清算結了の決算報告書の書き方|記載例と必要書類、手続きの流れを解説
会社の清算手続きも最終段階に入り、清算結了登記に向けて準備を進めているものの、決算報告書の具体的な作成方法や記載例についてお困りではないでしょうか。特に、残余財産の有無で書き方がどう変わるのか、他にどのような書類が必要になるのか、実務上の細かな点で迷うことも少なくありません。この記事では、会社清算の最終手続きである清算結了登記に必要な決算報告書の役割から、会社法施行規則に基づく具体的な記載事項、ケース別の記載例、注意点までを網羅的に解説します。
会社清算から清算結了までの手続きの流れ
ステップ1:解散決議と清算人の選任
株式会社が事業活動を停止し、法人格を消滅させるためには、まず株主総会で会社の解散を決議する必要があります。この解散決議は、会社の根幹に関わる重要な決定であるため、以下の要件を満たす特別決議が必要です。
- 議決権の過半数を有する株主が出席すること
- 出席した株主の議決権の3分の2以上の賛成があること
通常、この解散決議と同時に、清算事務を担当する清算人を選任します。清算人には、定款で定められた者や株主総会の普通決議で選任された者が就任しますが、定めにない場合は取締役が法定清算人となります。会社の財産状況や事業内容に精通している元の代表取締役が清算人に就任するケースが一般的です。
ステップ2:解散・清算人選任の登記と諸官庁への届出
株主総会で解散と清算人の選任が決議されたら、法的な手続きを進めます。具体的には、法務局への登記申請と、関係各所への届出が必要です。
まず、決議日から本店所在地では2週間以内、支店所在地では3週間以内に、本店所在地を管轄する法務局へ解散登記と清算人選任登記を申請します。この登記によって、会社が清算手続き中であることと、その責任者である清算人が誰であるかが公的に示されます。
登記が完了したら、清算人は遅滞なく以下の諸官庁へ会社が解散した旨を届け出る必要があります。
- 税務署
- 都道府県税事務所および市区町村役場
- 年金事務所
- 労働基準監督署およびハローワーク(公共職業安定所)
これらの届出には、一般的に「異動届出書」と会社の「登記事項証明書」を添付します。
ステップ3:財産目録の作成と債権者保護手続き
清算人は就任後、速やかに会社の財産状況を調査し、財産目録と貸借対照表を作成する義務があります。これらの書類は、会社解散日時点での全財産を正確に記載したもので、作成後に株主総会の承認を得なければなりません。
次に、会社の債権者に対して、会社が解散したことを知らせ、債権を申し出る機会を与えるための債権者保護手続きを行います。この手続きは、以下の2つの方法で進められます。
- 官報公告: 官報に解散の事実を掲載し、2ヶ月以上の期間を定めて、その期間内に債権を申し出るよう公告します。
- 個別催告: 会社が把握している個別の債権者に対しては、書面で同様の通知(催告)を直接送付します。
ステップ4:残余財産の確定・分配と株主総会の承認
債権者保護手続きで定めた債権申出期間が満了した後、清算人は具体的な清算事務に着手します。このステップは、残余財産を確定させて株主に分配し、その結果を株主総会で承認してもらうまでを含みます。
- 清算事務の実行: 清算人は、会社の資産(不動産、棚卸資産など)を売却して現金化し、売掛金などの債権を回収します。
- 債務の弁済: 上記で得た資金をもとに、買掛金や借入金といった会社の全ての債務を支払います。
- 残余財産の確定: 全ての債務を弁済した後に会社に残った財産が残余財産となります。
- 株主への分配: 確定した残余財産を、原則として各株主の保有株式数に応じて分配します。種類株式が発行されている場合は、定款の定めに従った分配が必要です。
- 決算報告書の承認: 分配が完了した後、清算人は清算事務の全容を記載した決算報告書を作成し、株主総会でその承認を得ます。
ステップ5:決算報告書の作成と清算結了登記
清算事務がすべて完了すると、清算人はその収支をまとめた決算報告書を作成し、株主総会の承認を得なければなりません。この承認は普通決議で行われ、この決議をもって清算は法的に結了し、会社の法人格が消滅します。
株主総会で決算報告書が承認された日から2週間以内(支店所在地では3週間以内)に、本店所在地を管轄する法務局へ清算結了登記を申請する必要があります。この登記が完了すると、会社の登記記録は閉鎖され、会社が法的に完全に消滅したことが公示されます。
清算結了における決算報告書の役割と必要書類
決算報告書の役割:清算事務の終了を証明する書類
清算結了における決算報告書は、会社の法人格を消滅させるための最終手続きにおいて、清算事務が法的に完了したことを証明する非常に重要な書類です。清算人は、この報告書によって解散後の全ての清算活動の収支を株主に報告します。
- 清算事務の完了証明: 資産の現金化、債務の弁済、残余財産の分配といった一連の清算活動が適正に終了したことを証明します。
- 清算結了の成立要件: この報告書が株主総会で承認されることによって、会社の清算が結了し、法人格が消滅します。
- 清算結了登記の必須書類: 清算結了登記を申請する際、承認を得たことを証明する株主総会議事録とともに、法務局への提出が必須です。
決算報告書の記載事項は会社法施行規則で定められており、不備があると登記が受理されず、会社を消滅させることができません。
「清算事務報告書」との違いについて
清算結了時に作成される最終報告書は、会社法上では「決算報告」と定められていますが、実務上「清算事務報告書」と呼ばれることもあります。これらは基本的に同じものを指します。
一方で、これと混同されやすいものに、清算期間が複数年にわたる場合に各清算事務年度の終了後に作成される「事務報告」があります。両者の違いは以下の通りです。
| 項目 | 決算報告書(清算結了時) | 事務報告(清算期間中) |
|---|---|---|
| 目的 | 清算事務全体の最終報告 | 清算事務の中間報告 |
| 作成時期 | 全ての清算事務が終了した時点 | 各清算事務年度の終了後 |
| 内容 | 清算開始から終了までの全収支、残余財産の確定・分配額 | 当該年度の財産処分や債務弁済の状況など |
| 役割 | 清算結了登記の必須添付書類 | 株主への経過報告 |
このように、「決算報告書」は清算手続きを完了させるための最終的な書類である点が大きな違いです。
清算結了登記の申請に必要となる書類一覧
清算結了登記は、株主総会で決算報告書が承認された日から2週間以内に申請する必要があります。申請時に法務局へ提出する主な書類は以下の通りです。
- 株式会社清算結了登記申請書
- 株主総会議事録: 決算報告書を承認した際のもの。
- 決算報告書: 会社法施行規則第150条の記載事項を満たしたもの。
- 株主リスト: 株主の氏名・住所・議決権数などを記載した書面。
- 委任状: 司法書士などの代理人に申請を依頼する場合に必要です。
また、登記申請には登録免許税として2,000円が必要で、収入印紙で納付します。
清算結了の決算報告書|具体的な書き方と記載事項
会社法施行規則で定められた4つの記載事項
清算人が作成する決算報告書に記載すべき内容は、会社法施行規則第150条によって定められています。清算事務の収支と結果を明確にするため、以下の4つの事項を必ず記載しなければなりません。
- 債権の取立て、資産の処分その他の行為によって得た収入の額
- 債務の弁済、清算に係る費用の支払その他の行為による費用の額
- 残余財産の額: 支払うべき税金がある場合は、その税額と税金を差し引いた後の額の両方を記載します。
- 一株当たりの分配額: 種類株式を発行している場合は、株式の種類ごとに分配額を記載します。
なお、1と2の項目については、内容が分かりやすくなるよう適切な項目に細分化して記載することも認められています。
記載事項1:債権の取立て、資産の処分等で得た収入額
この項目には、清算期間中に会社の資産を現金化して得た資金流入の総額を記載します。清算人は、会社の財産を処分し、債権を回収する職務を負っており、その活動によって得られた収入がこれにあたります。
- 債権の回収: 売掛金や貸付金などを回収して得た資金。
- 資産の処分: 在庫商品、不動産、有価証券などを売却して得た資金。
- その他の収入: 受取利息など、清算活動に付随して発生した収入。
この収入額は、後の債務弁済や費用支払いの原資となるものであり、清算活動の成果を示す重要な数字です。
記載事項2:債務の弁済、清算費用等の支払額
この項目には、清算期間中に会社から支出された資金流出の総額を記載します。これには、会社の債務を支払うための「債務の弁済」と、清算事務を進める上で必要となった「清算に係る費用」が含まれます。
- 債務の弁済: 買掛金、借入金、未払金など、会社が負っていた債務の支払い。
- 清算に係る費用:
- 清算人の報酬
- 登記費用や官報公告費用
- 従業員への給与や退職金
- 司法書士や税理士といった専門家への報酬
これらの費用についても、会社法施行規則に基づき、内容が分かるように適切な項目に分けて記載することが認められています。
記載事項3:残余財産の額(支払った税額等を含む)
「残余財産の額」は、清算活動によって得た収入総額(記載事項1)から、債務の弁済と清算費用の支払総額(記載事項2)を差し引いた、最終的に会社に残った財産の額を示します。
計算式で表すと以下のようになります。 `残余財産の額 = 収入総額 – 費用総額`
清算期間中に資産の売却益などが出て法人税等が課される場合、その納税額も費用に含まれます。会社法施行規則では、この項目に支払った税額と、税金を差し引いた後の財産の額(税引後残余財産)の両方を記載するよう求めています。この税引後の残余財産が、株主へ分配される原資となります。
記載事項4:1株当たりの分配額(種類株式発行会社の場合)
「一株当たりの分配額」は、確定した残余財産を株主に対してどのように分配したかを示す項目です。この金額は、税引後の残余財産総額を、会社の発行済株式総数で割って算出します。
`1株当たりの分配額 = 残余財産の額(税引後) ÷ 発行済株式総数`
会社法では、この記載事項について以下の点を注記することも義務付けています。
- 残余財産の分配を完了した日
- 残余財産の一部または全部を金銭以外の財産(現物)で分配した場合は、その財産の種類と価額
種類株式を発行している会社の場合は、それぞれの株式の種類ごとに1株当たりの分配額を明記する必要があります。
【ケース別】清算結了の決算報告書 記載例
記載例1:残余財産があり、株主へ分配した場合
清算の結果、会社に財産が残り、株主へ分配できた場合の決算報告書には、清算事務の収支と分配結果を具体的に記載します。
例えば、以下のようなケースを考えます。
- 収入の額(債権取立て、資産処分等): 金45,264円
- 費用の額(債務弁済、清算費用等): 金17,500円(うち法人税等の支払額を含む)
- 残余財産の額(税引後): 金27,764円 (45,264円 – 17,500円)
- 発行済株式総数: 50株
この場合、決算報告書には上記の収入額、費用額、残余財産額を記載した上で、「一株当たりの分配額」として金555円28銭(27,764円 ÷ 50株)と記載します。さらに、残余財産の分配を完了した日付を注記する必要があります。
もし金銭以外の財産(現物)で分配した場合は、その財産の種類と価額も追記します。株主への分配額は税務上「みなし配当」として扱われる可能性があるため、正確な記載が求められます。
記載例2:残余財産がなく、分配が0円の場合
清算手続きの結果、資産のすべてが債務の弁済や清算費用に充てられ、株主に分配できる残余財産が残らなかった場合でも、決算報告書の作成と提出は必要です。
この場合、決算報告書には会社法施行規則第150条の定めに従い、以下のように記載します。
- 収入の額(記載事項1): 清算期間中の実際の収入総額を記載。
- 費用の額(記載事項2): 清算期間中の実際の費用総額を記載。
- 残余財産の額(記載事項3): 「金0円」と明確に記載。
- 一株当たりの分配額(記載事項4): 「金0円」と明確に記載。
例えば、会社の資産を全て現金化しても債務を完済できず、債権者(役員など)に債務の一部を債権放棄してもらうことで債務超過を解消し、最終的に残余財産が0円になるケースがあります。このような場合でも、結果として残余財産が0円であることを報告書に記載し、株主総会の承認を得れば、清算結了登記は問題なく受理されます。
決算報告書の作成から登記申請までの注意点
株主総会の普通決議による承認が必須
清算人が作成した決算報告書は、会社の法人格を消滅させるための最終ステップとして、株主総会の承認を得ることが会社法で義務付けられています。
- 承認機関: 株主総会
- 決議要件: 普通決議(特別決議は不要)。定款に別段の定めがなければ、議決権の過半数を有する株主が出席し、その過半数の賛成で可決されます。
- 法的効果: この承認をもって清算が正式に結了し、会社の法人格が消滅します。
- 登記上の役割: 承認の事実を証明する株主総会議事録は、清算結了登記申請時の必須書類です。
株主全員の同意があれば総会の招集手続きを省略することは可能ですが、決算報告書に対する承認そのものを省略することはできません。
清算結了登記は株主総会の承認後2週間以内に行う
清算結了登記は、株主総会で決算報告書の承認を得た日から2週間以内(支店がある場合は支店所在地で3週間以内)に申請しなければなりません。この期限は会社法で定められた法的義務です。
もし正当な理由なくこの期間内に登記申請を怠った場合、登記懈怠(とうきけたい)とみなされ、代表清算人が100万円以下の過料(行政上の罰金)の制裁を受ける可能性があります。そのため、株主総会での承認後は速やかに登記手続きを進めることが重要です。
登記申請先は本店所在地を管轄する法務局
清算結了登記の申請は、会社の本店所在地を管轄する法務局に対して行います。他の法務局に申請しても受理されません。自社の管轄法務局がどこかは、法務省のウェブサイトなどで確認できます。
支店の登記がある会社の場合でも、本店所在地を管轄する法務局に、本店と支店の登記申請をまとめて行うことができます。この登記手続きが完了することで、会社の登記記録が正式に閉鎖されます。
決算報告書の数字を固める前の最終確認ポイント
決算報告書に記載する数値を最終的に確定させる前には、いくつかの重要な点を確認する必要があります。
- 収支の網羅性: 収入額(債権回収、資産処分など)と費用額(債務弁済、清算費用など)の計上に漏れや誤りがないか、全ての取引を再確認します。
- 清算費用の範囲: 費用として計上するものは、清算人の報酬、登記費用、専門家への報酬など、清算手続きに直接関連する支出に限定されているかを確認します。
- 税務上の確認: 残余財産の確定に伴う法人税等の申告は、通常の事業年度とは異なる特例があるため、税理士による最終確認が不可欠です。
正確な決算報告書を作成するために、これらの点を慎重にチェックすることが求められます。
債務超過で清算結了できない場合の対応策
清算手続きを進める中で、会社の資産を全て処分しても債務を完済できない債務超過の状態であることが判明した場合、原則として通常の清算手続きを続行することはできません。この場合、清算人は裁判所に特別清算または破産手続の開始を申し立てる法的義務を負います。
ただし、例外的に以下の方法で債務超過状態を解消できれば、通常清算による清算結了が可能となる場合があります。
- 債権放棄: 親会社や役員などの債権者に、会社に対する債権を放棄してもらう。
- 免責的債務引受: 役員などが会社の債務を個人として引き継ぎ、会社の債務をなくす。
これらの対応により会社の債務がゼロになれば、残余財産0円として清算結了登記を行うことができます。
清算結了の決算報告書に関するよくある質問
「清算事務報告書」と「決算報告書」は同じものですか?
はい、基本的には同じものを指します。会社法上の正式名称は「決算報告」ですが、実務上、清算事務全体の最終報告書という意味で「清算事務報告書」と呼ばれることがあります。
ただし、清算期間が長期にわたる場合に作成される中間報告書である「事務報告」とは明確に区別されるため、注意が必要です。
残余財産が0円の場合、決算報告書はどのように記載しますか?
残余財産が0円の場合でも、会社法施行規則で定められた事項を記載した決算報告書が必要です。「残余財産の額」と「一株当たりの分配額」の項目に、それぞれ「金0円」と明確に記載します。
これにより、全ての資産が債務の弁済や清算費用に充てられ、株主への分配額がゼロになったという事実を法的に報告することができます。
決算報告書は誰が作成し、誰が承認するのですか?
決算報告書は、清算事務を執行した清算人が作成します。 作成された決算報告書は、株主総会に提出され、株主の普通決議によって承認されます。
清算結了の決算報告書は税務署にも提出が必要ですか?
決算報告書そのものを税務署へ直接提出する義務はありません。税務署へ提出が必要なのは、以下の書類です。
- 残余財産確定事業年度の確定申告書: 残余財産が確定した日から1ヶ月以内に提出します。
- 清算結了の届出(異動届出書): 清算結了登記が完了した後、登記事項証明書(閉鎖事項全部証明書)を添付して提出します。
決算報告書は、これらの税務申告書を作成する際の基礎資料となります。
まとめ:正確な決算報告書を作成し、清算結了登記を確実に完了させるために
本記事では、会社の清算結了登記に不可欠な決算報告書の作成方法と関連手続きについて解説しました。決算報告書は、清算事務の完了を証明する重要な書類であり、会社法施行規則で定められた収入・費用・残余財産・1株当たり分配額の4項目を正確に記載する必要があります。残余財産が0円の場合でも報告書の作成と株主総会の承認は必須であり、承認後は2週間以内に登記申請を行わなければなりません。債務超過の場合は特別清算への移行も視野に入れる必要がありますので、手続きに不安がある場合は、司法書士や税理士などの専門家に相談し、確実な清算結了を目指しましょう。

