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窃盗事件の警察捜査の流れ|逮捕されるケース・されないケースと取るべき対応

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窃盗事件に関与してしまい、今後の警察の捜査がどう進むのか、逮捕されるのではないかと、ご本人やご家族は大変な不安を感じていることでしょう。法的な知識がないと、捜査の流れが見えずに不安は増すばかりです。この記事では、窃盗事件が警察に発覚した後、捜査がどのように始まり、逮捕される場合(身柄事件)とされない場合(在宅事件)で手続きがどう進むのか、最終的な処分までの一連の流れをわかりやすく解説します。

目次

窃盗事件における警察捜査の開始経緯

被害者による被害届・告訴状の提出

警察が窃盗事件の捜査を開始する最も一般的なきっかけは、被害者からの申告です。被害の申告方法には主に「被害届」と「告訴状」の2種類があり、それぞれ法的な性質が異なります。

被害届は、犯罪の被害に遭った事実を警察に報告するための書類です。これを受理することで警察は事件を認知し、捜査の端緒としますが、被害届の提出だけでは警察に法的な捜査義務は生じません。あくまで被害事実の報告という位置づけです。

一方、告訴状は被害事実の申告に加え、犯人への処罰を求める強い意思表示を含む書類です。告訴が受理されると、警察は捜査を行い、事件に関する書類や証拠を検察官に送付する義務を負います。そのため、告訴状の受理は被害届に比べて慎重に判断される傾向があります。

項目 被害届 告訴状
目的 犯罪被害の事実を申告する 犯人の処罰を求める意思を表明する
警察の義務 捜査開始のきっかけ(義務ではない) 捜査し、検察官に送付する義務を負う
受理の難易度 比較的容易 証拠関係などから慎重に判断され、比較的高い
被害届と告訴状の主な違い

窃盗罪は、被害者の告訴がなくても起訴できる非親告罪ですが、配偶者や直系血族、同居の親族以外の親族に対する窃盗は、告訴がなければ公訴を提起できない親告罪とされています(親族相盗例)。多くの事件では被害者の協力が不可欠であり、被害届や告訴状の提出が捜査の進展を大きく左右します。

現行犯逮捕や防犯カメラ映像による発覚

窃盗事件は、被害申告以外にも、犯行中や犯行直後に発覚することがあります。代表的なのが、犯人がその場で取り押さえられる現行犯逮捕です。犯行と犯人が明白であるため、逮捕状なしで身柄を拘束でき、店員や目撃者による私人逮捕も認められています。私人逮捕の場合、犯人は速やかに警察官に引き渡され、本格的な捜査が始まります。

近年、現行犯以外での摘発に大きく貢献しているのが防犯カメラの映像です。店舗や街頭のカメラが犯行を記録していれば、それが犯人を特定する有力な証拠となります。警察は映像解析の専門部署も活用し、不鮮明な映像からでも特徴を割り出して犯人を特定します。これにより、犯行から数日~数週間後に逮捕に至る「後日逮捕」が可能になります。

ただし、防犯カメラ映像には注意点もあります。

防犯カメラ映像に関する注意点
  • 映像の保存期間は一般的に1週間から1ヶ月程度と限られている。
  • 映像の画質が低く、個人の特定が困難な場合がある。
  • 犯行の決定的瞬間が死角に入って映っていないことがある。

映像だけでは証拠として不十分な場合、警察は指紋などの他の物証と組み合わせ、慎重に裏付け捜査を進めた上で逮捕状を請求します。

窃盗捜査の2つの類型|身柄事件と在宅事件の違い

身柄事件とは:逮捕・勾留により身柄を拘束される手続き

身柄事件とは、被疑者が逮捕・勾留によって警察署の留置施設などに身柄を拘束された状態で捜査が進められる事件類型です。被疑者に逃亡や証拠隠滅のおそれがあると判断された場合に選択されます。

身柄事件になりやすいケース
  • 被疑者に定まった住居がない場合
  • 犯行を否認している、または黙秘している場合
  • 組織的な窃盗事件の共犯者である場合
  • 盗品をすでに転売・処分するなど、証拠隠滅の形跡がある場合

身柄事件の最大の特徴は、被疑者の身体の自由が奪われ、日常生活から完全に隔離される点です。逮捕直後は家族とも面会できず、外部との連絡が厳しく制限されます。また、法律で定められた厳格な時間制限の中で捜査がスピーディーに進むため、十分に防御の準備ができないまま不利な状況に置かれやすい側面があります。身柄拘束が続けば、失職や退学といった深刻な社会的ダメージを受けるリスクも高まります。

在宅事件とは:日常生活を送りながら捜査を受ける手続き

在宅事件とは、被疑者が逮捕されず、あるいは逮捕されても勾留されずに釈放され、自宅で普段通りの生活を送りながら捜査を受ける事件類型です。逃亡や証拠隠滅のおそれが低いと判断された場合に選択されます。

在宅事件になりやすいケース
  • 被害額が少額で、初犯である場合
  • 被疑者に定まった住居や仕事があり、身元がはっきりしている場合
  • 犯行を素直に認め、深く反省している場合
  • 早期に被害者との示談交渉が進んでいる場合

在宅事件のメリットは、会社や学校に通いながら、警察からの呼び出しがあった時だけ出頭すればよい点です。身体的・精神的な負担が少なく、弁護士との打ち合わせや示談交渉も進めやすいです。ただし、犯罪の嫌疑が晴れたわけではなく、捜査は継続しています。身柄事件のような時間制限がないため、捜査が数ヶ月から1年以上と長期化することもあります。捜査への非協力的な態度や、被害者への不適切な接触などがあれば、途中で逮捕されて身柄事件に切り替わる可能性もあるため、誠実な対応が求められます。

【在宅事件】逮捕されない場合の警察捜査の流れ

警察署への出頭要請(呼び出し)と事情聴取

在宅事件では、まず警察から電話などで出頭要請があります。指定された日時に警察署へ出向き、取調室で事件に関する事情聴取を受けます。事情聴取は複数回に及ぶこともあります。聴取で話した内容は「供述調書」という書面にまとめられますが、この調書は後の裁判で重要な証拠となるため、内容を十分に確認し、自分の意図と違う部分があれば訂正を求める権利があります。納得できない場合は、署名・押印を拒否することも可能です。

書類送検から検察官による最終処分(起訴・不起訴)まで

警察での捜査が終了すると、事件の記録一式が検察庁へ引き継がれます。これを書類送検と呼びます。被疑者の身柄は拘束されないため生活に変化はありませんが、事件の管轄が警察から検察官に移ります。

その後、検察官は書類を精査し、必要に応じて被疑者を呼び出して直接取り調べを行います。最終的に、すべての捜査結果をふまえて、被疑者を刑事裁判にかけるか(起訴)、かけないか(不起訴)を決定します。

検察官による最終処分の種類
  • 起訴処分: 刑事裁判を提起すること。法廷で審理する「公判請求」と、書面審理で罰金を科す「略式起訴」がある。
  • 不起訴処分: 裁判を開かずに事件を終了させること。「嫌疑不十分」のほか、罪を犯した事実は認められるが諸般の事情を考慮して起訴を見送る「起訴猶予」がある。

在宅事件では、書類送検から最終処分まで数ヶ月かかることも珍しくありません。この期間中に被害者との示談を成立させることが、起訴猶予処分を獲得するために極めて重要です。処分が決定すれば、検察庁から通知が届き、刑事手続きは終了します。

【身柄事件】逮捕された後の捜査の流れと期間

逮捕後72時間以内:警察での取り調べと検察官への送致

身柄事件は、逮捕された瞬間から厳格な時間制限のもとで手続きが進みます。この最初の72時間が、その後の流れを決定づける非常に重要な期間です。

逮捕後72時間の流れ
  1. 警察による取り調べ(逮捕後48時間以内): 警察は被疑者を逮捕してから48時間以内に、取り調べや証拠収集を行い、事件を検察官に送致(送検)するかを判断します。
  2. 検察官による取り調べ(送致後24時間以内): 事件の送致を受けた検察官は、24時間以内に被疑者を取り調べ、引き続き身柄を拘束する必要があるか(勾留請求するか)を判断します。

逮捕から勾留請求までの合計最大72時間、被疑者は外部との連絡を絶たれた状態で集中的な取り調べを受けます。この期間に自由に面会できるのは弁護士だけであり、不本意な供述調書が作成されるのを防ぐため、早期の弁護士接見が不可欠です。

勾留決定後の最大20日間:起訴・不起訴の判断が下るまで

検察官が「逃亡や証拠隠滅のおそれがある」と判断して勾留を請求し、裁判官がそれを認めると、被疑者の身柄拘束はさらに続きます。

勾留決定後の流れ
  1. 勾留(原則10日間): 裁判官が勾留を決定すると、まず原則として10日間、警察署の留置施設などで身柄を拘束されます。この間、検察官の指揮のもとで警察による詳細な捜査が行われます。
  2. 勾留延長(最大10日間): 10日間で捜査が終わらない場合、検察官はさらに最大10日間の勾留延長を請求できます。裁判官がやむを得ないと判断すれば延長が認められ、勾留期間は合計で最大20日間となります。
  3. 検察官による最終処分: 検察官は勾留期間が満了するまでに、被疑者を起訴するか不起訴にするかを最終的に決定します。

逮捕後の72時間と合わせると、起訴・不起訴の判断が下されるまで最大で23日間、社会から隔離される可能性があります。この期間中に弁護士を通じて被害者との示談を成立させることが、不起訴処分や早期釈放につながる重要な弁護活動となります。

供述調書への署名・押印は慎重に|内容の確認ポイント

取り調べで作成された供述調書への署名・押印は、その内容をすべて認めたという法的な証拠になります。一度署名すると、後の裁判で内容を覆すことは非常に困難です。署名する前には、必ず以下の点を確認してください。

供述調書の確認ポイント
  • 自分が話した内容と一言一句違わないか。
  • 自分の意図と異なるニュアンスで表現されていないか。
  • 犯行の動機や経緯など、主観的な部分が正確に記載されているか。
  • 自分に不利な内容が誇張されていたり、有利な内容が省略されたりしていないか。

もし内容に少しでも納得できない点があれば、修正を要求する権利があります。修正に応じてもらえない場合や、どうしても納得できない場合は、署名・押印を拒否してください。これは被疑者に認められた正当な権利です。

警察が窃盗事件の捜査をしない・打ち切るケース

被害が軽微、証拠不十分で犯人の特定が困難な場合

被害届が出されても、すべての事件で大規模な捜査が行われるわけではありません。状況によっては捜査が打ち切られたり、そもそも本格的な捜査に至らなかったりする場合があります。

捜査が進展しにくい主なケース
  • 被害が極めて軽微な場合: 被害額が非常に少なく、被害回復もされており、犯人が深く反省している場合などには、警察の判断で事件を検察官に送致せず手続きを終える「微罪処分」となることがあります。
  • 証拠が不十分な場合: 防犯カメラ映像や指紋などの客観的な証拠がなく、目撃者もいない場合、犯人を特定することが困難なため、捜査は事実上中断されます。
  • 盗品が特定困難な場合: 盗まれたのが現金や商品券などで、犯人と盗品を結びつけるのが難しい場合も、捜査は難航します。

警察は限られた人員で多くの事件を扱っているため、重大事件や解決の可能性が高い事件を優先せざるを得ないのが実情です。ただし、後に新たな証拠が見つかれば、捜査が再開されることもあります。

被害届が未提出・取下げの場合や親族相盗例が適用される場合

被害者の意思や、犯人との関係性によっても捜査の進展は左右されます。

被害者の意思などが影響するケース
  • 被害届が提出されない場合: 警察は犯罪を認知できず、捜査を開始することができません。
  • 被害届が取り下げられた場合: 特に被害者との間で示談が成立し、被害者が「処罰を望まない」という意思を示すと、警察は捜査を打ち切ることがあります。
  • 親族相盗例が適用される場合: 配偶者、直系血族(親子)、同居の親族間での窃盗は、刑法上の特例(親族相盗例)により刑が免除されます。そのため、これらの間柄での窃盗は処罰の対象とならず、原則として処罰を目的とした捜査は進められません。

これらのケースでは、家庭内の問題として当事者間での解決が優先されるべきという考え方や、被害者の処罰感情がないことが重視されます。ただし、共犯者がいる場合や、暴力行為を伴う場合などはこの限りではありません。

警察の捜査段階で取るべき2つの重要な対応

速やかに弁護士へ相談し、取り調べのアドバイスを受ける

警察から連絡が来たり、家族が逮捕されたりした場合、直ちに刑事事件に精通した弁護士へ相談することが最も重要です。捜査の初期段階から弁護士のサポートを受けることで、多くの不利益を回避できます。

弁護士に相談する主なメリット
  • 取り調べに対する具体的な対応策(黙秘権の行使など)についてアドバイスを受けられる。
  • 不利な内容の供述調書に署名してしまうリスクを避けられる。
  • 逮捕・勾留されている場合、家族との連絡役や会社への対応を任せられる。
  • 捜査機関に対して、不当な取り調べが行われないよう監視・牽制できる。
  • 今後の刑事手続きの流れや見通しを正確に把握できる。

捜査の初期対応が、その後の処分内容を大きく左右します。できる限り早い段階で、法的知識を持つ専門家を味方につけることが賢明です。

被害者との示談交渉を進め、被害弁償を行う

窃盗事件において、被害者との示談成立は、不起訴処分(特に起訴猶予)を獲得するために極めて重要な要素です。示談とは、加害者が被害者に真摯に謝罪し、被害弁償を行うことで当事者間の民事的な問題を解決する合意を指します。

しかし、加害者本人が被害者に直接連絡を取ることは避けるべきです。被害者の感情を害し交渉が決裂するだけでなく、証拠隠滅や脅迫とみなされ、逮捕される危険性すらあります。

示談交渉は、必ず弁護士を代理人として進めるべきです。弁護士が第三者として冷静に交渉することで、被害者も話し合いに応じやすくなります。示談書に「加害者の処罰を望まない」という宥恕(ゆうじょ)文言を入れてもらえれば、検察官が不起訴処分とする可能性が大幅に高まります。誠意ある謝罪と被害弁償は、加害者の責任を果たすとともに、自身の未来を守るための最善の策です。

窃盗事件の捜査に関するよくある質問

Q. 警察からの呼び出しを無視するとどうなりますか?

警察からの出頭要請は任意ですが、正当な理由なく無視し続けると、「逃亡や証拠隠滅のおそれがある」と判断され、裁判所が逮捕状を発行する可能性が非常に高くなります。その結果、ある日突然、自宅や職場に警察官が現れ、通常逮捕される事態になりかねません。仕事などで指定の日時に行けない場合は、必ず警察に連絡し、日程の再調整を相談してください。誠実な対応が逮捕を避ける鍵となります。

Q. 被害額が少額でも警察は捜査しますか?

はい、たとえ被害額が数百円の万引きであっても、窃盗は犯罪ですので警察は捜査します。ただし、被害額が少額で初犯、かつ深く反省しているなどの事情があれば、検察に事件を送らずに警察限りで処理を終える「微罪処分」となったり、検察官が起訴を見送る「起訴猶予」処分となったりする可能性は高くなります。しかし、少額でも常習性があれば、厳しい処分が下されることもあります。

Q. 窃盗事件の捜査で家宅捜索は必ず実施されますか?

いいえ、必ず実施されるわけではありません。家宅捜索は、盗品や犯行に使った道具などが自宅にあると疑われる場合に、裁判官の令状に基づいて行われる強制捜査です。店舗での万引きで商品がその場で回収されているケースや、被疑者が犯行を認め証拠が揃っているケースでは、家宅捜索の必要がないと判断されることも多いです。捜査に協力的な姿勢を示すことが、家宅捜索を避ける一つの要因になります。

Q. 在宅事件でも職場に連絡がいく可能性はありますか?

原則として、私生活上の窃盗であり、職場に関係する証拠がない限り、警察から職場へ連絡がいくことは稀です。警察には捜査上の秘密を守る義務があり、不必要に被疑者のプライバシーを侵害することは避ける傾向にあります。ただし、職場内で起きた窃盗事件の場合や、被疑者が公務員である場合、あるいは警察からの連絡を無視し続けて所在不明になった場合など、例外的に職場へ連絡がいく可能性はあります。

まとめ:窃盗事件の捜査に直面したら、まず弁護士へ相談を

この記事では、窃盗事件の捜査がどのように始まり、逮捕される「身柄事件」とされない「在宅事件」で手続きがどう進むのかを解説しました。捜査のきっかけは被害届や防犯カメラなど様々で、一度始まると厳格な手続きに沿って進められます。特に、取り調べで作成される供述調書は、その後の処分を左右する重要な証拠となるため慎重な対応が求められます。警察から連絡が来たり、ご家族が逮捕されたりした場合は、一人で抱え込まず、できる限り早く弁護士に相談することが重要です。早期の弁護活動と被害者との示談交渉が、不起訴処分を獲得し、社会生活への影響を最小限に抑えるための最善策となります。

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