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事業再生で活用できる助成金・補助金の種類と申請のポイント

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経営状況の改善や思い切った事業転換には、まとまった資金が不可欠です。その際、返済不要の公的な助成金・補助金は、融資と並行して検討すべき有力な選択肢となります。しかし、制度の種類が多く、どれが自社に適しているか判断が難しいと感じる方も多いでしょう。この記事では、事業再生や事業再構築の各フェーズで活用できる主要な助成金・補助金制度の種類、特徴、申請時の注意点までを網羅的に解説します。

目次

事業再生で活用できる主な助成金・補助金

助成金と補助金の基本的な違いとそれぞれの特徴

事業再生や経営改善で活用できる公的制度には、主に「助成金」と「補助金」があります。両者は性質が異なるため、違いを理解しておくことが重要です。

項目 助成金 補助金
主な管轄 厚生労働省 経済産業省、中小企業庁、地方自治体など
主な財源 雇用保険料 税金(国や地方自治体の予算)
目的 雇用の維持・安定、労働環境の改善など 国の政策目標達成(新技術開発、設備投資など)
受給の難易度 要件を満たせば原則受給可能 審査で採択される必要があり、必ず受給できるとは限らない
助成金と補助金の比較

いずれの制度も、原則として経費の支出後に支給される後払い(精算払い)です。そのため、事業実施期間中の資金は自己資金や融資で賄う必要があります。

事業再生のフェーズごとに見る活用可能な制度の類型

企業の経営状況によって必要な支援は異なります。事業再生の支援は、一般的に以下の3つのフェーズに分けて考えられます。

事業再生の3つのフェーズと主な支援策
  • 経営改善フェーズ: 自力での改善が可能だが、将来的なリスクを抱える段階。認定経営革新等支援機関による「早期経営改善計画策定支援」などが活用できます。
  • 再生フェーズ: 収益性はあるものの過剰債務を抱える段階。中小企業活性化協議会による再生計画策定支援や、金融機関との交渉(リスケジュール)が中心となります。
  • 再チャレンジフェーズ: 事業継続が困難な場合に、円滑な廃業や経営者の保証債務整理を支援し、再起を促す段階。

公募状況と申請スケジュールの一般的な確認方法

補助金や助成金は公募期間が限られているため、常に最新情報を確認することが不可欠です。申請準備は以下の点を押さえて進めましょう。

公募情報確認と申請準備のポイント
  • 情報収集: 中小企業庁の公式サイトや、中小企業基盤整備機構のポータルサイト「J-Net21」などで最新情報を確認します。
  • スケジュール把握: 補助金は公募期間が数週間程度と短い場合があるため、締切日を早期に把握することが重要です。
  • 電子申請の準備: 多くの申請は電子申請システム「Jグランツ」で行われます。利用には「GビズIDプライムアカウント」が必須です。
  • IDの事前取得: GビズIDの発行には数週間かかる場合があるため、公募開始前に取得手続きを済ませておくとスムーズです。

【主要制度】事業再構築補助金の概要と申請プロセス

事業再構築補助金の目的と制度の全体像

事業再構築補助金は、経済社会の変化に対応するため、中小企業などが思い切った事業再構築に挑戦することを支援する制度です。ポストコロナ・ウィズコロナ時代を見据え、日本経済の構造転換を促すことを目的としています。

事業再構築補助金の主な特徴
  • 大規模な事業転換を支援: 新分野展開や業態転換、事業再編など、大胆な挑戦を後押しします。
  • 大型の予算規模: 従来の補助金と比較して予算規模が大きく、高額な補助上限が設定されています。
  • 建物費も対象: 新規の店舗や工場建設に伴う「建物費」や改修費も補助対象となる点が大きな特徴です。
  • 政策に応じた更新: 公募回ごとに成長分野への進出や賃上げへのインセンティブが強化されるなど、要件が見直されます。

補助対象となる事業者と主な申請要件

本補助金の対象は、中小企業基本法に定義される中小企業者や中堅企業などです。申請には、複数の要件をすべて満たす事業計画の策定が求められます。

主な申請要件
  • 事業再構築指針への合致: 国が示す「事業再構築指針」の定義(新市場進出、事業転換など)に該当する事業計画であること。
  • 認定支援機関との連携: 事業計画を認定経営革新等支援機関(税理士、金融機関など)と共同で策定し、確認を受けること。
  • 付加価値額の目標: 補助事業終了後、3年から5年で付加価値額などを一定水準以上(例:年率平均3.0%以上)向上させる計画であること。
  • 金融機関の確認: 金融機関から融資を受ける場合は、その金融機関による事業計画の確認書を提出すること。

補助対象経費の内訳と補助額・補助率

補助の対象は、事業拡大に直接つながる資産への投資が中心です。補助額や補助率は申請する枠や企業の規模によって変動します。

主な補助対象経費
  • 建物費(建設・改修)、建物撤去費
  • 機械装置・システム構築費
  • 技術導入費、専門家経費
  • クラウドサービス利用費、外注費
  • 広告宣伝・販売促進費、研修費

例えば「成長分野進出枠(通常類型)」では、中小企業の補助率は原則1/2ですが、大幅な賃上げを行う場合は2/3に引き上げられます。補助上限額も従業員規模に応じて、最大で数千万円規模に設定されます。

主な申請類型(成長枠・グリーン成長枠など)の解説

事業再構築補助金には、企業の目的や状況に応じて複数の申請類型(枠)が設けられています。自社の計画に最も合致する枠を選択することが重要です。

主な申請類型の例
  • 成長分野進出枠(通常類型): 今後市場が拡大する業種・業態への転換や、新たな市場への進出を支援します。
  • 成長分野進出枠(GX進出類型): グリーン成長戦略で示された分野の課題解決に貢献する取り組みを対象とし、補助上限額が優遇されます。
  • コロナ回復加速化枠(最低賃金類型): 最低賃金の引き上げにより経営が厳しい事業者が、生産性向上に取り組む場合などを支援します。

申請から補助金受給までの一般的な流れ

補助金は、申請してすぐに受け取れるわけではありません。事業の実施と経費の支払いを終えた後に精算払いされるため、一連の流れを理解しておく必要があります。

申請から受給までの一般的な流れ
  1. 電子申請システム(Jグランツ)で申請書類を提出します。
  2. 審査を経て、採択結果が通知されます。
  3. 採択後、補助金交付の具体的な手続きである「交付申請」を行い、「交付決定」を受けます。
  4. 交付決定日以降に、事業計画に沿った発注・契約・支払いなどを実施します。
  5. 事業完了後、経費の証拠書類を揃えて「実績報告書」を提出します。
  6. 事務局による確定検査を経て補助金額が確定し、請求手続き後に補助金が支払われます。
  7. 補助金受給後も、原則として5年間は事業化状況を報告する義務があります。

中小企業再生支援協議会(現:中小企業活性化協議会)を通じた支援

中小企業活性化協議会の役割と支援内容

中小企業活性化協議会は、各都道府県に設置された公的機関です。収益力改善から事業再生、再チャレンジに至るまで、中小企業のあらゆる相談に応じる「駆け込み寺」としての役割を担います。(旧:中小企業再生支援協議会と経営改善支援センターが統合)

協議会によるフェーズごとの主な支援内容
  • 収益力改善フェーズ: 経営課題を分析し、具体的な改善アクションプランの策定を支援します。
  • 再生フェーズ: 外部専門家と連携し、金融機関の合意形成を前提とした抜本的な再生計画の策定を支援します。
  • 再チャレンジフェーズ: やむを得ず廃業を選択する場合に、円滑な手続きや経営者の再スタートをサポートします。

協議会による再生計画策定支援と関連する金融支援

再生フェーズにある企業に対し、協議会は中立的な立場で再生計画の策定を支援します。この計画には、財務状況を改善するための金融支援要請が盛り込まれることが多く、協議会が金融機関との調整役を担います。

再生計画に盛り込まれる主な金融支援
  • 返済条件の変更(リスケジュール): 一定期間、元金の返済を猶予または減額します。
  • 債務の株式化(DES): 債権者である金融機関が、債権を現物出資して企業の株式を取得する方法です。
  • 債権放棄: 金融機関に債務の一部または全部を免除してもらいます。

これにより、企業は過剰債務を圧縮し、事業の立て直しに集中することが可能となります。

補助金申請と並行して進めるべき金融機関との協議

事業再構築補助金のような大型の補助金を活用する場合、自己資金で不足する分は金融機関からの融資で賄うのが一般的です。補助金は後払いのため、事業実施中の「つなぎ資金」が不可欠だからです。また、補助金の種類によっては、申請時に金融機関による事業計画の確認書が求められます。そのため、補助金の検討段階からメインバンクなどの金融機関と十分に協議し、再生計画への理解と協力を得ることが成功の鍵となります。

事業再構築補助金以外の関連制度

地域再生中小企業創業助成金の概要と対象者

この助成金は、特に雇用情勢が厳しい地域において、地域経済の活性化に貢献する創業を支援する制度です。

地域再生中小企業創業助成金のポイント
  • 対象地域: 国が指定する、雇用機会の創出が特に必要な地域が対象です。
  • 対象事業者: 対象地域で法人設立または開業し、地域再生に資する事業を行い、求職者を2人以上雇い入れる中小企業主です。
  • 主な助成内容: 法人設立などに要した経費の一部と、雇い入れた従業員数に応じた奨励金が支給されます。

街なか再生助成金の概要と対象事業

この助成金は、全国の市街地における賑わいの創出や、能登半島地震などの被災地の復興まちづくりに取り組む民間団体を支援します。

街なか再生助成金のポイント
  • 目的: 街なかの再生や賑わい創出、被災市街地の復興まちづくりを支援します。
  • 対象団体: まちづくり会社、NPO法人、地権者で構成される協議会などの民間団体が対象です。
  • 助成金額: 1件あたりの上限は100万円です。
  • 対象事業: イベント実施や合意形成、既存建物の活用調査など、本格的な整備事業の前段階となるソフト事業が中心です。

自社に適した制度の選び方と申請時の注意点

各制度の目的と自社の事業計画との整合性を確認する

補助金や助成金を選ぶ際は、金額の大きさだけでなく、制度の目的と自社の事業計画が合致しているかを最も重視すべきです。例えば、生産性向上を目指すなら「ものづくり補助金」、新分野への挑戦なら「事業再構築補助金」というように、自社の課題や目指す方向性に沿った制度を選ぶことが採択への近道です。制度の趣旨とずれた計画は採択されにくく、無理な計画は本来の経営方針を見失う原因にもなります。

申請準備におけるポイントと専門家の活用方法

申請準備を円滑に進めるためには、いくつかの重要なポイントがあります。特に事業計画書の作成は専門知識を要するため、外部の専門家をうまく活用することが推奨されます。

申請準備のポイント
  • 公募要領の熟読: 制度の目的、要件、審査項目などを正確に理解することから始めます。
  • 専門家の活用: 認定経営革新等支援機関(税理士、中小企業診断士など)に相談し、客観的で説得力のある事業計画を作成します。
  • GビズIDの事前取得: 電子申請に必須のGビズIDは、申請から取得まで時間がかかるため、早めに手続きを済ませます。
  • 余裕のあるスケジュール: 必要書類の準備には時間がかかるため、公募開始前から余裕を持って準備を進めます。

採択後に見落としがちな事務手続きと報告義務

採択はゴールではなく、スタートです。補助金を確実に受給し、その後の義務を果たすためには、採択後の手続きを正しく理解しておく必要があります。

採択後の主な注意点
  • 交付決定日: 補助対象となる経費は、原則として「交付決定」を受けた日以降に発注・契約したものに限られます。
  • 実績報告: 事業完了後は、すべての経費について見積書や請求書、支払い証明などの証拠書類を揃えて「実績報告」を行う必要があります。
  • 厳格な経費管理: 事務手続きに不備があると、経費が補助対象外となるリスクがあるため、正確な管理が求められます。
  • 事業化状況報告: 補助金受給後、通常5年間は事業の状況を国に報告する義務があり、補助金で購入した資産を無断で処分することはできません。

事業再生の助成金・補助金に関するよくある質問

赤字決算の企業でも申請できる制度はありますか?

はい、可能です。多くの制度は、赤字決算であること自体を不採択の理由とはしていません。重要なのは、その赤字状態から脱却し、将来的に収益性が改善・向上することを示す、説得力のある事業計画を作成できるかどうかです。中小企業活性化協議会の支援などは、むしろ財務状況が悪化した企業を主な対象としています。

最新の公募スケジュールはどこで確認できますか?

公募情報は公式サイトで確認するのが最も確実です。以下の情報源を定期的にチェックすることをお勧めします。

主な情報源
  • 中小企業庁や各制度の事務局の公式ウェブサイト
  • 中小企業基盤整備機構が運営するポータルサイト「J-Net21」
  • 認定経営革新等支援機関や商工会議所などの支援機関からの情報提供

申請から補助金受給までの標準的な期間はどのくらいですか?

制度や事業規模によりますが、一般的に1年以上かかるケースが多く見られます。申請締切から採択発表までに数ヶ月、そこから交付決定を経て事業を実施し(事業期間は最長1年程度)、事業完了後の実績報告、確定検査を経てから支払いとなるためです。長期的な資金繰り計画が必須となります。

複数の補助金・助成金に同時に申請することは可能ですか?

はい、事業内容(テーマ)が異なれば可能です。ただし、同一の事業内容や同一の経費(例:同じ機械装置の購入費)に対して、国の複数の補助金を重複して受給することは認められていません。申請する際は、それぞれの事業内容や対象経費を明確に切り分けて計画する必要があります。

まとめ:自社の状況に合う制度を見極め、計画的な活用を

本記事では、事業再生や事業再構築で活用できる助成金・補助金制度を解説しました。代表的な「事業再構築補助金」をはじめ、企業のフェーズや目的に応じて多様な制度が存在します。最も重要なのは、各制度の目的と自社の事業計画との整合性を見極め、最適なものを選択することです。いずれの制度も原則として後払いのため、金融機関との連携による「つなぎ資金」の確保も欠かせません。まずは自社の課題を明確にし、中小企業活性化協議会や認定支援機関といった専門家へ相談しながら、計画的に準備を進めましょう。

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