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労働局の是正指導とは?是正勧告との違いから報告書の書き方まで解説

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労働局や労働基準監督署から是正指導を受け、その対応に戸惑いや不安を感じている経営者や人事労務担当者の方もいらっしゃるのではないでしょうか。是正勧告や指導票といった文書にはどのような法的効力があり、もし従わなかった場合、事業にどのようなリスクが生じるのか、正確な知識が求められます。この記事では、労働局による是正指導の目的と種類、調査の流れ、具体的な対応フロー、そして指導を軽視した場合の法的リスクについて網羅的に解説します。

目次

労働局による是正指導とは?目的と法的効力

是正指導の目的と法的根拠

労働局やその下部組織である労働基準監督署が行う是正指導は、企業が労働基準法や労働安全衛生法などの関係法令を遵守しているかを確認し、違反や不適切な状態が見られる場合に改善を促す行政活動です。その主な目的は、労働者の安全と健康を守り、適正な労働条件を確保することにあります。単に違反を摘発して処罰するだけでなく、事業主の自主的な改善を通じて、法令に適合した職場環境を回復させることが重視されます。

この指導の法的根拠は、労働基準法や労働安全衛生法にあります。特に労働基準法第101条や第102条では、労働基準監督官に事業場への立ち入り調査(臨検)、帳簿書類の確認、関係者への尋問といった権限を付与しています。是正指導は、行政手続法上の「行政指導」に該当し、あくまで事業主の任意の協力を前提としますが、その背景には刑事罰を伴う強力な労働法規が存在するため、実質的には強い影響力を持ちます。

労働基準監督署の「是正勧告」との違い

是正勧告とは、労働基準監督署の調査の結果、明確な法令違反が確認された場合に交付される書面による指導です。例えば、36協定を締結せずに時間外労働をさせている、割増賃金が支払われていないなど、具体的な違反事実が特定された際に出されます。「是正勧告書」には、違反している法令の条項、違反内容、そして是正すべき期日が明記され、事業主は期日までに違反状態を解消し、その結果を報告する義務を負います。

是正勧告は行政指導の一環であるため、勧告書自体に直ちに罰則を科すような法的拘束力はありません。しかし、公的機関から「違法状態にある」と指摘されたことを意味するため、これを無視して改善を怠ると、悪質なケースと判断され、検察庁への送検(書類送検)といった刑事手続きに移行するリスクがあります。そのため、是正勧告は極めて重い警告として受け止め、迅速に対応する必要があります。

「指導票」との違いとそれぞれの法的拘束力

指導票は、調査の結果、明確な法令違反とまではいえないものの、労働者の健康確保や職場環境の改善という観点から、改善が望ましいと判断された事項について交付される文書です。例えば、時間外労働が36協定の範囲内であっても恒常的に長時間に及んでいる場合などが該当します。是正勧告書に比べると緊急性や重大性は低いと見なされますが、将来的な法令違反につながるリスクを指摘するものであり、軽視はできません。

法的拘束力の観点では、是正勧告書も指導票も共に行政指導であるため、それ自体に強制力はありません。しかし、それぞれの持つ意味合いと、従わなかった場合のリスクには違いがあります。

項目 是正勧告書 指導票
対象となる事案 明確な法令違反が確認された場合 法令違反ではないが改善が望ましい事項がある場合
緊急性・重大性 高い 相対的に低い
法的拘束力 なし(行政指導) なし(行政指導)
放置した場合のリスク 再監督や検察庁への送検(刑事罰)の可能性あり 再調査の対象となる、将来的に法令違反に発展するリスクがある
是正勧告書と指導票の比較

是正指導が行われるケースと調査から指導までの流れ

是正指導が行われる主なケース(定期監督・申告監督など)

労働基準監督署による調査(監督)は、そのきっかけによっていくつかの種類に分類されます。

監督調査の主な種類
  • 定期監督: 監督署が年間計画に基づき、特定の業種や社会情勢を勘案して対象事業場を選定し、全般的な法令遵守状況を調査します。
  • 申告監督: 在職中または退職した労働者からの賃金不払いや解雇などの申告(通報)を端緒として、その事実確認のために行われる調査です。
  • 災害時監督: 死亡災害など重大な労働災害が発生した際に、原因究明と再発防止策の指導を目的として実施されます。
  • 再監督: 過去に是正勧告を行った事業場に対し、指摘事項が確実に改善されたかを確認するために行われるフォローアップ調査です。

労働局による調査から指導までの具体的なプロセス

調査から指導、報告までの一連の手続きは、概ね以下の流れで進みます。

調査から指導までの流れ
  1. 調査の実施: 事前に日程調整の連絡がある場合と、予告なく監督官が訪問する臨検(抜き打ち調査)があります。
  2. 立ち入り調査: 監督官が事業場を訪れ、事業主や労務担当者へのヒアリング、帳簿書類の確認、事業場内の巡視などを行います。
  3. 是正指導・書面交付: 調査で確認された内容に基づき、法令違反には「是正勧告書」、改善事項には「指導票」が後日交付されます。
  4. 是正報告: 指摘された事項を是正し、指定された期日までに、改善内容をまとめた「是正報告書」を労働基準監督署に提出します。

調査で主に確認される項目と準備すべき書類

調査では労働関係法令全般にわたる項目が確認されますが、特に近年は長時間労働の是正や年次有給休暇の取得に関する項目が重視される傾向にあります。

主な確認項目
  • 労働時間管理(36協定、時間外労働、休憩、休日、年次有給休暇など)
  • 賃金支払い状況(割増賃金の計算、最低賃金の遵守など)
  • 就業規則の作成、届出、周知義務の履行状況
  • 安全衛生管理体制(健康診断の実施、産業医の選任など)
  • 労働条件の明示(雇用契約書や労働条件通知書の交付)

調査に備えて、以下の書類を日頃から適切に整備・保管しておくことが重要です。

準備すべき主な書類
  • 法定三帳簿(労働者名簿、賃金台帳、出勤簿・タイムカード)
  • 就業規則、雇用契約書(労働条件通知書)
  • 36協定届など各種労使協定書
  • 健康診断個人票、産業医選任届の控え
  • 安全衛生委員会の議事録

調査当日の立ち会いにおける心構えと担当者の役割

調査当日は、会社の労務管理状況を正確に説明できる責任者や担当者が立ち会うことが不可欠です。対応にあたっては、以下の点を心がける必要があります。

調査当日の心構え
  • 誠実かつ協力的な態度で対応する。
  • 質問には事実に基づき正確に回答する。
  • 憶測での回答は避け、不明な点は確認後に回答する旨を伝える。
  • 虚偽の陳述や書類の隠蔽は絶対に行わない
  • 必要に応じて、顧問の社会保険労務士などの専門家を同席させることも有効です。

是正指導で指摘されやすい主な違反事項

労働時間・休日・休暇に関する違反

労働時間に関する違反は、是正指導において最も多く指摘される項目の一つです。

労働時間・休日・休暇に関する主な違反例
  • 36協定を締結・届出せずに法定労働時間を超えて労働させている。
  • 36協定で定めた上限時間(月45時間・年360時間など)を超えて時間外労働をさせている。
  • 労働時間に応じた法定の休憩時間を適切に付与していない。
  • 法定休日(週1回または4週4日)を確保できていない。
  • 年10日以上の年休付与対象者に、年5日の年次有給休暇を取得させていない

賃金・割増賃金の未払いに関する違反

賃金、特に割増賃金の未払いは、労働者の生活に直結する重大な違反と見なされます。

賃金・割増賃金に関する主な違反例
  • 時間外・休日・深夜労働に対する割増賃金の未払い(サービス残業)
  • 固定残業代制度において、固定時間を超えた分の割増賃金を支払っていない。
  • 地域別または産業別の最低賃金額を下回る時給で雇用している。
  • 管理監督者ではない従業員を「名ばかり管理職」として扱い、残業代を支払っていない。
  • 賃金支払いの5原則(通貨払い、直接払い、全額払いなど)に違反している。

安全衛生管理体制に関する違反

労働者の安全と健康を守るための体制不備も、厳しく指摘される対象です。

安全衛生管理体制に関する主な違反例
  • 一定規模の事業場で義務付けられている産業医や衛生管理者が選任されていない。
  • 衛生委員会などを毎月開催していない、または議事録を作成・保存していない。
  • 雇入れ時や年1回の定期健康診断を実施していない。
  • 長時間労働者に対する医師による面接指導を実施していない。
  • 機械設備の安全装置の不備や、危険物の取り扱いに関する法定の措置を講じていない。

就業規則や労働条件の明示に関する違反

職場のルールや個別の労働条件に関する手続き上の不備も、是正勧告の対象となります。

就業規則・労働条件明示に関する主な違反例
  • 常時10人以上の労働者を使用する事業場で、就業規則を作成・届出していない。
  • 作成した就業規則を、印刷や掲示などの方法で労働者に周知していない。
  • 労働契約の締結時に、賃金や労働時間などの労働条件を文書で明示していない。
  • パートタイム・有期雇用労働者に対し、昇給の有無など法律で定められた事項を明示していない。
  • 法改正(例: 無期転換ルール、同一労働同一賃金など)の内容が就業規則に反映されていない。

是正指導を受けた後の具体的な対応フローと是正報告書

指摘内容の事実確認と社内での是正計画策定

是正勧告書や指導票を受領したら、速やかに以下の手順で対応を進める必要があります。

是正勧告・指導票受領後の初期対応
  1. 指摘内容の把握: 勧告書・指導票の内容を正確に理解し、どの法令に違反しているか確認します。
  2. 事実関係の調査: 社内の勤怠データや賃金台帳などの客観的資料と照合し、事実関係を検証します。
  3. 是正措置の検討: 違反状態を解消するための具体的な方法(未払い賃金の支払い、規則改定など)を検討します。
  4. 是正計画の策定: 指定された期日までのスケジュールを立案し、担当部署や担当者を明確にして社内の協力体制を構築します。

是正報告書の作成方法と記載すべき必須項目

是正報告書は、指摘事項への改善措置を労働基準監督署に報告するための公式文書です。決まった様式はありませんが、以下の項目を網羅する必要があります。

是正報告書の必須記載項目
  • 是正勧告書の交付年月日と事件番号
  • 指摘された違反条項
  • 具体的な是正内容(「〇月〇日に不足分の割増賃金を支払った」など客観的事実を記載)
  • 是正完了年月日

添付書類の準備と提出期限に関する注意点

是正報告書には、改善措置が完了したことを客観的に証明するための証拠書類を添付します。

添付書類の例
  • 未払い賃金を支払った証明(振込明細の写し、受領書など)
  • 改定後の就業規則と労働基準監督署への届出書の控え
  • 新たに締結した36協定届の写し
  • 設備改善を行った箇所の改善前後の写真

報告書の提出期限は厳守が原則です。やむを得ない理由で期限に間に合わない場合は、必ず事前に担当監督官に連絡し、事情を説明して指示を仰ぐ必要があります。

是正措置の実施と報告後の労働局の対応

是正報告書を提出する前に、計画した是正措置を確実に完了させることが重要です。報告書提出後、監督署はその内容を確認し、是正が適切に行われたと判断すれば手続きは一旦終了します。しかし、報告内容に不備があったり、改善が不十分だと判断されたりした場合は、追加の報告を求められたり、改善状況を確認するための再監督が行われたりすることがあります。

是正報告における「改善済み」と「改善計画」の適切な記載方法

指摘事項への対応状況に応じて、報告書の記載方法を使い分ける必要があります。

区分 記載内容 ポイント
改善済み すでに完了した措置について、実施日と具体的な内容を記載します。 客観的な事実を、それを証明する書類とともに報告します。
改善計画 期日内の完了が物理的に困難な事項について、具体的な完了予定日や進捗状況を記載します。 単に「検討中」ではなく、是正に向けた具体的なプロセスが進行中であることを示すことが重要です。
是正報告の記載方法

是正指導に従わない場合の法的リスクと事業への影響

再監督の実施とより強制力のある措置への移行

是正勧告を無視したり、指定期日までに報告書を提出しなかったりすると、労働基準監督署は再監督を実施します。再監督で改善が見られない場合、単なる行政指導では済まなくなり、検察庁への送検など、より強制力のある措置へ移行する可能性が著しく高まります。

悪質なケースにおける検察庁への送検(書類送検)の可能性

労働基準法等の違反は犯罪行為であり、労働基準監督官は特別司法警察職員としての権限を持っています。度重なる指導に従わない、違反を組織的に隠蔽するなど悪質性が高いと判断された場合、事件として検察庁に送致されます。

送致後は刑事事件として扱われ、起訴されて有罪となれば、代表者個人や法人に懲役刑や罰金刑が科される可能性があります。これにより、代表者個人に前科がつく事態にもなりかねません。

企業名公表による社会的信用の低下

違法な長時間労働など、重大・悪質な違反を繰り返す企業については、厚生労働省が企業名を公表する制度があります。一度公表されると、「ブラック企業」としてのイメージが定着し、事業に深刻な影響を及ぼす可能性があります。

企業名公表による経営への影響
  • 社会的信用の失墜による顧客や取引先からの契約見直し
  • 金融機関からの融資条件の悪化や停止
  • 採用活動の困難化と優秀な人材の流出
  • 既存従業員の士気低下と離職率の増加

労働局の是正指導に関するよくある質問

是正報告書の提出が期限に間に合わない場合、どうすればよいですか?

最も重要なのは、期限が来る前に担当の労働基準監督官に電話で連絡し、事情を説明して相談することです。無断で期限を過ぎることは絶対に避けてください。誠実に理由を説明すれば、期限の延長や、完了した部分だけを先に報告するなどの対応を認めてもらえる場合があります。

一度是正指導を受けると、その後の調査は厳しくなりますか?

一度指導を受けたという理由だけで、その後の調査が不当に厳しくなるわけではありません。しかし、是正内容がきちんと維持されているかを確認するため、数年後に再び定期監督の対象となる可能性は高まります。もし同じ事項で再び違反が発覚すれば、改善の意思がないと見なされ、初回よりも厳しい対応となるリスクがあるため注意が必要です。

是正指導への対応は弁護士や社会保険労務士に相談すべきですか?

是正指導への対応は、専門家である弁護士や社会保険労務士に相談することを強く推奨します。専門家は、法令の正確な解釈に基づいた是正策の提案、是正報告書の作成支援、労働基準監督署との折衝など、企業を強力にサポートしてくれます。特に、社会保険労務士は労務管理実務の専門家、弁護士は法的リスクや刑事手続きへの対応の専門家であり、事案に応じて相談することで、リスクを最小限に抑え、迅速かつ適切な対応が可能になります。

まとめ:是正指導への適切な対応が事業継続の鍵

本記事では、労働局による是正指導の種類や法的効力、具体的な対応フロー、そして指導に従わない場合のリスクについて解説しました。是正勧告や指導票は、それ自体に強制力はないものの、背景には労働法規に基づく罰則が存在するため、極めて重く受け止める必要があります。指摘された事項については、速やかに事実確認と是正計画の策定を行い、期限内に誠実な是正報告を行うことが不可欠です。指導を軽視すれば、再監督や送致、企業名公表といった深刻な事態を招き、企業の社会的信用を大きく損なうことになりかねません。万が一、対応に迷いや不安がある場合は、独力で抱え込まず、速やかに弁護士や社会保険労務士といった労務管理の専門家に相談し、確実な対応を進めることが重要です。

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