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無期雇用派遣が違法になるケースとは?派遣先の法的リスクと注意点を解説

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無期雇用派遣の活用にあたり、「違法」となるケースについて漠然とした不安を抱えていませんか。派遣という形態は柔軟な人材活用を可能にする一方、偽装請負や二重派遣といった法令違反のリスクを内包しており、意図せず違法状態に陥る可能性もあります。コンプライアンスを遵守するためには、どのような行為が違法と判断されるのか、その具体的な類型と法的リスクを正確に理解しておくことが不可欠です。この記事では、無期雇用派遣が違法となる代表的なケースや、派遣先企業が負う「労働契約申込みみなし制度」などのリスク、そして遵守すべき法的義務について詳しく解説します。

目次

無期雇用派遣の基礎知識

無期雇用派遣の法的定義

無期雇用派遣とは、派遣元企業と労働者が期間の定めのない労働契約を結び、派遣先企業で就業する雇用形態です。労働者派遣法および労働契約法に準拠した安定的な雇用形態として位置づけられています。派遣先での就業期間が終了し、次の派遣先が決まらない待機期間中であっても、派遣元との雇用関係は継続し、給与や休業手当が支払われます。

無期雇用派遣の主な特徴
  • 派遣元企業と期間の定めのない労働契約(無期雇用契約)を締結する。
  • 派遣先での業務がない待機期間中も、派遣元から給与や休業手当が支払われる。
  • 派遣労働者の雇用が安定するため、長期的なキャリア形成を見据えやすい。
  • 企業はコンプライアンスを遵守しつつ、安定した人材を確保できる。

有期雇用派遣(登録型)との相違点

無期雇用派遣と有期雇用派遣(登録型派遣)の最も大きな違いは、雇用契約の期間雇用の継続性にあります。有期雇用派遣は派遣期間が終了すると雇用契約も終了しますが、無期雇用派遣は派遣先が変わっても派遣元との雇用関係は継続します。

項目 無期雇用派遣 有期雇用派遣(登録型)
派遣元との雇用契約 期間の定めなし 派遣就業期間に限定(有期)
待機期間中の給与 支払われる 支払われない
雇用の安定性 高い 低い
派遣法「3年ルール」 適用されない 適用される
無期雇用派遣と有期雇用派遣(登録型)の比較

正社員との相違点

無期雇用派遣と正社員は、どちらも期間の定めのない雇用契約ですが、雇用主(契約の当事者)業務の指揮命令権者が異なります。正社員は勤務先の企業に直接雇用され、指揮命令も受けますが、無期雇用派遣は派遣元に雇用され、指揮命令は派遣先から受けます。

項目 無期雇用派遣 正社員
雇用主 派遣元企業 勤務先企業
給与支払・労務管理 派遣元企業 勤務先企業
業務の指揮命令 派遣先企業 勤務先企業
勤務地 派遣先企業の就業場所に依存 原則として自社内(異動あり)
無期雇用派遣と正社員の比較

無期転換ルールとの関係性

無期転換ルールは、同一の企業との間で有期労働契約が更新され、通算契約期間が5年を超えた場合に、労働者の申し込みによって無期労働契約に転換できる制度です(労働契約法)。このルールは派遣労働者にも適用され、同一の派遣元企業との有期雇用契約が通算5年を超えた場合、労働者は派遣元に対して無期雇用への転換を申し込むことができます。

無期転換ルールのポイント
  • 派遣労働者が同一の派遣元と通算5年を超えて有期契約を更新した場合に権利が発生する。
  • 労働者からの申し込みがあった場合、派遣元企業はこれを拒否できない。
  • 無期転換により無期雇用派遣となった労働者は、派遣法の「3年ルール」の適用対象外となる。
  • 派遣先は、優秀な人材を期間の制限なく継続して受け入れることが可能になる。

「違法」と判断される派遣の類型

偽装請負と判断される指揮命令

契約上は業務委託や請負であっても、実態として発注者が受託企業の労働者に直接、業務の指揮命令を行っている場合、偽装請負と判断され違法となります。これは、労働者派遣法や職業安定法が定める使用者責任の所在を曖昧にし、労働者保護の規定が適用されなくなるためです。

偽装請負と判断されやすい指揮命令の例
  • 発注者が受託企業の労働者に対し、作業手順や時間配分を細かく指示する。
  • 発注者が受託企業の労働者の始業・終業時刻や休憩時間を管理する。
  • 発注者が受託企業の労働者の人事評価や選考に関与する。
  • 発注者が受託企業の労働者に対して、業務内容に関する直接の許可や承認を行う。

法令で禁止される二重派遣

二重派遣とは、派遣先企業が受け入れた派遣労働者を、さらに別の企業へ派遣して就業させる行為です。これは職業安定法で禁止されている労働者供給事業に該当し、労働基準法が禁じる中間搾取につながるため、固く禁じられています。雇用主の責任の所在が不明確になり、労働災害発生時の補償や賃金支払いに支障をきたす極めて悪質な違法行為です。

派遣労働が認められない禁止業務

労働者派遣法では、一部の業務において労働者派遣を行うことを原則として禁止しています。これらの業務は、労働者の安全確保や業務の専門性、公共性の観点から、直接雇用による責任体制の確保が不可欠とされているためです。

労働者派遣が禁止されている主な業務
  • 港湾運送業務
  • 建設業務
  • 警備業務
  • 病院・診療所等における医療関連業務(一部の例外を除く)
  • 弁護士、社会保険労務士などのいわゆる「士業」(一部の例外を除く)

無許可・無届出の事業者からの受入

労働者派遣事業を行うには、厚生労働大臣の許可が必要です。許可を得ていない無許可の事業者から労働者派遣を受け入れることは、労働者派遣法違反となり、派遣先企業も罰則の対象となります。過去に存在した特定労働者派遣事業(届出制)は既に廃止され、現在はすべて許可制に一本化されています。派遣先は、契約前に派遣元が有効な許可を得ているかを必ず確認する義務があります。

事前面接など特定目的行為の禁止

派遣先が派遣労働者を特定することを目的とする行為は、法律で原則として禁止されています。これは、労働者派遣が「労働力の提供」を受ける契約であり、個人を選考する「職業紹介」とは区別されるためです。事前の面接や履歴書の提出要求は、この禁止行為に該当する可能性が非常に高くなります。

禁止される特定目的行為の例
  • 派遣就業開始前に面接や試験を実施すること。
  • 派遣元に、履歴書や職務経歴書の提出を要求すること。
  • 年齢、性別、国籍などを指定して特定の労働者を要求すること。

派遣契約の適法性を担保する派遣元事業者の選定基準

適法で健全な派遣元事業者を選定することは、派遣先企業のコンプライアンスリスクを管理する上で不可欠です。不適切な事業者との契約は、後述する「労働契約申込みみなし制度」の適用など、深刻な法的・経済的リスクにつながります。

派遣元事業者の選定基準
  • 厚生労働大臣から有効な「労働者派遣事業許可証」を得ているか。
  • 各種社会保険への加入手続きを適正に行っているか。
  • 派遣労働者に対する法定の教育訓練計画が整備・実施されているか。
  • 適切な労務管理体制と、個人情報保護に関する体制が構築されているか。

違法派遣における派遣先のリスク

労働契約申込みみなし制度とは

労働契約申込みみなし制度とは、派遣先が違法な労働者派遣を受け入れた場合に、その違法状態が発生した時点で、派遣先が派遣労働者に対して直接雇用の申し込みをしたとみなす制度です。これは、違法派遣を抑止し、派遣労働者の雇用を保護するための強力な措置であり、派遣先はこれを拒否することができません。

みなし制度が適用される4つの要件

労働契約申込みみなし制度は、あらゆる違法派遣に適用されるわけではなく、労働者派遣制度の根幹を揺るがす、特に悪質とされる以下の4つのケースに限定されています。

労働契約申込みみなし制度の適用要件
  • 派遣禁止業務に労働者を従事させた場合。
  • 無許可の事業者から労働者派遣を受け入れた場合。
  • 派遣可能期間の制限(3年ルールなど)に違反して労働者を受け入れた場合。
  • 偽装請負など、労働者派遣法の規制を免れる目的で契約を偽装した場合。

みなし制度適用後の法的効果と責任

みなし制度が適用され、派遣労働者が1年以内に承諾の意思表示をすると、派遣先と労働者の間で労働契約が成立します。この際、労働条件は原則として派遣元と労働者が結んでいた契約内容(給与、労働時間など)がそのまま引き継がれます。派遣先は、自社の就業規則を理由に、労働者に不利益な条件を提示することはできません。これにより、派遣先は予期せぬ直接雇用義務と人件費負担を負うことになります。

行政からの指導・勧告・公表

違法派遣が発覚した場合、みなし制度による民事上の責任だけでなく、労働局による行政指導や是正勧告が行われます。勧告に従わないなど、悪質なケースでは、労働者派遣法に基づき企業名が公表されることがあります。企業名が公表されると、社会的信用が著しく低下し、事業活動に深刻な影響を及ぼす可能性があります。

企業名公表がもたらす経営リスク
  • 社会的信用の失墜によるブランドイメージの悪化。
  • 取引先からの契約見直しや取引停止。
  • 金融機関からの融資への悪影響。
  • 採用活動における応募者の減少。

「労働契約申込みみなし制度」を回避するための日常的な労務管理

みなし制度の適用リスクを回避するには、契約書の内容が適法であることはもちろん、日々の業務における運用実態を適正に管理することが極めて重要です。特に、現場の指揮命令者が契約範囲を超えた指示を出してしまうことで、意図せず偽装請負の状態に陥るリスクがあります。

みなし制度を回避するための労務管理
  • 派遣労働者の業務範囲と指揮命令系統を社内で明確に共有する。
  • 現場の管理職向けに、労働者派遣法に関する定期的な研修を実施する。
  • 定期的な内部監査を行い、契約内容と業務実態に乖離がないかを確認する。
  • 派遣労働者からの相談窓口を設置し、問題の早期発見に努める。

派遣先が遵守すべき法的義務

派遣契約書の記載事項の確認

労働者派遣契約書(基本契約・個別契約)には、労働者派遣法で定められた事項を漏れなく記載する義務があります。契約内容を明確にすることで、派遣労働者の就業条件を保護し、労務トラブルを未然に防ぎます。

派遣契約書の主な法定記載事項
  • 派遣労働者が従事する業務の内容
  • 就業の場所および組織単位
  • 始業・終業の時刻および休憩時間
  • 派遣先責任者および指揮命令者の氏名・役職
  • 派遣労働者からの苦情処理に関する事項

派遣先管理台帳の作成と管理

派遣先企業は、派遣労働者ごとに派遣先管理台帳を作成し、日々の就業実態を記録・管理する義務があります。この台帳は、適正な労務管理の証拠となる重要な書類です。

派遣先管理台帳に関する3つの法的義務
  • 作成: 派遣労働者ごとに、氏名、就業日、始業・終業時刻、業務内容等を記録する。
  • 保存: 派遣就業の終了日から起算して3年間保存する。
  • 通知: 記載事項の一部(就業日数など)を、月に1回以上、派遣元企業へ通知する。

抵触日の通知義務(有期雇用派遣)

有期雇用派遣を受け入れる場合、派遣先は労働者派遣契約を締結する前に、派遣元に対し抵触日(派遣可能期間の制限を受ける最初の日)を書面等で通知しなければなりません。この通知がないと、派遣元は適法に労働者派遣契約を締結することができないため、実務上、極めて重要な手続きです。

派遣労働者からの苦情処理体制の整備

派遣先は、派遣労働者からの業務に関する苦情を適切に処理するための体制を整備する義務があります。苦情申出の窓口担当者を定め、派遣元と連携しながら、迅速かつ誠実に問題解決にあたる必要があります。

苦情処理体制の整備ポイント
  • 派遣労働者専用の相談窓口担当者を明確にする。
  • 寄せられた苦情の内容と処理状況を派遣先管理台帳に記録する。
  • 派遣元企業の担当者と密に連携し、解決策を協議・実施する。
  • 苦情を申し出たことを理由に、派遣労働者へ不利益な取扱いをしない。

教育訓練・福利厚生における配慮義務

派遣先企業は、同一労働同一賃金の原則に基づき、派遣労働者に対して自社の正社員と均等・均衡な待遇を提供するよう努めなければなりません。業務に必要な教育訓練の機会を提供したり、社員食堂や休憩室、更衣室といった福利厚生施設を正社員と同様に利用できるよう配慮する義務があります。

派遣労働者からの相談・苦情が「違法状態」のサインになることも

派遣労働者からの苦情や相談は、現場で発生している潜在的な法令違反やコンプライアンス上の問題を早期に発見するための重要なシグナルです。契約外業務の指示やサービス残業の実態など、管理部門が把握しきれない問題が、当事者の声によって表面化することは少なくありません。個人の不満として軽視せず、組織全体の問題として捉え、迅速な事実確認と是正措置を講じることが、企業のリスク管理につながります。

よくある質問

Q. 無期雇用派遣は派遣先の都合で契約終了できますか?

はい、可能です。無期雇用契約は、あくまで派遣元企業と派遣労働者との間の契約です。派遣先企業と派遣元企業との間で結ばれる「労働者派遣契約」が、事業上の合理的な理由(プロジェクトの完了など)により終了することはあり得ます。ただし、契約を中途解除する場合には、派遣労働者の新たな就業機会の確保に協力するなど、派遣法に定められた措置を講じる必要があります。

Q. 派遣社員にも正社員募集の情報提供は必要ですか?

はい、必要です。同一の事業所で1年以上継続して就業している派遣労働者がいる場合、派遣先企業が自社の正社員を募集する際には、その募集情報を当該派遣労働者にも提供する義務があります(労働者派遣法)。社内イントラネットへの掲載や事業所内での掲示など、派遣労働者が情報を知り得る方法で周知する必要があります。

Q. 無期雇用派遣に「3年ルール」は適用されますか?

いいえ、適用されません。いわゆる「3年ルール」(派遣期間制限)は、有期雇用の派遣労働者の雇用安定を図るための制度です。派遣元と期間の定めのない雇用契約を結んでいる無期雇用派遣労働者は、このルールの適用対象外です。そのため、派遣先は期間の制限なく、同一の組織単位で無期雇用派遣労働者を受け入れることができます。

Q. みなし制度適用後、直接雇用の手続きはどうなりますか?

派遣労働者が承諾の意思表示をした時点で、派遣先と労働者の間に法的に労働契約が成立したとみなされます。派遣先は、速やかに直接雇用に向けた以下の手続きを進める義務を負います。

直接雇用の主な手続き
  1. 派遣元での労働条件を引き継いだ内容で、労働条件通知書および雇用契約書を作成・交付する。
  2. 健康保険、厚生年金保険、雇用保険などの社会保険の資格取得手続きを行う。
  3. 給与支払い、勤怠管理などを自社の従業員として開始する。

これらの手続きを不当に拒否または遅延させることは、さらなる行政指導や訴訟リスクを招きます。

Q. なぜ無期雇用派遣は派遣料金が高い傾向なのですか?

無期雇用派遣の料金が高い傾向にあるのは、派遣元企業が労働者に対して負う長期的な雇用責任とそれに伴う固定コストが料金に反映されているためです。有期雇用派遣と異なり、派遣元には以下のような負担が発生します。

派遣料金が高くなる主な要因
  • 派遣先が決まらない待機期間中の給与や休業手当の支払い義務。
  • 定期的な昇給や賞与の支払い。
  • 長期的なキャリア形成を支援するための継続的な教育訓練費。
  • 退職金制度を設けている場合の引当金など。

これらのコストが派遣料金に含まれるため、時間単価は高くなりますが、派遣先は専門性の高い人材を長期間安定して確保できるというメリットがあります。

まとめ:無期雇用派遣の違法性を理解し、コンプライアンスリスクを回避する

本記事では、無期雇用派遣の受け入れにおいて違法となるケースとして、偽装請負や二重派遣、禁止業務への従事などを解説しました。これらの違法派遣が発覚した場合、派遣先は「労働契約申込みみなし制度」により、意図せず直接雇用の義務を負うなど、深刻な法的・経営的リスクに直面します。適法性を担保する上で重要なのは、契約書の内容だけでなく、現場における日々の指揮命令といった運用実態です。まずは、契約中の派遣元が国の許可を得ているかを確認し、社内の管理職に対して派遣労働者への業務指示の範囲を改めて周知することがリスク回避の第一歩となります。派遣労働者からの苦情は潜在的な問題のサインと捉え、派遣元と連携して誠実に対応する体制を構築しましょう。本稿の内容は一般的な法解釈であり、個別の事案については弁護士などの専門家へ相談することをお勧めします。

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