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商標登録の異議申立て期間はいつまで?手続きの流れ・費用・代替手段を解説

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自社の事業に類似する他社の商標登録を発見し、その登録を阻止したいとお考えではないでしょうか。このような場合に有効な手段が「商標登録異議申立て」ですが、この手続きには厳格な期間制限があり、迅速な判断が求められます。特に、いつまでに行動を起こすべきかという期間のルールは、正確に把握しておく必要があります。この記事では、商標登録異議申立てが可能な具体的な期間を中心に、手続きの流れ、費用、成功率、そして期間を過ぎてしまった場合の代替手段までを網羅的に解説します。

目次

商標登録異議申立てとは?申立て可能な期間を解説

商標登録異議申立て制度の目的と概要

商標登録異議申立てとは、特許庁による商標登録に法律上の登録要件を満たさない瑕疵(かし)がある場合に、第三者がその登録の取消しを求めることができる制度です。審査官は慎重に審査を行いますが、誤って登録されるべきでない商標が登録されてしまう可能性はゼロではありません。本制度は、こうした審査の誤りを是正し、商標登録制度に対する社会的な信頼を確保することを公益的な目的としています。

この制度の大きな特徴は、申立てを行う者の資格に制限がないことです。商標権者と利害関係がない第三者であっても、誰でも申立てを行うことができます。ただし、この手続きはあくまで特許庁が自らの判断で登録の適否を再審査するものであり、当事者間の紛争解決を直接の目的とはしていません。そのため、申立人は一度申立書を提出すると、その後の審理に原則として関与することはできません。

申立て期間はいつからいつまで?商標公報の発行日から2ヶ月

商標登録異議申立てができる期間は、「商標掲載公報」の発行日の翌日から起算して2ヶ月以内と厳格に定められています。商標は、出願、審査、登録査定を経て、登録料を納付することで設定登録されます。その後、登録内容を広く一般に知らせるために商標掲載公報が発行され、この発行が異議申立て期間のスタート地点となります。

期間の計算は暦に従って行われ、初日は算入されません。例えば、5月15日に公報が発行された場合、申立て期間は翌日の5月16日から始まり、2ヶ月後の7月15日が期限となります。もし期限の最終日が土日祝日など特許庁の閉庁日にあたる場合は、その直後の開庁日が期限となります。この期間を1日でも過ぎると申立ては受理されないため、期限管理には細心の注意が必要です。

申立て期間の延長は原則として認められない

商標登録異議申立ての2ヶ月という期間は、法律で定められた不変期間であり、原則として延長することはできません。権利の早期安定を図る観点から、多忙や証拠収集の遅れといった個人的な事情による延長は一切認められていません。

ただし、期間内に申立書を提出しておけば、申立ての理由や証拠を補充するための猶予期間が設けられています。期限ぎりぎりの場合は、まず形式を整えた申立書を提出し、その後に詳細な主張や証拠を追完するという対応が可能です。

申立て理由・証拠の補充期間
  • 国内居住者: 申立期間の満了後30日以内
  • 在外者: 申立期間の満了後90日以内

この補充期間を過ぎてから、全く新しい取消理由を追加することはできないため、最初の申立書で主張の骨子を網羅しておくことが重要です。

商標公報の発行日を見逃さないための監視のポイント

異議申立ての機会を逃さないためには、競合他社の商標登録をいち早く察知し、2ヶ月という短い期間内に準備を整える体制が不可欠です。毎週発行される膨大な公報をすべて自社で確認するのは非効率なため、専門のサービスやツールを活用することが推奨されます。

商標公報の監視ポイント
  • 特許情報プラットフォーム(J-PlatPat)を定期的に検索し、動向を確認する
  • 自社ブランドと類似する商標の登録を自動で通知する民間の商標監視サービスを利用する
  • J-PlatPatで商標のステータスが「存続」であり、商標掲載公報が発行されたことを確認する
  • 社内で定期的なチェック体制を構築し、見逃しを防ぐ

商標登録異議申立ての手続きの流れと審理期間

ステップ1:異議申立書の作成と特許庁への提出

異議申立ては、申立書を特許庁に提出することから始まります。申立書には、申立ての理由や証拠を具体的に記載する必要があり、単に「登録に反対」といった主観的な主張だけでは認められません。

異議申立書の作成・提出手順
  1. 法律で定められた事項を記載した「商標登録異議申立書」を作成する
  2. 申立ての具体的な理由(商標法のどの条文に違反するか)と、それを裏付ける証拠資料を準備する
  3. 商標権者の数に応じた副本と共に、特許庁へ提出する(電子出願も可能)

取消理由としては、他人の先行登録商標との類似や、商標としての識別力がないことなどを、証拠に基づいて論理的に主張することが求められます。

ステップ2:特許庁による審理(取消理由の通知など)

申立書が受理されると、3名または5名の審判官からなる合議体によって、登録に取消理由があるかどうかの実体審理が進められます。審理は原則として書面で行われ、申立人が特許庁に出向くことはありません。

特許庁による審理の流れ
  1. 提出された申立書の形式的な要件を確認する(方式調査)
  2. 審判官からなる合議体が書面審理を開始する
  3. 審判官が必要と判断すれば、申立人が指摘していない理由も職権で調査・審理する
  4. 取消理由があると判断された場合、商標権者に「取消理由通知」を送付し、反論の機会を与える
  5. 商標権者は指定期間内に意見書や手続補正書を提出して反論することができる

この過程で、申立人が商標権者の意見書に対して再反論を行う機会は与えられていません。そのため、最初の申立書で主張を尽くすことが極めて重要です。

ステップ3:異議決定(登録維持または取消)

審理の最終段階として、特許庁は「登録維持決定」または「登録取消決定」のいずれかの判断を下します。この決定により、手続きは終結します。

決定の種類 内容 申立人の不服申立て 商標権者の不服申立て
登録維持決定 申立てに理由がないと判断され、商標登録が維持される 不可(別途、無効審判の請求は可能)
登録取消決定 申立てに理由があると判断され、商標権が遡及的に消滅する 可能(知的財産高等裁判所への訴訟提起)
異議決定の種類と内容

取消決定が確定すると、商標権は初めから存在しなかったものとみなされ、権利は遡って消滅します。一方、維持決定に対して申立人は不服を申し立てられませんが、後述する「商標登録無効審判」を請求する道は残されています。

審理にかかる期間の目安

異議申立てを行ってから最終的な決定が出るまでの審理期間は、事案の複雑さにもよりますが、おおむね8ヶ月から1年程度が目安です。特許庁の統計では、近年の平均審理期間は8〜9ヶ月前後で推移しています。

ただし、以下のような場合には、審理がさらに長期化する可能性があります。

審理が長期化する主な要因
  • 事案の内容が複雑で、慎重な判断を要する場合
  • 商標権者が意見書提出のために期間の延長を請求した場合
  • 複数の異議申立てが同じ登録に対して行われ、併合して審理される場合
  • 商標権者が権利範囲を縮小する複雑な補正を行った場合

異議申立てに必要な理由・費用・成功率

異議申立てが認められる主な理由(登録要件の欠如など)

異議申立てで主張できる理由は、商標法で定められた登録要件の欠如(不登録事由)に限られます。主に、審査段階で見落とされた瑕疵を指摘する形になります。

主な取消理由の例
  • 識別力がない商標(商標法3条違反): 商品の普通名称や品質、産地などを単に表示するもの
  • 他人の先行登録商標と類似(商標法4条1項11号違反): 最も多く主張される理由
  • 他人の周知商標と類似(商標法4条1項10号違反): 未登録でも広く知られた商標と類似する
  • 出所の混同を生じさせる商標(商標法4条1項15号違反): 他人の業務と関係があると誤認させる
  • 公序良俗に反する商標(商標法4条1項7号違反): 社会の一般的道徳観念に反する

申立てにかかる費用(印紙代と弁理士報酬)

異議申立てには、特許庁に納める印紙代と、手続きを専門家に依頼する場合の弁理士報酬が必要です。無効審判や訴訟に比べると、比較的低コストで手続きを行えるのが特徴です。

費用の種類 内容 金額の目安
特許庁印紙代 申立時に納付する手数料(1区分の場合) 11,000円(基本料3,000円 + 1区分8,000円)
弁理士報酬(着手金) 手続を代理人に依頼した場合の費用 10万円~20万円程度
弁理士報酬(成功報酬) 登録取消しに成功した場合の追加費用 10万円~20万円程度
異議申立て費用の内訳

指定する商品の区分数が増えれば印紙代も増加します。また、弁理士報酬は事務所や事案の難易度によって変動します。

異議申立ての成功率の目安

特許庁の統計によると、異議申立てによって商標登録が完全に取り消される「取消決定」となる割合は約1割未満であり、決して高くはありません。一度、審査官の判断を経て登録されたものを覆すのは容易ではないことを示しています。

しかし、この数字だけで制度の価値を判断するのは早計です。申立ての結果、商標権者が自ら権利範囲を縮小する補正を行うケースも多く、これらは申立人にとって「実質的な成功」と言えます。

「実質的な成功」と見なせるケース
  • 商標権者が自社の事業と競合する指定商品を削除した
  • 権利範囲が縮小され、自社の事業活動への支障がなくなった
  • 申立てをきっかけに、有利な条件でのライセンス交渉や和解が成立した

申立ての実行を決める際の社内での検討事項

異議申立てを行うかどうかは、法的な勝算だけでなく、経営的な観点からも慎重に判断する必要があります。実行前には、社内で以下のような多角的な検討が求められます。

異議申立て実行前の社内検討事項
  • 事業上の影響: 対象商標が自社の事業に与える障害の大きさはどの程度か
  • 費用対効果: 申立てにかかるコストと、得られるメリットは見合っているか
  • 相手方との関係: 申立てによって取引先などとの関係が悪化するリスクはないか
  • 成功の確度: 弁理士などの専門家から見た、法的な勝算はどの程度か
  • 出口戦略: 申立てが認められなかった場合、無効審判など次の手段を講じるか
  • 申立人名義: 自社名義で行うか、秘匿性を考慮し代理人名義(弁理士名義)で行うか

異議申立て期間を過ぎてしまった場合の代替手段

商標登録無効審判の請求を検討する

商標掲載公報の発行から2ヶ月の期間を過ぎてしまった場合でも、商標登録無効審判を請求することで、登録を無効にできる可能性があります。無効審判は、異議申立てと異なり、請求できる期間に原則として制限がありません。

ただし、誰でも申立てができた異議申立てとは違い、無効審判にはいくつかの重要な制約があります。

商標登録無効審判の請求要件
  • 請求期間: 商標権の登録後、原則としていつでも請求可能
  • 請求人適格: 登録商標と法律上の利害関係を有する者に限定される
  • 除斥期間: 一部の無効理由については、登録日から5年を経過すると請求できなくなる

異議申立てと無効審判の主な相違点

異議申立てと無効審判は、どちらも登録の有効性を争う手続きですが、その目的や手続きの進め方、費用などに大きな違いがあります。無効審判は、異議申立てよりも強力な手続きである一方、時間とコストの負担も大きくなります。

項目 商標登録異議申立て 商標登録無効審判
目的 公益目的(審査の過誤是正) 私益目的(当事者間の紛争解決)
申立人/請求人 何人も可能 利害関係人のみ
申立/請求期間 商標公報発行日から2ヶ月以内 原則としていつでも可能(一部除斥期間あり)
審理方式 書面審理(査定系) 原則、口頭審理あり(当事者系)
費用(印紙代) 比較的安価(1区分11,000円) 比較的高額(1区分53,000円)
審理期間の目安 約8ヶ月~1年 約1年~1年半
維持決定/審決への不服 申立人は不服申立て不可 請求人・被請求人ともに訴訟提起が可能
異議申立てと無効審判の比較

商標登録異議申立てに関するよくある質問

異議申立ては誰でも行うことができますか?

はい、利害関係の有無を問わず誰でも申立てを行うことができます。商標制度の信頼性を維持するという公益的な目的を持つ制度であるため、申立人の資格は特に限定されていません。

実務上、相手企業との関係悪化を避けるため、申立人の名前を公にしたくないケースもあります。その場合、弁理士を代理人として、その名義で申立てを行う「代理人名義での申立て」という手法も認められています。

申立て期間の最終日が休日の場合、期限はどうなりますか?

最終日が特許庁の閉庁日(土曜日、日曜日、国民の祝日など)にあたる場合、その直後の開庁日が期限となります。例えば、期限日が日曜日の場合は、翌日の月曜日が最終的な提出日となります。

ただし、この例外を除き、いかなる理由であっても期間の延長は認められません。期限が延長されることを当てにせず、常に余裕を持ったスケジュールで準備を進めることが重要です。

自分の商標に異議申立てをされた場合の対応は?

自社の商標に異議が申し立てられた場合、まずは特許庁の判断を待つことになります。商標権者として本格的な対応が必要になるのは、審理の結果、特許庁が「取消理由がある」と判断し、「取消理由通知」を送付してきた場合です。

異議申立てをされた場合の対応フロー
  1. 特許庁から申立書の副本が送付されるが、この時点では特段の対応は不要
  2. 審理の結果、申立てに理由がないと判断されれば「登録維持決定」となり、手続きは終了する
  3. 申立てに理由があると判断された場合、特許庁から「取消理由通知」が届く
  4. 指定された期間内に意見書を提出して反論する、または指定商品を補正して権利範囲を縮小するなどの対応を検討する

取消理由通知を放置すると、登録が取り消されてしまうため、速やかに弁理士などの専門家に相談し、適切な対応をとることが不可欠です。

異議決定に不服がある場合、申し立ては可能ですか?

異議決定に対する不服申立ての可否は、決定の内容とご自身の立場によって異なります。

異議決定に対する不服申立ての可否
  • 商標権者の場合: 「取消決定」に対して、知的財産高等裁判所へ決定の取消しを求める訴訟を提起できます。
  • 申立人の場合: 「維持決定」に対して、不服を申し立てる制度はありません。

申立人は維持決定に直接不服を申し立てることはできませんが、その登録をどうしても無効にしたい場合は、代替手段として商標登録無効審判を新たに請求することが可能です。

まとめ:異議申立ては期間厳守が鍵。迅速な判断と専門家への相談を

本記事では、商標登録異議申立ての制度について、特に重要な「期間」を中心に解説しました。最も重要なポイントは、申立て期間が「商標掲載公報の発行日から2ヶ月以内」という延長不可能な厳格なルールである点です。この機会を逃さないためには、競合他社の動向を常に監視し、問題のある登録を発見した際には迅速に意思決定を行う体制が不可欠です。申立ての成功率は決して高くありませんが、事業上のリスクを低減させるための有効な手段となり得ます。申立てを行うかどうかの判断や、期間を過ぎた場合の無効審判といった代替手段の検討に際しては、費用対効果や事業への影響を多角的に評価し、必要であれば速やかに弁理士などの専門家に相談することをお勧めします。

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