法務

給与二重差押にどう対応するか 会社の優先順位と供託実務

経営リスクナビ編集部

給与二重差押が発生すると、すでに届いている差押命令への対応中にもかかわらず、別の債権者や税務署等から通知が重なり、「誰にいくら払う(または供託する)のが適法か」をその場で判断しなければならない状況になりがちです。ここで送達日や差押債権目録の読み違いがあると、第三債務者である会社が従業員へ支払ってしまい、結果として二重払いリスクや損害賠償責任の問題に直結します。民事執行と国税等の滞納処分ではルールや手続(交付要求など)が異なるため、優先順位や配当・供託の流れを誤解したまま処理すると、社内の計算・振込・証跡管理まで連鎖的に崩れます。以下では、二重差押の判断材料として送達後の確認点と競合時の処理手順を示します。

給与二重差押の基本整理

給与債権の差押と競合の全体像

給与差押えは、債権者が裁判所の債権差押命令により、従業員(債務者)が会社(第三債務者)に有する給与債権を差し押さえ、回収を図る手続です。会社に命令が送達されると、命令の対象となる給与債権について、会社は従業員へ自由に支払えなくなります(支払ってしまうと債権者に対抗できず、二重払いリスクが生じます)。

また、差押命令は「給与」だけに限られず、命令書の差押債権目録の書きぶりによっては、例えば「本命令送達日以降支払期の到来する役員報酬及び役員としての賞与」や、「退職時の役員退職慰労金」までが対象として列挙される類型もあります。したがって、二重差押かどうか以前に、まず「何が差し押さえられているか」を目録で確定するのが実務の起点です。

複数の差押えが重なり、差押可能額の範囲を超えて取り合いになる状態(競合)では、会社が債権者ごとに独断で支払うと、他の債権者の権利を害するおそれがあります。さらに、差押えは無制限ではなく、差し押さえた債権の価額が「請求債権+執行費用」を外観上明らかに超える場合には、裁判所は追加の差押えを許さない(超過差押えの禁止)という枠組みもあります(民事執行法146条2項(民事執行法第146条))。

第三債務者である会社の義務

第三債務者である会社の基本姿勢は、命令書の内容に従い、社内判断での「融通」や「調整」をしないことです。特に、二重差押が疑われる局面では、会社側の誤処理がそのまま第三債務者の損害賠償責任(債権者からの請求リスク)に直結します。

会社(第三債務者)が負う中核的な義務
  • 命令の対象債権(差押債権目録に記載された給与・賞与・退職金等)について、従業員へ支払ってよい範囲と禁止範囲を峻別すること。
  • 陳述催告(陳述書)に対し、雇用の有無・支払時期・他の差押えの有無等を事実に基づき回答すること(記載の正確性が重要です)。
  • 競合が生じた場合に、会社が勝手に按分せず、適法な手段(供託等)へ切り替えること。

また、差押命令の実務書式では、申立書の標題が「債権差押命令申立書」とされ、裁判所(例:東京地方裁判所民事第21部)宛ての体裁で作成される運用が示されています。会社側は申立書自体に対応するのではなく、あくまで「会社に送達された差押命令」の記載内容に従いますが、書式・運用を知っておくと、書面の読み違い(目録の読み落とし等)を減らせます。

差押命令送達後の初動

債権差押命令書の確認点

差押命令を受領したら、まず「いつ送達されたか」と「差押債権目録の対象範囲」を確認し、給与計算・振込の実務と接続させます。特に目録は、会社が差し引く対象を限定する唯一の手掛かりです。

命令書で必ず確認するポイント(実務チェック)
  • 送達日(効力の基準になるため、受領日・受領時刻を含めて社内記録します)。
  • 請求債権目録の「頭書金額」(どこまで控除・供託を継続するかの上限になります)。
  • 差押債権目録の対象(給与のみか、賞与・退職金・役員報酬・役員賞与・役員退職慰労金まで含むか)。
  • 目録にある控除の前提(例として、給与等は「所得税・住民税・社会保険料を控除した残額」を基礎にする記載が一般的です)。

参照される運用例では、差押債権目録に「本命令送達日以降支払期の到来する役員報酬及び役員としての賞与から、所得税・住民税・社会保険料を控除した残額」といった形で、対象と控除の順序が明示される類型があります。会社側は「通勤手当を除く」などの記載の有無も含め、目録の文言どおりに取り扱います。

陳述書提出と社内連携の進め方

陳述催告(陳述書)は、第三債務者が「現にいくら支払う立場にあるか」「他に差押えがあるか」等を裁判所に示す重要書面で、競合の有無や、その後の配当・供託判断にも影響します。差押えの場面では、金額に争いがある債権の取扱いが問題になることもあり、会社としては「支払義務の存否・金額」を事実ベースで回答し、紛争当事者にならない整理が必要です。

受領当日からの社内連携(推奨フロー)
  1. 人事が送達日・対象従業員・目録対象(給与/賞与/退職金/役員報酬等)を読み取り、関係部署へ最低限共有します。
  2. 経理が支払期到来前後(既払・振込処理中・未払)を確認し、差押対象となる支払分を切り分けます。
  3. 法務が「競合の可能性(他の差押命令・国税等の通知)」を整理し、供託・事情届の要否を判断できる状態にします。
  4. 陳述書は、雇用の有無、給与の支払時期と金額、他の差押えの有無など、事実のみを簡潔に記載して返送します。

社内では、情報を知る必要のある者だけに限定し、プライバシー漏えいを防ぎます。陳述書対応の遅れや不正確な記載は、結果的に第三債務者としての責任問題(損害賠償請求のリスク)に発展し得るため、期日管理とダブルチェックを組み込みます。

既払給与・振込指示済み給与・未払給与のどこで線を引くか

差押命令の効力は、「送達」と「支払期到来」の関係で整理します。目録上もしばしば「本命令送達日以降支払期の到来する」給与等が対象として書かれており、送達前に支払期が到来し既に支払われた給与まで遡って拘束する趣旨ではありません。

実務上の要点は、銀行振込のステータスも含めて「会社がまだ支配・処分できる未払給与か」を確定することです。振込指示済みでも、会社が組戻し等により支払を止められる段階なら未払として差押対応が必要になり得ますが、処理が完了し会社の側で取消不能な状態に達している場合は、支払済みとして取り扱われることが多く、差押対象から外れる整理になります。いずれにせよ、送達日(受領時刻)と給与支払の確定時点を、後日説明できる形で記録化しておくことが重要です。

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給与差押の範囲と計算

差押禁止範囲と計算の原則

給与差押は、生活保障の観点から差押禁止範囲が定められており、会社はその枠内でのみ控除・供託を行います。給与(賞与以外)の差押禁止額は、支払期の形態により異なり、民事執行法施行令2条1項(民事執行法第152条、民事執行法)に基づく運用として、少なくとも次の区分が示されています(実務では「所得税・住民税・社会保険料控除後」の残額を基礎にする形が典型です)。

支払期 収入額 差押禁止額
毎月 44万円超 33万円
毎半月 22万円超 16万5000円
毎旬 14万6667円以上 11万円
月の整数倍の期間ごと毎日 (44万円×当該倍数)超1万4667円以上 33万円×当該倍数1万1000円
その他の期間 (1万4667円×期間日数)以上 1万1000円×期間日数
支払期別の差押禁止額(給与等・賞与以外)

上表の「収入額欄記載の金額がある場合には、差押禁止額を除いた残金が差押えの対象」とされているため、支払形態(月給・日給・隔週等)を誤ると計算がずれます。社内の賃金規程・支払サイトに基づき、支払期区分を確定してから差押可能額を算定します。

例外が出る給与と控除項目

扶養義務等に基づく債権(養育費・婚姻費用など)では、差押可能範囲が通常より広がる特例があります。参照される運用では、債務者の月給又は賞与(所得税・住民税・社会保険料控除後)が、

扶養義務等債権の差押可能範囲(運用例)
  • 166万円以下のときは2分の1相当額まで差押え可能。
  • 266万円を超えるときは当該額から33万円を差し引いた額まで差押え可能。

また、会社独自の天引き(労使協定に基づく組合費、財形、親睦会費、社内貸付返済など)は、差押計算の「法定控除」とは性質が異なり、差押可能額を圧縮する目的で優先控除する運用は適切ではありません。差押命令の目録でも、控除対象として「所得税・住民税・社会保険料」を明示する例が示されており、会社はこの枠組みに沿って基礎額を作り、私的控除は残額処理として整理します。

賞与・退職金・役員報酬で差押対象が分かれる判断基準

賞与・退職金・役員報酬等は、目録に含まれているかどうかで会社の取扱いが大きく変わります。実務では、差押債権目録に「給料(基本給と諸手当。ただし通勤手当を除く)」や「賞与」「退職金」「役員報酬」「役員としての賞与」「役員退職慰労金」といった対象が列挙されることがあります。

目録で分岐する典型パターン(会社側の確認観点)
  • 給与(基本給・諸手当)について「通勤手当を除く」と明記される例があるため、支給項目の切り分けが必要です。
  • 賞与は、賞与として目録に入っていれば対象になり、給与と同様に「税・社保控除後残額」を基礎にする記載が一般的です。
  • 退職時の退職金について「退職金から所得税及び住民税を控除した残額の4分の1」といった形で上限が明示される運用例があります。
  • 役員報酬・役員賞与は、目録に「本命令送達日以降支払期の到来する役員報酬及び役員としての賞与」として記載される類型があり、従業員給与と同一視してよいかは目録・支払実態に従って判断します。

特に役員関係は、従業員給与と異なる法的性質(委任等)になり得るため、会社側は「目録に何が書かれているか」を最優先にし、疑義があれば執行裁判所(書記官)に照会して誤控除を避けます。

競合時の優先順位と配当手続

先後関係と配当手続への移行

同一の給与債権に対して複数の差押命令が届き、差押可能額の枠内で処理できない競合が生じると、会社が個別に支払先・按分を決める局面ではなくなります。さらに、差押命令には「頭書金額に満つるまで」といった上限が書かれるのが通常で、競合時はその上限管理も含めて裁判所主導の整理(配当)になじみます。

加えて、差押えは無制限ではなく、差押対象債権の価額が請求債権額と執行費用額の合計を超えるときは、追加の差押えが制限される(超過差押えの禁止)という枠組みがあり(民事執行法146条2項(民事執行法第146条))、競合実務でも「差押額が過大になっていないか」という観点が入ります。

交付要求と参加差押の違い

国税等の世界では、民事の「差押命令」とは別に、執行裁判所に対して配当を求める交付要求が問題になります。参照される運用では、交付要求は「交付要求書を執行裁判所に提出して行う」ものとされ、記載事項や書式が国税徴収法令等に基づいて定まると整理されています。

交付要求の実務上の要点(会社が知っておくべき範囲)
  • 交付要求は、交付要求書を執行裁判所に提出して行われます(会社が受け取る通知が「裁判所宛て提出」を前提にしていることがあります)。
  • 東京地裁民事執行センターでは、交付要求書に根拠法条の記載漏れや誤記等がある場合、配当期日等まで又は配当要求終期までに補正・再提出を促す運用が示されています。
  • 滞納処分が先行し、滞調法10条3項に基づく交付要求であることを明記すべき場面があるとされています(裁判所側に優先関係を明らかにする趣旨です)。

会社としては、行政機関からの通知が「差押え(滞納処分)」なのか「交付要求」なのかで、社内の支払留保・供託・照会の動きが変わるため、書面の種類を取り違えないことが重要です。

民事差押が複数あるときに会社が自分で按分してはいけない場面

民事差押が複数競合しているのに、会社が債権額に応じて独自按分し、債権者へ直接支払うのは危険です。競合局面では「会社が払えば払うほど、別の債権者から不足分を請求される」構造になり、結果として二重払いにつながります。

また、競合とは別に、差押え自体にも「請求債権+執行費用」の満足に必要な限度に制限するという発想があり、金銭債権では超過差押えの禁止(民事執行法146条2項(民事執行法第146条))が正面から問題になります。会社は「届いた命令を見たまま」機械的に複数先へ送金するのではなく、競合の兆候(複数命令・交付要求・滞納処分通知)を把握した時点で、執行裁判所への照会や、供託を含む適法手段に切り替える必要があります。

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国税差押と供託の実務

国税徴収法の給与差押との競合

国税等の滞納処分と民事の債権執行が競合する場合、前提として租税優先の原則(国税徴収法8条(国税徴収法第8条))があり、民事執行手続で租税優先を機能させるには「配当要求の終期までに交付要求がされる必要がある」と整理されています。会社としては、税務署等からの書面が交付要求なのか、差押え(滞納処分)なのかを区別しつつ、配当手続との関係を見誤らないことが重要です。

さらに、参照される運用(Q42)では「滞納処分手続が先行する場合」という整理があり、競合時の結論が一律に「民事が常に先」になるわけではありません。したがって、社内では先後関係(どちらが先に差押え・手続開始に至ったか)と、裁判所側の配当手続の進行状況(配当要求終期等)をセットで把握する必要があります。

二重払いを避ける執行供託の使い方

会社が二重払いのリスクを最小化する実務手段として、供託は重要です。供託を行うことで、会社は紛争当事者から距離を取り、支払の適法性を担保しやすくなります。

ただし、供託へ切り替える前提として「どの範囲が差押対象か」を目録どおりに確定する必要があります。参照される目録例では、

目録にみる差押対象・控除の典型記載
  • 給料は「基本給と諸手当(ただし通勤手当を除く)」を基礎にし、所得税・住民税・社会保険料控除後残額の4分の1(ただし月額44万円超なら33万円控除後)とする記載が示されています。
  • 賞与も同様に、税・社保控除後残額の4分の1(同じく44万円超なら33万円控除後)とする記載が示されています。
  • 退職時には、退職金から所得税・住民税を控除した残額の4分の1を、給与・賞与と合算して頭書金額に満つるまでとする記載が示されています。

会社は、対象債権(給与・賞与・退職金等)ごとに「控除の前提」「上限(頭書金額)」「継続条件(退職したときの扱い)」を外さずに処理し、競合が疑われるときほど直接支払いに固執しない運用が安全です。

民事執行と国税滞納処分が重なったときの判断順序と照会先

民事執行と国税等の滞納処分が重なった場合、判断の軸は「先後関係」だけでなく、租税優先の原則が民事配当で働くための要件(配当要求終期までの交付要求)を満たしているかにもあります(国税徴収法8条(国税徴収法第8条))。

競合時の実務判断の順序(会社側)
  1. 届いた書面の種類を仕分けします(裁判所の差押命令、税務署等の滞納処分による差押え、執行裁判所宛ての交付要求に関する通知など)。
  2. 会社への送達日・差押日等の先後関係を時系列で整理し、給与支払期との関係(送達日以降支払期到来分か)を確定します。
  3. 民事配当の中で租税優先を主張できる前提として、配当要求終期までに交付要求がされているかという観点を確認します(会社単独で確定できない場合は照会します)。
  4. 照会は、執行裁判所(書記官)と、滞納処分を行った税務署・自治体の徴収担当窓口に行い、会社が独断で優先順位を確定しないようにします。

東京地裁民事執行センターの運用として、交付要求書の根拠法条の記載不備がある場合に補正を促す取扱いが示されているため、会社が受領する通知に不備が疑われる場合でも、会社側で補完解釈して処理を進めず、発出元・裁判所への確認を優先します。

継続管理と従業員対応

長期化する給与差押の管理方法

給与差押は「頭書金額に満つるまで」継続する形が多く、管理の失敗は過不足控除(従業員への不当控除・債権者への不足弁済)につながります。特に差押債権目録の運用例では、給与・賞与で満額に達しないまま退職した場合に、退職金(例:退職金から所得税・住民税控除後残額の4分の1)へ移行して合算する条項が置かれており、在職中だけの管理では足りません。

継続管理台帳に最低限載せる項目
  • 命令の事件番号・送達日・頭書金額・差押債権目録の対象範囲(給与/賞与/退職金/役員報酬等)。
  • 毎月(または支払期ごと)の控除前提(所得税・住民税・社会保険料控除後残額、通勤手当除外の有無など目録どおり)。
  • 差押実行額(または供託額)と累計、頭書金額に対する残高。
  • 退職・休職・支払形態変更(毎月→毎半月等)など、支払期区分に影響するイベント。

差押禁止額は支払期によって44万円/22万円/14万6667円など基準が変わり得るため、給与の支払形態が変わった場合は、差押可能額の計算ロジックも見直します。

従業員への説明と人事労務上の配慮

従業員への説明では、会社の裁量ではなく、命令書(差押債権目録)に従う必要があることを、事実ベースで伝えます。例えば、目録に「本命令送達日以降支払期の到来する給与等」「頭書金額に満つるまで」といった記載がある場合、会社はその枠内でしか動けません。

また、扶養義務等債権の差押えでは、給与・賞与(税・社保控除後)の2分の1まで差押え可能となる特例が示されており(166万円以下のとき2分の1、266万円超なら33万円控除後まで)、従業員の手取りが大きく減ることがあります。従業員が生活上の事情を訴える場合でも、会社が差押額を任意に下げることはできないため、社内窓口の案内は「法的にできること/できないこと」を明確に切り分けて行います。

人事・経理・法務で月次確認する資料と更新タイミング

差押実務は、月次で「計算」「支払(または供託)」「証跡保全」を回す必要があり、部門横断での突合が重要です。特に、目録に「基本給と諸手当(通勤手当除外)」や「税・社保控除後残額」といった前提が書かれている場合、賃金台帳の項目設計とズレると誤差押になり得ます。

月次で突合する資料(例)
  • 賃金台帳(基本給・諸手当・通勤手当・控除内訳が分かるもの)。
  • 差押命令書正本と別紙目録(請求債権目録・差押債権目録の双方)。
  • 交付要求に関する通知がある場合は、その写し(根拠法条の記載の有無も含めて保存します)。
  • 供託をした場合は供託書正本(または写し)と、裁判所への提出書類(事情届等)の控え。

更新タイミングは、給与計算確定日(差押可能額を確定)と支払日(実際の控除・供託・振込の実行)を軸に固定し、競合が疑われるときは支払日前に法務が執行裁判所・徴収担当へ照会する運用にします。

よくある質問

従業員本人に全額を支払うと会社の責任になりますか?

差押命令が送達され、差押債権目録に記載された範囲の支払が制限されているにもかかわらず、従業員本人に全額を支払うと、会社は債権者に対抗できず、結果として二重払いのリスクを負います。第三債務者には損害賠償責任が問題になり得るため、従業員の事情にかかわらず、目録(例:「本命令送達日以降支払期の到来する給与等」「頭書金額に満つるまで」)どおりに処理する必要があります。

後から別の債権者の差押命令が届いたらどうなりますか?

後から別の差押命令が届いた場合、まず両命令の差押債権目録を突合し、対象が同じ給与債権か(給与のみか、賞与・退職金まで含むか)を確認します。そのうえで、競合が疑われ、会社が支払先・按分を独断で決めると二重払いの危険が高い場合は、執行裁判所への照会や、供託を含む適法手段への切替を検討します。

あわせて、差押えには超過差押えの禁止(民事執行法146条2項(民事執行法第146条))という枠組みがあり、請求債権額と執行費用の範囲を外観上明らかに超える差押えが問題になり得ます。会社は「届いた順に払う」ではなく、競合の整理を裁判所手続に委ねる前提で動くのが安全です。

税務署の給与差押と裁判所の差押命令はどちらが優先ですか?

国税等には租税優先の原則があり(国税徴収法8条(国税徴収法第8条))、民事執行手続で優先を受けるには「配当要求の終期までに交付要求がされる」必要があると整理されています。したがって、「税務署の通知が差押え(滞納処分)なのか、交付要求なのか」「配当要求終期までに交付要求が適法にされているか」により、民事配当手続の中での扱いが変わります。

実務では、会社が独断で優先順位を確定させるのではなく、執行裁判所(書記官)と税務署・自治体の徴収担当に照会し、支払留保・供託を含めた適法ルートで処理します。東京地裁民事執行センターの運用では、交付要求書に根拠法条の記載不備がある場合に補正を促す取扱いも示されています。

パートやアルバイトの給与にも同じ差押禁止割合が適用されますか?

雇用形態にかかわらず、給与の差押禁止の考え方は共通で、支払期に応じた差押禁止額(例:毎月は44万円超なら33万円、毎半月は22万円超なら16万5000円、毎旬は14万6667円以上なら11万円)が前提になります。

したがって、パート・アルバイトであっても、月払いか、毎半月払いか、日給・週給に近い「その他の期間」かによって、差押禁止額の算定(1万1000円×期間日数など)が変わり得ます。会社は雇用形態ではなく、支払期区分と「税・社保控除後残額」を基礎に、目録の記載どおりに処理します。

給与二重差押への対応で次にすべきこと

給与二重差押の実務では、まず差押債権目録で「何が対象か」を確定し、送達日と支払期到来の関係から未払給与の範囲を切り分けることが起点になります。差押禁止額(例:毎月は44万円超なら33万円)や、扶養義務等債権の特例(2分の1まで)といった計算ルールを踏まえつつ、競合が疑われる場面で会社が独断で按分・送金すると二重払いリスクが高まります。民事差押と国税等が重なる場合は、租税優先が民事配当で働くための要件(配当要求終期までの交付要求)なども含め、書面の種類を取り違えないことが判断の軸です。次のアクションとして、競合の兆候が出た時点で執行裁判所(書記官)や税務署・自治体の徴収担当へ照会し、必要に応じて供託への切替を検討してください。個別事案は事情により結論が変わり得るため、社内の法務・顧問弁護士等の専門家とも連携して進めるのが安全です。



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