労働審判申立書を自分で作る実務と記載要点
労働審判申立書を社内でドラフトする場面では、相手(従業員)からの申立て対応だけでなく、会社側が申立人として請求や紛争の枠組みを示す必要も生じます。ここを曖昧にしたまま進めると、短期集中で進む手続の中で、必須記載の漏れや証拠配置のズレが補正対応や不利な自認につながり、実務コストが膨らみがちです。労働審判は労働審判官1名と労働審判員2名の計3名で審理が進むため、争点と重要事実・証拠をセットで示す書面設計が判断を左右します。以下では、労働審判申立書の判断材料として必須記載と実務の組み立て方を示します。
労働審判申立書の全体像
労働審判を自分で進める範囲
労働審判を「どこまで社内でやり、どこから専門家に渡すか」は、最初に線引きしておくと事故が減ります。労働審判は短期集中で進むため、社内側はまず、事実と証拠を崩れない形に整えるところまでを自走範囲にするのが実務的です。
- 雇用契約の存在・賃金の定め・労務提供の各事実を裏付ける資料を集めて突合する(未払給料の立証の基本枠組み)。
- 賃金台帳は使用者に作成義務があるため(労働基準法第108条)、該当期間の台帳と給与明細・給料辞令等を同じ期間軸で揃える。
- 労働者名簿は使用者に調製義務があるため(労働基準法第107条)、当該従業員の在籍・雇用関係の前提資料として提出候補にする。
- 出勤簿・タイムカード・勤務日程表・労務日報、PC履歴、電子メール送受信記録などで労務提供(実労働)の痕跡を固める。
- 就業規則・給与規程・退職金規程など、社内規程が争点になり得る文書を最新版と当時版の双方で確保する(特に退職金・解雇予告手当の算定根拠)。
一方で、申立書・答弁書の最終形(要件事実の落とし込み、反論の組み立て、争点の優先順位付け)は、裁判所に提出する書面としての完成度が求められます。とくに未払給料・残業代のように「会社側文書(賃金台帳等)」が中核証拠になる分野では、社内で事実確認は進めつつも、表現の仕方ひとつで自認(不利な認め方)にならないよう注意が必要です。
労働審判委員会と手続の特徴
労働審判は、裁判官だけでなく、労使の実務に通じた委員が関与する点が特徴です。手続は、裁判官である労働審判官1名と、労使双方の実務経験を有する労働審判員2名の計3名で進みます。
また、労働審判では、当事者の主張を「言い分」として並べるよりも、争点(どこが食い違っているか)と、その争点に直結する重要事実と証拠を、早い段階でセットにして出すことが重要です。申立書の記載として「争点」「重要事実」「争点ごとの証拠」「交渉・あっせん等の経緯概要」を整理する運用が示されており、委員会の審理設計に沿った書き方が求められます。
さらに、労働関係の金銭請求では、証拠の出し方が類型ごとに定型化しやすいです。例えば未払給料であれば、雇用契約の存在・給料の定め・労務提供の事実について立証が必要とされ、賃金台帳や給与明細、預金通帳、源泉徴収票、出勤簿等が候補になります(なお、証拠上「支払済み」を推認させる資料がある場合には、未払の事実について追加の説明や資料が求められることがあります)。
会社側が申立人になる場合と相手方になる場合で、申立書の読み方・作り方はどこが変わるか
会社が相手方として申立書を受け取る場合と、会社が申立人として提出する場合とでは、同じ「申立書」でも読み方・作り方の力点が変わります。とくに会社側は、未払賃金・残業代のように社内に原資料がある争点では、提出の順序と説明の仕方で心証が大きく動きます。
- 申立ての趣旨が何を求めているか(例:未払給料、退職手当、解雇予告手当の各金銭請求)を分解して、項目ごとに認否方針を決める。
- 未払給料であれば「雇用契約の存在」「給料の定め」「労務提供」の3点が争点化しやすいため、賃金台帳・給与明細・出勤簿等を軸に反論設計をする。
- 相手の計算書に「給与明細の振込金額」「源泉徴収票の年額」など支払済みを示す記載があるかを点検し、支払済みの推認材料として使えるか検討する。
- 会社側の主張が「債務不存在確認」等の消極的主張でも、根拠資料(賃金台帳、就業規則、勤怠資料、メール履歴等)を争点ごとに先回りで並べ、相手の反論筋を潰す。
- 第三者の介入・外形(例:元従業員が第三者同席で不当要求をしてきた等)がある事案では、当日の経緯を具体化して、紛争の背景事情として整理する(来訪日時・発言内容・会社の説明内容を時系列で固定する)。
このように、相手方では「相手の要件事実の穴」を詰める視点が中心になり、申立人では「こちらの争点設定(射程のコントロール)」が中心になります。
労働審判申立書の必須記載
法定の記載事項を先に確認
申立書の作成では、まず「法令・規則で求められる項目が落ちていないか」を機械的に点検することが重要です。労働審判では、早期に第1回期日へ進む設計のため、形式不備があると補正対応で全体が遅れます。
申立書の記載として、申立ての趣旨と申立ての理由に加え、争点整理や証拠対応を意識した書き方(争点、重要事実、争点ごとの証拠、交渉・あっせん等の経緯概要)が示されています。企業側でドラフトを作る場合は、本文の「ストーリー」以前に、これらの枠が揃っているかを先に確認してください。
- 当事者(会社・従業員)と代理人の表示が、登記・住民票レベルで誤りなく一致している。
- 申立ての趣旨が、請求類型(時間外手当等・退職金・地位確認等)ごとに結論として読める。
- 申立ての理由が、時系列と要件事実に沿っており、賃金台帳・出勤簿等の証拠に結び付いている。
- 争点と重要事実が、各争点ごとに「何を争い、何で立証するか」が一読で分かる。
- 交渉・あっせん等の経緯(社内相談、代理人間交渉、団体交渉等)が、日時・媒体(メール等)ベースで記載されている。
趣旨と理由の書き分け方
申立ての趣旨は「裁判所に求める結論」、申立ての理由は「結論に至る法的根拠と事実」を書く欄であり、役割が異なります。企業側が自社でドラフトする場合、趣旨に事実を入れすぎたり、理由が抽象論になったりすると、争点整理が崩れます。
- 金銭請求は「支払を求める金額」と「付随請求(遅延損害金等)」を結論として並べる。
- 地位確認等の非金銭請求は、確認対象(雇用契約上の地位等)と、それに付随する賃金請求の有無を明確にする。
- 未払給料であれば、雇用契約の存在・給料の定め・労務提供という立証の骨格に沿って、賃金台帳(労働基準法第108条)・労働者名簿(労働基準法第107条)・出勤簿等の位置付けを示す。
- 争点化しやすい箇所(例:支払済みの推認が出る給与明細の「振込金額」欄、源泉徴収票の年額記載)に対して、こちらの説明(なぜ未払なのか、どの期間が対象か)を先に置く。
この「趣旨=結論」「理由=要件事実と証拠の読み方」という分離を保つと、委員会が争点を切り出しやすくなります。
請求額が複数に分かれるとき、どこまでを申立書に入れどこから別建てで整理するか
請求が複数に分かれる場合、本文は「項目立て」と「総額」「算定の前提(規程・賃金・期間)」にとどめ、細かい計算は別紙で示すのが読みやすいです。未払給料・退職手当・解雇予告手当を並べて整理する労働債権一覧表の例があり、複数項目を表で束ねる整理が実務的です。
| 番号 | 債権者名 | 給料未払期間 | 1給料(円) | 2退職手当(円) | 3解雇予告手当(円) | 備考 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 1 | (記載例) | R○.○.○〜R○.○.○ | 300,000 | 1,500,000 | ||
| 2 | (記載例) | R○.○.○〜R○.○.○ | 250,000 | 500,000 | ||
| 3 | (記載例) | R○.○.○〜R○.○.○ | 150,000 | 0 |
本文側では、例えば「未払給料」「退職手当」「解雇予告手当」などの請求類型ごとに小見出し相当の段落を作り、別紙の一覧表(計算表)を引用して「別紙1」等で紐づけると、短期審理でも把握されやすくなります。
申立書の主張と証拠の整理
事実関係は時系列で組み立てる
事実関係は、時系列で「いつ・どこで・誰が・何をしたか」を固定し、証拠と結び付けて書きます。とくにハラスメントや解雇のように評価が入りやすい類型ほど、評価の前提となる事実の確定が重要です。
元従業員が第三者同席で会社を訪問し、代表者に対して特定の発言をした、会社が解雇日や残業代不払いの理由を説明した、というように、日付・当事者・発言内容の形で積み上げています。申立書・答弁書のいずれでも、この粒度で「出来事」を並べると、委員会が争点を切りやすくなります。
- 雇用開始日、職務内容・配置の変遷、評価・指導の履歴(面談メモや指導書)。
- 勤怠の客観データ(出勤簿、タイムカード、勤務日程表、労務日報、PC履歴、メール送受信記録)。
- 解雇・雇止めの通知日と方法、解雇予告(30日前)または解雇予告手当支払の有無(労働基準法第20条)。
争点ごとに証拠と重要事実を置く
労働審判では、争点が多いほど不利になりやすいため、「争点を絞り、争点ごとに重要事実と証拠をセットにする」発想が重要です。未払給料の立証枠組み(雇用契約の存在・給料の定め・労務提供)も、争点設計のテンプレートとして使えます。
- 雇用契約の存在:採用通知、労働条件通知書、労働者名簿(労働基準法第107条)の記載等。
- 給料の定め:賃金台帳(労働基準法第108条)、過去の給与明細、就業規則・賃金規程(賃金に関する事項は労働基準法第89条に基づき一定規模以上で作成届出が問題になり得る)。
- 労務の提供:出勤簿・タイムカード・勤務日程表・労務日報、PC履歴、電子メール送受信記録等。
証拠は「まとめて提出」ではなく、本文の該当箇所の末尾で証拠番号と結び付け、どの争点のどの事実を支えるかが見える配置にします。
不利な事実がある案件で、申立書の段階で先に書くか第1回期日で説明するかの判断基準
不利な事実がある場合に、書面に書くか期日で説明するかは、相手が既に持っている証拠の強さと、こちらの補足事情の準備状況で判断します。
セクハラは当事者しかいない状況で起きやすく客観証拠が乏しい一方、翌日のLINEメッセージ等の客観証拠と突き合わせて検討すべき、という特徴が指摘されています。この発想は「相手が客観証拠を持っているか」の見極めに直結します。
- 相手が録音・メール・チャットログ等を保有している可能性が高い言動(ハラスメントの発言、面談での説明等)。
- 会社側文書で客観化されている事実(賃金台帳、給与明細、解雇通知書、解雇予告手当計算シート等)で、後から出すと「隠した」と見られやすいもの。
- 証拠化が難しく、争点に直結しない周辺事情で、書面に書くと新たな争点を誘発しやすいもの。
- 相手の主張が固まってから、質問の形で出てきた場合に限定して説明すべき内部事情(ただし虚偽や不一致が出ないよう社内整合は必須)。
なお、安全配慮義務違反等の損害賠償では、遅延損害金の起算点が「請求がなされた時点」と整理され得るため(民法412条3項、民法第412条)、いつ請求が到達したか(内容証明、メール等)自体が争点になることがあります。遅延損害金の法定利率は、令和2年4月1日施行当初3%で、その後3年を1期として1期ごとに変動し、令和5年4月1日から令和8年3月31日も3%とされています(民法第404条、民法第419条)。
労働審判の類型別の着眼点
未払い残業代の請求額と付随請求
未払い残業代では、「労働時間の確定」と「単価(基礎賃金)の確定」に加え、付随請求の設計が実務上重要です。企業側でドラフトを作る場合、請求額の争いだけでなく、遅延損害金や付加金の有無が交渉レンジに直結します。
法定利率は令和2年4月1日施行当初3%で、その後3年を1期として1期ごとに変動し、令和5年4月1日から令和8年3月31日も3%です(民法第404条、民法第419条)。安全配慮義務違反の損害賠償では、履行期が「請求がなされた時点」とされ得るため(民法第412条)、会社としては「いつ請求を受けたか」を証拠で固定しておく必要があります。
また、未払給料・残業代に関連しては、賃金台帳(労働基準法第108条)や出勤簿・タイムカード等の一次資料が中心になるため、相手の計算が誤っている場合でも、会社側が「正しい一次資料の出し方」を誤ると不利になり得ます。申立書・答弁書の段階で、どの期間・どの資料に基づくかを明確化し、別紙計算書で整合を取ってください。
解雇・雇止めの主張整理
普通解雇を主張・防御する場面では、解雇権濫用法理により、客観的合理性と社会通念上の相当性が問われます(労働契約法第16条)。企業側の申立書・答弁書では、評価的な言葉よりも、就業規則上の解雇事由の定め、注意指導・改善機会の付与、配置転換等の検討といった「プロセス」を証拠で支えるのが基本です。
さらに、手続面として、解雇は30日前までの解雇予告または30日分の平均賃金の解雇予告手当が問題になります(労働基準法第20条)。実務書にも「解雇予告手当計算シート」等の書類が挙げられており、争いになり得る項目として事前に準備しておくと、期日での補正が減ります。
ハラスメント事案の記載と証拠
ハラスメント事案では、(1)個々の言動が不法行為に当たるか、(2)会社の調査・措置が適切だったか(使用者責任や安全配慮義務違反の回避)を分けて書くと整理できます。
上司の「新入社員以下だ。もう任せられない。」「何でわからない、お前は馬鹿。」等の発言が、注意・指導として許容される限度を超え不法行為を構成すると判断された例(サントリーホールディングス事件・東京高判平27・1・28)や、厳しい言動でも業務上の是正指導の文脈等から不法行為に当たらないとされた例(前田道路事件控訴審・高松高判平21・4・23)が示されています。したがって、企業側の書面では、発言単体の印象論ではなく、背景事情(業務指示、是正の必要性、期間、改善状況)を客観資料で補強することが重要です。
また、セクハラは当事者しかいない場面で起きやすく、供述が食い違いやすい一方、事実が認定されれば「業務上必要」になりにくいという特徴があります。翌日のLINEメッセージ等の客観証拠と突き合わせて、「『昨日の』が何を指すか」まで含めて事実認定の骨格を作る必要があります。評価基準も、被害者の主観だけでなく「平均的な女性(男性)労働者の感じ方」を基準に判断され得るため、当事者の関係性、場所、業務性の有無を具体化してください。
裁判所への提出と費用
管轄裁判所の選び方
管轄は、原則として労働審判法の定めに従い決めます(労働審判法第2条)。実務的には、「どこの地裁に出すべきか」を最初に外すと移送等で時間を失い、短期解決のメリットが落ちます。
ある支払督促(東京簡易裁判所の事件例)のように、同じ労働・金銭関係でも手続によって裁判所の種類(簡裁・地裁)や運用が変わるため、労働審判では「地方裁判所が窓口」である点を前提に確認してください。
また、申立ての前提となる勤務地の特定では、出勤簿・勤務日程表・メール等の一次資料が、最後の就業場所の裏付けに使えることがあります。
必要書類と提出部数の考え方
提出書類は「申立書本体」と「添付書類」と「証拠関係」を分け、部数管理まで含めて作業設計します。添付書類の例として、雇用契約書(甲1)、給与明細書(甲2)、出勤簿写し(甲3)、就業規則(甲4)が挙げられており、典型的な並びとして参考になります。
また、未払給料を争う場面では、賃金台帳(労働基準法第108条)や労働者名簿(労働基準法第107条)など、会社側に作成義務がある資料が中核になるため、「出せない」こと自体が不利に働き得ます。社内の文書保存・抽出担当を先に決め、版管理(当時版・現行版)も含めて揃えてください。
収入印紙と予納郵券の確認方法
申立手数料は収入印紙で納付し、連絡用の予納郵券(切手)を併せて求められます。実務書にも「収入印紙(申立手数料)」や「申立手数料、予納郵便切手及び目録等」といった実務項目が示されており、申立書の内容以前に、受付で形式不備にならない準備が必要です。
金銭請求の場合は、請求額に応じて手数料が算定され、金銭に換算できない請求(例:地位確認等)では訴訟目的の価額の考え方が別途問題になります。郵券は裁判所運用で組み合わせが異なり得るため、窓口で指定を確認し、指定どおりに揃えてください。
提出後の手続と依頼判断
提出方法と第1回期日までの流れ
提出後は、短いスケジュールの中で、答弁書・追加証拠・和解方針を並行で整えます。とくに相手方として受けた場合、社内にある一次資料(賃金台帳、出勤簿、就業規則等)を短期間で束ね直す必要があります。
金銭請求では「元金」「損害金(遅延損害金)」「手続費用」が分解されて書かれることがあります。労働審判でも、相手の申立てがこの構造になっていることがあるため、受領時点で「何が元本で、何が付随請求か」を分け、反論や和解案の数字がブレないように管理してください。
自社作成と弁護士依頼の判断軸
自社でドラフトを作って専門家レビューに回す運用は現実的ですが、弁護士依頼を検討すべき局面もあります。あるT工業(HIV解雇)事件(千葉地裁 平12・6・12判決 労働判例785号10頁)のように、解雇理由や取扱いが差別・人権等の論点を含むと、事実評価と法的評価の距離が一気に縮まり、書面の表現自体がリスクになります。
- 解雇・雇止めで、解雇禁止事由や人格権・差別等の論点が疑われる(当事者対応の言葉選びが争点化する)。
- ハラスメントで、録音・チャットログ・LINE等の客観証拠の有無が勝敗を左右し、証拠評価の見立てが必要。
- 未払賃金で、賃金台帳・給与明細・源泉徴収票等に「支払済み」を推認させる記載があり、未払の説明を誤ると自認リスクがある。
この場合でも、社内側は一次資料の収集と時系列固定を先に完成させると、外部レビューのコストと時間を圧縮できます。
人事・法務・財務の誰がいつ何を確認するか――提出前3営業日の社内チェック順序
提出前3営業日は、チェックの順番を固定して、ミスを「構造的に」潰します。ある一次資料群(就業規則・給与規程・退職金規程、従業員名簿、賃金台帳、タイムカード等、社会保険・源泉徴収関係書類、解雇予告手当計算シート等)を前提に、部門ごとの確認対象を割り当てます。
- 提出3営業日前(人事):労働者名簿(労働基準法第107条)・賃金台帳(労働基準法第108条)・勤怠資料(タイムカード等)を揃え、期間ズレ・氏名表記ズレ・在籍区分の誤りがないかを潰す。
- 提出2営業日前(法務):申立ての趣旨と理由の分離、争点→重要事実→証拠の対応、就業規則・賃金規程(労働基準法第89条)の適用時点(当時版)を確認し、表現が不利な自認になっていないかを点検する。
- 提出1営業日前(財務):金銭項目(未払給料・退職手当・解雇予告手当等)の一覧表を確定し、収入印紙(申立手数料)と予納郵券の準備状況、和解レンジ(支払可能額・支払時期)を決裁用に整理する。
よくある質問
労働審判申立書の様式はどこで確認できますか?
実務書に「【書式】申立書」「【書式1】申立書」「申立ての理由の記載例」等が挙げられているとおり、申立書には運用上の定型があります。まずは申立書の枠(当事者表示、申立ての趣旨、申立ての理由、添付書類、証拠説明書等)をテンプレートで埋め、次に争点と証拠の対応を整える順番にすると、形式ミスが減ります。
また、添付書類の並びも、実務書の例(雇用契約書(甲1)、給与明細書(甲2)、出勤簿写し(甲3)、就業規則(甲4))のように、類型に応じて基本セットを作っておくと、事件ごとの抜け漏れチェックが容易になります。
会社側から労働審判を申し立てることはできますか?
会社側からの申立ても可能で、実務上も一定数あります。会社が原告として「被告(元従業員)が残業代等を請求している」状況を前提に、第三者同席での来訪や不当要求の経緯を具体的に記載している例があり、会社側から紛争の枠組みを整理して裁判所に示す運用が想定されています。
会社側申立てでは、債務不存在確認等の「消極的事実」を扱いがちですが、未払給料の立証構造(雇用契約の存在・給料の定め・労務提供)に照らして、賃金台帳(労働基準法第108条)や出勤簿等の一次資料を争点ごとに配置し、「どこが争点で、何が一致していて、何が不一致か」を先に描くことが重要です。
申立書提出後に記載ミスが見つかったらどうしますか?
提出後に誤りが見つかった場合は、誤記の性質に応じて速やかに訂正・補充します。金銭請求では、相手の書面が「元金」「損害金(遅延損害金)」「手続費用」に分かれていることがあり(元金100万円、令和2年5月1日から年3%の遅延損害金、手続費用等の構成)、どの項目の数字が間違っているかを切り分けて訂正する必要があります。
また、遅延損害金は法定利率や起算点(請求到達時点等)で争いが生じ得ます(民法第404条、民法第412条、民法第419条)。単なる誤字脱字に見えても、利率・起算点・対象期間の誤りは実質的な争点化につながるため、訂正書面では「どの記載を、どの根拠で、どう直すか」を簡潔に特定して提出するのが安全です。
労働審判申立書への対応で次にすべきこと
労働審判申立書は、趣旨(結論)と理由(要件事実・証拠)を分離し、争点→重要事実→証拠の対応が一読で追える形に整えることが、社内ドラフトでも外しにくい基礎になります。手続は労働審判官1名と労働審判員2名の計3名で進むため、言い分の羅列ではなく、審理設計に沿った「争点と証拠のセット」を早期に示すことが重要です。次のアクションとしては、賃金台帳(労働基準法第108条)や労働者名簿(労働基準法第107条)、勤怠資料、規程(当時版・現行版)を先に揃え、提出前3営業日のチェック順序に沿って部門別に突合してください。不利な事実やハラスメントのように客観証拠の有無が影響しやすい類型、また解雇の30日前要件(労働基準法第20条)が絡む場面では、表現が自認にならないかを含め、早めに専門家レビューを入れる判断が実務的です。個別事情で最適解は変わるため、最終的な方針決定は事案の資料状況を踏まえて弁護士等に相談してください。

