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日雇い派遣は原則違法?合法となる例外要件と企業のリスク管理

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急な人材需要から日雇い派遣の活用を検討するものの、法規制の複雑さからリスクを懸念する経営者や労務担当者の方も少なくありません。労働者派遣法では、労働者の雇用安定を図るため日雇い派遣は原則として禁止されており、知らずに利用すると罰則を受ける可能性があります。この記事では、日雇い派遣が原則禁止とされている理由から、例外的に認められる業務や労働者の具体的な条件、単発バイトとの違いまでを詳しく解説します。

日雇い派遣が原則禁止の理由

法律上の「日雇い派遣」の定義とは

労働者派遣法における「日雇い派遣」とは、雇用契約期間が30日以内の労働者派遣を指します。重要なのは、実際に働く日数ではなく、派遣元と労働者の間で結ばれる雇用契約の期間が基準となる点です。例えば、実際の就業が1日だけでも、雇用契約期間が31日以上あれば日雇い派遣には該当しません。この規制は、雇用が不安定になりやすい「登録型派遣」を対象としており、派遣会社に無期雇用される「常用型派遣」は対象外です。

労働者派遣法の改正背景と目的

日雇い派遣が原則禁止とされた背景には、2008年のリーマンショック後に深刻化した社会問題があります。当時は「派遣切り」によって多くの労働者が職と住居を失いました。日雇い派遣は、労働者の生活を不安定にし、ワーキングプアの温床となっていると指摘されていました。

2012年労働者派遣法改正の背景となった主な問題点
  • 企業の都合で契約が打ち切られる「派遣切り」の多発
  • 短期雇用のため社会保険に加入できず、セーフティネットが機能しない
  • データ装備費などの名目で派遣会社が不当な費用を徴収する問題
  • 安全教育が不十分で、労働災害が発生しやすい労働環境

このような状況を受け、労働者の保護と雇用の安定を図ることを目的に、2012年の法改正で日雇い派遣は原則禁止となりました。

日雇い派遣が合法となる2つの例外要件

【例外1】許可される19の専門業務

日雇い派遣は原則禁止ですが、専門性が高く、適正な雇用管理に支障がないと認められる業務は例外として許可されています。これらは労働者派遣法施行令で定められています。

日雇い派遣が例外的に認められる業務
  • ソフトウェア開発、機械設計、事務用機器操作
  • 通訳、翻訳、速記
  • 秘書、ファイリング、財務処理
  • 取引文書作成、デモンストレーション、添乗
  • 研究開発、事業の実施体制の企画・立案
  • 書籍等の制作・編集、広告デザイン
  • OAインストラクション
  • セールスエンジニアの営業、金融商品の営業

これらの業務に該当するかは、契約上の名称ではなく業務の実態に基づいて判断されるため、注意が必要です。

【例外2】許可される労働者の4つの条件

業務内容にかかわらず、特定の条件を満たす労働者は日雇い派遣での就労が認められています。これは、日雇い派遣に生活を依存していなくても、経済的に困窮するリスクが低いと考えられるためです。

日雇い派遣が例外的に認められる労働者の条件
  • 60歳以上の者
  • 雇用保険の適用を受けない学生(いわゆる「昼間学生」)
  • 生業収入が500万円以上あり、副業として日雇い派遣に従事する者
  • 世帯年収が500万円以上あり、その世帯の主たる生計者ではない者

学生については、夜間や通信制の学生、休学中の学生は対象外です。また、収入要件は複数の収入の合算は認められません。

日雇い派遣と単発バイトの違い

雇用契約の相手方と指揮命令系統

日雇い派遣と単発バイトは、短期間の仕事という点は共通していますが、法律上の「雇用関係」が根本的に異なります。日雇い派遣では労働者と派遣会社が雇用契約を結び、派遣先企業から仕事の指示を受けます。一方、単発バイトは労働者と就業先の企業が直接雇用契約を結び、その企業から直接指示を受けます。

労働者保護における責任の所在

雇用関係の違いは、労働者を保護する責任の所在にも影響します。単発バイトでは、雇用主である就業先企業が給与支払いや安全管理などすべての責任を負います。しかし日雇い派遣では、責任が派遣元と派遣先で分担されます。

項目 日雇い派遣 単発バイト(直接雇用)
雇用契約の相手 派遣会社 就業先の企業
指揮命令者 派遣先の企業 就業先の企業
給与支払責任 派遣会社 就業先の企業
労務管理責任 派遣元と派遣先で分担 就業先の企業が一元的に負う
労働災害の責任 派遣元(保険適用)、派遣先(現場の安全配慮) 就業先の企業
日雇い派遣と単発バイト(直接雇用)の比較

違反時の罰則と実務上の注意点

労働者派遣法違反時の罰則・行政処分

労働者派遣法に違反して日雇い派遣を行った場合、派遣元・派遣先の両方に厳しい措置が科される可能性があります。

労働者派遣法違反に対する主なペナルティ
  • 行政指導・助言、改善命令: 厚生労働大臣からの是正を求める措置。
  • 事業停止命令、事業許可の取り消し: 悪質な派遣元に対する重い行政処分。
  • 企業名の公表: 勧告に従わない派遣先企業は、社名を公にされることがある。
  • 労働契約申込みみなし制度: 違法派遣と知りながら受け入れた場合、派遣先が労働者に直接雇用を申し込んだとみなされる。
  • 罰則: 無許可での事業運営などには「1年以下の懲役または100万円以下の罰金」などが科される。

派遣先企業が講ずべき確認義務

派遣先企業は、違法な日雇い派遣に関与しないよう、受け入れ時に以下の点を確認する義務があります。

派遣先企業が実施すべき主な確認事項
  • 受け入れる派遣が、例外要件(業務または労働者)に正しく該当しているかを確認する。
  • 派遣元が、労働者の年齢や収入、学生であることなどを証明する書類を適切に確認しているかをチェックする。
  • 派遣先管理台帳を作成・保管し、就業日や業務内容を正確に記録・管理する。
  • 派遣社員に対しても、自社の従業員と同様に安全配慮義務を履行する。

派遣契約書で明記すべき例外要件の確認条項

日雇い派遣を適法に行うためには、労働者派遣契約書に例外要件に関する取り決めを明記し、リスクを管理することが不可欠です。

契約書に含めるべき主要な確認条項
  • 派遣元が、派遣労働者の例外要件を責任をもって確認したことを保証する条項。
  • 従事する業務が、政令で定める例外業務のいずれに該当するかを具体的に記載する。
  • 派遣元の確認不備や労働者の虚偽申告が発覚した場合の、損害賠償や契約解除に関する条項。

これらの条項を設けることで、適法な派遣であることを書面で明確にし、トラブルを未然に防ぐことができます。

日雇い派遣に関するよくある質問

Q. 派遣元が確認を怠った場合、派遣先も責任を問われますか?

はい、責任を問われる可能性があります。派遣先には、受け入れる労働者が適法な状態で就業しているかを確認する注意義務があります。派遣元の確認不足によって違法な日雇い派遣が行われた場合、派遣先も行政指導の対象となり得ます。悪質なケースでは、労働契約申込みみなし制度の適用により、直接雇用の義務が生じることもあります。

Q. 単発バイトアプリが違法でないのはなぜですか?

多くの単発バイトアプリは「職業紹介」という仕組みを採用しているためです。アプリは仕事を探す人と企業を仲介するだけで、労働者と企業が「直接雇用契約」を結びます。日雇い派遣の規制は「派遣」を対象とするため、直接雇用である単発バイトには適用されません。ただし、アプリ運営会社が実質的に指揮命令を行うなど、実態が派遣とみなされる場合は違法となる可能性があります。

Q. 例外要件の年収500万円は手取り額ですか?

いいえ、社会保険料や税金が引かれる前の額面金額(総支給額)を指します。この金額は、源泉徴収票や所得証明書などで確認します。また、複数の仕事を合算して500万円を超えるケースは認められず、一つの主たる生業からの収入が基準となります。

Q. 学生の例外要件「雇用保険の適用を受けない」とは?

これは主に、大学や専門学校などの昼間課程に在籍する学生を指します。雇用保険法では、昼間学生は原則として適用除外とされているためです。したがって、夜間学部や通信教育課程の学生、休学中の学生は雇用保険の適用対象となり得るため、この例外要件には該当しません。

Q. 例外要件の確認書類は派遣先も保管する義務がありますか?

書類の確認と保管の法的義務は派遣元にあります。しかし、派遣先も、適法な派遣であることを証明できるよう、派遣元からそれらの書類の写しを提供してもらい、保管しておくことが強く推奨されます。行政調査などが入った際に、派遣先としての確認義務を果たしていたことを示すための重要な資料となります。

まとめ:日雇い派遣を適法に活用するための例外要件と注意点

本記事では、日雇い派遣が原則禁止である理由と、例外的に認められる2つの要件(専門業務・対象者)について解説しました。派遣先企業には、受け入れる労働者がこれらの例外要件に該当するかを適切に確認する義務があります。日雇い派遣を活用する際は、派遣元が例外要件を確認したことを証明する書類の提示を求め、契約書にもその責任の所在を明記することが、実務上のリスク管理として重要です。労働者の雇用に関するルールは複雑なため、個別のケースで判断に迷う場合は、弁護士などの専門家に相談することをお勧めします。

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