自己破産の同時廃止、免責不許可事由があっても可能?条件や管財事件との違いを解説
自己破産を検討する際、過去の浪費やギャンブルが「免責不許可事由」に該当し、手続きが複雑になるのではないかと不安に思う方は少なくありません。特に、費用や期間を抑えられる「同時廃止」を希望していても、免責自体が許可されないのではと心配になるでしょう。しかし、免責不許可事由があるからといって、必ずしも同時廃止や免責が不可能になるわけではありません。この記事では、免責不許可事由が同時廃止に与える影響と、そのような状況でも最終的に免責許可を得るための条件や具体的な対処法について解説します。
自己破産における同時廃止と免責不許可事由の基本
同時廃止とは?手続きの概要と目的
自己破産には、同時廃止と管財事件という2つの主要な手続きがあります。同時廃止とは、破産手続開始の決定と同時に、その手続きを終了させる簡易な形式です。
本来の破産手続き(管財事件)では、裁判所が選任した破産管財人が債務者の財産を現金化し、債権者へ公平に分配します。しかし、債務者に分配すべきめぼしい財産がほとんどない場合、財産を現金化したり配当したりする実益がありません。このようなケースで、高額な管財人の費用を債務者に負担させることは、経済的再生を目的とする自己破産制度の趣旨に反します。
そのため、手続き費用すら賄えないほど財産が少ないことが明らかな場合には、破産管財人を選任せず、手続きを簡略化して迅速に終了させるのが同時廃止です。個人の自己破産申立ての多くが、この同時廃止として処理されています。
同時廃止が認められるには、各裁判所が定める基準を満たす必要があります。一般的には、現金がおおむね33万円未満であり、かつ不動産や預貯金といった個別の資産評価額が20万円未満であることが目安とされています。
同時廃止の主な目的と利点は以下の通りです。
- 資産のない債務者の迅速な経済的更生を支援する
- 破産管財人の調査や債権者集会などの複雑な工程が省略される
- 手続きにかかる期間が短縮される(通常3〜4ヶ月程度)
- 裁判所に支払う予納金などの費用が大幅に抑えられる
免責不許可事由とは?借金の免責を妨げる行為
自己破産における最終目的は、裁判所から免責許可決定を得ることです。免責とは、残った借金の返済義務を法的に免除してもらう制度を指します。しかし、自己破産を申し立てれば誰でも無条件に借金がゼロになるわけではありません。
破産法は、債務者に著しく不誠実な行為があった場合に免責を認めないとする規定を設けており、これを免責不許可事由と呼びます。これは、債権者に大きな不利益を与える免責という強力な効果に見合うよう、債務者に誠実な対応を求めるために定められています。
- 浪費やギャンブルによって著しく財産を減らしたり、過大な借金をしたりする行為
- 財産を隠したり、不当に価値を下げたり、他人へ譲渡したりする行為
- 特定の債権者にだけ優先的に返済する行為(偏頗弁済)
- 破産を前提として、返済する意思がないのにお金を借りるなどの詐術行為
- 裁判所や破産管財人の調査に協力せず、虚偽の説明をするなどの非協力的な態度
これらの事由に該当する場合、原則として免責は許可されません。ただし、実務上は、免責不許可事由があっても裁判所の判断で免責が認められる裁量免責という仕組みがあり、多くのケースがこの制度によって救済されています。
なぜ免責不許可事由があると同時廃止になりにくいのか
免責不許可事由に該当する事情がある場合、手続きが同時廃止になる可能性は著しく低くなります。なぜなら、同時廃止は破産管財人による調査が不要なほど、資産状況や負債の原因が明確であることを前提とした簡易な手続きだからです。
債務者に浪費やギャンブル、財産隠しといった免責不許可事由の疑いがある場合、裁判所は書面審査だけでは免責を許可してよいか判断できません。その行為の経緯や実態、現在の生活態度などを詳しく調査する必要が生じます。
この詳細な調査を行うのが、第三者の専門家である破産管財人の役割です。裁判所が破産管財人を選任する必要があると判断した時点で、手続きは自動的に管財事件へと移行し、同時廃止ではなくなります。
また、免責不許可事由があるケースで免責を認めるためには、裁量免責を適用できるかどうかの判断材料を集めなければなりません。破産管財人は、債務者が真に反省しているか、家計を適切に管理できているかなどを数ヶ月にわたって監督します。このような調査・監督プロセスは、開始と同時に手続きを終える同時廃止の枠組みでは実施不可能です。
したがって、免責不許可事由の存在は、裁判所に「調査の必要がある」と判断させる要因となり、手続きの公正さを担保するために管財事件として扱われるのが原則となります。
同時廃止の判断に影響する主要な免責不許可事由
浪費やギャンブルによる著しい財産の減少
浪費やギャンブルは、免責不許可事由の中でも最も典型的な例です。これには、収入に見合わない高額な買い物や飲食、投機的な取引なども含まれます。
- パチンコ、競馬、競艇などの公営競技
- オンラインカジノやソーシャルゲームへの過度な課金
- 高級ブランド品の購入や過剰な遊興費
- 株式投資、FX(外国為替証拠金取引)、暗号資産取引などによる損失
これらの行為が問題となるのは、それが原因で「著しく財産を減少させた」または「過大な債務を負担した」と評価される場合です。単にギャンブルの経験があるというだけでは、直ちに免責不許可事由にはなりません。借り入れをしてまでギャンブル等を続け、返済不能に陥ったようなケースが該当します。
借金の大部分がこれらの理由による場合、裁判所は債務者の更生の度合いを見極めるため、破産管財人による免責調査や監督が必要と判断します。これにより手続きは管財事件となり、数ヶ月間の家計収支の報告などが求められます。
もし浪費やギャンブルの事実を隠して申し立て、後から発覚した場合は、裁判所の信頼を失い、裁量免責すら認められなくなるリスクが非常に高まります。不利な事情であっても、正直に申告し、反省の態度を示すことが最終的な免責への近道です。
特定の債権者のみを優遇する返済(偏頗弁済)
偏頗弁済(へんぱべんさい)とは、支払不能状態にある債務者が、複数の債権者のうち特定の一人にだけ返済する行為です。自己破産手続きは、すべての債権者を平等に扱う債権者平等の原則に基づいており、偏頗弁済はこの原則に真っ向から反するため、免責不許可事由とされています。
特に、親族や友人、勤務先など、個人的な関係性から「迷惑をかけたくない」という思いで返済してしまうケースが多く見られます。しかし、たとえ善意からであっても、この行為は他の債権者の利益を害するものとみなされます。
偏頗弁済が行われた場合、破産管財人はその効力を否定し、支払われた金銭を破産財団に取り戻す否認権という強力な権限を持っています。この否認権を行使する必要があるため、偏頗弁済が発覚した事案は、ほぼ確実に管財事件として扱われます。
自己破産の手続きを弁護士に依頼した後は、いかなる債権者に対しても返済を再開してはいけません。もし誤って返済してしまった場合は、隠さずに速やかに代理人へ報告し、その指示に従うことが重要です。
財産を隠したり不当に処分したりする行為
自己破産手続きにおいて、財産を隠したり、その価値を不当に減少させたりする行為は、債権者を害する最も悪質な行為とみなされます。これは財産隠匿や不当な財産処分と呼ばれ、重大な免責不許可事由です。
- 預貯金を現金で引き出し、自宅で保管する(タンス預金)
- 不動産や自動車の名義を、破産申立て直前に家族や知人に変更する
- 解約返戻金のある生命保険の存在を申告しない
- 離婚に伴い、不相当に多額の財産分与を行う
財産隠しの疑いがある場合、同時廃止が認められることはまずありません。破産管財人が選任され、過去数年分の預金通帳の履歴や郵便物などを徹底的に調査します。もし意図的な財産隠しが発覚すれば、免責が不許可になるだけでなく、詐欺破産罪という刑事罰(10年以下の懲役もしくは1,000万円以下の罰金など)の対象となる可能性もあります。
故意の隠蔽はもちろん、うっかり申告を忘れていたという過失であっても、裁判所に不信感を与え、手続きを不利に進める原因となります。すべての資産を正直に開示することが、確実な免責を得るための絶対条件です。
裁判所への虚偽説明や手続きへの非協力的な態度
自己破産は、債務者の誠実な申告と協力を前提とした法的手続きです。そのため、裁判所や破産管財人に対して虚偽の説明をしたり、正当な理由なく協力を拒んだりする行為は、説明義務違反として免責不許可事由に定められています。
- 借金の理由について嘘をつく(例:ギャンブルが原因なのに生活費と偽る)
- 債権者の一部を意図的に債権者一覧から除外する
- 収入や財産を少なく申告する
- 破産管財人からの質問に曖昧な回答を繰り返す
- 書類の提出期限を何度も破る、または連絡を絶つ
- 正当な理由なく、免責審尋や債権者集会を欠席する
同時廃止は、申立書類の記載が真実であることを信頼して進められます。そのため、書類に虚偽があったり、裁判所からの指示に誠実に応じなかったりすると、信頼性が失われ、実態調査のために管財事件へと移行します。
たとえ自分に不利な事実があっても、それを正直に申告し、真摯に手続きに協力する姿勢を見せることが、最終的に裁量免責を得るための鍵となります。不誠実な態度は、同時廃止の機会を失うだけでなく、免責そのものを危うくする危険な行為です。
免責不許可事由があっても同時廃止が認められるケース
裁量免責とは?裁判所が総合的に判断する仕組み
免責不許可事由に該当する行為があった場合でも、必ずしも免責が不許可になるわけではありません。破産法は、免責不許可事由があっても、「破産手続開始の決定に至った経緯その他一切の事情を考慮して免責を許可することが相当であると認めるとき」は、裁判所の裁量によって免責を許可できると定めています。これを裁量免責といいます。
この制度の背景には、自己破産制度の目的が、過ちを犯した債務者を罰することではなく、経済生活の再生の機会を与えることにあるという考え方があります。過去の行為のみで機械的に判断するのではなく、債務者の反省の度合いや現在の生活状況などを総合的に評価し、再出発のチャンスを与えるべきかを裁判所が判断するのです。
実務上、自己破産を申し立てる人の多くは何らかの免責不許可事由を抱えていますが、実際に免責が不許可となるケースはごくわずかです。これは、ほとんどの事案で裁量免責が適切に運用されていることを示しています。したがって、免責不許可事由があるからと諦めず、誠実に手続きに臨むことが極めて重要です。
裁判所が裁量免責を判断する際の考慮要素
裁判所が裁量免責を認めるかどうかは、「一切の事情」を総合的に考慮して判断されます。具体的には、以下のような要素が重視されます。
- 免責不許可事由の悪質性や重大さ: 浪費やギャンブルが借金全体に占める割合や、行為が行われた時期などが考慮されます。
- 破産手続きへの協力姿勢: 裁判所や破産管財人に対し、正直に情報を提供し、指示に誠実に応じているかどうかが問われます。
- 債務者の反省の度合い: 反省文の提出などを通じて、自らの行為を深く悔い、再発防止に努めている姿勢が示されているか評価されます。
- 現在の生活状況と更生の可能性: 安定した収入を得ているか、家計管理が適切に行われているかなど、経済的に再生する見込みが審査されます。
- 債権者が受ける不利益の程度: 免責によって債権者が被る不利益と、債務者の更生の必要性が比較衡量されます。
これらの要素を多角的に検討し、裁判官が「この債務者には再出発の機会を与えるのが相当だ」と判断したときに、裁量免責が許可されます。
浪費等の程度が軽微で、財産状況が明確な場合
免責不許可事由がある場合、原則として管財事件となりますが、例外的に同時廃止が認められるケースがあります。それは、免責不許可事由の内容が極めて軽微であり、かつ財産状況に一切の疑いがない場合です。
例えば、借金総額のうち浪費やギャンブルによる部分がごく一部で、すでに行為をやめてから長期間が経過しているようなケースがこれに該当します。このような場合、多額の費用をかけて管財人による調査を行うまでもないと裁判所が判断することがあります。
ただし、この判断を得るためには、財産状況が完全にクリーンであることが絶対条件です。 過去数年分の預金通帳をすべて提出し、不自然なお金の動きが一切ないことを証明しなければなりません。少しでも資産隠しの疑念を持たれれば、即座に管財事件へと移行します。
弁護士が代理人となり、浪費等の軽微性や現在の生活の健全性を詳細な報告書で説明することで、裁判所を説得し、同時廃止の決定を引き出せる可能性が高まります。
申立人の反省と協力姿勢が示されている場合
裁判所が裁量免責を判断する上で、申立人の真摯な反省と手続きへの協力的な姿勢は、最も重視される要素の一つです。たとえ過去に過ちがあったとしても、それを深く反省し、生活を立て直そうとする真剣な態度が伝われば、裁判所も更生の機会を与えようと判断しやすくなります。
反省の意を示す具体的な方法として、反省文の提出が挙げられます。反省文では、なぜ借金を重ねてしまったのかという原因の分析、債権者や家族にかけた迷惑への謝罪、そして二度と同じ過ちを繰り返さないための具体的な再発防止策を、自分の言葉で誠実に綴ることが求められます。
また、協力姿勢とは、弁護士や裁判所から求められた資料を迅速に提出したり、質問に対して正直に回答したりすることを指します。自分に不利なことであっても包み隠さず話す誠実な態度は、裁判官や破産管財人からの信頼を得る上で不可欠です。
このような反省と協力の姿勢が申立書類や面談を通じて明確に示されれば、管財人による監督がなくとも更生は可能であると判断され、同時廃止の枠内で裁量免責が認められる可能性も出てきます。
申立代理人による「意見書」が裁判所の判断を後押しする
同時廃止か管財事件かを振り分ける際、申立代理人である弁護士が作成する意見書は非常に重要な役割を果たします。弁護士は、法律の専門家として、事前に債務者の資産状況や免責不許可事由の有無を調査し、法的な見解をまとめます。
意見書の中で、弁護士が「本件は資産状況が明確であり、免責不許可事由も軽微であるため、破産管財人を選任するまでもなく同時廃止が相当である」という意見を表明することで、裁判所はその判断を尊重しやすくなります。
特に、軽微な問題がある事案でも、弁護士が債務者に対して適切な生活指導を行い、更生の見込みが高いことを具体的に示すことで、裁判所は安心して同時廃止の決定を下すことができます。このように、専門家による客観的な評価と保証が、手続きの方向性を大きく左右するのです。
同時廃止が認められない場合の手続き(管財事件)
管財事件とは?破産管財人が選任される手続きの概要
管財事件とは、裁判所が破産管財人を選任し、破産者の財産調査、管理、換価、配当などを行う、破産法の原則的な手続きです。同時廃止が認められないすべての事案が、この管財事件として扱われます。
破産管財人には、中立的な立場の弁護士が選任されます。手続きが開始されると、破産者が所有する一定額以上の財産の管理処分権はすべて破産管財人に移ります。管財人はこれらの財産を現金化して破産財団を形成し、債権者へ法律に従って公平に配当します。ただし、生活に必要な最低限の財産(99万円以下の現金や家財道具など)は自由財産として手元に残すことが認められています。
また、破産管財人のもう一つの重要な役割が免責調査です。管財人は破産者と面談し、借金の経緯や免責不許可事由の有無を調査します。調査結果に基づき、裁判所に対して免責を許可すべきかどうかの意見書を提出し、裁判所はこの意見を重視して最終判断を下します。
管財事件は、同時廃止に比べて費用や時間がかかりますが、複雑な事案を法的に正しく整理し、確実な再スタートを切るために不可欠な手続きです。
同時廃止から管財事件へ移行する主な理由
当初は同時廃止を想定していても、裁判所の判断で管財事件に移行することがあります。その主な理由は以下の通りです。
- 一定額以上の資産がある場合: 20万円以上の価値がある資産(不動産、自動車、生命保険解約返戻金など)を所有しているケース。
- 免責不許可事由の調査が必要な場合: 浪費、ギャンブル、偏頗弁済、財産隠しなどの疑いがあり、事実関係の調査や生活態度の監督が必要と判断されたケース。
- 個人事業主や法人代表者である場合: 事業と個人の資産・負債が混在しており、専門家による整理が必要なケース。
- 手続きの公平性を確保する必要がある場合: 負債総額が極めて大きい、債権者の数が多いなど、社会的な影響を考慮し、第三者による透明性の高い手続きが求められるケース。
- 2回目以降の自己破産である場合: 前回の破産からの更生状況をより厳格に審査する必要があるケース。
管財事件の手続きの流れと必要な期間の目安
管財事件は同時廃止よりも工程が多く、完了までに半年から1年程度の期間を要するのが一般的です。大まかな流れは以下の通りです。
- 裁判所が破産手続開始を決定し、同時に破産管財人を選任します。
- 破産者は速やかに破産管財人の事務所を訪れ、面談を行います。
- 管財人が財産の調査・換価を進めるとともに、免責に関する調査(家計簿のチェックなど)を行います。
- 申立てから約3ヶ月後に、裁判所で第1回債権者集会が開催され、管財人が調査結果を報告します。
- 財産の換価や調査が完了するまで、数ヶ月おきに債権者集会が続行されます。
- 換価・配当が終了すると破産手続きは終結し、最終的に裁判所が免責許可・不許可を決定します。
手続き期間中は、郵便物が管財人に転送されたり、裁判所の許可なく転居や長期旅行ができなかったりといった制約が生じます。
同時廃止と比較した費用面の負担(予納金など)
管財事件は、同時廃止に比べて費用負担が大幅に大きくなります。これは、破産管財人の報酬等に充てられる予納金を裁判所に納める必要があるためです。
手続きの種類によって、費用の目安は大きく異なります。
| 手続きの種類 | 予納金 | 特徴 |
|---|---|---|
| 同時廃止事件 | 約1.5万円~ | 裁判所への実費(官報掲載費用など)のみです。 |
| 少額管財事件 | 20万円~ | 弁護士が代理人となることで適用される、比較的簡易な管財事件です。 |
| 通常管財事件 | 50万円~ | 複雑な事案や、債務者本人が申し立てた場合などに適用されます。 |
経済的に困窮している債務者が予納金を準備できるよう、多くの場合は弁護士への依頼後に債権者への返済を停止し、その間に分割で費用を積み立てる方法が取られます。また、生活保護受給者など一定の要件を満たす場合は、法テラスの立替制度を利用できることもあります。
免責許可を得るために申立人が実践すべきこと
専門家(弁護士・司法書士)へ正直に事情を相談する重要性
自己破産を成功させるための最も重要な第一歩は、依頼する弁護士や司法書士にすべての事実を正直に話すことです。浪費やギャンブル、特定の知人への返済など、自分に不利な事実を隠してしまうと、後でより深刻な問題を引き起こします。
専門家はあなたの味方です。不利な事情があったとしても、それを法的にどのように説明すれば裁量免責を得られるかを一緒に考えてくれます。しかし、事実を隠したまま手続きを進め、後から裁判所や破産管財人の調査で発覚した場合、専門家も擁護しきれなくなります。
裁判所からは「専門家さえも欺こうとした」とみなされ、本来なら得られたはずの裁量免責の機会を失いかねません。特に財産に関する情報は、どんなに些細なものでもすべて開示してください。現在の破産実務では、隠した財産はほぼ確実に見つかります。
正直に話すことは、信頼関係を築き、最適な解決策を見出すための絶対条件です。専門家はあなたを責めるのではなく、法的に救済するためにいます。ありのままを伝える勇気が、再スタートへの確実な道を開きます。
裁判所への協力的な姿勢を貫き、誠実に対応する
自己破産手続きにおいて、裁判所は申立人の誠実さを厳しく見ています。手続きに対する協力的な姿勢は、裁量免責を得るための決定的な要素となります。
- 期限の厳守: 裁判所や代理人から指示された書類は、必ず期限内に提出します。遅れる場合は事前に連絡を入れ、理由を説明します。
- 正直な回答: 裁判官や破産管財人からの質問には、曖昧な答えや嘘を避け、正直かつ明確に答えます。記憶が不確かな場合は、その旨を正直に伝えます。
- 指示への服従: 管財事件になった場合、破産管財人からの調査協力の要請や指示には、誠実に従います。
- 謙虚な態度: 免責審尋や面談の場では、礼儀正しい態度を心がけ、人生をやり直させてもらうという謙虚な気持ちで臨みます。
破産手続きは、債権者の多大な犠牲の上に成り立つ特別な救済制度です。その重みを理解し、手続きの最後まで真摯な態度を貫くことが、裁判所の信頼を得て、免責許可を確実にするための最善の方法です。
反省文の提出など、反省の意を具体的に示す方法
浪費やギャンブルなどの免責不許可事由がある場合、裁量免責を得るためには、具体的な形で反省の意を示すことが極めて重要です。その最も有効な手段が反省文の提出です。
心を動かす反省文には、以下の要素を盛り込むことが求められます。
- 原因の自己分析: なぜ借金を重ねてしまったのか、自身の性格的な弱さや考え方の甘さを正直に分析します。
- 他者への影響: 自身の行為が債権者や家族に与えた迷惑や損害について、相手の立場に立って言及し、謝罪します。
- 具体的な再発防止策: 「二度としません」という誓いだけでなく、ギャンブル依存症の自助グループに参加する、家計管理を家族に依頼するなど、具体的な行動計画を示します。
- 将来への決意: 今後の仕事や生活に対する前向きな計画を述べ、社会に貢献できる人間として再出発する決意を伝えます。
反省文は、パソコンではなく手書きで丁寧に作成することで、より誠実な気持ちが伝わりやすくなります。代理人の助言を受けながら、自身の言葉で嘘偽りなく作成した反省文は、免責不許可事由という不利な状況を乗り越えるための強力な武器となります。
破産申立て後は生活態度を改め、手続きに真摯に臨む
自己破産の申立て後は、免責許可が確定するまでの間、生活態度そのものが裁判所の審査対象となります。この期間中に以前と同様の金銭感覚で生活していると、反省の意が本物ではないと判断されかねません。
まず、徹底した家計管理が求められます。毎日の収支を家計簿に記録し、無駄な支出を一切なくす努力が必要です。特に管財事件では、この家計簿を毎月破産管財人に提出し、厳しくチェックされます。
次に、借金の原因となった悪習を断ち切るための具体的な行動を継続します。ギャンブルが原因なら、関連施設に近づかないことはもちろん、専門のカウンセリングを受けるなど、第三者にもわかる形で更生の努力を示します。
また、仕事に真摯に取り組む姿勢も重要です。安定した収入を得て経済的に自立しようと努力する姿は、更生の意欲を示す最も説得力のある証拠となります。この期間中に新たなトラブルを起こさず、法を遵守した規則正しい生活を送ることが、社会人としての信頼を回復する第一歩です。
申立てから免責確定までの期間は、新しい人生を始めるための準備期間です。この試練を真摯な態度で乗り越えることが、確実な免責許可へと繋がります。
自己判断は禁物!申立て直前にやってはいけない行動例
自己破産の申立てを考え始めると、不安から誤った行動に出てしまうことがあります。しかし、良かれと思って取った行動が、免責不許可事由に該当し、手続きを頓挫させる原因になりかねません。特に以下の行為は絶対に避けるべきです。
- 特定の債権者への返済(偏頗弁済): 親族や勤務先など、一部の相手にだけ優先的に返済してはいけません。
- 財産の名義変更や隠匿(財産隠し): 処分を逃れるために不動産や自動車の名義を変えたり、預金を引き出して隠したりする行為は厳禁です。
- 新たな借り入れやクレジットカードの換金行為: 返済不能とわかっていながら新たにお金を借りたり、クレジットカードで商品を購入して現金化したりする行為は詐欺とみなされる可能性があります。
これらの行動は、手続きを複雑化させ、費用を増大させるだけでなく、最悪の場合は免責が許可されないという結果を招きます。少しでも判断に迷うことがあれば、必ず自己判断せず、事前に弁護士へ相談してください。
免責不許可事由と同時廃止に関するよくある質問
ギャンブルや浪費が原因でも、同時廃止になる可能性はありますか?
はい、可能性はゼロではありませんが、極めて限定的なケースに限られます。
同時廃止が認められるには、ギャンブルや浪費が借金総額に占める割合がごくわずかであること、その行為がかなり過去のもので現在は完全に断ち切れていること、そして資産状況に一切の疑いがないことなど、複数の厳しい条件を満たす必要があります。
また、代理人弁護士が債務者の更生状況を詳細に報告し、裁判所を説得できるだけの客観的な証拠を揃えることが不可欠です。借金の主な原因がギャンブルや浪費である場合は、原則として管財事件となり、破産管財人の監督下で更生の姿勢を示す必要があるとお考えください。
同時廃止にならなかったら、自己破産は失敗するのですか?
いいえ、まったく失敗ではありません。同時廃止にならなかった場合、手続きは管財事件という形式に移行するだけで、免責を得る道が閉ざされたわけではありません。
むしろ、管財事件は、免責不許可事由がある債務者が、破産管財人の監督のもとで生活態度を改め、反省の意を示すことで、裁量免責を得るための正式なプロセスと位置づけられています。
デメリットとしては、手続き期間が長くなり(半年~1年)、予納金(最低20万円~)の負担が発生しますが、誠実に手続きに協力すれば、最終的に免責が許可される可能性は非常に高いです。同時廃止にならなくても悲観せず、管財人の指示に従って真摯に対応することが重要です。
弁護士に依頼すれば、同時廃止になる可能性は高まりますか?
はい、弁護士に依頼することで同時廃止になる可能性は格段に高まります。
- 裁判所の基準を熟知している: 弁護士は、裁判所が同時廃止を認めるための要件を理解しており、それに沿った的確な申立書を作成できます。
- 裁判所の信頼を得やすい: 弁護士が事前に資産状況や免責に関する事情を調査し、問題がないことを意見書で示すことで、裁判所は安心して簡易な手続きを選択できます。
- 少額管財の適用: 万が一管財事件になった場合でも、弁護士が代理人であれば、予納金が低額で済む「少額管財」という制度を利用できるメリットがあります。
債務者本人が申し立てた場合、書類の不備や説明不足から、ほぼ全件が管財事件として扱われるのが実情です。 費用を抑え、スムーズに手続きを進めるためには、弁護士への依頼が事実上必須と言えます。
手続き開始から免責許可決定までのスケジュール感を教えてください。
手続きにかかる期間は、同時廃止と管財事件で大きく異なります。
- 同時廃止の場合: 裁判所への申立てから免責許可決定が法的に確定するまで、約3ヶ月から4ヶ月が目安です。手続きが非常にスピーディーに進みます。
- 管財事件の場合: 申立てから免責確定まで、約半年から1年程度かかるのが一般的です。財産の換価や債権者集会の回数によって期間は変動します。
なお、上記はいずれも裁判所に申し立ててからの期間です。 実際に弁護士に相談してから、必要書類の収集や費用の積立てを行い、申立てに至るまでに、通常数ヶ月の準備期間が別途必要となります。全体的なスケジュールについては、依頼する専門家とよく相談し、見通しを立てることが大切です。
まとめ:免責不許可事由があっても誠実な対応で再スタートは可能
この記事では、免責不許可事由が自己破産の同時廃止手続きに与える影響と、その対処法を解説しました。浪費やギャンブルなどの免責不許可事由がある場合、原則として調査が必要な管財事件となりますが、事由が軽微であれば同時廃止が認められる可能性も残されています。たとえ管財事件に移行したとしても、それは破産失敗を意味するものではなく、裁量免責を得るための正式なプロセスです。最も重要なのは、弁護士にすべての事実を正直に伝え、裁判所の手続きに誠実に協力する姿勢を貫くことです。不利な状況を乗り越え、確実な経済的再生を果たすためにも、まずは専門家に相談することから始めましょう。

