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日本政策金融公庫でつなぎ融資は可能?利用できる制度と審査のポイントを解説

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補助金の交付決定や大型案件の受注が決まり、将来の入金は見込めるものの、それまでの運転資金の確保にお困りではないでしょうか。このような一時的な資金不足を解消する手段として「つなぎ融資」が有効ですが、金利や信頼性の面から、まずは公的機関である日本政策金融公庫を検討したいと考える方も多いでしょう。この記事では、日本政策金融公庫でつなぎ資金を調達する方法、活用できる具体的な融資制度、審査で重要視されるポイントから申込手続きまでを詳しく解説します。

目次

つなぎ融資とは?基本的な仕組みと事業における利用シーン

つなぎ融資の目的と仕組み

つなぎ融資とは、将来的に入金が予定されている資金が手元に届くまでの間、一時的に生じる資金不足を補うための短期融資を指します。事業活動では、売上の発生から実際の入金までに時間差が生じることが多く、その間に仕入代金や人件費などの支払いが発生すると資金繰りが悪化する可能性があります。つなぎ融資は、この「入金と出金のズレ」を解消するための資金です。

将来の確実な入金(補助金、不動産売却代金、大型案件の売掛金など)を返済原資とすることが前提であり、長期的な運転資金とは性質が異なります。返済方法は、予定していた資金が入金された時点で一括返済するのが一般的です。これにより、資金繰りの見通しが立てやすくなるという特徴があります。

資金繰り改善に役立つ具体的な利用場面(補助金交付前・大型案件受注時など)

つなぎ融資は、入金と出金のタイミングが明確にずれる、以下のような場面で特に有効です。

つなぎ融資の具体的な利用シーン
  • 補助金の交付前: 国や自治体の補助金は、経費を全額立て替えて事業を実施した後に交付される「後払い」が原則です。この立替期間中の資金を確保するために利用されます。
  • 大型案件の受注時: 通常の取引規模を超える仕入れや外注費が先行して必要になる場合、売掛金が回収されるまでの運転資金を補います。
  • 建設業など工期が長い事業: 工事の着手金や中間金の支払いが必要な場面で、完成・引き渡しまでの資金を賄います。
  • 不動産の買い替え時: 自宅や事業所の売却代金が入る前に、新たな物件の購入資金が必要となる場合に利用されます。

つなぎ融資を利用するメリット

つなぎ融資には、資金繰りを安定させ、事業機会を逃さないための多くのメリットがあります。

つなぎ融資の主なメリット
  • キャッシュフローの安定化: 手元の自己資金を温存できるため、突発的な出費にも対応しやすくなり、経営の安全性が高まります。
  • 事業機会の損失防止: 資金不足を理由に補助金事業や大型案件を諦めることなく、計画通りに事業を推進でき、成長のスピードを維持できます。
  • 金融機関との取引実績構築: 返済原資が明確なため計画通りに完済しやすく、金融機関からの信用が高まります。これにより、将来の追加融資や条件の良い融資につながる可能性があります。
  • コストの抑制: ファクタリングなど他の資金調達手段と比較して、金利などのコストを低く抑えられる場合が多く、財務への負担を軽減できます。

つなぎ融資を利用する際のデメリットと注意点

つなぎ融資は便利な資金調達手段ですが、利用にあたってはいくつかの注意点とデメリットを理解しておく必要があります。

つなぎ融資のデメリットと注意点
  • 金利・手数料の発生: 短期であっても融資であるため、金利や手数料といったコストが発生します。
  • 返済原資の不確実性リスク: 補助金の減額・不交付や、取引先の倒産による売掛金の未回収など、予定していた入金が実行されないリスクがあります。
  • 返済不能のリスク: 返済原資がなくなると、一括返済が困難となり、資金繰りが一気に破綻する恐れがあります。
  • 審査に時間がかかる: 融資の申し込みから実行までには一定の期間を要するため、資金が必要になる直前の申し込みでは間に合わない可能性があります。

日本政策金融公庫における「つなぎ融資」の取り扱い

「つなぎ融資」という名称の専用制度は存在しない

日本政策金融公庫には、「つなぎ融資」や「ブリッジローン」といった名称の専用融資制度は存在しません。そのため、公庫で一時的な資金を調達したい場合は、既存の運転資金融資制度を短期利用する形で申し込むことになります。

相談の際は、単に「つなぎ融資を受けたい」と伝えるのではなく、「補助金の入金までの立替資金」「大型案件の売掛金回収までの短期運転資金」といったように、具体的な資金使途と明確な返済計画を伝えることが重要です。そうすることで、担当者が状況に応じて最適な融資制度を提案してくれます。

既存の運転資金融資制度を短期的な資金繰りのために活用する

日本政策金融公庫でつなぎ資金を調達する場合、主に「一般貸付」や「セーフティネット貸付」といった既存の融資制度を短期の運転資金として利用します。

通常、公庫の融資は返済期間が5年や7年といった長期設定が基本ですが、つなぎ資金の場合は、補助金の入金時期などに合わせて返済期間を数ヶ月から1年程度の短期間に設定したり、入金時の一括返済を前提とした契約を結んだりすることが可能です。

重要なのは、どの制度を利用するかという形式よりも、確実な返済原資があることを客観的な資料で証明し、一時的な資金不足であることを明確に説明することです。

つなぎ資金として活用できる日本政策金融公庫の主な融資制度

【国民生活事業】個人事業主・小規模企業向けの主な融資制度

個人事業主や小規模事業者がつなぎ資金を必要とする場合、主に国民生活事業の窓口で相談します。活用できる主な融資制度は以下の通りです。

国民生活事業の主な融資制度
  • 一般貸付: 最も汎用性が高く、ほとんどの業種で利用可能な運転資金融資制度です。
  • セーフティネット貸付: 経営環境の変化や取引先の倒産などで一時的に資金繰りが悪化した場合に、有利な条件で利用できる可能性があります。
  • マル経融資(小規模事業者経営改善資金): 商工会議所などの経営指導を受けている小規模事業者が、無担保・無保証人で利用できる制度です。
  • 新創業融資制度: 創業時に、創業補助金などの入金までのつなぎ資金として活用することができます。

【中小企業事業】中小企業向けの主な融資制度

比較的規模の大きい中小企業は、中小企業事業が窓口となります。長期資金が中心ですが、政策的な目的に合致する場合はつなぎ資金の需要にも対応可能です。

中小企業事業の主な融資制度
  • 新事業育成資金: 新規事業の立ち上げに伴う一時的な資金需要に対応します。
  • 海外展開・事業再編資金: 海外展開や事業再編など、特定の経営課題に取り組む際の資金を支援します。
  • セーフティネット貸付: 国民生活事業と同様、売上減少などの緊急時における資金繰りを支援します。

中小企業事業は融資限度額が大きい一方、国民生活事業に比べて審査のハードルは高くなる傾向があります。より精緻な事業計画や財務の健全性が求められます。

日本政策金融公庫でつなぎ融資を受けるための手続きと必要書類

相談から融資実行までの基本的なステップ

日本政策金融公庫でつなぎ融資を受ける際の手続きは、通常の融資とほぼ同じ流れで進みます。申し込みから融資実行までは3週間~1ヶ月程度かかるのが一般的なため、早めの行動が重要です。

融資実行までの基本ステップ
  1. 融資相談の予約: 管轄の支店窓口に電話またはインターネットで相談を予約します。
  2. 必要書類の準備・提出: 担当者の案内に従い、借入申込書や決算書などの必要書類を準備して提出します。
  3. 担当者との面談: 事業内容、資金使途、返済計画などについて詳細なヒアリングを受けます。
  4. 審査: 公庫内部で融資の可否が審査されます。
  5. 契約手続き: 審査に通過後、融資契約に関する書類を取り交わします。
  6. 融資実行: 契約完了後、指定の口座に資金が振り込まれます。

申込時に必要となる基本的な提出書類

申し込みにあたり、法人・個人事業主ともにいくつかの基本書類が必要です。不備がないよう、事前に確認して準備しましょう。

基本的な提出書類の例
  • 借入申込書: 公庫所定の様式に必要事項を記入します。
  • 決算書・確定申告書: 直近2~3期分の提出を求められます。
  • 試算表: 決算から時間が経っている場合に、直近の業績を示すために必要です。
  • 履歴事項全部証明書(登記簿謄本): 法人の場合に必要です。
  • 創業計画書: 創業間もない場合に、事業の見通しを説明するために提出します。
  • 企業概要書: 事業内容を説明するための書類です。

返済原資の証明として追加提出を求められる資料例(契約書・補助金採択通知書など)

つなぎ融資の審査では、返済の確実性を証明するために、通常の書類に加えて以下のような資料の提出が不可欠です。

返済原資を証明する資料の例
  • 補助金の交付決定通知書・採択通知書: 補助金が返済原資の場合に必須となります。
  • 契約書・発注書・注文書: 売掛金が返済原資の場合、取引先との契約内容がわかる書類が必要です。
  • 資金繰り表: 一時的に資金が不足する期間と、入金によって返済可能になる時期を明確に示します。
  • 見積書: 設備投資などの立て替え払いが資金使途である場合、その金額の根拠として提出します。

審査で重要視されるポイントと申込時の注意点

審査の要となる返済原資の確実性と明確性

つなぎ融資の審査で最も重視されるのは、返済原資の確実性です。「将来入金される予定の資金」を元手にするため、その入金予定がどれだけ確実かが厳しく審査されます。

補助金の交付決定通知書のように公的機関が支払いを約束しているものは確実性が高いと判断されます。一方、民間の売掛金の場合は、取引先の信用力も評価の対象となります。口約束や見込み段階の案件では審査通過は困難であり、契約書などの書面による証拠が不可欠です。

資金使途の妥当性と事業計画との整合性

借り入れた資金が、申請した通りの目的に使われるかどうかも厳しくチェックされます。つなぎ融資で調達した資金を、申請外の借入金返済や生活費などに流用することは固く禁じられています

見積書や事業計画書と照らし合わせ、申請金額が妥当であること、そしてその支出が事業の成長に不可欠であることが求められます。事業計画全体のストーリーと資金需要に矛盾がないよう、一貫性のある説明が必要です。

申込企業の財務状況と過去の信用情報

つなぎ融資であっても、申込企業の財務状況や信用情報は審査されます。赤字決算や債務超過であっても、返済原資が確実であれば融資の可能性はありますが、税金の滞納がある場合は原則として融資を受けられません。

また、過去の返済遅延や代表者個人の信用情報に問題がある場合も、審査通過は極めて困難になります。公的金融機関として、納税義務や返済義務を誠実に果たしているかが問われます。

融資実行までの期間を見越した早めの相談とスケジュール管理

日本政策金融公庫の融資は、申し込みから実行まで最短でも3週間程度かかります。民間のビジネスローンのように即日融資はできないため、資金が必要になる時期から逆算し、余裕を持ったスケジュールで相談することが鉄則です。

特に補助金事業では、支払い期限が定められていることが多いため、審査の遅れで支払いが滞る事態は絶対に避けなければなりません。書類の不備などがあればさらに時間がかかるため、事前の準備が重要です。

面談で効果的に伝えるべきこと:担当者が納得する説明の組み立て方

面談では、「なぜ今、資金が必要なのか」「どうやって確実に返済するのか」の2点を、数字に基づいて論理的に説明することが求められます。

資金繰り表などを用いて、「〇月に△△の支払いがあり一時的に資金が不足しますが、×月には□□から入金があるため確実に返済できます」といった具体的な説明が有効です。担当者が稟議書を作成しやすいように、客観的な根拠資料を揃え、明確な返済計画を提示することを意識しましょう。

つなぎ融資の利用が今後の公庫との取引に与える影響

つなぎ融資を計画通りに完済することは、日本政策金融公庫との良好な取引実績となり、将来の追加融資や条件交渉において有利に働くことがあります。

一方で、返済が遅れたり、資金使途違反が発覚したりした場合は、信用を大きく損ない、今後の取引が困難になるリスクがあります。つなぎ融資は、金融機関との長期的な信頼関係を築く上での試金石ともいえる重要な取引です。

日本政策金融公庫以外のつなぎ融資の選択肢と特徴比較

日本政策金融公庫からの融資が難しい場合や、さらに急を要する場合には、他の資金調達方法も選択肢となります。それぞれの特徴を比較し、状況に応じて最適な手段を検討しましょう。

調達方法 金利・手数料の目安 審査スピード 審査難易度 特徴
日本政策金融公庫 年利1~3%程度 遅い(3週間~) 普通 低金利で公的機関の安心感があるが、手続きに時間がかかる。
民間の銀行・信用金庫 年利2~5%程度 やや遅い 高い 金利は低いが、取引実績や強固な財務基盤が求められ、審査は厳しい。
ビジネスローン 年利8~18%程度 速い(即日~) 低い スピードが速く手続きも簡素だが、金利が非常に高い。
ファクタリング 手数料10~20%程度 最速(即日~) 低い 借入ではなく売掛債権の売却。赤字でも利用しやすいが、コストは最も高い。
主なつなぎ資金の調達方法と特徴比較

民間の銀行・信用金庫が提供する融資(プロパー融資)

銀行や信用金庫が直接融資するプロパー融資は、金利が低く企業の信用力を示すものとなりますが、審査は非常に厳しいです。金融機関が100%リスクを負うため、長年の取引実績や優れた財務内容がなければ、特に短期のつなぎ資金の調達は困難なことが多いです。

融資実行までのスピードを重視する場合のビジネスローン

ノンバンクなどが提供するビジネスローンは、最短即日で融資が可能なスピードが最大のメリットです。担保・保証人が不要な商品も多く、緊急時の資金需要に適しています。しかし、金利が年利8%~18%程度と非常に高く設定されているため、利用は短期間に限定し、慎重に検討する必要があります。

売掛債権を資金化するファクタリング

ファクタリングは、売掛債権(請求書)をファクタリング会社に売却することで資金を得るサービスです。融資ではないため負債にはならず、自社の信用力より売掛先の信用力が重視されます。赤字決算や税金滞納時でも利用できる可能性がありますが、手数料が非常に高額なため、他の手段が使えない場合の最終手段と位置づけるのが賢明です。

日本政策金融公庫のつなぎ融資に関するよくある質問

赤字決算でも、日本政策金融公庫のつなぎ融資は利用できますか?

はい、利用できる可能性は十分にあります。つなぎ融資は、補助金の交付決定など確実な返済原資があることが大前提となるため、一時的な赤字や業績不振よりも、その返済計画の確実性が重視されます。ただし、赤字の理由や今後の改善計画については合理的な説明が求められます。

つなぎ融資の金利の目安はどのくらいですか?

利用する融資制度によりますが、日本政策金融公庫の場合、概ね年利1%~3%程度が目安となります。これは民間のビジネスローンやファクタリングと比較して大幅に低コストであり、事業者にとって大きなメリットです。

補助金の採択通知書があれば、必ず融資を受けられますか?

いいえ、必ず融資を受けられるとは限りません。採択通知書は返済原資の証明として非常に強力な資料ですが、融資の可否は、あくまで日本政策金融公庫が独自の基準で審査して決定します。事業遂行能力、自己資金の状況、税金の納付状況、信用情報なども総合的に判断されます。

個人事業主でもつなぎ資金目的での融資は利用可能ですか?

はい、利用可能です。日本政策金融公庫の国民生活事業は、個人事業主や小規模事業者を主な支援対象としています。法人である必要はなく、確定申告書などを基に審査が行われます。事業用の資金管理を日頃から明確にしておくことが円滑な審査につながります。

返済原資となる入金が遅れた場合、返済計画の変更は可能ですか?

補助金の交付手続きの遅延など、やむを得ない事情で入金が遅れた場合、返済計画の変更(リスケジュール)に応じてもらえる可能性があります。ただし、黙って延滞するのは絶対に避けるべきです。入金の遅れが判明した時点で速やかに公庫の担当者に連絡し、事情を説明して相談することが重要です。

まとめ:公庫の制度を理解し、計画的な資金調達を

日本政策金融公庫には「つなぎ融資」という専用制度はありませんが、既存の運転資金融資を短期利用することで、補助金交付までの立替資金などを調達することが可能です。審査で最も重視されるのは、補助金の交付決定通知書や取引契約書によって証明される「返済原資の確実性」です。そのため、申込時にはこれらの客観的な証拠書類を揃え、明確な返済計画を提示することが不可欠となります。融資実行までには3週間から1ヶ月程度を要するため、資金が必要になるタイミングから逆算し、余裕を持ったスケジュールで相談を開始することが成功の鍵です。この記事で解説したポイントを押さえ、円滑な資金調達を実現してください。

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