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画像無断使用の損害賠償請求|訴訟の流れと費用・判例を解説

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企業のウェブサイトで画像が無断使用されたり、逆に他者の画像を無断で使用してしまい警告を受けたりする著作権トラブルは、法務・Web担当者にとって深刻な問題です。初動対応を誤ると、高額な損害賠償請求訴訟に発展し、企業イメージを損なう事態になりかねません。訴訟に踏み切る、あるいは訴訟リスクに備えるためには、具体的な手順や費用の内訳、損害賠償額の相場を正確に理解しておくことが重要です。この記事では、画像の無断使用に関する著作権侵害訴訟の準備から判例、費用、訴えられた側の対応までを網羅的に解説します。

画像の無断使用と著作権侵害

著作権侵害となる法的根拠

他者の画像を無断で使用する行為は、著作権法で保護されている権利を侵害する不法行為です。写真やイラストなどの創作物は「著作物」として法的に保護されており、その制作者である著作権者には独占的な権利が認められています。

無断使用により侵害される主な権利
  • 複製権:著作物を無断でコピー(データ保存など)されない権利
  • 公衆送信権:著作物を無断でインターネット上にアップロードされない権利

許諾なく他者の画像を自社のウェブサイトに掲載する行為は、これらの権利を侵害します。侵害行為に対しては、民事上の損害賠償請求差止請求が認められるほか、故意による悪質なケースでは刑事罰が科される可能性もあり、企業は重大な法的責任を負うことになります。

適法な「引用」と認められる要件

他者の画像であっても、著作権法で定められた「引用」の要件を満たせば、権利者の許諾なく適法に利用できます。ただし、その要件は厳格に定められており、一つでも欠けると違法な無断使用と判断されるリスクがあります。

適法な「引用」の成立要件(著作権法第32条)
  • すでに公表されている著作物であること(公表要件
  • 引用部分が自社のコンテンツと明確に区別されていること(明瞭区別性
  • 自社のコンテンツが「主」、引用部分が「従」の関係にあること(主従関係
  • 引用する必然性があり、その目的に照らして正当な範囲内であること(正当な範囲
  • 引用元の出所を適切に明示すること(出所の明示

訴訟提起前の準備

無断使用の証拠を保全する方法

画像の無断使用を発見した場合、相手方に削除される前に、侵害の事実を証明するための証拠を保全することが極めて重要です。証拠保全は、訴訟などの法的手続きを進めるための最初のステップとなります。

証拠保全の具体的な手順
  1. 侵害が確認できるWebページ全体をスクリーンショットで撮影する
  2. ページのURL、投稿日時がはっきりと写るようにする(PCでの撮影を推奨)
  3. データの非改ざん性を証明するため、必要に応じてタイムスタンプサービスを利用する
  4. 確実な証拠保全が完了するまで、相手方への直接の連絡は控える

内容証明郵便による警告通知の要点

証拠保全が完了したら、無断使用者に対して内容証明郵便で警告通知を送付するのが一般的な対応です。内容証明郵便は、誰が、いつ、どのような内容の文書を送ったかを郵便局が証明する制度であり、相手方に事態の深刻さを伝え、交渉を促す効果が期待できます。

警告通知書に記載すべき主な内容
  • 権利者(自社)が保有する著作物の特定
  • 侵害行為が確認されたWebサイトのURLと具体的な掲載箇所
  • 当該行為が著作権(複製権、公衆送信権など)を侵害する旨の法的指摘
  • 要求事項(画像の即時削除、損害賠償金の支払いなど)
  • 回答期限と、期限内に対応がない場合の法的措置(訴訟提起など)への移行予告

弁護士名義で送付することで、相手がより真摯に対応する可能性が高まります。

外部委託先が原因だった場合の責任所在と確認事項

ウェブサイト制作を外部業者に委託した際、その納品物に他者の画像が無断使用されていた場合でも、原則として発注者である自社が法的責任を負います。事業としてサイトを運営する以上、他者の権利を侵害していないかを確認する注意義務があるとされるためです。このリスクを軽減するため、委託先との契約内容が重要になります。

業務委託契約書に盛り込むべき重要条項
  • 納品物が第三者の知的財産権を侵害しないことの保証(保証条項
  • 権利侵害トラブルが発生した際の、委託先の責任と費用負担に関する規定
  • 権利処理の状況について、発注者が確認できる仕組み

著作権侵害訴訟の具体的な流れ

訴えの提起から判決までのフロー

当事者間の交渉で解決しない場合、著作権侵害訴訟に移行します。訴訟は、原告が裁判所に訴状を提出することで開始され、判決が下されるまでには複数の段階を経るのが一般的です。

著作権侵害訴訟の一般的な流れ
  1. 原告が管轄裁判所に訴状を提出する
  2. 訴状が被告に送達され、第1回口頭弁論期日が指定される
  3. 侵害の有無(権利の存在、類似性、依拠性など)について審理が行われる
  4. 侵害が認められる場合、損害額の算定について審理が行われる
  5. 審理が終結し、判決が言い渡される(途中で和解が成立する場合も多い)

各手続き段階で求められる対応

訴訟手続きにおいては、各段階で適切な主張と立証活動を行う必要があります。特に、訴えを提起する原告側には、自社の主張を裏付けるための具体的な対応が求められます。これらの手続きは専門性が高いため、弁護士を通じて進めることが不可欠です。

訴訟における原告側の主な対応
  • 【訴状提出時】侵害行為を客観的に立証する証拠を添付する
  • 【審理中】準備書面を提出し、相手方の反論に再反論を行う
  • 【侵害論】自画像の創作性、相手画像との類似性・依拠性を立証する
  • 【損害論】損害額の根拠となる計算や財務データなどを提出する
  • 【和解協議】裁判所からの和解勧告に対し、条件を検討し応じるか判断する

損害賠償額の算定方法と相場

損害額を算定する3つの法的基準

著作権侵害における損害額の立証は困難な場合が多いため、著作権法第114条には損害額を算定するための3つの推定規定が設けられています。原告は、事案の性質に応じて最も有利な算定方法を選択して請求額を組み立てます。

基準 算定方法の概要 適用される主なケース
侵害者の譲渡数量 × 権利者の利益額 侵害品が販売された数量に、権利者の1単位あたりの利益を掛ける 物販などで侵害品が販売された場合
侵害者の得た利益額 侵害者がその行為によって得た利益の全額を損害額と推定する 侵害者の利益構造が明確な場合
ライセンス料相当額 その著作物の利用許諾(ライセンス)料に相当する金額を請求する 損害の立証が困難な場合に広く用いられる
著作権法に基づく損害額の推定規定(第114条)

ライセンス料から見る賠償額の相場

ライセンス料相当額を基準とする場合、賠償額は個別の事情によって大きく変動します。ストックフォトサービスなどで定められている数万円程度の正規利用料が基準となることもありますが、無断使用という違法性を考慮し、それを上回る金額が認定される傾向にあります。長期間の無断掲載や、画像の利用態様によっては、通常のライセンス料を大幅に超える賠償額が認められるケースも少なくありません。裁判所は、当事者が交渉した場合に成立したであろう合理的な料金を考慮し、事案の実情に即した柔軟な判断を下します。

賠償額に影響を与える「悪質性」の判断要素

損害賠償額の算定においては、侵害行為の悪質性が賠償額を増額させる重要な要素として考慮されます。悪質性が高いと判断された場合、慰謝料が上乗せされるなどして、賠償額が相場よりも高額になる可能性があります。

賠償額の増額要因となる「悪質性」の例
  • 著作権者名などのクレジットを意図的に削除・改変する行為
  • 権利者からの削除要請を無視し、無断使用を継続する行為
  • 警告を受けた後に、証拠隠滅のような行動をとる行為
  • 無断使用によって、侵害者が不当に高額な利益を得ている場合

訴訟にかかる費用の内訳

弁護士費用(着手金・成功報酬)

著作権侵害訴訟を弁護士に依頼する場合、主に「着手金」と「報酬金」が発生します。これらの費用は、請求する損害賠償額(経済的利益)などに応じて変動します。

弁護士費用の主な内訳
  • 着手金:事件を依頼する際に支払う費用。結果に関わらず返還されないのが原則です。
  • 報酬金(成功報酬):事件解決時に、得られた経済的利益に応じて支払う費用です。
  • 日当・実費:弁護士の出張費や交通費、通信費など、手続きに要した実費です。

裁判所に納める実費(印紙代等)

訴訟を提起する際には、弁護士費用とは別に、裁判所に納める実費が必要です。これらの費用は、最終的に敗訴した側が負担するのが原則です。

裁判所に納める実費の主な内訳
  • 収入印紙代:訴状に貼付する手数料で、請求する損害賠償額に応じて法律で定められています。
  • 予納郵便切手代:訴状などの書類を相手方に送達するために使用する切手代です。
  • その他:証拠のコピー代や、法人の資格証明書を取得するための手数料などがかかります。

【判例解説】画像無断使用の裁判事例

賠償額が高額と判断されたケース

近年、デジタルコンテンツの無断使用、特に大規模かつ悪質な事案に対しては、極めて高額な損害賠償を命じる判例が見られます。例えば、映画を無断で編集・短縮した「ファスト映画」の事案では、1再生あたりの価値と再生回数を基に、約5億円もの賠償が命じられました。海賊版サイトの事案でも、サイトへの訪問者数などを基礎として数億円規模の損害が認定されたケースがあります。これらの判例は、企業の厳格なコンテンツ管理の重要性を示しています。

著作物性が争点となったケース

画像の無断使用をめぐる裁判では、そもそもその画像が著作権法で保護される「著作物」に該当するかが争点となることもあります。著作物と認められるには、思想または感情を創作的に表現したものである必要があり、単なる事実の記録やありふれた表現は保護されない場合があります。例えば、真正面から撮影されただけの商品の写真は著作物性が否定されることがありますが、アングルや光の当て方、背景などに撮影者の個性が現れていれば、著作物として保護される可能性が高まります。著作物性の有無は、訴訟の結論を左右する重要なポイントです。

訴訟を起こされた側の対応

警告書を受け取った際の初動対応

著作権侵害を主張する警告書を受け取った場合、その後の対応が極めて重要になります。慌てて不適切な対応をすると、交渉や裁判で不利になる可能性があるため、慎重に行動しなければなりません。

警告書受領後の初動対応ステップ
  1. 警告書に記載された侵害内容(画像、URL、期間)を正確に把握する
  2. 自社サイト等での使用事実の有無を客観的に調査する
  3. 外部委託先に原因がある場合は、契約内容と権利処理状況を確認する
  4. 安易に相手方に連絡したり、侵害を認めたりせず、まずは弁護士に相談する

訴状が届いた後の答弁と反論

裁判所から訴状が送達された場合、指定された期日までに答弁書を提出して反論しなければなりません。期日までに提出しないと、相手方の主張をすべて認めたものとみなされ、敗訴判決が下される(欠席判決)ため、期限の厳守が絶対です。

答弁書で展開する主な反論の例
  • 権利侵害の否定:原告の画像と類似性・依拠性がないと主張する
  • 著作物性の否定:原告の画像に創作性がなく、著作物にあたらないと主張する
  • 適法利用の主張:適法な「引用」の要件を満たしていると主張する
  • 損害額への反論:侵害は認めるが、請求された賠償額が過大であると主張する

示談交渉に応じるか否かの判断基準と注意点

訴訟の長期化や風評被害を避けるため、示談(和解)による早期解決も有効な選択肢です。示談に応じるかどうかは、侵害の可能性や相手方の請求内容を冷静に分析して判断する必要があります。

示談交渉を検討する際の判断基準
  • 侵害の可能性が高い場合:訴訟の長期化や評判への影響を避けるため、示談を検討する
  • 相手の主張に根拠が薄い場合:安易に譲歩せず、法的に反論を続ける
  • 請求額が不当に高額な場合:相場とかけ離れている場合は、訴訟も視野に対応する

示談が成立した場合は、合意内容を必ず示談書として文書化します。その際、後日の追加請求を防ぐため、示談書に定める以外の債権債務が存在しないことを確認する「清算条項」を盛り込むことが不可欠です。

よくある質問

SNSでの無断転載も対象になりますか?

はい、対象になります。個人がSNSに投稿した写真やイラストであっても著作物であり、それを無断で自社のアカウントやウェブサイトに転載する行為は、複製権や公衆送信権の侵害にあたります。投稿元の出所を明記したとしても、適法な引用の要件を満たさない限り、無断転載として法的責任を問われるリスクがあります。

示談交渉による解決は可能ですか?

はい、可能です。著作権侵害トラブルの多くは、訴訟に至る前の当事者間の示談交渉によって解決されています。弁護士を通じて交渉し、解決金の支払いや画像の削除などの条件で合意することで、紛争を迅速かつ非公開で終結することができます。

相手が不明な場合、特定する方法はありますか?

はい、あります。インターネット上で匿名で権利侵害を行っている相手方については、「発信者情報開示請求」という法的手続きを利用して個人を特定できます。サイト管理者やプロバイダに対し、裁判手続きを通じてIPアドレスや契約者情報の開示を求め、特定された相手方に対して損害賠償請求などを行うことが可能です。

警告通知は自分で送付しても有効ですか?

法的には有効ですが、専門家である弁護士名義で送付する方が格段に効果的です。企業名義の通知では、相手方が事態を軽視して無視する可能性があります。弁護士名義の内容証明郵便で送付することで、法的措置も辞さないという本気度が伝わり、相手が迅速な解決に応じる可能性が高まります。

まとめ:画像無断使用の訴訟リスクに備え、適切な法的対応を

画像の無断使用は著作権侵害となり、訴訟では損害賠償や差止請求が認められる可能性があります。訴訟を提起する際は証拠保全と内容証明による警告が重要であり、逆に訴えられた場合は答弁書で法的な反論を組み立てることになります。損害賠償額はライセンス料相当額を基準に、侵害の期間や悪質性などを考慮して算定されますが、訴訟には弁護士費用や印紙代といったコストも発生します。自社がどちらの立場であっても、著作権に関するトラブルは専門的な知識が不可欠なため、速やかに弁護士へ相談し、対応を協議することが賢明な判断です。本記事で解説した内容はあくまで一般的な流れであり、個別の事案については必ず専門家のアドバイスに基づき慎重に対応を進めてください。

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