮執行宣言を申し立て、強制執行が可能になります。

【比較】どの手続きを選ぶべきか

4つの手続きの費用・期間を比較

未払い給与を請求するには複数の法的手続きがあり、それぞれ費用や期間、特徴が異なります。状況に応じて最適なものを選択することが重要です。

手続きの種類 解決までの期間(目安) 費用の目安(弁護士費用除く) 特徴
通常訴訟 1年以上 高額(請求額による) 最終的な法的判断が得られるが、時間と費用がかかる。
労働審判 2~3ヶ月 比較的安価 迅速かつ専門的。調停が中心だが、異議が出ると訴訟に移行。
少額訴訟 1日~1ヶ月程度 安価 60万円以下の請求限定。非常に迅速だが、控訴不可。
支払督促 1~2ヶ月程度 最も安価 書類審査のみ。相手が異議を申し立てると訴訟に移行。
4つの法的手続きの比較

請求額や状況に応じた選択肢

どの手続きを選ぶべきかは、請求額、証拠の有無、相手方の態度などを総合的に考慮して判断します。

状況別のおすすめ手続き
  • 相手が支払いを認めている場合支払督促が最も迅速で低コストです。
  • 請求額が60万円以下で、早期解決を望む場合少額訴訟が適しています。
  • 相手が争う姿勢で、迅速かつ柔軟な解決を望む場合労働審判が最もバランスの取れた選択肢です。
  • 争点が複雑で、最終的な白黒をつけたい場合通常訴訟で徹底的に争うことになります。

不適切な手続きを選ぶと、かえって時間や費用が無駄になる可能性があるため、慎重な選択が求められます。

会社倒産時の未払賃金立替払制度

制度の概要と利用できる条件

勤務先の会社が倒産し、賃金が支払われないまま退職した場合、国が未払い賃金の一部を立て替えて支払う「未払賃金立替払制度」があります。これは労働者の生活を守るためのセーフティーネットです。

立替払制度の利用条件
  • 会社の条件:労災保険の適用事業所で、1年以上事業活動を行っていた会社が法律上または事実上倒産したこと。
  • 労働者の条件:倒産の申立て日(または認定申請日)の6ヶ月前から2年の間に退職した者であること。

対象となる賃金と申請手続き

立替払いの対象となる賃金や金額には上限が定められています。

立替払いの対象と上限
  • 対象となる賃金:支払期日が来ている定期賃金退職手当が対象です(ボーナス、解雇予告手当は対象外)。
  • 対象とならない場合:未払い総額が2万円未満の場合は対象外です。
  • 立替払額:未払い総額の8割が支払われますが、退職時の年齢に応じて上限額(88万円~296万円)が設定されています。

申請は、決められた期間内に以下の手順で行う必要があります。

立替払いの申請手続き
  1. 破産管財人などから、未払い賃金額などを証明する書類を受け取ります。
  2. 労働者健康安全機構に、立替払請求書と証明書を提出します。
  3. 申請期限は、裁判所の破産手続開始決定日などの翌日から2年以内です。

よくある質問

未払い給与の請求権に時効はありますか?

はい、未払い給与の請求権には消滅時効があります。権利があることを知りながら長期間行使しないと、請求できなくなる可能性があります。現在の法律では、賃金請求権の時効は3年間、退職金の請求権は5年間と定められています。時効が迫っている場合は、内容証明郵便の送付などで時効の完成を猶予させる必要があります。

弁護士なしで裁判を進められますか?

はい、弁護士に依頼せず、ご自身で裁判を進めること(本人訴訟)は可能です。特に、支払督促や少額訴訟のような簡易な手続きは、本人で行う方も少なくありません。しかし、労働審判や通常訴訟は、法的な主張や証拠の提出が複雑になるため、専門知識がないと不利になる可能性が高まります。敗訴のリスクを考えると、専門家である弁護士に相談・依頼することをおすすめします。

勝訴すれば必ず給料を回収できますか?

いいえ、勝訴判決が確定しても、必ず回収できるとは限りません。判決はあくまで「支払う義務がある」ことを法的に認めるもので、会社が任意に支払わなければ、別途強制執行の手続きが必要です。しかし、その会社に預金や不動産などの差し押さえるべき財産がなければ、強制執行をしても回収はできません。裁判を起こす前に、相手企業の財産状況をある程度把握しておくことが重要です。

裁判費用を支払う余裕がない場合は?

経済的な理由で弁護士費用などを支払うのが難しい場合、法テラス(日本司法支援センター)の民事法律扶助制度を利用できる可能性があります。この制度は、収入や資産が一定の基準以下である方を対象に、弁護士費用や裁判費用の立て替えを行うものです。立て替えてもらった費用は、原則として月々分割で返済していくことになります。費用面で諦める前に、まずは法テラスに相談してみることを検討しましょう。

まとめ:給料未払いの解決は状況に応じた法的手続きの選択が重要

本記事では、未払い給与を請求するための4つの主要な法的手続き(通常訴訟、労働審判、少額訴訟、支払督促)について解説しました。これらの手続きは解決までの期間、費用、特徴が大きく異なるため、請求額、証拠の有無、会社の対応姿勢などを踏まえて最適な方法を選択することが重要です。まずは雇用契約書やタイムカードといった証拠を確実に確保し、内容証明郵便で請求することが基本的な第一歩となります。それでも解決が難しい場合や、どの手続きが適切か判断に迷う場合は、弁護士などの専門家に相談し、法的な見解を得ることをお勧めします。会社が倒産した、あるいはその可能性がある場合には国の「未払賃金立替払制度」を利用できる可能性も忘れないでください。最終的にどの手段を選ぶにせよ、請求には時効があること、また勝訴しても相手に支払い能力がなければ回収できないリスクがあることを念頭に置き、慎重に行動しましょう。

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