免許外運転の行政処分とは?違反点数・免許取消の基準と刑事罰を解説
ご自身や従業員が「免許外運転」に該当する行為をしてしまい、今後の処分内容について不安を感じているかもしれません。この違反は無免許運転の一種とされ、たとえ悪意がなくても厳しい処分が下されます。この記事では、免許外運転の違反点数や免許取消の期間といった行政処分の詳細から、刑事罰、周囲への責任までを具体的に解説します。
免許外運転とは|無免許運転の一種としての定義と具体例
「免許外運転」の定義と無免許運転全体での位置づけ
道路交通法における無免許運転は、その態様によっていくつかの種類に分けられます。免許外運転は、そのうちの一つです。
- 純無免許運転: 一度も運転免許を取得したことがない者が運転する行為。
- 免許停止中運転: 行政処分により免許の効力が一時的に停止されている期間中に運転する行為。
- 免許失効後運転: 免許の有効期限が切れた状態で運転する行為。
- 免許外運転: 保有している免許の種類では運転が許可されていない車両を運転する行為。
免許外運転は、何らかの有効な免許を持っている点で純無免許運転とは異なります。しかし、運転資格のない車両を操作するという点では同じく重大な違反であり、無免許運転として厳しく処罰されます。
免許外運転に該当する具体的なケース
免許外運転は、保有する免許の上位区分にあたる車両を運転した場合に成立します。
- 普通自動車免許しか持っていない者が、大型トラックや中型トラックを運転する。
- 原動機付自転車免許しか持っていない者が、普通自動二輪車(バイク)を運転する。
- 普通自動二輪免許しか持っていない者が、大型自動二輪車を運転する。
- 普通免許しか持っていない者が、大型特殊自動車や牽引自動車を運転する。
何らかの免許を持っているため違反との認識が薄れがちですが、車両の特性や操作方法が異なるため、重大な事故につながる危険な行為です。運転前には、必ず車検証で車両区分を確認し、自身の免許証で運転可能か照合する習慣が重要です。
「免許不携帯」や「免許条件違反」との違い
免許外運転は、「免許不携帯」や「免許条件違反」と混同されやすいですが、違反の性質と罰則の重さが全く異なります。
| 違反の種類 | 違反内容 | 違反点数 | 罰則 |
|---|---|---|---|
| 免許外運転 | 保有免許で許可されていない種類の車両を運転する | 25点 | 3年以下の懲役または50万円以下の罰金 |
| 免許条件違反 | 「眼鏡等」や「AT車に限る」などの免許条件を守らずに運転する | 2点 | 反則金 |
| 免許不携帯 | 有効な免許証を携帯せずに運転する | なし | 反則金 |
上記のとおり、免許不携帯や免許条件違反が比較的軽微な反則行為であるのに対し、免許外運転は無免許運転の一種として扱われ、免許取消や刑事罰の対象となる極めて重い違反です。
特に注意すべき免許種別の確認ミス(準中型・中型免許など)
道路交通法の改正により、特に普通免許で運転できる車両の範囲は段階的に変更されています。このため、免許の取得時期によって運転できる範囲が異なり、意図せず免許外運転となるケースがあるため注意が必要です。
- 2007年6月1日以前: 8トン未満(現在は「8t限定中型免許」)
- 2007年6月2日から2017年3月11日まで: 5トン未満(現在は「5t限定準中型免許」)
- 2017年3月12日以降: 3.5トン未満
例えば、2017年3月12日以降に普通免許を取得した人は、車両総重量が3.5トン以上のトラック(通称2トントラックでも該当する場合がある)を運転すると免許外運転になります。従業員の運転業務を管理する際は、免許証の取得年月日を正確に確認し、運転可能な車両範囲を厳密に把握する必要があります。
免許外運転の行政処分:違反点数と免許取消・欠格期間
免許外運転に科される基礎違反点数
免許外運転は、道路交通法上の重大な違反行為と位置づけられており、行政処分も非常に厳しいものとなっています。免許外運転を行った場合、科される基礎違反点数は「25点」です。これは、信号無視(2点)や一般的な速度超過などとは比較にならないほど高い点数であり、酒気帯び運転に匹敵する重い処分が下されることを意味します。過去3年間に他の違反歴が全くない場合でも、この一回の違反だけで免許取消処分の基準を大幅に超えてしまいます。
免許取消処分となる条件と欠格期間の決まり方
運転免許の取消処分は、過去の行政処分歴(前歴)がない場合、累積点数が15点に達すると執行されます。免許外運転の基礎点数は25点であるため、一回の違反で確実に免許取消処分となります。処分が決定されると、公安委員会から「運転免許取消処分書」が交付され、運転資格を失います。
免許取消処分には、免許を再取得できない期間である「欠格期間」が設けられます。欠格期間の長さは、違反点数と前歴の回数によって決まります。
- 累積点数が25点〜34点の場合、欠格期間は2年間となります。
もし免許外運転と同時に他の違反(例:人身事故)を起こしていた場合、点数はさらに加算され、欠格期間もより長くなる可能性があります。
前歴(過去の行政処分歴)が処分内容に与える影響
過去3年以内に免許停止などの行政処分を受けたことがある場合、その回数(前歴)に応じて、より少ない点数で重い処分が科されます。
| 前歴の回数 | 免許取消となる累積点数 |
|---|---|
| 0回 | 15点以上 |
| 1回 | 10点以上 |
| 2回 | 5点以上 |
| 3回以上 | 4点以上 |
免許外運転は25点なので、前歴の回数にかかわらず必ず免許取消となります。しかし、前歴は欠格期間の長さに大きく影響します。
- 前歴0回: 欠格期間2年
- 前歴1回: 欠格期間3年
- 前歴2回: 欠格期間4年
このように、過去に違反を繰り返しているほど、社会復帰までの期間が長くなる厳しい仕組みになっています。
免許外運転の刑事処分:罰金・懲役の内容
法律で定められた罰金・懲役の上限
免許外運転は行政処分だけでなく、刑事処分の対象にもなります。根拠となる道路交通法では、無免許運転に対して「3年以下の懲役または50万円以下の罰金」が定められています。この罰則は、2013年の法改正で厳罰化されたものです。科される罰金は、行政上の反則金とは異なり、刑事罰であるため前科として記録が残ります。懲役刑が科された場合、2025年6月からは、刑務作業と更生プログラムを柔軟に組み合わせた「拘禁刑」として執行されることになります。
初犯と再犯における刑事処分の量刑傾向
実際の量刑は個別の事案によって異なりますが、初犯か再犯かによって大きく傾向が分かれます。
- 初犯の場合: 事故を起こしていなければ、多くは略式手続による罰金刑(20万円~30万円程度)となる傾向があります。略式手続は、公開の裁判を経ずに書類審査で刑罰が決定される簡易な手続きです。
- 再犯の場合: 過去にも無免許運転で処罰された経歴があると、遵法意識の欠如が問題視され、正式な裁判が開かれる公算が大きくなります。執行猶予付きの懲役刑や、悪質なケースでは実刑判決が下される可能性も十分にあります。
軽い気持ちで違反を繰り返すと、最終的には身体の自由を奪われる厳しい結果につながります。
行政処分と刑事処分の違いとは?
処分の目的の違い:将来の危険防止と過去の行為への制裁
免許外運転をすると、行政処分と刑事処分の両方が科されることがありますが、これは二重処罰ではありません。両者はその目的が根本的に異なります。
| 処分種別 | 目的 | 具体的な内容 |
|---|---|---|
| 行政処分 | 将来の危険防止(保安処分) | 危険な運転者を道路交通から排除し、将来の事故を防ぐための措置(免許取消・停止) |
| 刑事処分 | 過去の行為への制裁(刑罰) | 法を破った行為に対する責任を問い、社会秩序を維持するための罰(懲役・罰金) |
このように、行政処分が「未来」に向けた安全確保の措置であるのに対し、刑事処分は「過去」の行為に対する罰という違いがあります。
処分を科す機関と手続きの流れの比較
処分を執行する機関や手続きも、両者で大きく異なります。
| 項目 | 行政処分 | 刑事処分 |
|---|---|---|
| 主たる機関 | 都道府県の公安委員会 | 検察庁、裁判所 |
| 手続きの流れ | 警察による違反の取締り → 点数の登録 → 意見の聴取 → 処分の執行 | 警察による捜査 → 検察官送致 → 起訴・不起訴の判断 → 刑事裁判 → 判決 |
| 根拠 | 道路交通法、行政手続法 | 道路交通法、刑事訴訟法 |
行政処分は比較的迅速に行政機関内部で進められますが、刑事処分は司法の場で厳格な手続きを経て決定されます。
一つの違反で両方の処分が科される「併科」について
一つの免許外運転という行為に対し、免許取消(行政処分)と罰金(刑事処分)の両方が科されることを「併科」といいます。これは、前述のとおり処分の目的と性質が異なるため、憲法で禁止されている「二重処罰」にはあたらないと最高裁判所も判断しています。したがって、罰金を支払っても違反点数が消えることはなく、逆に免許が取り消されたからといって刑事手続きが免除されることもありません。違反者は、行政上と刑事上の両方の責任をそれぞれ負う必要があります。
運転者以外の責任:車両提供者・同乗者への罰則
車両提供者(会社・個人)に科される処分内容
免許外運転の責任は、運転者本人だけに留まりません。運転者が無免許であることを知りながら車両を提供した者も、厳しい処罰の対象となります。
- 刑事処分: 運転者本人と同等の「3年以下の懲役または50万円以下の罰金」。
- 行政処分: 提供者が免許を保有している場合、「重大違反唆し」として免許取消処分(欠格期間は原則2年)。
提供者が会社である場合、刑事罰に加えて、運送業の許可取消や車両使用停止などの行政処分を受ける可能性があります。従業員に車を貸す際は、免許証の有効期限や種類を確実に確認する義務があります。
同乗者が処罰の対象となる条件
運転者が無免許であることを知りながら、自分を運ぶよう依頼・要求して同乗した者も罰せられます。
- 刑事処分: 「2年以下の懲役または30万円以下の罰金」。
- 行政処分: 同乗者が免許を保有している場合、運転者と同様に免許取消処分(欠格期間は原則2年)。
処罰の対象となるには、運転者が無免許であることの「認識」と、同乗を能動的に「依頼・要求」したことの両方が必要です。ただし、単に同乗していただけでも、状況によっては認識や依頼があったと判断されるリスクがあるため、注意が必要です。
従業員による免許外運転が発覚した際の企業の対応実務
従業員が業務中または私用で免許外運転を行い発覚した場合、企業は迅速かつ毅然とした対応が求められます。
- 事実関係の正確な把握: 本人からの聴取に加え、免許証と車検証を照合し、違反内容を客観的に確認します。
- 警察への報告と協力: 事実を隠蔽せず、速やかに警察に報告し、捜査に全面的に協力します。
- 社内での処分: 就業規則に基づき、懲戒解雇を含めた厳正な処分を検討・実施します。
- 再発防止策の徹底: 全従業員の免許証の定期的な確認体制を構築し、コンプライアンス研修を実施するなど、管理体制を強化します。
初動対応を誤ると、企業の社会的信用を失い、事業継続に深刻な影響を及ぼす可能性があります。
免許取消処分を受けた後の流れと再取得までの手順
行政処分の通知から意見の聴取・聴聞まで
免許取消処分の対象となると、公安委員会から処分の事前通知として「意見の聴取通知書」が届きます。これは、正式な処分が下される前に、本人が事情を説明し、弁明する機会を与えるための手続きです。
- 公安委員会から「意見の聴取通知書」が郵送で届きます。
- 指定された日時に出頭し、聴聞官に対して違反の経緯や反省の意、今後の対策などを述べます。
- 嘆願書や反省文などの有利な資料を提出することも可能です。
免許外運転のような重大な違反で処分が軽減される可能性は極めて低いですが、正当な理由なく欠席すると反省の意思なしと見なされ、即時に処分が執行されます。
欠格期間満了後に必要な「取消処分者講習」とは
欠格期間が満了しても、自動的に免許が再取得できるわけではありません。まず、「取消処分者講習」を受講する必要があります。
- 目的: 違反者の運転特性や安全意識を改善し、再犯を防止する。
- 内容: 2日間合計13時間にわたる講習(座学、運転適性検査、実車指導など)。
- 受講時期: 欠格期間満了前から受講可能。
- 費用: 約3万円程度。
- 修了後: 「取消処分者講習終了証書」が交付される(有効期間1年)。
この終了証書がなければ、運転免許試験の受験資格が得られません。
運転免許の再取得(試験受験)に向けた準備
取消処分者講習を修了したら、いよいよ運転免許試験に臨みます。再取得の方法は、大きく分けて2つあります。
- 指定自動車教習所に入所する: 費用と時間はかかりますが、卒業すれば技能試験が免除されるため、最も確実な方法です。
- 運転免許試験場で直接受験する(一発試験): 費用は安いですが、技能試験の合格率が非常に低く、何度も挑戦する必要がある場合が多いです。
過去に運転経験があっても、試験で求められる安全確認や法規走行は厳格です。確実な再取得を目指すのであれば、指定自動車教習所の利用を検討するのが賢明です。
免許外運転に関するよくある質問
免許外運転で事故を起こした場合、自動車保険は適用されますか?
免許外運転中の事故では、保険の適用範囲が限定されます。
- 適用される保険(被害者救済のため):
- 自賠責保険(強制保険)
- 任意保険の対人賠償保険・対物賠償保険
- 適用されない保険(運転者自身のため):
- 人身傷害保険(自身の治療費など)
- 車両保険(自身の車の修理代など)
つまり、事故相手への賠償は行われますが、運転者自身の身体や車両への損害は一切補償されず、すべて自己負担となります。
免許の有効期限切れ(うっかり失効)も免許外運転になりますか?
免許の有効期限が切れた状態で運転する行為は、「免許外運転」ではなく「無免許運転(失効中無免許)」に該当します。呼び方は異なりますが、違反点数25点、3年以下の懲役または50万円以下の罰金という罰則は、免許外運転と全く同じです。たとえ「うっかり」であっても、法的には運転資格がない状態で運転したと見なされ、厳しい処分が科されます。ただし、失効後6ヶ月以内など、早期であれば比較的簡易な手続きで免許を再取得できる救済措置があります。
免許外運転の事実を会社へ報告する義務はありますか?
法律で会社への報告が直接義務付けられているわけではありません。しかし、ほとんどの企業の就業規則には、法令違反や行政処分を受けた場合の報告義務が定められています。特に、業務で車両を運転する従業員の場合、報告を怠ることは契約違反や安全配慮義務違反と見なされる可能性があります。事実を隠蔽していたことが後に発覚した場合、虚偽報告としてより重い懲戒処分(解雇など)の対象となるリスクが高まります。企業のコンプライアンスとリスク管理の観点から、速やかに会社へ報告することが賢明な判断です。
まとめ:免許外運転の重い責任を理解し、誠実な対応を
免許外運転は違反点数25点となり、一回の違反で必ず免許取消となる重大な違反です。この行政処分に加えて「3年以下の懲役または50万円以下の罰金」という刑事罰も科され、前科がつくことになります。責任は運転者本人だけでなく、車両を提供した会社や同乗者にも及ぶことを理解しなくてはなりません。処分が決定した場合は、意見の聴取へ出席し、欠格期間満了後は取消処分者講習を経て再取得を目指すことになります。まずはご自身の状況を正確に把握し、会社への報告など、求められる対応を誠実に行うことが重要です。

