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支払督促の仮執行宣言申立てとは?費用・手続き・必要書類を解説

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支払督促の手続きにおいて債務者から異議が出なかった場合、次はいよいよ強制執行の準備段階である仮執行宣言の申立てに進みます。この手続きを自社で進めるにあたり、具体的にどれくらいの費用がかかるのかを正確に把握しておくことが重要です。この記事では、支払督促の仮執行宣言申立てにかかる費用の具体的な内訳や金額、そしてその費用を債務者に請求する方法までを詳しく解説します。

支払督促手続きにおける仮執行宣言の申立て

支払督促が確定するまでの流れと仮執行宣言のタイミング

支払督促の手続きで債権を回収するには、裁判所からの支払督促の発付だけでは不十分であり、強制執行を可能にする「債務名義」として完成させる必要があります。そのための手続きが仮執行宣言の申立てです。

支払督促確定から仮執行宣言申立てまでの流れ
  1. 支払督促正本の送達: 裁判所から債務者へ支払督促正本が送達されます。
  2. 督促異議申立期間の経過: 債務者が支払督促正本を受け取った日の翌日から2週間、異議を申し立てないまま経過するのを待ちます。
  3. 仮執行宣言の申立て: 督促異議申立期間が満了した日から30日以内に、債権者は裁判所へ仮執行宣言の申立てを行います。

この30日間の申立期間を過ぎると、発付された支払督促は効力を失ってしまいます。そのため、送達日を正確に把握し、期限を厳守することが極めて重要です。

仮執行宣言の申立てを行う目的と得られる効力

仮執行宣言の申立ては、支払督促を法的に強制力のある文書へと進化させるために不可欠な手続きです。

仮執行宣言の目的と効力
  • 目的: 支払督促に強制執行力を付与し、法的な強制回収の根拠となる「債務名義」として完成させることです。
  • 得られる効力: 債務者の預金、給与、不動産などの財産を差し押さえる強制執行の申立てが可能になります。
  • 確定的効果: 仮執行宣言付支払督促が債務者に送達され、その後2週間以内に異議がなければ、支払督促は確定し、確定判決とほぼ同等の効果が確定的に生じます。

これにより、債権者は時間と費用のかかる訴訟手続きを経ずに、迅速な債権回収に着手できます。

仮執行宣言付支払督促正本受領後の実務と強制執行への移行準備

裁判所から仮執行宣言が付された支払督促正本が届いたら、速やかに強制執行の準備を開始します。具体的な実務手順は以下の通りです。

正本受領後の実務手順
  1. 正本内容の確認: 届いた正本に仮執行宣言が付されていること、および事件番号や当事者名などに誤りがないかを点検します。
  2. 送達証明の準備: 強制執行の申立てには、債務者への送達を証明する書類が必要です。管轄の裁判所の運用を確認し、必要であれば送達証明書の交付を申請します。
  3. 債務者の財産調査: 差押えの対象となる財産(銀行口座、勤務先、所有不動産など)を具体的に特定します。
  4. 強制執行の申立て: 調査結果に基づき、民事執行法に従って強制執行申立書を作成し、管轄の裁判所に提出します。

仮執行宣言の申立てにかかる費用の内訳と金額

申立手数料としての収入印紙代

仮執行宣言の申立て自体には、原則として新たな申立手数料(収入印紙)はかかりません。支払督促の申立ては、当初の申立時に訴額に応じた手数料(通常の訴訟の半額)を納付すれば、その後の仮執行宣言の段階で追加の印紙代は不要です。

ただし、債務者から督促異議が申し立てられ、手続きが通常の民事訴訟へ移行した場合は、訴訟手数料との差額分(残り半額)の収入印紙を追加で納付する必要があります。

送達等に用いる郵便切手代

申立手数料は不要ですが、仮執行宣言付支払督促正本を債権者と債務者へ送達するための郵便切手(予納郵券)を裁判所に納める必要があります。

郵便切手代に関するポイント
  • 用途: 仮執行宣言付支払督促正本を当事者双方に送達するために使用します。
  • 金額の目安: 債務者1名の場合、特別送達料などを含めて1,000円~1,500円程度が一般的です。
  • 注意点: 金額や切手の組み合わせは各簡易裁判所によって異なります。また、債務者の人数に応じて費用が加算されるため、事前に管轄裁判所のウェブサイト等で正確な金額を確認することが重要です。

申立費用総額の具体例

仮執行宣言の申立てで債権者が負担する費用は、主に郵便切手代などの実費のみとなり、数千円程度で収まることがほとんどです。以下に債務者が1名の場合の費用例を示します。

費用項目 金額の目安
債務者への送達費用(郵便切手) 約1,200円
債権者への通知費用など 約100~200円
合計 約1,300~1,400円
申立費用総額の具体例(債務者1名の場合)

これらの費用は法的に「督促手続費用」として認められており、申立書に記載することで、最終的に元本や利息と共に債務者へ請求することが可能です。

仮執行宣言の申立て手続きの流れと必要書類

申立てから仮執行宣言付支払督促正本が送達されるまでの手順

仮執行宣言の申立ては、厳格な期間制限の中で進められます。手続きの主な流れは以下の通りです。

申立てから正本送達までの手順
  1. 申立書提出: 債務者の督促異議申立期間(支払督促正本送達の翌日から2週間)が満了した日から30日以内に管轄の簡易裁判所へ仮執行宣言申立書を提出します。
  2. 審査・発付: 裁判所書記官が申立書を審査し、形式的な要件を満たしていれば、支払督促に仮執行宣言を付します。
  3. 正本の送達: 裁判所書記官が債権者・債務者双方に対し、仮執行宣言が付された支払督促正本を送達します。
  4. 強制執行の権利取得: 正本が債務者に適法に送達された時点で、債権者は債務者の財産に対して強制執行を申し立てる権利を得ます。

なお、この段階で債務者の住所が不明になった場合、調査を尽くした上で「公示送達」を利用できることがあります。

申立てに必要な書類の一覧と準備方法

仮執行宣言の申立てには、主に以下の書類が必要です。事前に準備を整え、スムーズな手続きを心がけましょう。

仮執行宣言申立ての必要書類
  • 仮執行宣言申立書: 裁判所の窓口やウェブサイトで入手できる書式、または必要事項を記載した自作の書面。
  • 当事者目録・請求の趣旨及び原因の写し: 当初の支払督促申立書に添付したものと同じ内容のもの。
  • 郵便切手(予納郵券): 事前に裁判所に確認した正しい金額と内訳のものを準備します。
  • その他: 裁判所から提出を求められた書類(例:支払督促正本の受領書など)。

書類に不備がないか、特に当初の申立て内容と齟齬がないかを慎重に確認してから提出します。

仮執行宣言申立書の書き方のポイントと注意点

仮執行宣言申立書を作成する際は、いくつかの重要なポイントを押さえる必要があります。記載内容の正確性が、手続きを円滑に進める鍵となります。

申立書作成のポイント
  • 事件番号の正確な記載: 「令和〇年(ロ)第〇〇号」といった事件番号を、支払督促事件特定のために必ず記載します。
  • 当事者の記載: 債権者・債務者の氏名や住所を、当初の支払督促申立書と完全に一致させます。
  • 手続費用の追記: この申立てで新たにかかった郵便切手代などの実費を「申立手続費用」として正確に計算し、追記します。
  • 日付・記名押印の確認: 申立日の記載や、申立人の記名押印(法人の場合は代表者印)を忘れないようにします。

記載に誤りがあると裁判所から補正を求められ、期間徒過のリスクが生じるため、提出前の入念なチェックが不可欠です。

申立て後の送達不能リスクと住所調査の重要性

仮執行宣言付支払督促正本も、債務者に送達されなければ法的な効力は発生しません。当初の支払督促送達後に債務者が転居し、所在不明となるケースがあります。このような送達不能リスクへの対応は重要です。

送達不能時の対応フロー
  1. 送達不能の通知: 裁判所から、債務者へ送達ができなかった旨の連絡を受けます。
  2. 住所調査の実施: 速やかに債務者の住民票や戸籍の附票などを取得し、転居先などの現住所を調査します。
  3. 公示送達の申立て: 調査を尽くしても所在が判明しない場合、調査報告書などの疎明資料を添えて「公示送達」を申し立てることができます。

送達不能の連絡に迅速に対応できるよう、住所調査の準備を整えておくことが望ましいです。

申立てにかかった費用を債務者に請求する方法

督促手続費用として申立費用を請求する手続き

支払督促および仮執行宣言の申立てに要した費用は、「督促手続費用」として債務者に請求することが法的に認められています。この請求は、別途請求書を送るのではなく、支払督促の申立書自体に費用額を記載し、債務名義に含めてもらう形で行います。

当初の支払督促申立書に印紙代や切手代、書類作成費用などを記載し、さらに仮執行宣言の申立ての際にも、そこで新たにかかった費用を追加で申立書に記載します。これにより、裁判所が認めた手続費用が強制執行の対象額に加算されます。

債務者に請求できる費用の範囲と上限

債務者に請求できる費用は、法令でその範囲と上限が定められています。無制限に請求できるわけではありません。

債務者に請求できる費用の主な内訳
  • 申立手数料: 裁判所に納付した収入印紙代の実費。
  • 送達費用: 裁判所に予納した郵便切手代の実費。
  • 資格証明書手数料: 申立人が法人の場合に必要となる登記事項証明書などの取得費用。
  • 書面作成・提出費用: 法令で定められている基準に基づいて算定される費用(例:支払督促申立書作成費用など)。

弁護士に依頼した場合の弁護士費用全額を「手続費用」として上乗せすることは原則として認められないため、法令の範囲内で正確に計算し、過大な請求とならないよう注意が必要です。

仮執行宣言の申立てに関するよくある質問

仮執行宣言の申立てに期限はありますか?

はい、厳格な期限が定められています。債務者に支払督促正本が送達された日の翌日から2週間の「督促異議申立期間」が満了した日から、30日以内に申し立てる必要があります。この期間を過ぎると支払督促自体が無効になるため、期限管理は非常に重要です。

収入印紙や郵便切手はどこで購入すればよいですか?

収入印紙は、郵便局、法務局内の印紙販売所、一部のコンビニエンスストアなどで購入できます。郵便切手も郵便局やコンビニエンスストアで購入可能ですが、裁判所が指定する金種(例:500円切手〇枚、100円切手〇枚など)を揃える必要があるため、品揃えが豊富な郵便局での購入をお勧めします。

申立書はどの裁判所に提出すればよいですか?

仮執行宣言の申立ては、その元となる支払督促を発付した簡易裁判所の裁判所書記官に対して行います。郵送で提出する場合も、この簡易裁判所宛てに送付します。オンラインで支払督促を申し立てた場合は、同じシステム上で手続きが可能です。

納付した費用を間違えた場合、返金手続きは可能ですか?

はい、可能です。手数料(収入印紙)を多く払い過ぎた場合や、申立てを取り下げた場合などは、「手数料還付の申立て」を行うことで返還されることがあります。また、予納した郵便切手が使用されずに余った場合は、手続き終了後に返還されます。具体的な手続きは、申立てをした裁判所にご確認ください。

まとめ:費用を正確に把握し、期限内に仮執行宣言の申立てを

支払督促の仮執行宣言申立てにかかる費用は、新たな収入印紙代が不要で、主に郵便切手代などの実費のみであり、比較的少額で済みます。これらの費用は「督促手続費用」として申立書に記載することで、本来の債権と合わせて債務者に請求することが可能です。最も重要なのは、督促異議申立期間が満了した日から30日以内という厳格な申立期間を遵守することです。この記事で解説した費用の内訳や手続きの流れを参考に、正確な書類を準備し、速やかに申立てを行いましょう。期限内に手続きを完了させることが、時間と費用をかけた支払督促を無駄にせず、最終的な債権回収(強制執行)へと繋げる鍵となります。

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