東芝の監査法人はなぜ交代?粉飾決算からPwCあらた就任までの経緯
東芝の会計監査人は、2015年に発覚した不適切会計をきっかけに、2016年6月に新日本有限責任監査法人からPwCあらた監査法人へ交代しました。PwCあらたはその後、合併により2023年12月に「PwC Japan有限責任監査法人」となっています。「東芝の監査法人がトーマツに交代した」という説明を見かけることがありますが、東芝の有価証券報告書や監査法人の公表資料からは、トーマツへの交代は確認できません。この記事では、東芝・金融庁・監査法人が公表した一次資料をもとに、不適切会計の発覚から、監査法人の処分と交代、PwCあらたによる監査意見、非上場化後の監査体制までを時系列で整理します。自社の監査体制やリスク管理を見直す際の参考にしてください。
発端:東芝の粉飾決算事件
不適切会計の発覚と第三者委員会
東芝は2015年2月12日、証券取引等監視委員会から金融商品取引法第26条に基づく報告命令を受け、工事進行基準案件などについて開示検査を受けました。これに対応する自己調査の過程で、インフラ関連の工事進行基準案件の会計処理に調査が必要な事項が見つかり、東芝は2015年4月3日に社外の弁護士・公認会計士を含む特別調査委員会を設置しました。その後、調査は外部の専門家で構成する第三者委員会に引き継がれ、対象は工事進行基準案件に加えて、映像、パソコン、半導体などの事業にも広がりました。2015年7月20日に東芝が受領した調査報告書は、2008年度から2014年度第3四半期までの税引前損益の要修正額を累計マイナス1,518億円(第三者委員会への委嘱事項の範囲)としています。
歴代経営陣の関与と組織的な不正
第三者委員会の報告書は、経営トップらが事業部門に「チャレンジ」と呼ばれる過大な損益改善目標を課し、その達成を強く求めていたことを指摘しています。東芝が2017年に公表した改善報告でも、チャレンジの指示が出されていた「社長月例」を廃止したと説明しています。報告書は、一部の案件について経営トップらの関与を含めた組織的な関与があり、意図的に当期利益を実力以上に嵩上げする目的があったと認定しました。こうした会計処理は経営判断として行われたもので、現場の担当者が是正するのは事実上困難だったとしています。
証券取引等監視委員会の勧告
証券取引等監視委員会は2015年12月7日、東芝の有価証券報告書などに虚偽記載があったとして、内閣総理大臣と金融庁長官に課徴金納付命令を出すよう勧告しました。対象は主に2012年3月期と2013年3月期の有価証券報告書などです。
- 一部の工事進行基準案件における工事損失引当金の過少計上と売上の過大計上
- 映像、パソコン、半導体などの事業の一部における売上原価の過少計上
- 同じく一部の事業における費用の過少計上
勧告した課徴金の額は73億7,350万円です。内訳は、継続開示書類(有価証券報告書など)に係る分が1億7,350万円、虚偽記載のある書類を参照して発行した社債(発行開示書類)に係る分が72億円です。この事件をきっかけに、東芝を監査していた監査法人の責任も問われることになりました。
監査法人の責任と契約の終焉
新日本監査法人の見逃しと責任
当時、東芝の会計監査人は新日本有限責任監査法人でした。金融庁は、新日本監査法人が東芝の2010年3月期、2012年3月期、2013年3月期の財務書類の監査で相当の注意を怠り、重大な虚偽のある財務書類を重大な虚偽のないものとして証明したと認定しました。金融庁が公表した処分理由では、監査手続について次のような問題が挙げられています。
- パソコン事業:四半期末月に製造原価がマイナスになる異常値を把握しながら、十分に検討しなかった
- 半導体事業:原価計算の前提を確かめないまま思い込みで判断し、確認を怠った
- 工事進行基準案件:重要な会計上の見積りについて、東芝の説明をそのまま受け入れた
- 法人全体:職業的懐疑心の発揮が不十分で、審査や品質管理も問題を発見できなかった
金融庁は、個々の監査チームの問題にとどまらず、法人としての品質管理体制にも不備があったと判断しています。
金融庁による行政処分と課徴金
金融庁は2015年12月22日、新日本監査法人の運営が著しく不当だったとして、法人と担当の公認会計士7名に懲戒処分を行いました。あわせて課徴金納付命令に向けた審判手続の開始を決定し、2016年1月22日に課徴金の納付を命じています。
| 対象 | 処分内容 |
|---|---|
| 新日本有限責任監査法人 | 契約の新規の締結に関する業務の停止(3か月、2016年1月1日〜3月31日) |
| 新日本有限責任監査法人 | 業務改善命令(業務管理体制の改善) |
| 新日本有限責任監査法人 | 課徴金納付命令(21億1,100万円、2016年1月22日決定) |
| 担当公認会計士7名 | 業務停止(6か月1名、3か月2名、1か月4名) |
監査契約を継続しなかった経緯
東芝の2016年6月の定時株主総会の招集通知によると、東芝は新しい会計監査人の候補を検討していたところ、2015年12月22日に新日本監査法人から2016年度の監査契約を締結しない旨の申し出を受けました。東芝は2016年1月に複数の監査法人を候補として選び、提案書の受領とプレゼンテーションを経て、監査委員会がPwCあらた監査法人を候補者に決めました。新日本監査法人は2016年6月22日の第177期定時株主総会の終結をもって任期満了で退任し、同じ総会でPwCあらた監査法人が会計監査人に選任されています。したがって、形式としては新日本監査法人からの不継続の申し出と、任期満了による交代です。
株主からの提訴請求と監査法人の法的責任
東芝は2016年7月20日、株主から、新日本監査法人に損害賠償を求める訴えを起こすよう会社法第847条第1項に基づく提訴請求を受けました。東芝は社内のヒアリングや監査法人への書面質問などの調査を行い、2016年9月16日に提訴しないと決めて公表しています。理由として、東芝から監査法人への情報提供が不適切だったことは事実であり、外部に責任を求めるより内部管理体制の強化に力を注ぐことが株主の利益にかなう、と説明しました。
一般論として、有価証券報告書に重要な虚偽記載があった場合、それを虚偽がないものとして監査証明した公認会計士や監査法人は、虚偽を知らずに有価証券を取得した投資家に対して損害賠償責任を負います。責任を免れるには、監査証明について故意又は過失がなかったことを自ら証明する必要があります(金融商品取引法第24条の4、第22条、第21条第2項第2号)。監査法人にとって、虚偽記載を見逃すことは行政処分だけでなく民事上の責任にもつながります。
PwCあらたへの交代と監査意見
PwCあらたの就任
PwCあらた監査法人は、2016年度(2017年3月期)から東芝の監査を担当しました。同法人は2016年7月1日に有限責任監査法人へ移行し、名称を「PwCあらた有限責任監査法人」に変えています。東芝の監査委員会は、候補の比較にあたって次の観点を中心に検討したと説明しています。
- 上場会社との監査契約の実績
- 担当監査チームの規模、人員構成
- グローバルサポート体制
- 米国会計基準についての指導・助言体制と、意見表明のための審査体制
PwCあらたが担当した最初の年度には、米国の原子力子会社ウェスチングハウス(WEC)が2015年12月に買収したCB&Iストーン・アンド・ウェブスター社に関連する巨額の損失について、その会計処理が大きな論点になりました。
四半期レビューの結論不表明と限定付適正意見
2017年4月11日、PwCあらたは東芝の2016年度第3四半期の四半期連結財務諸表について、結論を表明しない四半期レビュー報告書を出しました。WECによる買収の取得価格配分の過程で一部経営者による不適切なプレッシャーの存在を示唆する情報がもたらされ、監査委員会の調査結果の評価が終わっていないことが理由です。評価の対象には、工事損失引当金の損失を認識すべき時期がいつだったかも含まれていました。
2017年8月10日に提出された2016年度(2017年3月期)の有価証券報告書では、PwCあらたは連結財務諸表に限定付適正意見を、内部統制報告書に不適正意見を表明しました。東芝が2016年度に計上した工事契約関連の損失6,523億円について、そのうち相当程度ないしすべては前年度(2015年度)に計上すべきだった、というのが限定の理由です。比較情報への影響が残るため、2017年度(2018年3月期)の連結財務諸表にも限定付適正意見が付いています。
その後も監査法人は交代していない
一連の監査意見のあとも、東芝の会計監査人は交代していません。2023年6月28日に提出された第184期(2023年3月期)有価証券報告書は、会計監査人をPwCあらた有限責任監査法人、継続監査期間を7年間と記載しています。2016年度から2022年度まで、7年続けてPwCあらたが監査を担当したことになります。同じ報告書によれば、この年度に監査を担当した公認会計士は4名、補助者は公認会計士33名、その他125名でした。
「トーマツに交代した」は事実か
一次資料ではトーマツへの交代は確認できない
2026年10月時点で確認できる一次資料には、東芝の会計監査人が有限責任監査法人トーマツに交代したという記載は見当たりません。主な根拠は次のとおりです。
- 2016年6月の定時株主総会で、新日本有限責任監査法人の退任とPwCあらた監査法人の選任を決議
- 2023年3月期の有価証券報告書で、会計監査人はPwCあらた有限責任監査法人、継続監査期間は7年間
- PwC Japan有限責任監査法人の公衆縦覧書類(2024年6月期、2025年6月期)で、会社法監査の被監査会社に「株式会社東芝」を掲載
東芝の事例を調べる際は、報道や解説記事だけでなく、有価証券報告書の「監査の状況」や監査法人が公表する被監査会社の一覧で確かめることをおすすめします。
東芝が会計監査人に求める要件
2023年3月期の有価証券報告書は、東芝が監査法人を選ぶ際に考慮する要件として、次の項目を挙げています。
- 日本公認会計士協会による品質管理レビューの結果などを踏まえた品質管理体制の適切性
- 上場会社の監査実績
- グローバル規模での監査体制の充実と監査品質の高さ
- 米国会計基準に基づく監査のための体制
- 東芝および国内外のグループ会社からの独立性
- 監査報酬額などの見積り
多くの事業を海外にも展開し、当時は米国会計基準で連結財務諸表を作成していた東芝にとって、グローバルな監査体制と米国会計基準への対応は、選定の重要な条件でした。
監査委員会が定める解任・不再任の方針
東芝は指名委員会等設置会社で、会計監査人の選任・解任に関する議案は監査委員会が決めます。2023年3月期の有価証券報告書は、その方針を次のように記載しています。会計監査人が会社法第340条第1項各号に当たる場合は、監査委員全員の同意で解任します。また、会計監査人が法令違反で行政処分を受けた場合、日本公認会計士協会の処分を受けた場合、監査契約を継続しない旨の通知を受けた場合、会計監査の適正化・効率化を図る場合には、選任・解任・不再任の議案の内容を決めるとしています。新日本監査法人からの不継続の申し出を受けた2015年の経緯と照らし合わせると、方針の意味がわかりやすくなります。
交代後の変化と現在の体制
ガバナンス体制への影響
東芝は2015年9月に東京証券取引所と名古屋証券取引所から特設注意市場銘柄に指定され、内部管理体制の改善に取り組みました。2017年10月に公表した「内部管理体制の改善報告」では、主に次の施策を挙げています。
- 取締役の過半数を社外取締役とする(2017年9月末時点で取締役9名のうち6名が社外)
- 監査委員会を独立社外取締役だけで構成し、監査委員会室の人員と調査権限を強化
- 新設した内部監査部を監査委員会の直轄とする
- 2015年10月1日に監査委員会にも内部通報窓口を設置
- 「チャレンジ」の指示が出されていた社長月例を廃止し、業績報告会を新設
改善報告は、不正会計の背景として、監査委員会から会計監査人への情報提供が十分でなかったことも挙げています。東芝は2017年10月12日に特設注意市場銘柄の指定を解除されました。
監査報酬の変動と監査の厳格化
一連の不祥事と監査法人の交代は、東芝が支払う監査報酬にも表れています。有価証券報告書に記載された、監査証明業務に基づく報酬(東芝と連結子会社の合計)は次のとおりです。
| 年度 | 監査法人 | 監査証明業務の報酬(百万円) |
|---|---|---|
| 2014年度(2015年3月期) | 新日本有限責任監査法人 | 1,025 |
| 2015年度(2016年3月期) | 新日本有限責任監査法人 | 5,342(過年度決算の訂正に係る2,884を含む) |
| 2016年度(2017年3月期) | PwCあらた有限責任監査法人 | 2,828 |
| 2022年度(2023年3月期) | PwCあらた有限責任監査法人 | 1,711 |
2015年度は過年度決算の訂正に係る監査が加わり、報酬が大きく増えました。このほか、2015年度分の追加報酬として、2016年度に東芝が977百万円、連結子会社が460百万円を計上しています。PwCあらたへの交代後も、2016年度の報酬は不祥事前の2014年度の2倍を超える水準でした。
現在の東芝における監査体制
東芝は、日本産業パートナーズ(JIP)からの提案に基づくTBJH株式会社の公開買付け(2023年8月8日〜9月20日)を経て、2023年12月20日に東京証券取引所と名古屋証券取引所で上場廃止となりました。東芝のIRページに掲載されている開示書類は、2023年11月14日に提出した2023年度第2四半期報告書が最後です。
監査を担当してきたPwCあらた有限責任監査法人は、2023年12月1日にPwC京都監査法人と合併し、PwC Japan有限責任監査法人として業務を始めました。PwC Japan有限責任監査法人が公衆縦覧に供している「業務及び財産の状況に関する説明書類」では、2024年6月期と2025年6月期のいずれにも、会社法監査の被監査会社として「株式会社東芝」が載っています。2026年10月時点で確認できる一次資料の範囲では、東芝の会計監査はPwC Japan有限責任監査法人が担っているとみられます。
事例から学ぶ企業と監査法人の関係
監査法人の独立性をどう確保するか
監査法人が公正な監査を行うには、監査対象企業からの独立性と、会社の説明をうのみにしない職業的懐疑心が欠かせません。東芝の事例で金融庁が指摘したのは、異常値を把握しながら会社の説明を十分に確かめなかったことでした。独立性と懐疑心を保つには、仕組みでの担保が必要です。
- 監査業務を担当する責任者を一定期間で交代させるローテーション制度を厳格に運用する
- 監査法人が監査先企業に非監査業務を同時に提供することを、法令の範囲内でも慎重に判断する
- 監査報酬が監査法人の経営を左右するほどの依存関係にならないよう注意する
経済的な依存関係を避け、客観的な第三者の立場を保つことが監査品質の土台になります。
監査委員会(監査役会)と会計監査人の連携の重要性
会計不正を防ぐには、経営陣から独立した監査委員会(または監査役会)と会計監査人が緊密に連携することが欠かせません。東芝は指名委員会等設置会社で、監査役会ではなく監査委員会を置いています。東芝の改善報告は、不正会計の当時、財務部門から監査委員会への報告が社内の監査委員に限られ、会計監査人とのコミュニケーションも不十分だったと振り返っています。監査委員会や監査役会は、内部監査部門からの報告などで不正の兆候を早くつかみ、その情報を会計監査人と共有する必要があります。
有事における情報開示のあり方
不祥事が発覚したとき、企業には投資家保護の観点から迅速で透明性の高い情報開示が求められます。東芝の場合、2014年度(2015年3月期)の有価証券報告書の提出は2015年9月7日、2016年度(2017年3月期)の有価証券報告書の提出は2017年8月10日でした。いずれも、2023年3月期の提出日(2023年6月28日)のような通常の時期より大きく遅れています。不都合な事実でも調査結果を速やかに公表し、いつ何が確定するかを示すことが、信頼回復の第一歩になります。
監査とアドバイザリー:同一法人グループに依頼する際の留意点
監査業務とコンサルティングなどのアドバイザリー業務を同じ監査法人グループに委託する場合は、利益相反に注意が必要です。たとえば、グループ内のコンサル会社が構築した内部統制を同じグループの監査法人が評価すると、客観的な評価が難しくなる「自己監査の脅威」が生じます。東芝の2023年3月期の有価証券報告書でも、前年度に監査法人へ「戦略的事業再編に関するアドバイザリー業務」の報酬を支払ったことや、同じPwCのネットワークに非監査業務の報酬を支払ったことが開示されています。企業は、法令で禁じられた同時提供を避けるだけでなく、外から見て独立性に疑念を持たれないよう、発注先の分け方を監査委員会などで確認することが望まれます。
東芝の監査法人交代に関するFAQ
東芝の今の監査法人はどこですか?トーマツですか?
東芝の会計監査人は、2016年6月に新日本有限責任監査法人からPwCあらた監査法人に交代しました。PwCあらたは2023年12月1日の合併でPwC Japan有限責任監査法人となり、同法人の公衆縦覧書類(2025年6月期)でも、会社法監査の被監査会社に株式会社東芝が載っています。2026年10月時点で確認できる一次資料には、トーマツへの交代を示す記載はありません。
粉飾決算とは、どのような事件でしたか?
粉飾決算とは、企業が意図的に事実と異なる会計処理を行い、業績を実際より良く見せる不正行為です。東芝の事件では、経営トップらが「チャレンジ」と呼ばれる過大な損益改善目標を課すなかで、複数の事業で利益の嵩上げが行われました。
- 工事進行基準案件:工事損失引当金の過少計上と売上の過大計上
- 映像・パソコン・半導体などの事業の一部:売上原価の過少計上
- 一部の事業:費用の過少計上
第三者委員会は、2008年度から2014年度第3四半期までの税引前損益の要修正額を累計マイナス1,518億円(委嘱事項の範囲)としています。
新日本監査法人はどんな処分を受けましたか?
金融庁は2015年12月22日、新日本有限責任監査法人に対し、新規契約の締結に関する業務の停止3か月(2016年1月1日〜3月31日)と業務改善命令を出しました。2016年1月22日には21億1,100万円の課徴金納付命令を決定しています。東芝の監査を担当した公認会計士7名も、1か月から6か月の業務停止処分を受けました。
なぜ東芝は不正会計のあと上場を維持できたのですか?
東芝は米国原子力事業の巨額損失で2017年3月期末に債務超過となり、2017年8月1日付で東京・名古屋の両証券取引所で市場第一部から第二部に指定替えされ、上場廃止基準の猶予期間銘柄(債務超過)とされました。その後、2017年12月に約6,000億円の第三者割当増資の払込みを受け、ウェスチングハウス関連の債権譲渡などと合わせて、2018年3月期末に債務超過を解消しました。内部管理体制の改善も進め、2017年10月12日に特設注意市場銘柄の指定が解除されています。なお、メモリ事業(東芝メモリ株式会社)の株式譲渡は2018年6月に完了しました。東芝はその後、2023年12月20日に公開買付けと株式併合を経て上場廃止となっていますが、これは不正会計による上場廃止ではなく、非上場化を目的とした手続によるものです。
大企業の監査法人交代は珍しいですか?
大企業が監査法人を交代するのは、頻繁なことではありません。長年の監査で蓄積された企業理解の引き継ぎに手間とコストがかかるためです。ただし、東芝のように監査法人が行政処分を受けた場合や、監査法人の側から契約を継続しない申し出があった場合には、交代に至ることがあります。監査法人の交代は、有価証券報告書や適時開示で理由を確かめるべき投資家にとって重要なシグナルと言えます。
まとめ:東芝事例に学ぶ監査法人交代の背景とガバナンスの要点
東芝の不適切会計は、経営トップらの関与を含む組織的な利益の嵩上げと、それを見逃した監査法人の責任が問われた事例です。会計監査人は、行政処分を受けた新日本有限責任監査法人から2016年6月にPwCあらた監査法人へ交代しました。PwCあらたは2017年に四半期レビューの結論不表明や限定付適正意見を出しましたが、その後も監査を続け、2023年12月の合併でPwC Japan有限責任監査法人となっています。トーマツへの交代は一次資料では確認できません。この事例から学べるのは、企業と監査法人が適切な緊張関係を保ち、会社側も会計監査人へ十分な情報を提供することの大切さです。自社のガバナンスを点検する際は、監査委員会や監査役会が経営から独立して機能しているか、会計監査人と十分に連携できているかを確かめてください。本記事は公表資料に基づく一般的な事例解説です。個別の会計・監査に関する判断は、公認会計士や弁護士などの専門家にご相談ください。

