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民事再生の手続きと流れを解説|申請要件・費用・成功のポイント

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企業の経営状況が悪化し、事業の立て直しを模索する中で、民事再生という選択肢を検討されている経営者の方も多いのではないでしょうか。民事再生は、経営陣が続投しながら事業の継続を図れる強力な法的手段ですが、その手続きは複雑で正確な理解が不可欠です。この記事では、民事再生の申立て方法から手続き終結までの具体的な流れ、費用、そして成功に導くための実践的なポイントを網羅的に解説します。

目次

民事再生の基本概要と他の法的整理手続きとの違い

事業を継続しながら再建を目指す「再建型」の手続き

民事再生とは、経済的に困難な状況にある債務者が、事業や生活の再生を図るための法的手続きです。この手続きの最大の特徴は、事業を停止させずに継続しながら負債を整理し、再建を目指す「再建型」である点にあります。原則として現在の経営陣が経営権を維持したまま手続きを進めるため(債務者自主管理型)、事業のノウハウや取引先との関係を活かした再建が可能です。債権者の多数の同意を得て策定された再生計画に基づき、圧縮された債務を原則として10年以内の期間で分割して弁済していきます。債権者にとっては、破産した場合の配当よりも多くの弁済を受けられるというメリットがある場合に、この計画に同意します。このように民事再生は、企業の社会的価値を守りつつ、利害関係者の利害を調整する強力な法的手段です。

民事再生の申立てが可能となる要件(申立権者と申立原因)

民事再生の申立ては、債務者本人だけでなく、債権者も行うことができます。申立てが認められるための主な原因は、民事再生法第21条に定められており、実際に経営が破綻する前の段階で、早期に着手できる点が特徴です。

民事再生の申立原因
  • 破産手続開始の原因となる事実が生ずるおそれがある場合:支払不能や債務超過に陥る具体的な可能性がある状態を指します。
  • 事業の継続に著しい支障を来すことなく弁済期にある債務を弁済することが困難である場合:事業を継続しながらでは、弁済期が到来した債務を支払うことが難しい状態を指します。無理に支払いを続けると、事業活動に支障が生じるおそれがあるケースです。

申立ての際は、これらの原因が存在することを資金繰り表や決算書といった客観的な資料で裁判所に疎明(説明)する必要があります。事業価値が大きく損なわれる前に再建に着手できる点が、民事再生の大きなメリットです。

会社破産(清算型手続き)との根本的な違い

民事再生と会社破産は、手続きの目的が「再建」か「清算」かという点で根本的に異なります。会社破産は会社の法人格を消滅させることがゴールですが、民事再生は事業を存続させることが前提となります。

項目 民事再生(再建型) 会社破産(清算型)
目的 事業を継続し、会社を再建する 全資産を換価・配当し、会社を消滅させる
経営陣 原則として現経営陣が続投する 裁判所が選任した破産管財人が財産を管理し、経営権は失われる
事業活動 原則として継続される 完全に停止される
債務の弁済 計画に基づき、長期間(原則10年以内)分割で弁済する 資産の換価後、一括で配当される
民事再生と会社破産の主な違い

会社更生(大規模企業向け)との主な相違点

同じ再建型の手続きである会社更生とは、主に対象企業の規模や手続きの厳格さで異なります。民事再生は中小企業も利用しやすい柔軟な手続きであるのに対し、会社更生は主に社会的影響の大きい大企業を想定した制度です。

項目 民事再生 会社更生
主な対象 中小企業から大企業、個人まで幅広く利用可能 主に大規模な株式会社
経営陣 原則として現経営陣が続投する 原則として退任し、裁判所が選任する更生管財人が経営を行う
担保権の扱い 担保権者は手続き外で権利行使が可能(別除権) 担保権も手続き内に取り込まれ、権利行使が制限される
利用可能な法人格 株式会社、持分会社、個人など制限なし 株式会社のみ
民事再生と会社更生の主な違い

民事再生手続きの具体的な流れ|申立てから終結まで

申立てから終結までの全体像とタイムライン

民事再生手続きは、裁判所への申立てから再生計画が認可されるまで、標準的にはおおむね5か月から6か月の期間を要します。認可後も、計画通りの弁済が完了するか、3年程度が経過して履行が確実と認められるまで手続きは続きます。非常に緻密なスケジュール管理が求められます。

民事再生手続きのタイムライン(目安)
  1. 弁護士への相談・申立て準備:申立ての意思決定後、秘密裏に準備を進めます。
  2. 裁判所への申立て:申立てと同時に、債務の弁済を禁じる保全処分が発令されます。
  3. 再生手続開始決定:申立てから約1~2週間後。監督委員の監督のもと、手続きが本格化します。
  4. 債権の届出・調査・確定:債権者が債権額を届け出て、会社側がその内容を認めるか否かを判断します。
  5. 再生計画案の作成・提出:開始決定から約3か月後。会社の財産状況に基づき、弁済計画を作成します。
  6. 再生計画案の決議・認可:計画案提出から約2か月後。債権者集会で決議され、裁判所が認可します。
  7. 再生計画の遂行:認可の翌月から、計画に沿った弁済を開始します。
  8. 手続きの終結:計画の弁済が完了、または認可から3年が経過し履行が確実となった時点で終結します。

ステップ1:専門家への相談と申立て準備(必要書類と資料)

民事再生を検討する場合、まず事業再生に精通した弁護士などの専門家へ相談することが不可欠です。申立ての準備は、取引先や従業員の動揺を防ぐため、極めて秘密裏に進められます。準備には多岐にわたる資料が必要となり、特に事業継続の生命線となる資金繰りの見通しが重要視されます。

主な必要書類・資料
  • 直近3期分の決算書(確定申告書、勘定科目内訳書など)
  • 不動産登記簿謄本や固定資産評価証明書
  • 全ての預金通帳のコピー(過去1〜2年分)
  • 債権者一覧表および債務者一覧表
  • 今後の事業計画書および資金繰り予定表
  • 申立てに関する取締役会議事録

ステップ2:裁判所への申立てと保全処分・監督委員の選任

申立書が裁判所に受理されると、直ちに弁済禁止の保全処分が発令されます。これにより、大半の債務の支払いが一時的に停止され、債権者による差押えなども防がれるため、会社の資金流出を食い止めることができます。同時に、裁判所は手続きの公正性を確保するため、監督委員(主に弁護士)を選任します。以降、会社の重要な財産処分や借入れには監督委員の同意が必要となり、その監督下で再建が進められます。申立て後すぐに経営者、代理人弁護士、監督委員による三者面談が行われ、再生の見込みなどが聴取されます。

ステップ3:再生手続開始決定後の主要プロセス(債権調査・財産評定)

再生手続の開始決定後、債権額と財産状況を確定させるための手続きが本格化します。まず、債権者は定められた期間内に債権額を裁判所に届け出ます。会社側はその内容を精査し、認めるか否か(認否)を記載した書面を提出します。一方で、会社は開始決定時点での全財産を評価(財産評定)します。この評価額は、仮に会社が破産した場合の配当額(清算価値)を算出する基礎となり、再生計画で定められる弁済額がこの清算価値を下回ってはならないという「清算価値保障原則」の基準となります。

ステップ4:再生計画案の作成・提出・決議・認可

債権額と財産状況が固まったら、再建の設計図となる再生計画案を作成します。計画案には、債務の免除率や残債務の弁済方法・期間などを具体的に定めます。計画案は裁判所が定めた期限までに必ず提出しなければならず、遅れると手続きが廃止されてしまいます。提出された計画案は、債権者集会または書面投票によって決議に付されます。

再生計画案の可決要件
  • 議決権を行使した再生債権者の過半数の同意
  • 議決権を行使した議決権者の議決権総額の2分の1以上の議決権を有する者の同意

この2つの要件を同時に満たして可決されると、裁判所は計画の実現可能性などを審査し、問題がなければ認可決定を下します。認可が確定すると、計画で免除された債務の支払義務は法的に消滅します。

ステップ5:再生計画の遂行と手続きの終結

再生計画の認可が確定すると、会社は計画に定められた弁済を開始します。弁済期間中、通常は認可後3年間、監督委員による監督が継続され、会社は定期的に業務や財産の状況を報告する義務を負います。万が一、計画通りの弁済が困難になった場合は、再生計画が取り消され、破産手続きに移行する可能性があります。計画通りに弁済が完了した場合、または認可から3年が経過し、計画の遂行が確実であると裁判所が判断した場合に、再生手続の終結決定がなされます。これにより、会社は裁判所の管理から完全に離れ、自律的な経営を取り戻します。

民事再生を申請するメリット・デメリット

主なメリット:経営陣が続投し事業継続を目指せる

民事再生の最大のメリットは、会社を消滅させることなく、現在の経営陣が事業を続けながら再建を目指せる点にあります。これにより、会社の強みを活かした柔軟な再生が可能です。

民事再生の主なメリット
  • 経営陣の続投:原則として経営陣が交代しないため、培ってきたノウハウや人脈を維持できる。
  • 事業の継続:事業を止めずに済むため、従業員の雇用や取引先との関係を守ることができる。
  • 負債の大幅な圧縮:再生計画の認可により、債権者の同意を得て債務の元本を大幅にカットできる。
  • 取立ての停止:申立て後の保全処分により、債権者からの取立てや差押えが停止し、経営再建に専念できる。

主なデメリット:社会的信用の低下や担保権実行の可能性

一方で、民事再生にはデメリットやリスクも伴います。「倒産した」という事実が公になることで、事業に様々な影響が及ぶことを覚悟しなければなりません。

民事再生の主なデメリット
  • 社会的信用の低下:官報への掲載などにより信用が低下し、新規取引や資金調達が困難になる可能性がある。
  • 取引条件の悪化:既存の取引先から、現金払いや前払いを求められるケースがある。
  • 担保権実行のリスク:抵当権などの担保権は手続きに拘束されず、担保権者が競売などを申し立てる可能性がある。
  • 高額な費用:裁判所への予納金や弁護士費用など、多額の費用が必要となる。
  • 計画不認可・破産移行のリスク:再生計画案が債権者に否決された場合、破産手続きへ移行することがある。

民事再生の申立てにかかる費用の内訳

裁判所に納める予納金の金額目安

民事再生を申し立てる際、裁判所に予納金を納付する必要があります。これは主に、手続きを監督する監督委員の報酬などに充てられる費用です。金額は負債総額に応じて定められており、裁判所ごとに基準が異なります。

負債総額 予納金額
5,000万円未満 200万円
5,000万円以上 1億円未満 300万円
1億円以上 5億円未満 400万円
5億円以上 10億円未満 500万円
10億円以上 600万円~
予納金の目安(東京地方裁判所の場合)

この予納金は申立て時に原則として一括で納付する必要があり、支払えなければ手続きを開始できません。資金が完全に尽きる前の、早期の決断が重要となります。

弁護士に依頼する場合の費用相場

民事再生は極めて専門的な手続きであるため、弁護士への依頼が不可欠です。弁護士費用は主に着手金成功報酬で構成されます。着手金は、申立ての準備段階で支払う費用で、会社の規模にもよりますが、中小企業でも200万円~500万円程度が目安となります。成功報酬は、再生計画が認可された際に支払うもので、免除された債務額の一定割合や、事案の難易度に応じた金額となります。これらに加え、必要に応じて公認会計士や税理士などの専門家への報酬も発生するため、事前に総額の見積もりを確認しておくことが重要です。

民事再生を成功に導くための実践的ポイント

資金繰りが悪化する前の迅速な意思決定と申立て

再生の成否を分ける最大の要因は、申立てのタイミングです。手元の現金が完全に枯渇した後では、裁判所への予納金や弁護士費用、当面の運転資金を捻出できず、申立て自体が不可能になります。資金繰りに窮する前に、少なくとも数か月先の資金繰りを見越した上で、財務的な余力があるうちに迅速に決断することが、再建の可能性を最大限に高めます。早期の申立ては、事業価値の低下を防ぎ、関係者の動揺を最小限に抑える効果もあります。

債権者への誠実な情報開示と協力関係の構築

民事再生は、債権者に多大な損失をお願いする手続きであるため、その多数の同意なくしては成立しません。成功のためには、債権者の理解と協力を得ることが不可欠です。申立て後に行われる債権者説明会などでは、経営危機に至った原因を包み隠さず説明し、今後の再建策について真摯に説明する姿勢が求められます。粉飾決算などの不正があった場合は、自ら早期に開示し、謝罪することが信頼回復の第一歩です。透明性を確保し、債権者を再建のパートナーとして尊重する姿勢が、計画案への賛成につながります。

事業の収益性を裏付ける実現可能な再生計画の策定

再生計画案は、希望的観測ではなく、客観的なデータに裏打ちされた実現可能なものでなければなりません。裁判所や債権者は、その計画に本当に遂行可能性があるのかを厳しく審査します。不採算事業からの撤退、コスト構造の見直し、新たな収益源の確保など、具体的で実効性のある収益改善策を盛り込む必要があります。誰が見ても納得できる、堅実な数字の積み上げと論理的な事業戦略こそが、計画の説得力を高め、認可を得るための鍵となります。

申立て前後の主要関係者(取引先・従業員)への対応実務

申立て直後は、取引先や従業員が最も動揺する時期であり、迅速かつ丁寧な対応が事業継続の鍵を握ります。事業に不可欠な主要な取引先には、個別に状況を説明し、今後の取引継続をお願いしてサプライチェーンの維持を図ります。従業員に対しては、説明会などを開いて誠実に状況を伝え、雇用の維持を約束することで不安を解消し、再建への協力を求めることが重要です。関係者の混乱を最小限に抑えるため、事前に対応マニュアルを準備しておくことが望ましいでしょう。

スポンサー選定の進め方とプレ・パッケージ型の留意点

自社の資金力だけでの再建が困難な場合、資金援助や経営支援を行うスポンサーを探すことがあります。スポンサーからの資金で弁済率を高められれば、債権者の同意を得やすくなります。スポンサーの選定は、入札手続きなどを通じて公正性・透明性を確保することが重要です。近年では、申立て前にスポンサーを内定させておく「プレ・パッケージ型」の手法も増えています。この方法は、申立て直後の信用不安を抑制できるメリットがありますが、選定プロセスが不透明だと見なされないよう、合理的な選定理由を説明できる準備が必要です。

民事再生に関するよくある質問

民事再生をすると会社の債務(借金)はどうなりますか?

再生計画が認可されると、金融機関からの借入れなどの一般再生債権は、元本を含めて大幅に免除されます。残りの債務については、再生計画に定められた弁済率と期間(原則10年以内)に基づき、分割で返済していくことになります。ただし、税金や社会保険料、従業員の給与といった一部の債権は免除の対象外となり、優先的に支払う必要があります。

手続き中、従業員の給与は支払われますか?

はい、通常通り支払われます。従業員の給与(労働債権)は、民事再生手続きにおいて優先的に保護される権利であり、手続き開始によって支払いが止められることはありません。事業を継続し、再建を成功させるためには従業員の協力が不可欠であり、給与の支払いは経営者の重要な責務です。申立て前に未払い給与があった場合も、優先的に支払われます。

経営者は必ず退任しなければならないのでしょうか?

いいえ、必ずしも退任する必要はありません。原則として現在の経営陣がそのまま経営を続けながら再建を目指せるのが、民事再生の大きな特徴です(会社更生との違い)。ただし、経営責任を明確にするため、あるいは債権者の理解を得るための経営判断として、役員報酬のカットや一部役員の交代が行われるケースはあります。特に、経営者に重大な経営判断の誤りがあった場合などは、債権者から退任を求められることもあります。

民事再生の成功率はどのくらいですか?

「成功」をどう捉えるかで変わります。まず、裁判所に再生計画を提出し、認可を得るという意味での成功率は、専門家と適切に手続きを進めれば比較的高くなります。しかし、認可後に計画通りの弁済を完了し、事業を軌道に乗せるという真の意味での成功率は、決して高いとは言えません。ある調査では、認可後に10年間事業を継続できる企業は約3割というデータもあります。再生計画の認可はゴールではなく、本格的な事業再生のスタートラインです。

まとめ:民事再生は迅速な決断と実現可能な計画が成功の鍵

本記事では、民事再生の概要から具体的な手続きの流れ、費用、成功のポイントまでを解説しました。民事再生は、経営陣が主導権を握りながら事業を継続できる強力な再建手法ですが、社会的信用の低下や多額の費用といったデメリットも伴います。手続きの成功は、何よりも財務的な余力があるうちの「迅速な意思決定」と、客観的なデータに裏付けられた「実現可能な再生計画」の策定にかかっています。債権者の理解を得るための誠実な対応も不可欠です。もし民事再生を少しでも検討しているならば、手遅れになる前に、まずは事業再生に精通した弁護士などの専門家に相談し、自社の状況を客観的に評価してもらうことが賢明な第一歩となるでしょう。

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