民事再生とは?手続きの流れ、破産との違い、メリット・デメリットを解説
企業の経営状況が悪化し、事業の立て直しを模索する中で、法的な再建手続きを検討されている方も多いのではないでしょうか。事業を消滅させる破産とは異なり、事業を継続しながら再建を目指す民事再生は、その有力な選択肢の一つです。この記事では、民事再生の基本的な仕組みから、他の手続きとの違い、メリット・デメリット、具体的な流れまでを網羅的に解説します。
民事再生とは?事業再建を目指すための法的整理手続き
事業の維持・継続を目的とする再建型の手続き
民事再生とは、財務的に困難な状況にある債務者が、事業を続けながら再建を図るための法的な手続きです。民事再生法に基づき、裁判所の監督のもとで再生計画を策定し、債権者の多数の同意を得て実行します。会社の消滅を前提とする清算型の破産手続きとは異なり、事業の維持・継続を目的とする再建型の手続きであることが最大の特徴です。収益力はありながらも過大な負債で資金繰りが悪化している企業にとって、有効な選択肢となります。具体的には、再生計画によって債務の一部免除を受け、残りの債務を原則として3年から10年の分割で弁済し、経営の正常化を目指します。
経営陣が引き続き経営を担う「DIP型」が原則
民事再生の大きな特徴は、原則として従来と同じ経営陣が経営権を維持したまま手続きを進める「DIP(Debtor in Possession)型」である点です。事業内容や商流を熟知した経営者が指揮を執ることで、事業価値の低下を最小限に抑え、迅速な意思決定による再建が期待されます。これは、裁判所が選任する管財人が経営を主導する会社更生手続きとの決定的な違いです。ただし、経営陣が完全に自由なわけではなく、裁判所から選任された監督委員の監督下に置かれます。重要な財産の処分や多額の借入れなど、特定の行為には監督委員の同意が必要となり、一定の制約のもとで経営を行うことになります。なお、経営陣に不正行為などの問題がある場合には、例外的に管財人が選任される「管理型」の手続きに移行することもあります。
他の法的整理手続きとの違い(破産・会社更生)
事業消滅を前提とする「破産」との相違点
民事再生と破産の最も大きな違いは、事業を継続させるか、それとも清算するかという目的にあります。それぞれの特徴は以下の通りです。
| 項目 | 民事再生 | 破産 |
|---|---|---|
| 目的 | 事業の維持・再建 | 会社の清算・消滅 |
| 手続きの種類 | 再建型 | 清算型 |
| 経営陣の処遇 | 原則として留任(DIP型) | 全員退任し、破産管財人が就任 |
| 申立て要件 | 支払不能や債務超過の「おそれ」がある段階で可能 | 支払不能や債務超過が「発生」していることが要件 |
大企業が主な対象となる「会社更生」との相違点
会社更生も民事再生と同じ再建型の手続きですが、主に利害関係者が多数にのぼる大企業を対象としており、手続きの進め方や権利の扱いに大きな違いがあります。
| 項目 | 民事再生 | 会社更生 |
|---|---|---|
| 主な対象 | 中小企業から大企業まで幅広く利用可能 | 主に大規模な株式会社 |
| 手続きの主体 | 原則として既存の経営陣(DIP型) | 裁判所が選任する更生管財人(管理型) |
| 株主の権利 | 原則として維持される | 100%減資などで権利を失うことが多い |
| 担保権の扱い | 手続き外で権利行使が可能(別除権) | 手続き内に取り込まれ、権利行使が禁止される |
民事再生を選択するメリット
経営陣が留任し、事業を継続できる
民事再生の最大のメリットは、会社を消滅させることなく、事業を熟知した経営陣が主導して再建を進められる点です。これにより、以下のような利点が生まれます。
- 経営の混乱を最小限に抑え、顧客や取引先との関係を維持しやすい
- これまで培ってきた技術やノウハウ、ブランド価値を守ることができる
- 事業に必要な許認可を失うことなく、営業を継続できる
- 経営者自身が事業を失わずに済むという精神的な利点もある
個別の事情に応じた柔軟な再生計画を立てられる
民事再生では、企業の財務状況や収益力に応じて、オーダーメイドの再生計画を策定できます。画一的なルールではなく、実情に合わせた再建が可能です。
- 将来のキャッシュフロー予測に基づき、現実的な弁済率や弁済期間を設定できる
- 自社の収益で返済する自力再建だけでなく、資産売却やスポンサー支援など多様な手法を組み合わせられる
- 全債権者の同意が不要で、議決権者の過半数かつ総議決権額の2分の1以上の賛成で計画を可決できる
- 一部の債権者の強硬な反対によって再建が頓挫するリスクを回避できる
事業に必要な契約関係を維持しやすい
事業の基盤となる取引先との契約関係を維持しやすい点も、民事再生の大きなメリットです。事業の継続に不可欠な契約を選択して履行し、不要な契約は解消するといった戦略的な判断が可能になります。
- 双方未履行の契約について、履行するか解除するかを選択する権利が経営者に与えられる
- 裁判所の許可を得て、事業継続に不可欠な少額の商取引債権を優先的に弁済できる制度がある
- 主要な仕入先などをつなぎ止め、サプライチェーンを維持したまま再建を進められる
民事再生に伴うデメリットとリスク
社会的信用の低下と取引への影響
民事再生は法的な倒産手続きであるため、申立てが公になると企業の社会的信用は一時的に大きく低下します。これにより、事業運営に様々な支障が生じる可能性があります。
- 新規の取引を開始することが困難になる
- 既存の取引先から与信を停止され、現金決済を求められる
- ブランドイメージの悪化により、顧客離れが起きるリスクがある
- 金融機関からの新たな融資は原則として受けられなくなる
担保権の実行により事業用資産を失う可能性
民事再生手続きでは、不動産などに設定された抵当権などの担保権は「別除権」として扱われ、手続きとは無関係に権利行使が可能です。そのため、金融機関などの担保権者が担保不動産の競売などを申し立てた場合、事業に不可欠な工場や本社ビルを失うリスクがあります。これを回避するには、個別に担保権者と交渉して弁済に関する協定を結ぶか、資産の時価相当額を支払って担保権を消滅させる(担保権消滅請求)などの特別な対応が必要となり、交渉が不調に終われば再建の大きな障害となります。
手続きにかかる費用負担と専門家の協力が不可欠
民事再生の申立てには、多額の費用を現金で準備する必要があります。資金が完全に尽きてからでは、手続きを開始することすらできません。
- 裁判所への予納金(負債総額に応じて最低でも200万円程度から、規模によっては数千万円)
- 申立てを代理する弁護士への着手金や成功報酬
- 財産評価や計画策定を支援する公認会計士などへの費用
- 手続き期間中の事業を維持するための運転資金
信用不安の中で主要取引先との関係を維持する注意点
申立て直後の混乱期に、主要な取引先との関係をいかに維持するかは再建の成否を分けます。対応を誤ると、連鎖的な取引停止を招きかねません。
- 特定の取引先にだけ優先的に返済する偏頗弁済は、債権者平等の原則に反するため絶対に行わない
- 事業継続に不可欠な少額債権については、裁判所の許可を得て優先弁済する適法な手段を検討する
- 今後の取引は確実に支払いを行うことを約束し、誠実な態度で信頼回復に努める
- 代表者が直接出向いて再建計画を説明し、協力をお願いするなど、丁寧なコミュニケーションを心がける
民事再生の利用条件と主な再建手法
民事再生の申立てが可能となる法的要件
民事再生を申し立てるには、法律で定められた以下のいずれかの要件を満たす必要があります。破産状態に陥る前の、より早い段階で再建に着手できるよう配慮されています。
- 債務者に破産手続開始の原因(支払不能や債務超過)となる事実が生ずるおそれがある場合
- 債務者が事業の継続に著しい支障を来すことなく、弁済期にある債務を弁済することができない場合
自社のキャッシュフローで再建を目指す「自力再建型」
自力再建型は、外部からの資金援助に頼らず、自社の事業から生み出される将来のキャッシュフロー(営業利益)を原資として債務を弁済していく、最も基本的な手法です。
- 既存事業が黒字であるか、早期の黒字化が見込めることが不可欠な条件となる
- 経営の独立性を保ちやすく、既存の株主構成を維持したまま再建を進められる
- 銀行からの追加融資は見込めないため、厳しい資金繰り管理が求められる
- 財務状況が著しく悪い場合は、債権者の同意を得るのが難しいことがある
スポンサーからの資金援助を受ける「スポンサー型」
スポンサー型は、資金力のある第三者の支援を受けて再建を図る手法です。自社の力だけでは再建が困難な場合に、近年多く用いられています。
- スポンサーからの資金提供により、弁済原資を確保し、債権者の同意を得やすくなる
- 事業譲渡や増資などの手法で、スポンサーの経営資源(販売網や技術)を活用できる
- 手続きを迅速に進め、早期の事業再生が期待できる
- 既存の経営陣が交代したり、株主が権利を失ったりするなど、経営権が移動する可能性が高い
申立て前に検討・準備すべき実務上のポイント
民事再生を成功に導くには、申立て前の周到な準備が極めて重要です。情報管理を徹底し、秘密裏に準備を進める必要があります。
- 手続き開始後の数か月間、現金決済で事業を継続できるだけの運転資金を確保する
- 民事再生に精通した弁護士を代理人に選任し、法的な手続きと戦略を練る
- メインバンクなど主要な債権者の意向を把握し、協力の可能性を探る
- 取締役会の決議など、申立てに必要な社内手続きを整える
- 債権者への説明シナリオや、再建の見通しを示す事業計画の骨子を固めておく
民事再生手続きの具体的な流れ
① 裁判所への申立てと保全処分
まず、債務者が管轄の地方裁判所に民事再生手続開始の申立書を提出します。同時に、債権者による差押えや、一部の債権者への返済を防ぐため、弁済禁止の保全処分を申し立てるのが一般的です。裁判所がこれを認めると、会社の財産は保全され、事業継続に必要な資金を確保しながら、手続き開始の準備に入ることができます。
② 監督委員の選任と手続き開始決定
申立て後、裁判所は中立的な立場で手続きを監督する監督委員(通常は弁護士)を選任します。監督委員は、債務者の財産管理を監視し、重要な経営判断に同意を与えるなどの役割を担います。その後、裁判所が申立て内容を審査し、問題がなければ民事再生手続開始決定を下します。通常、申立てからおおむね1~2週間で決定が下され、この時点で手続きが正式にスタートします。
③ 財産状況の調査・報告と債権の届出
開始決定後、経営陣は自社の全財産を評価する財産評定を行い、財産目録と貸借対照表を作成して裁判所に報告します。一方、債権者は定められた期間内に、自らの債権額を裁判所に届け出ます。経営陣は届け出られた債権の内容を精査し、認めるか否かの認否作業を行います。これにより、会社の資産と負債の全体像が正確に確定します。
④ 再生計画案の作成・提出
確定した資産と負債を基に、事業の収益見通しを踏まえ、具体的な再生計画案を作成します。計画案には、債務を何パーセント免除してもらうか(弁済率)、残りをどのように返済していくか(弁済計画)といった中核部分に加え、事業の収益性を改善するための具体策を盛り込みます。この際、破産した場合の配当額を上回る弁済を保証する「清算価値保障原則」を満たす必要があります。
⑤ 債権者集会での決議と裁判所の認可
作成された再生計画案は、債権者集会での投票などによって決議に付されます。計画が可決されるには、「出席した議決権者の過半数の賛成」と「総議決権額の2分の1以上」という2つの要件を同時に満たす必要があります。可決後、裁判所が内容を審査し、法的な問題がなければ再生計画の認可決定を下します。この決定が確定すると、計画は反対した債権者も含め、すべての関係者を法的に拘束します。
⑥ 再生計画の遂行と手続きの終結
再生計画の認可決定が確定すると、会社は計画に沿って弁済を開始します。通常3年から10年にわたる弁済期間中、監督委員が計画の履行状況を監督します。計画通りに弁済が進み、事業の再建に支障がないと判断された場合(原則として認可からおおむね3年後)、または計画上の弁済がすべて完了した場合に、裁判所は民事再生手続の終結決定を下します。これにより、会社は裁判所の管理下から離れ、正式に再出発を果たします。ただし、終結後も残りの弁済義務は続くため、計画を完遂するまで経営努力が求められます。
民事再生に関するよくある質問
民事再生手続きにはどのくらいの費用がかかりますか?
民事再生には、申立て時に多額の現金を一括で用意する必要があります。資金がショートしてからでは手遅れになるため、早期の準備が不可欠です。
- 裁判所への予納金: 負債総額に応じて決まり、中小企業でも最低200万円程度から。負債額が大きければ数千万円に達することもある。
- 弁護士費用: 申立代理人となる弁護士への着手金や成功報酬。予納金と同等かそれ以上になることも多い。
- 運転資金: 手続き中は金融機関からの融資が止まるため、仕入代金や従業員の給与を支払うための数か月分の現金を確保しておく必要がある。
民事再生をすると従業員の雇用はどうなりますか?
民事再生は事業継続を前提とするため、破産と違い、従業員の雇用は原則として維持されます。ただし、再建計画の内容によっては、人員整理が避けられない場合もあります。
- 手続き開始を理由とする一方的な解雇は認められない。
- 手続き開始後の給与は「共益債権」として、他の債務より優先して全額支払われる。
- 手続き開始前の未払給与や退職金も、一定の範囲で優先的に保護される。
- 収益改善のため、不採算部門の縮小などに伴う人員削減(リストラ)が行われる可能性はある。
取引先との契約は維持できますか?
事業継続に不可欠な取引先との契約を維持できるかどうかは、再建の成否を左右する重要なポイントです。法的な保護と、実務上のリスクの両側面があります。
- 民事再生の開始のみを理由として、取引先が一方的に契約を解除することは法的に無効とされる可能性が高い。
- 契約書に「倒産解除条項」がある場合、それを根拠に取引停止や現金決済への切り替えを要求されるリスクがある。
- 重要な契約を維持するには、代表者が直接交渉し、今後の支払いを確約するなど、誠実な対応で信頼関係を再構築することが不可欠となる。
再生計画が債権者に否決された場合はどうなりますか?
再生計画案が債権者集会で可決されなかった場合、再建の道は極めて厳しくなります。原則として、裁判所は民事再生手続きを廃止し、職権で破産手続に移行させます。つまり、会社は再建を断念し、資産をすべて換金して債権者に配当する清算手続きに入ることになります。一度否決されても、計画案を修正して再度決議にかける機会が与えられることも稀にありますが、そのためには主要債権者の協力が不可欠です。否決を避けるため、計画策定の段階から債権者の理解を得られるよう、事前の交渉や調整を尽くすことが何よりも重要です。
まとめ:民事再生は事業再建の有力な選択肢、ただし専門家との早期相談が鍵
本記事では、事業再建を目指す民事再生手続きについて、その仕組みやメリット・デメリット、具体的な流れを解説しました。民事再生は、経営陣が留任したまま事業を継続できる強力な再建手法ですが、社会的信用の低下や担保権実行といったリスクも伴います。自社のキャッシュフローで返済する自力再建型と、スポンサーの支援を受けるスポンサー型があり、状況に応じた選択が可能です。手続きには多額の費用と専門的な知識が必要となるため、資金が完全に尽きる前に、経験豊富な弁護士へ相談し、最適な選択肢を検討することが成功の鍵となります。

