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営業妨害による損害賠償請求|請求可能なケース・金額算定・手続きの流れを解説

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悪質なクレームやインターネット上の誹謗中傷といった営業妨害は、売上減少やブランドイメージの低下に直結する、企業にとって極めて深刻な問題です。このような理不尽な行為によって受けた損害を金銭的に回復させるためには、損害賠償請求という法的手続きが有効な手段となります。この記事では、営業妨害を理由に損害賠償を請求するための具体的な手続きの流れ、請求可能な損害額の算定方法や相場、そして専門家である弁護士の役割について詳しく解説します。

目次

損害賠償請求の対象となる営業妨害とは

法律上の「業務妨害」の定義と成立要件

法律上、営業妨害は刑法の「業務妨害罪」として罰せられる可能性があり、かかる行為は損害賠償請求の根拠となる不法行為に該当します。業務妨害罪は、行為の態様によって以下の2つに大別されます。

種類 内容
偽計業務妨害罪 虚偽の情報を流したり、人を欺いたりするなどの「偽計」を用いて業務を妨害する犯罪です。
威力業務妨害罪 暴行や脅迫、あるいは人の意思を制圧する勢いを示す「威力」を用いて業務を妨害する犯罪です。
業務妨害罪の種類

保護の対象となる「業務」とは、職業として継続して行う事業だけでなく、NPOの活動やサークル活動など、営利を目的としない社会的な活動も広く含まれます。犯罪の成立には、実際に業務が妨害されるという結果まで必要なく、業務が妨害されるおそれのある状態が生じた時点で成立すると解されています。

偽計業務妨害罪に該当する行為の例(虚偽情報の流布など)

偽計業務妨害罪における「偽計」とは、人を欺いたり、人の勘違いや無知を利用したりして、正常な業務運営を妨げる行為を指します。具体的には、以下のような行為が該当します。

偽計業務妨害罪に該当する行為の具体例
  • インターネットの口コミサイトやSNSに「商品に異物が混入していた」といった虚偽の情報を投稿する。
  • 来店する意思がないにもかかわらず、飲食店に大量の予約を入れ、連絡なくキャンセルする(いわゆるノーショー)。
  • 「あの会社は産地を偽装している」といった事実無根のデマを拡散し、企業の社会的評価や商品の信頼を低下させる。

威力業務妨害罪に該当する行為の例(悪質なクレーム・迷惑行為)

威力業務妨害罪における「威力」とは、暴行や脅迫といった直接的な攻撃だけでなく、人の自由な意思を制圧するに足りる勢力を示す、あらゆる行為を含みます。具体的には、以下のような悪質なクレームや迷惑行為が該当する可能性があります。

威力業務妨害罪に該当する行為の具体例
  • 店舗内で大声で怒鳴り散らしたり、長時間居座ったりして、他の顧客の利用や従業員の業務を妨げる。
  • 従業員に対して土下座を強要したり、電話で執拗に暴言を浴びせ続けたりする。
  • SNSや掲示板に「貴社を爆破する」などの犯罪予告を書き込み、営業の中止や警備の強化を余儀なくさせる。

信用毀損罪に該当する行為の例(風評被害)

信用毀損罪は、偽計業務妨害罪と似ていますが、特に人の「信用」を傷つける行為を対象とします。ここでいう信用とは、企業の支払能力といった経済的な信用だけでなく、商品の品質や提供されるサービスに対する社会的な信頼も含まれます。営業妨害と同時に信用毀損罪が成立するケースも少なくありません。

信用毀損罪に該当する行為の具体例
  • 「あの会社は倒産寸前で、取引するのは危険だ」といった虚偽の噂を取引先に流す。
  • 競合他社の商品について「有害物質が含まれている」といった嘘の情報をインターネット上に拡散する。

従業員や取引先など内部関係者による妨害行為への注意点

営業妨害は、外部の第三者だけでなく、企業の内部情報に詳しい元従業員や取引先によって引き起こされるケースもあり、特に注意が必要です。このような内部関係者による行為は、不正競争防止法違反や、場合によっては刑法の背任罪に該当する可能性があります。

内部関係者による妨害行為の例
  • 退職した従業員が、在職中に不正に取得した顧客リストや技術情報を競合他社に漏洩する。
  • 業務提携先が、契約を通じて知り得た営業秘密を自社の利益のために無断で使用する。

企業としては、こうした内部からの妨害行為を防ぐため、従業員や取引先との間で秘密保持契約を締結したり、情報へのアクセス権限を厳格に管理したりするなどの予防策を講じることが重要です。

営業妨害による損害賠償金の算定方法と内訳

損害賠償の対象となる損害の種類(財産的損害・精神的損害)

営業妨害によって請求できる損害賠償は、大きく「財産的損害」と「精神的損害」に分けられます。それぞれの内訳と具体例は以下の通りです。

損害の種類 内訳 具体例
財産的損害 積極的損害(実際に出費した費用) 妨害行為への対応費用、削除請求や加害者特定にかかった弁護士費用、信用回復のための広告費など
消極的損害(得られるはずだった利益) 売上減少による逸失利益、新規契約の逸失など
精神的損害 慰謝料など 企業の代表者個人への名誉毀損に対する慰謝料、法人格のない団体や法人の無形の損害など
損害賠償の対象となる損害の種類

法人の場合、原則として精神的苦痛は観念できないため慰謝料請求は困難ですが、社会的評価の低下など無形の損害が認められることがあります。

逸失利益(売上減少分)の具体的な算定根拠

逸失利益とは、営業妨害行為がなければ得られたはずの利益を指し、損害賠償額算定の中心となる項目です。算定においては、単なる売上減少額ではなく、そこから仕入費などの変動経費を差し引いた限界利益を基準とすることが一般的です。しかし、景気変動や市場環境の変化など他の要因も影響するため、この因果関係の立証は容易ではありません。算定の際には、妨害行為と売上減少との間に相当因果関係があることを、被害者側が証拠に基づいて立証しなければなりません。なお、不正競争防止法が適用されるケースでは、侵害者が得た利益額を損害額と推定する規定などがあり、被害者の立証負担が軽減される場合があります。

信用回復にかかる費用や弁護士費用などの請求可否

営業妨害によって毀損された企業の社会的信用を回復するためにかかった費用も、積極的損害として賠償請求の対象となります。これには、誤った情報を訂正するための謝罪広告の掲載費用や、プレスリリースの配信費用などが含まれます。

また、損害賠償請求を弁護士に依頼した場合の弁護士費用についても、不法行為と相当因果関係のある損害として、裁判で認められた賠償額の1割程度が上乗せして認められるのが実務上の慣例です。インターネット上の加害者を特定するための発信者情報開示請求にかかった弁護士費用なども、同様に損害として認められる傾向にあります。

営業妨害の損害賠償金相場と関連判例

損害賠償金の相場は妨害行為の態様や損害額によって変動する

営業妨害に対する損害賠償金の額に、明確な相場や一律の基準は存在しません。賠償額は、個別の事案ごとに裁判所が諸般の事情を考慮して決定します。

賠償額を決定する主な考慮要素
  • 妨害行為の悪質性、期間、頻度
  • 売上減少や対応費用といった実損害の金額
  • 企業の社会的評価やブランドイメージの低下の度合い
  • 加害者の行為後の態度(反省の有無など)

個人の名誉毀損では数十万円程度が相場となることが多いですが、企業の営業妨害では事業への影響が大きいため、数百万円以上の高額な賠償が認められるケースも少なくありません。

【判例紹介】インターネット上の誹謗中傷による営業妨害

インターネット掲示板やSNSでの誹謗中傷が原因で、損害賠償が認められた判例は数多くあります。例えば、企業に対して「ブラック企業で違法行為が横行している」といった事実無根の書き込みがなされた事案では、企業の社会的評価を低下させる名誉毀損および営業妨害にあたるとして、投稿者への賠償命令が下されました。

また、社会的な注目を集めた事件の加害者と無関係であるにもかかわらず、「あの会社は加害者の勤務先だ」というデマが拡散されたケースでは、会社に抗議の電話が殺到し業務に支障が出たとして、デマを投稿した人物に対する損害賠償請求が認められています。

【判例紹介】不当なクレームや迷惑行為による営業妨害

顧客からのクレームであっても、その態様が社会通念上許される範囲を逸脱している場合は、威力業務妨害として違法と判断されます。過去の裁判例では、従業員に土下座を強要し、その様子を撮影・公開した行為や、市役所に対して数ヶ月にわたり執拗に抗議の電話をかけ続けて業務を麻痺させた行為などが、違法な業務妨害にあたるとして損害賠償が命じられています。

正当な意見表明や権利行使と、違法な業務妨害との境界は、行為の目的、態様、執拗さなどを総合的に考慮して判断されます。

営業妨害で損害賠償を請求する手続きの流れ

ステップ1:営業妨害の事実を証明する証拠の収集

損害賠償請求を成功させるためには、客観的な証拠を確保することが最も重要です。どのような行為によって、どのような損害が生じたのかを具体的に示す必要があります。

収集すべき証拠の具体例
  • ネット上の投稿:投稿内容、URL、投稿日時がわかるページのスクリーンショットや印刷物
  • 迷惑行為:防犯カメラの映像、通話の録音データ、従業員が作成した対応記録メモ
  • 損害の証明:妨害行為の前後の売上データを比較できる会計資料、予約のキャンセルログ

証拠が不十分な場合、後の交渉や裁判で相手に言い逃れをされ、請求が認められない可能性が高まります。

ステップ2:加害者の特定(発信者情報開示請求など)

インターネット上の匿名による投稿など、加害者が不明な場合は、まず相手を特定する手続きが必要です。この際に利用されるのが、プロバイダ責任制限法に基づく「発信者情報開示請求」です。

この手続きは、一般的に以下の流れで進められます。

発信者情報開示請求の基本的な流れ
  1. 投稿がなされたサイトの運営者(コンテンツプロバイダ)に対し、投稿者のIPアドレスとタイムスタンプの開示を請求します。
  2. 開示されたIPアドレスを元に、通信会社(経由プロバイダ)を特定し、そのプロバイダに対して投稿者の氏名・住所・メールアドレスなどの開示を請求します。

近年では、これらの一連の手続きを一体的に行える「発信者情報開示命令」という新たな裁判手続も利用可能です。プロバイダの通信ログ保存期間は3ヶ月から6ヶ月程度と短いため、迅速な対応が求められます。

ステップ3:内容証明郵便の送付と示談交渉

加害者が特定できたら、まずは内容証明郵便で警告書兼請求書を送付し、交渉による解決(示談)を目指すのが一般的です。内容証明郵便は、送付の事実と文書の内容を郵便局が証明してくれるため、後の裁判で証拠として利用できます。

書面には、営業妨害行為の具体的内容、それによって生じた損害額、支払いを求める旨、回答期限などを明確に記載します。相手が請求に応じる姿勢を見せた場合は、弁護士を介して具体的な賠償額や謝罪の有無などを協議し、合意に至れば示談書を作成して解決となります。

ステップ4:交渉不成立の場合は損害賠償請求訴訟を提起

示談交渉が決裂した場合や、相手が請求を完全に無視する場合には、裁判所に損害賠償請求訴訟を提起します。訴訟では、被害者側(原告)が、加害者の行為の違法性、損害の発生、行為と損害の因果関係、損害額の全てを証拠に基づいて主張・立証する必要があります。

裁判は判決までに半年から1年以上かかることもあり、時間と費用を要しますが、勝訴判決を得られれば、相手の財産を差し押さえる強制執行が可能になるという大きなメリットがあります。手続きが専門的かつ複雑であるため、弁護士への依頼が不可欠です。

請求準備と並行して進めるべき社内対応と体制構築

損害賠償請求という事後対応と並行して、被害の拡大防止や従業員の保護、再発防止のための社内体制を構築することも極めて重要です。企業には従業員に対する安全配慮義務があり、その一環としても適切な対応が求められます。

整備すべき社内対応・体制の例
  • 悪質クレームや営業妨害への対応手順を定めたマニュアルの作成と全従業員への周知。
  • 被害に遭った従業員のメンタルヘルスをケアする相談窓口の設置。
  • 従業員一人で対応させず、上司や担当部署が組織として対応する体制の構築。
  • 通話録音装置や防犯カメラなど、証拠を確実に保全するための設備投資。

営業妨害の損害賠償請求における弁護士の役割

弁護士に相談・依頼する具体的なメリット

営業妨害の被害に遭った際、弁護士に相談・依頼することには多くのメリットがあります。特に企業が対応する場合、専門家のサポートは不可欠と言えます。

弁護士に依頼する主なメリット
  • 法的観点から状況を分析し、損害賠償請求が可能かどうかを的確に判断してくれる。
  • 発信者情報開示請求など、専門知識を要する複雑な法的手続きを迅速かつ適切に進めてくれる。
  • 加害者との交渉窓口を一本化することで、担当者の精神的・時間的負担を大幅に軽減できる。
  • 感情的な対立を避け、法的な根拠に基づいて交渉を進めることで、有利な条件での解決が期待できる。

弁護士への相談を検討すべき適切なタイミング

弁護士への相談は、営業妨害の被害を認識した直後のできるだけ早い段階で行うのが理想的です。特に、インターネット上の匿名投稿が原因の場合、プロバイダの通信ログが消去される前に加害者を特定する手続きに着手する必要があるため、時間が勝負となります。

初期対応を誤ると、証拠の確保が困難になったり、意図せず相手に有利な状況を作ってしまったりするリスクもあります。被害届の提出や刑事告訴を視野に入れる場合も、初動段階から弁護士のアドバイスを受けることで、その後の手続きを円滑に進めることができます。

営業妨害問題に対応できる弁護士の選び方

営業妨害の問題は、複数の法分野にまたがるため、弁護士を選ぶ際にはその専門性を見極めることが重要です。

弁護士選びのチェックポイント
  • インターネット上の誹謗中傷やIT関連法務に精通しているか。
  • 企業法務や危機管理対応の経験が豊富か。
  • 法律事務所のウェブサイトなどで、同種の案件の解決実績を確認できるか。
  • 初回相談の際に、対応方針や費用の見通しを分かりやすく説明してくれるか。

複数の法律事務所に相談し、信頼して任せられる弁護士を見つけることが、問題解決への第一歩となります。

営業妨害の損害賠償請求に関するよくある質問

損害賠償請求権に時効はありますか?

はい、不法行為に基づく損害賠償請求権には消滅時効があります。原則として、以下のいずれかの期間が経過すると時効が成立し、請求権が消滅します。

  • 被害者が損害および加害者を知った時から3年間
  • 不法行為の時から20年間

営業妨害が継続している場合など、時効の起算点がいつになるか判断が難しいケースもあります。時効の完成が近い場合は、裁判上の請求などを行うことで時効の完成を阻止する必要があるため、早めに弁護士に相談してください。

ネット上の匿名の投稿者にも損害賠償請求はできますか?

はい、可能です。ただし、請求を行う前提として、まずその匿名の投稿者が誰であるかを特定する必要があります。前述の「発信者情報開示請求」という法的な手続きを利用して、サイト運営会社やプロバイダから投稿者の氏名や住所などの情報を取得します。加害者が特定できれば、その人物に対して内容証明郵便の送付や訴訟提起といった通常の手続きを進めることができます。

受け取った損害賠償金は課税対象になりますか?

受け取った損害賠償金が課税対象になるかどうかは、その賠償金がどのような性質の損害を補填するものかによって異なります。

賠償金の性質 課税の有無 理由
精神的損害に対する慰謝料 非課税 心身に加えられた損害に対する賠償金は、所得税法上非課税とされています。
逸失利益(売上減少分)の補填 課税対象 本来得られるはずだった事業収入の代わりとみなされるため、事業所得などとして課税されます。
損害賠償金の課税関係

正確な税務上の取り扱いについては、税理士などの専門家にご確認ください。

示談で解決する場合のメリット・デメリットを教えてください。

示談(交渉による解決)は、裁判と並ぶ主要な解決方法です。それぞれにメリットとデメリットがあるため、状況に応じて最適な手段を選択する必要があります。

項目 メリット デメリット
時間と費用 裁判に比べて迅速に解決でき、弁護士費用なども含めた費用を低く抑えられる傾向があります。 相手が交渉に応じない場合、時間がかかることもあります。
解決内容 賠償金の支払いだけでなく、謝罪文の掲載など、柔軟な解決条件を取り決められます。 お互いの譲歩が必要なため、請求額満額の支払いを得ることは難しい場合があります。
公開性 手続きが非公開で進むため、紛争の事実が外部に知られにくいです。
強制力 示談で取り決めた内容が守られない場合、別途、支払いを求める訴訟などを起こす必要があります。
示談解決のメリット・デメリット

まとめ:営業妨害には法的措置を。損害賠償請求のポイントと早期相談の重要性

本記事では、営業妨害に対する損害賠償請求について、対象となる行為から具体的な手続き、費用相場までを網羅的に解説しました。ネット上の虚偽情報の流布や威力を用いた迷惑行為など、営業妨害の態様は多岐にわたりますが、それによって生じた売上減少分(逸失利益)や信用回復にかかった費用などを損害として請求できる可能性があります。請求を成功させる鍵は、客観的な証拠を迅速に確保し、必要に応じて加害者を特定する法的手続きを的確に進めることです。これらの手続きは専門性が高く、特にインターネット上の匿名投稿では通信ログの保存期間という時間的制約もあるため、被害を認識したら速やかに弁護士へ相談することが不可欠です。法的措置を毅然と講じることは、直接的な被害回復だけでなく、将来の妨害行為を抑止し、従業員や企業ブランドを守ることにも繋がります。

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