法務

新生ホームサービスの行政処分|特商法違反3つの手口と対策

経営リスクナビ編集部

訪問販売における特定商取引法(特商法)の遵守は、企業の信頼性を担保する上で極めて重要です。新生ホームサービスが受けた重い行政処分は、同業他社にとって自社のコンプライアンス体制を見直す大きな契機となるでしょう。しかし、具体的にどのような行為が重大な違反と判断されたのか、その詳細を把握するのは簡単ではありません。この記事では、新生ホームサービスが業務停止命令に至った3つの違反行為を具体的に解説し、訪問販売事業者が学ぶべき注意点を明らかにします。

新生ホームサービスへの行政処分概要

処分の根拠と対象事業者

消費者庁は、特定商取引に関する法律(特商法)に基づき、訪問販売事業者である新生ホームサービス株式会社および株式会社新生ビジネスパートナーズに対して行政処分を下しました。これは、両社が連携して行う外壁塗装工事の訪問販売において、法律に違反する不当な勧誘行為が多数確認されたためです。両社は、消費者の自宅を訪問し有償の役務提供契約を締結する、特商法上の「訪問販売」を行っていました。

具体的には、勧誘目的を隠して消費者に接触したり、断る意思を示した消費者に対して執拗に勧誘を続けたりといった行為が問題視されました。また、消費者安全法に基づく注意喚起も同時に行われ、消費者被害の拡大防止のため、新生ホームサービスと同様の営業手法をとる以下の3社についても名称が公表されています。

同様の営業手法をとるとして公表された事業者
  • 日本eリモデル株式会社
  • 株式会社みらい住宅開発紀行
  • ウィズライフ株式会社

業務停止命令の期間と対象業務

両社には、令和4年6月30日から令和5年3月29日までの9か月間にわたる業務停止命令が下されました。これは、不適切な勧誘が繰り返されていたことから、再発防止と消費者被害の拡大を防ぐために長期間の停止が必要と判断されたためです。停止の対象となったのは、訪問販売に関する一部の業務です。

業務停止命令の対象業務
  • 役務提供契約の締結について勧誘すること
  • 契約の申込みを受けること
  • 契約を締結すること

この命令により、両社は対象期間中、訪問販売による新規の営業活動が一切できなくなりました。さらに、処分逃れのために別会社を設立して同様の事業を継続することを防ぐため、両社の代表者個人に対しても、同期間中の同種業務の新規開始や役員就任を禁じる業務禁止命令が出されています。

同時に出された指示処分の内容

業務停止命令に加え、違反行為の原因究明と再発防止策の策定を命じる指示処分も同時に出されました。これは、業務停止期間が終了した後も適法な営業活動が行えるよう、社内体制を根本から見直させることを目的としています。

主な指示処分の内容
  • 違反行為の発生原因を調査・分析し、検証すること
  • 返金や解約の問い合わせに適切に対応できるコンプライアンス体制を構築すること
  • 策定した再発防止策とコンプライアンス体制を全役員・従業員に周知徹底すること
  • 過去の全顧客に対し、行政処分の内容と違反行為の詳細を文書で通知すること
  • 上記措置の実施状況を消費者庁長官に報告すること

指示処分は、単に業務を停止させるだけでなく、企業の組織風土や管理体制の抜本的な改善を求めるものであり、事業継続の可否を左右する重い課題といえます。

業務停止命令に至った3つの違反行為

違反行為1:勧誘目的の不明示(特商法第3条)

事業者は、訪問販売を行う際、勧誘に先立って①事業者名、②契約締結を勧誘する目的であること、③商品やサービスの種類を消費者に告げなければなりません。これは、消費者が勧誘を受けるか否かを冷静に判断する機会を保障するため、特商法第3条で定められた義務です。

本事例では、従業員が「近所で工事をしているので挨拶に回っている」とだけ告げ、外壁塗装工事の契約を勧誘するという真の目的を意図的に隠していました。挨拶や無料点検を装い、消費者の警戒心を解いてからセールストークに入る手法は、不意打ち的であり悪質と判断されました。消費者は断る準備ができていないまま長時間の勧誘に引き込まれるリスクがあり、法律の基本原則に反する行為として厳しく処分されました。

違反行為2:契約に関する不実告知(特商法第6条)

事業者が契約に関する重要事項について、事実と異なる説明をすることを「不実告知」といい、特商法第6条で禁止されています。消費者は事業者の提供する情報に基づいて契約を判断するため、虚偽の情報で判断を誤らせる行為は許されません。

本事例では、営業担当者が「この金額が限界でこれ以上の値引きはできない」と説明しましたが、実際にはさらに値引きする余地がありました。また、「近所の人には金額を伏せてほしい」と伝えることで、その消費者だけが特別な優遇を受けているかのような虚偽の印象を与え、契約を急がせていました。このように、事実に基づかない説明で消費者に「今契約しなければ損をする」と誤認させ、正常な判断を妨げる行為が、行政処分の決定的な要因となりました。

違反行為3:迷惑を覚える勧誘(特商法第6条)

消費者が契約を締結しない意思を明確に示したにもかかわらず、勧誘を継続したり、後日改めて勧誘したりすることは、「迷惑勧誘」として特商法第6条で禁止されています。消費者の平穏な生活を脅かし、不本意な契約を強いることにつながるためです。

本事例では、消費者が「外壁塗装の意思はない」「興味がない」と繰り返し断っているにもかかわらず、従業員は一方的に説明を続け、引き下がりませんでした。「外壁の劣化が健康被害につながる」などと過度に不安を煽り、消費者が根負けするまで勧誘を続ける姿勢は、迷惑勧誘の典型例です。消費者の拒絶の意思を無視し、心理的な負担をかけて契約を迫る行為は、法令遵守の精神を著しく欠くものとして、重い処分の理由となりました。

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本事例から学ぶ訪問販売の注意点

勧誘目的と身元の事前明示を徹底する

訪問販売事業者は、消費者と接触する最初の段階で、自社の身元と勧誘目的を明確に伝えるプロセスを徹底しなければなりません。これは、消費者が不当な勧誘から身を守り、話を聞くかどうかを冷静に判断する権利を保障するための、法律上の基本的な義務です。

「点検」や「近隣への挨拶」を口実にする手法は、その時点で法令違反となるリスクがあります。営業現場では目的を曖昧にしがちですが、発覚時のリスクを考慮すれば、最初から「外壁塗装の契約をお勧めするために訪問しました」とはっきり告げるべきです。正しい第一声のスクリプトを作成し、ロールプレイング等を通じて全担当者が実践できるよう訓練することが不可欠です。

事実に基づかない説明(不実告知)を避ける

営業活動において、契約を有利に進めるための誇張や虚偽の説明(不実告知)は絶対に避け、事実に基づく正確な情報提供に努める必要があります。不実告知は行政処分の対象となるだけでなく、消費者からの契約取り消しの原因にもなります。

これを防ぐには、商品や価格に関する客観的な根拠資料を整備し、担当者がその範囲を超えた説明をしないよう指導することが重要です。また、営業ツールやパンフレットの記載内容に誤解を招く表現がないか、法務部門などが定期的にチェックする体制も求められます。誠実な情報提供を徹底することが、法的リスクを回避し、企業の信用を構築する上で不可欠です。

顧客の断りの意思を尊重する体制づくり

消費者が「いりません」「考えていません」といった拒絶の意思を示した場合には、直ちに勧誘を中止し、速やかに退去するというルールを組織全体で徹底すべきです。消費者の断りの言葉を「単なる遠慮」などと勝手に解釈し、勧誘を続ける行為は、特商法が禁じる「迷惑勧誘」に直結します。

企業としては、どのような言葉が出たら勧誘を終了するかを具体的に定めたガイドラインを作成することが有効です。また、断られた顧客の情報を社内で共有し、別の担当者が再度訪問してしまう事態を防ぐシステム構築も重要です。顧客の意思決定を尊重する姿勢が、消費者トラブルを未然に防ぎます。

営業トークの定期的なコンプライアンス監査

本社が作成したマニュアルが現場で遵守されているかを確認するため、営業担当者のトーク内容を定期的に監査する仕組みが不可欠です。担当者が密室状態で行う逸脱した勧誘は、企業全体を行政処分のリスクに晒します。

具体的な監査手法としては、商談内容の録音を義務付け、管理部門がランダムにチェックする方法が有効です。また、契約後の顧客に電話でヒアリングを行い、営業担当者の説明や態度に問題がなかったかを確認することも、不適切な営業活動の早期発見につながります。問題が発見された場合は、再教育や社内処分などの厳格な対応が求められます。

「営業個人の問題」で終わらせない組織的責任の視点

営業担当者の法令違反が発覚した際、それを個人の資質の問題として処理するのではなく、組織全体の管理体制の欠陥として捉える視点が重要です。行政処分は企業に対して下されるものであり、過度なノルマ設定や不十分な教育体制など、違反を誘発する構造的な要因が企業側にあるとみなされるからです。経営陣が主導して、コンプライアンスを遵守したプロセスが評価される人事制度を導入するなど、不正が起きにくい組織風土を醸成しなければなりません。

行政処分がもたらす事業信用の失墜と二次的リスク

業務停止命令などの行政処分は、単に一定期間の営業が停止するだけでなく、企業の社会的な信用を根底から破壊する深刻な影響を及ぼします。処分事実は公表され、インターネット上に半永久的に記録として残るため、事業の継続を困難にする様々な二次的リスクが発生します。

行政処分による二次的リスクの例
  • 新規顧客の獲得が極めて困難になる
  • 既存顧客からの契約解除や問い合わせが急増する
  • 取引先からの取引停止や契約条件の見直しを求められる
  • 金融機関からの融資が停止されたり、引き揚げられたりする
  • 優秀な従業員が離職し、人材確保が困難になる

行政処分は、事実上の企業倒産につながりかねない、極めて重い制裁であることを認識すべきです。

よくある質問

行政処分後、会社の営業は現在どうなっていますか?

行政処分を受けた企業は、命令で指定された期間中、対象業務を一切行うことができません。新生ホームサービスの事例では9か月間の業務停止命令が下され、その期間中、訪問販売による新規の勧誘・契約は全面的に禁止されました。処分期間が終了した後の営業状況については、訪問販売営業や工事の受注・施工は行っていないとされています。一度このような重い処分を受けると、社会的な信用が失墜するため、以前と同様の事業規模で営業を再開することは極めて困難となるのが実情です。行政処分の影響は致命的であり、事業の存続自体が危ぶまれるケースも少なくありません。

特定商取引法とはどのような法律ですか?

特定商取引法(特商法)は、事業者による違法・悪質な勧誘行為から消費者の利益を守ることを目的とした法律です。訪問販売のように、消費者が冷静な判断をしにくい特定の取引形態において、公正な取引環境を確保するために制定されました。

この法律は、事業者に対して氏名等の明示義務や書面交付義務などを課す一方、消費者にはクーリング・オフ制度(一定期間内の無条件解約)などの権利を認めています。

特定商取引法が規制する7つの取引類型
  • 訪問販売
  • 通信販売
  • 電話勧誘販売
  • 連鎖販売取引(マルチ商法など)
  • 特定継続的役務提供(エステ、学習塾など)
  • 業務提供誘引販売取引(内職商法など)
  • 訪問購入(事業者が消費者の自宅を訪れ物品を買い取ること)

業務停止命令と営業停止処分の違いは何ですか?

「業務停止命令」と「営業停止処分」は、どちらも行政機関が事業活動を制限する処分ですが、根拠となる法律や対象範囲が異なります。

項目 業務停止命令 営業停止処分
主な根拠法 特定商取引法、割賦販売法など 建設業法、食品衛生法、古物営業法など
対象範囲 法律で定められた特定の業務(例:訪問販売に関する勧誘行為) 原則として事業全体の営業活動
特徴 違反行為が行われた特定の取引分野の活動を禁止する 許認可に基づく事業全体の活動を禁止する
「業務停止命令」と「営業停止処分」の主な違い

このように、名称は似ていますが、どの法律に基づいてどのような活動が制限されるのかを正確に把握することが重要です。

訪問販売での禁止行為は他に何がありますか?

特定商取引法では、不実告知や迷惑勧誘のほかにも、消費者を保護するために様々な行為を禁止しています。

訪問販売におけるその他の主な禁止行為
  • 契約の解除を妨げるために、嘘を言ったり威圧したりする行為(威迫・困惑)
  • 通常必要とされる量を著しく超える商品を売りつける行為(過量販売)
  • 判断力が不十分な状態の消費者に乗じて契約させる行為
  • 契約書面に虚偽の事実を記載させる行為
  • クーリング・オフさせない目的で、意図的に消耗品を使用させる行為

訪問販売事業者は、これら多岐にわたる禁止行為を全従業員に周知徹底し、法令遵守体制を構築する責任があります。

まとめ:新生ホームサービスの行政処分から学ぶ訪問販売のリスク管理

新生ホームサービスの行政処分事例は、訪問販売における特定商取引法の遵守がいかに重要であるかを明確に示しています。特に、「勧誘目的の不明示」「不実告知」「迷惑勧誘」といった基本的な禁止行為が、9か月もの業務停止命令という深刻な結果を招きました。この事例から学ぶべきは、営業担当者個人の問題ではなく、コンプライアンスを軽視する組織風土そのものが事業継続を脅かす最大のリスクであるという点です。まずは自社の営業トークやマニュアルが法令に準拠しているか再点検し、定期的な研修や監査体制を構築することが求められます。訪問販売事業におけるコンプライアンス体制の構築や見直しに際しては、必ず弁護士などの専門家に相談し、具体的な助言を得るようにしてください。



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