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持株会社組織再編の進め方|手法選定と税務要件を先に確認

経営リスクナビ編集部

持株会社組織再編(持株会社化・グループ内再編)を検討し始めると、会社法手続だけでなく税務・ガバナンス・対外契約まで論点が同時多発し、どこから手を付けるべきか判断が難しくなります。前提整理が不十分なまま進めると、株主総会の特別決議や反対株主対応、さらに議決権90%以上の場合に用い得る手続(最短20日間程度)など、工程と説明の組み立てで手戻りが起きやすくなります。実務で最初に押さえるべきは、目的と株主構成・支配関係を起点に、どの再編手段が現実的かを切り分けることです。以下では、持株会社化の判断材料として会社法・税務・ガバナンスの要点を示します。

持株会社組織再編の前提

持株会社体制と組織再編の関係

持株会社体制の構築は、単に親会社機能を強める経営施策ではなく、会社法上の組織再編行為によって資本関係・事業帰属・機関設計を「法的に組み替える」プロジェクトです。持株会社は、グループ企業の株式を保有して支配・管理し、経営戦略の立案や資源配分を担うため、既存の事業会社の構造を前提にしたままでは、権限・責任・ガバナンスが曖昧になりやすい点に注意が必要です。

実務で多用される代表例は、(1) 既存事業会社の株式を新設親会社に100%移す株式移転、(2) 既存会社を親会社として他社を100%子会社化する株式交換、(3) 事業単位で権利義務を移す会社分割です。株式交換は「株式交換契約」の締結が必要で(会社法第768条)、株式移転は「株式移転計画」を作成します(会社法第773条)。いずれも、適法な開示・承認・登記を積み上げて初めて、グループ統治の前提となる親子関係(特に完全親子関係)を安定して作れます。

加えて、株主が株式を自由に譲渡できない株式譲渡制限会社では、株主の会社支配への関心が高いことが多く、株式を動かして支配関係を組み替えるスキームが「常に同じように使える」とは限りません。対象会社の株式の譲渡制限の有無、株主構成、支配権の設計(誰が最終支配者か)を最初に棚卸ししてから、再編手段を当てはめる必要があります。

目的の明確化が手法選定の起点

持株会社化・グループ内再編では、手段(株式移転・会社分割など)より先に、経営課題として何を解くのかを文章で固定することが重要です。目的が曖昧なまま進めると、管理コスト増だけでなく、持株会社の権限が不明確になったり、親会社が子会社の利益を吸い上げるように見えて搾取の可能性を疑われたりして、社内外の信頼を毀損しやすくなります。

目的から整理しておくべき典型論点
  • グループ戦略・事業ポートフォリオの見直しに経営資源を集中したいのか(戦略立案機能の集約)
  • 経営責任を明確にし、子会社ごとの損益責任と権限委譲を進めたいのか(責任と権限の対応)
  • 規模の経済(スケールメリット)を狙い、間接部門や購買等を集約したいのか(共通機能の統合)
  • 合併で起こりがちな会社風土の衝突を避けつつ、事業再編を進めたいのか(統合深度の選択)

なお、合併・会社分割・株式交換・株式移転は原則として株主総会の特別決議が関係しますが、一定の条件を満たす場合に特別決議を省略できる例外もあります。どの例外が使えるかは、支配関係、対価、手続設計(簡易・略式の可否)に左右されるため、目的に加えて「株主構成・議決権の見通し」も手法選定の起点として同時に整理します。

持株会社化の手法比較

株式移転・株式交換・株式交付の違い

株式移転・株式交換・株式交付は、いずれも株式を対価に支配関係を再構築する枠組みですが、親会社を新設するか、既存会社を親会社にするか、完全子会社化を狙うのかで使い分けます。

手法 親会社の形 支配関係の到達点 主要な実務用途
株式移転 新設親会社を設立 子会社を100%化(完全親子) 複数社を同列に束ねて持株会社を新設する、株主構成を上にスライドさせる
株式交換 既存会社が親会社 対象会社を100%化(完全親子) 中核会社を頂点に支配を集約する、段階的に子会社をぶら下げる
株式交付 既存会社が親会社 過半数取得を想定(完全子会社化は必須でない) 現金を抑えつつ段階的に議決権を確保する
3手法の制度上の骨格

株式交換は「株式交換契約」を締結し(会社法第768条)、株式移転は「株式移転計画」を作成します(会社法第773条)。どちらも完全親子会社を作るための制度として位置付けられており、株主への事前開示と株主総会承認が基本線になります。加えて、対象が株式譲渡制限会社である場合、株式の移動を前提とした設計が株主の利害に直結するため、スキームの適用可能性や社内合意形成の難易度が上がり得ます。

合併と会社分割の使い分け

合併は法人格を一体化し、権利義務を包括承継して組織を一本化するのに対し、会社分割は事業単位で権利義務を切り出して再配置するため、統合の「深さ」が異なります。持株会社化と同時または後続で行う再編では、合併で統合し切るべき領域と、会社分割で切り分けて管理すべき領域を峻別すると、スケールメリットとリスク分離を両立しやすくなります。

参照図式のとおり、会社分割には大きく吸収分割新設分割があり、前者は既存の承継会社に事業を移し、後者は新会社を設立して事業を承継させます。会社分割はM&A手法の一つでもあるため、対外契約・許認可・従業員対応(労務)を「事業単位」で設計できる反面、分割対象の特定や承継範囲の定義が甘いと、移し漏れ・契約更改漏れが起こり得ます。

また、合併や会社分割等は原則として株主総会特別決議が関係しますが、一定の条件を満たす場合に特別決議を省略できる例外があり、全体スケジュールと反対株主・債権者対応に直結します。統合の深さ(合併)か、事業の切り分け(分割)かに加え、使える簡易手続の可否まで含めて比較するのが実務的です。

新設持株会社を作るか既存会社を親会社化するかの判断基準

新設持株会社(株式移転等)か、既存会社を親会社化(株式交換等)かは、「株主構成の維持のしやすさ」と「既存の事業・資金繰り・ガバナンスをどこに残すか」で判断します。

判断の軸(実務で揉めやすい点)
  • 株主構成を上位にそのままスライドさせたいか(株主間の力学を維持する必要性)
  • 既存の中核会社に主要事業・許認可・人材・与信を残したいか(事業の連続性)
  • 親会社の役割を「純粋持株会社」に寄せるか、それとも事業も残す「事業持株会社」にするか(体制の設計)
  • 将来のM&Aやノンコア事業整理を見据え、事業ポートフォリオ管理を親会社で回すか(投資・撤退の意思決定)

純粋持株会社は、一般にグループ企業の株式を5割以上保有し、自らは事業を行わず経営戦略の立案に集中する形として説明されます。一方、事業持株会社は、株式保有・支配に加えて、自ら事業も行います。どちらを選ぶかで、親会社のコスト構造、役員・従業員配置、対外説明(投資家・金融機関・取引先)における説得力が変わるため、法務・税務の論点と同じレベルで早期に決めておく必要があります。

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株式移転で持株会社化する

株式移転の仕組みと会社法上の要件

株式移転は、既存の株式会社の発行済株式を新設親会社に取得させ、子会社を100%化して完全親子会社関係を作る制度です。会社法上、株式移転を行うには「株式移転計画」を作成します(会社法第773条)。

実務で外せないのは、(1) 事前開示、(2) 株主総会承認、(3) 登記という三点セットです。参照される整理として、株式移転・株式交換をする際は、事前の開示と効力発生日前日までに株主総会による承認が必要とされます(株式交換は株式交換契約(会社法第768条)、株式移転は株式移転計画(会社法第773条))。

また、合併・会社分割・株式交換・株式移転は原則として株主総会の特別決議が関係しますが、一定の条件を満たすことで特別決議を省略できる例外があり得ます。グループ内の支配関係(すでに完全支配か、議決権比率はどの程度か)によって、必要な機関決定とスケジュールが変わるため、初期段階で前提条件を確定させておくことが重要です。

株式移転のメリットと弱点

株式移転のメリットは、現金対価を用いずに、既存株主に新設持株会社の株式を割り当てることで完全親子関係を作り、契約・許認可・雇用を「法人格ごと」維持しやすい点にあります。一方で、持株会社を作ること自体が万能ではなく、運用設計を誤るとデメリットが顕在化します。

参照される持株会社のメリット・留意点
  • グループ企業の戦略に集中できる(親会社が投資・撤退・資源配分を担う)
  • 経営責任が明確になる(親会社は監督・子会社は執行という役割分担)
  • スケールメリットがある(間接部門集約や共通購買等)
  • 合併による会社風土の違いを回避しやすい(法人格を残しつつ再配置できる)
  • 持株会社の権限が不明確になるおそれがある(親子の決裁境界が曖昧だと形骸化する)
  • 持株会社による搾取の可能性を疑われるおそれがある(移転価格・配当・費用負担の設計が説明できないと不信を招く)

弱点への実務対応としては、子会社からの配当・経営管理料・資金貸付の設計を、ガバナンス(利益相反・少数株主が残る場合の説明)と一体で組み立てることが必要です。特に「親会社が何を決め、子会社が何を決めるか」を規程・権限表・稟議ルートで具体化しないと、権限不明確問題が再発します。

株式移転でつまずきやすい株主構成と反対株主対応の分かれ目

株式移転は株主の地位に直接影響するため、少数株主の反対が見込まれる場合、反対株主対応が最大の実務リスクになります。参照される整理として、事業譲渡に反対する株主は会社に株式買取を請求でき、この権利行使には「株主総会で決議に反対する旨をあらかじめ書面で通知し、実際に株主総会で反対する」ことが必要とされています。株式移転でも同様に、手続要件を満たした反対株主がいれば、価格協議・紛争対応が発生し得ます。

実務の分かれ目は、手続の適法性だけでなく、評価と説明の準備の有無です。日本では、企業価値や条件交渉の議論が「1株の株価」に偏りがちだった経緯がある一方、投資実務では時価総額ベースの評価が重視される、という指摘もあります。反対株主や金融機関への説明では、1株当たり企業価値(時価総額等)の両方の整合を取り、第三者算定等で説明可能性を確保することが紛争予防になります。

グループ再編の論点を押さえる

100%子会社化と少数株主対応

グループ経営の機動性(迅速な意思決定、ポートフォリオ組替、内部再編の実行可能性)を重視する場合、対象会社の100%子会社化は強力な選択肢です。少数株主が残ると、組織再編の局面での反対や、情報請求等の行使により、時間・コスト・機密保持の面で制約が生じます。

参照される具体制度として、特別支配株主の株式等売渡請求は、単独または完全子会社と合わせて総株主の議決権の90%以上を保有する場合に利用でき、株主総会決議を経ず取締役会承認で手続を進められます。これにより、最短20日間程度で完了し得るとされています。一方、90%に届かず3分の2以上を確保できる場合は、株主総会の特別決議を要する株式併合等のルートが現実的になります。

また、100%子法人の解散・清算の局面では、親法人が少数株主から株式を買い取って100%化し、親法人が清算手続を遂行するケースが実務上少なくないとされています。税務面では、残余財産確定日の翌日の属する事業年度開始の日の5年前の日に支配関係があり、その後も支配関係が継続し、残余財産確定日までに100%の完全支配関係になっていれば、子法人の未処理欠損金額の全額を親法人が引き継げる整理が示されています。少数株主対応は、ガバナンスだけでなく、将来の清算・欠損金・グループ税務にも波及するため、時間軸を含めて設計します。

事業・資産の再配置とガバナンス設計

持株会社化後の成否は、事業・資産の再配置とガバナンス設計で決まります。経営陣が事業ポートフォリオを定期的に見直し、コア事業の強化(M&A等)とノンコア事業の整理を通じて資本効率を高めることは、コーポレートガバナンス上も説明が求められるテーマです。実務上の観点として、「コーポレートガバナンス・コード」(2018年6月版)の原則5-2では、資本コストの把握や、収益力・資本効率等の目標提示、その実現に向けた事業ポートフォリオ見直し等を株主に明確に説明することが述べられています。

また、経済産業省は2020年1月から5月末まで計6回にわたり「事業再編研究会」を開催し、その議論を踏まえて2020年7月31日に「事業再編実務指針~事業ポートフォリオと組織の変革に向けて~」(いわゆる事業再編ガイドライン)を公表したとされています。長年不採算事業ポートフォリオを抱えるなど再編が課題の企業では、株主・投資家からベストプラクティスを前提に説明を求められる可能性があるため、ガバナンス設計(監督と執行の分離、評価と開示の仕組み)を社内規程と運用で固める必要があります。

ガバナンス設計で「規程に落とす」ポイント例
  • 親会社が担う事項(投資・撤退・資金調達・グループ人事・内部統制)の定義
  • 子会社に委任する事項(価格決定・採用・日常取引)と親会社への事前承認ライン
  • グループ内取引のルール(移転価格、経営管理料、配当方針)と利益相反管理
  • 事業評価の仕組み(撤退基準、ROIC等の社内KPIの使い方)と説明資料の整備

許認可・重要契約・金融機関同意の有無で手法を変える見極め方

再編スキームの選定では、法務手続の教科書的な比較だけでなく、許認可・重要契約・借入契約の条項が「承継できるか/同意が必要か」が実務の決定打になります。

対外関係の観点からの見極めチェック
  • 事業を移す再編(会社分割・事業譲渡)では、許認可の取り直しや名義変更が必要になるか
  • 重要契約に支配権変更条項(解除権・承諾条項)があるか
  • 借入契約に親会社変更や組織再編に関する事前承諾条項があるか
  • スキームにより株主総会特別決議が必要か、一定条件で省略できる例外が使えるか

会社分割はM&A手法の一つとして「事業単位で移せる」強みがある反面、許認可・契約・金融機関同意の負荷が表面化しやすい手段です。他方、株式交換・株式移転は法人格が維持されやすく、許認可・契約の連続性を確保しやすい場面があります。どの手法でも、契約内容の確認と、必要に応じた契約書の工夫(同意取得の段取り、表明保証・解除条件、クロスデフォルトの整理)を、初期のDD(デューデリジェンス)段階で組み込みます。

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持株会社組織再編の税務と事業承継

適格組織再編の基本要件

組織再編の税務は、適格・非適格の判定で損益・欠損金・資産の評価が大きく変わるため、「税務上適格にしたい」という希望だけで進めず、要件を満たす設計になっているかを検証します。さらに、税務当局は合理性の乏しいスキームを租税回避行為として厳格に事実認定し得る点にも注意が必要です。参照される例として、解散により期限切れ欠損金を使用した後、当初から継続を予定していたのに会社を継続するような行為は、欠損金利用以外に合理的理由が見出せない場合、租税回避行為に当たり得る旨が述べられています。

また、グループ税務では「100%子法人の解散・清算」局面での欠損金の引継ぎが論点になり得ます。参照される整理として、残余財産確定日の翌日の属する事業年度開始の日の5年前の日に支配関係があり、その後も支配関係が継続し、残余財産確定日までに100%の完全支配関係になっていれば、子法人の未処理欠損金額の全額を親法人が引き継げるとされています。持株会社化と事業整理を同時に進める場合、支配関係の「いつから・いつまで」をタイムラインで管理しないと、狙った税務効果を得られないリスクがあります。

さらに、地方税申告では、適格組織再編成等が行われた場合に、申告書類として第6号様式の別表9に加え、別表12「適格組織再編成等が行われた場合の調整後の控除未済欠損金額等の計算に関する明細書」や、子法人の最後事業年度の確定申告書に添付された第6号様式の別表9の写しの添付が必要とされています。税務は実行後の申告実務まで含めて設計し、経理・税務部門の工数とスケジュールに落とし込みます。

事業承継で持株会社を使う場面

事業承継で持株会社を使う典型場面は、後継者個人の資金力だけでは株式取得が難しい一方、株式の分散を避けて経営権を集約したいケースです。持株会社を株式取得主体にすることで、法人として金融機関から資金調達しやすくし、子会社配当等を返済原資として設計する考え方が取られます。

また、事業承継局面では、自社株を売買すること自体も効果的な方法になり得るという整理があります。持株会社スキームを採るか、自社株の移転(売買・贈与等)を組み合わせるかは、相続税・贈与税だけでなく、金融機関の与信、配当可能額、ガバナンス(議決権の帰属)を総合して検討します。

事業承継税制を使う予定がある会社で先に確認すべき資本政策

法人版事業承継税制(非上場株式等に係る納税猶予)の利用を予定している場合、持株会社化・再編を先に行うと適用要件・継続要件との整合が崩れるおそれがあるため、資本政策を先に確認します。

参照される比較として、法人版事業承継税制には一般措置と特例措置があり、主な違いは次のとおりです。

区分 一般措置 特例措置
対象株式数 発行済み株式数の3分の2まで 全株式
納税猶予割合 80%(贈与の場合は100%) 100%
後継者の人数 1人のみ 3人まで
雇用確保要件 承継後5年間平均8割の雇用維持が必要 8割未達でも猶予は継続(理由報告が必要で指導助言の可能性)
事前の計画策定 不要 特例承継計画の提出が必要(平成30年4月1日から令和5年3月31日まで)
適用期限 なし 平成30年1月1日から令和9年12月31日まで
法人版事業承継税制の一般措置と特例措置(参照情報)

持株会社を作る場合、親会社が株式保有のみの実体になっていると、資産管理会社性など別の観点で不利になり得るため、親会社にどの程度の管理実体(人員・事務所・業務)を持たせるかを含め、税制適用の前提を崩さない資本政策を組み立てる必要があります。

持株会社組織再編の進め方

検討から実行までの進行手順

持株会社化は、会社法手続(機関決定、事前開示、公告等)と、税務・会計・人事・システムの移行を同時に走らせるため、手順をフェーズ管理して遅延要因を先に潰します。加えて、合併・会社分割・株式交換・株式移転は原則として特別決議が関係する一方、一定条件で特別決議を省略できる例外もあり、選ぶスキーム次第でタイムラインが変わります。

進行手順(実務の工程管理用)
  1. 目的・到達像(純粋持株会社か事業持株会社か、ポートフォリオ管理の方針)を確定し、候補スキームの法務・税務論点を洗い出します。
  2. 取締役会で再編方針を決定し、株式交換なら株式交換契約(会社法第768条)、株式移転なら株式移転計画(会社法第773条)のドラフトを整備して事前開示に備えます。
  3. 株主総会(特別決議が関係するケースが中心)に向け、反対株主対応(事前通知・反対票の要件整理)と説明資料(評価、目的、影響)を準備します。
  4. スクイーズアウトを併用する場合、90%以上の特別支配株主による株式等売渡請求なら最短20日程度で完了し得る点も踏まえ、全体工程に組み込みます。
  5. 実行後は、地方税申告を含む実務(別表12等の添付が必要となるケース)まで見越して、税務・経理のタスクを確定します。

法務・税務・会計と関係者対応

法務は適法性、税務は適格性と租税回避リスク、会計は連結・のれん等の処理方針がそれぞれ独立の重要論点ですが、関係者対応(株主・従業員・金融機関・主要取引先)を同時に外すと計画が止まります。

特に、反対株主対応では、参照される整理として「株主総会で決議に反対する旨をあらかじめ書面で通知し、実際に株主総会で反対する」ことで買取請求権が行使され得るため、通知受付・Q&A・評価説明の体制が必要です。税務面では、欠損金・清算を絡めたスキームが合理性を欠くと租税回避と評価され得る点や、適格組織再編成等の地方税申告で別表12等の添付が必要となる点まで含め、実行後の実務負担を見積もる必要があります。

金融機関対応では、借入契約条項(組織再編・親会社変更の事前承諾、クロスデフォルト)を前提に、配当方針や返済原資の説明が求められます。加えて、金融機関の分類や稟議の時間軸によって同意取得に要する期間が変わり得るため、法定手続の期限管理と同列でプロジェクト管理します。

社内で誰がいつ何を決めるか|取締役会・株主総会前に揃える資料

組織再編は支配関係の変更や重要な資産・事業の移動を伴うため、取締役会・株主総会の意思決定の合理性を資料で支え、後日の紛争(反対株主対応、差止め、善管注意義務の問題化)に耐える形にしておく必要があります。

取締役会・株主総会前に揃える資料(実務で必須度が高いもの)
  • 株式交換契約(会社法第768条)または株式移転計画(会社法第773条)の最終案と新旧対照の論点整理
  • 第三者算定機関による株式価値算定書(1株当たりと企業価値の整合が説明できるもの)
  • 反対株主の買取請求に備えた手続要件の整理(事前の書面通知+総会での反対の要件)
  • 事業ポートフォリオ見直しの方針と説明資料(資本コスト・資本効率の目標を含む)
  • 税務の実行後タスク一覧(地方税申告で別表12等の添付が必要となる場合の手当てを含む)

特に株主向け説明では、ガバナンス・コードの要請(資本コストの把握、収益力・資本効率目標、ポートフォリオ見直しの説明)も意識し、再編の目的が「手続のための手続」に見えないよう、経営上の必然性とKPIをセットで提示することが重要です。

よくある質問

純粋持株会社と事業持株会社の違いは何ですか

純粋持株会社と事業持株会社の違いは、親会社が自ら事業を行うかにあります。

定義と実務上の含意
  • 純粋持株会社は、自らは事業を行わず、グループ企業の株式を5割以上保有して支配し、経営戦略の立案に集中する形として説明されます。
  • 事業持株会社は、他社株式を保有して支配する点は同じですが、親会社自身も事業収益を持ちます。

純粋持株会社は、監督と資源配分に特化しやすい一方、事業持株会社は、既存の中核事業を残しながらM&A等で拡張する際に採用されることがあります。いずれでも、親会社の権限が不明確だと形骸化し、搾取と受け止められるリスクがあるため、権限設計と説明資料が重要です。

株式移転と株式交換はどちらを使うべきですか

株式移転は「新会社を設立して、その新会社に株式を100%移し子会社になる」手法で、株式交換は「ある会社を100%子会社にする」手法という整理が基本です。株式交換は株式交換契約(会社法第768条)、株式移転は株式移転計画(会社法第773条)を前提に設計します。

実務上の使い分けの目安
  • 株主構成を上位にそのままスライドさせ、新設の持株会社を頂点にしたい場合は株式移転が適します。
  • 既存の中核会社を頂点にして、他社を完全子会社化し支配を集約したい場合は株式交換が適します。

また、対象が株式譲渡制限会社である場合、株式移動に対する株主の関心が高まりやすい前提があるため、早期の合意形成と反対株主対応を織り込んで比較する必要があります。

中小企業でも持株会社化の効果はありますか

中小企業でも、事業承継・株式分散防止・経営権の集約という目的で持株会社化が有効になり得ます。参照される整理として、事業承継局面では自社株を売買することも効果的な方法になり得るため、持株会社スキームと併せて比較検討します。

一方で、持株会社の権限が不明確になる、持株会社による搾取の可能性を疑われる、といった留意点も指摘されているため、規程・権限表・資金還流ルールを作り、運用で担保することが前提です。

持株会社組織再編の期間はどれくらいかかりますか

必要期間は、選択する手法と、特別決議を省略できる例外を使えるか、少数株主対応がどの程度必要かで大きく変わります。

参照される具体例として、特別支配株主(議決権90%以上)が株式等売渡請求を用いる場合、株主総会決議を経ず取締役会承認で進められ、最短20日間程度で完了し得ます。一方、合併・会社分割・株式交換・株式移転は原則として株主総会の特別決議が関係し、事前開示や関係者対応も含めて工程管理が必要です。

したがって、期間見積りは「法定手続」だけでなく、(1) 株主総会までの準備(評価・説明・反対株主対応)、(2) 金融機関・取引先同意、(3) 税務申告(別表12等の添付が必要となる場合)まで含めて立てるのが実務的です。

持株会社組織再編への対応で次にすべきこと

持株会社組織再編は、目的の明確化と株主構成・支配関係の棚卸しを起点に、株式移転・株式交換・会社分割等の手段を当てはめていくのが実務的です。会社法上は株式交換契約(会社法第768条)や株式移転計画(会社法第773条)の整備、事前開示、株主総会(特別決議が関係するケースが中心)といった手続が、工程とリスクを左右します。少数株主対応では、議決権90%以上の場合に用い得る手続が最短20日間程度で完了し得る一方、到達しない場合は別ルート(特別決議等)を前提に説明・評価・同意取得の段取りを組み替える必要があります。税務は適格要件の充足だけでなく、合理性を欠く場合の租税回避リスクや、実行後の地方税申告(別表12等の添付が必要となるケース)まで含めてタスク化します。個別案件では許認可・重要契約・借入契約条項の制約が決定打になり得るため、法務・税務の専門家や主たる金融機関とも早期に論点を突き合わせて進め方を固めてください。



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