資金繰り表の作り方を5ステップで解説|Excelでの作成手順と注意点
会社の資金繰りに不安を感じていたり、銀行融資のために資金繰り表の作り方を探している経営者や経理担当者の方も多いのではないでしょうか。どんぶり勘定のままでは、黒字でも突然資金が底をつく「黒字倒産」のリスクを避けられません。この記事では、経理初心者でもすぐに実践できる、Excelを使った資金繰り表の作り方を5つのステップで具体的に解説します。
資金繰り表の基本
資金繰り表とは?その目的と役割
資金繰り表とは、一定期間における会社の現金の出入りを記録・予測し、将来の資金不足を可視化するための管理表です。帳簿上で利益が出ていても、手元の現金がなければ支払いが滞り経営は破綻します(黒字倒産)。売上の発生と入金のタイミングにはズレが生じるため、このタイムラグによる資金枯渇を防ぐことが資金繰り表の最大の目的です。
- 日々の資金管理: 現金の出入りを正確に把握し、日々の支払計画を立てる。
- 資金ショートの防止: 将来の資金不足の兆候を早期に発見し、事前に対策を講じる。
- 経営判断の材料: 資金の余裕がある時期を見極め、設備投資などの意思決定に役立てる。
作成で得られる3つのメリット
資金繰り表を作成することで、資金ショートの防止、経営戦略の立案、外部からの信頼獲得という3つの大きなメリットが得られます。手元の現金の推移を正確に予測できるようになるためです。
- 資金ショートの防止: 将来の資金不足を事前に察知し、融資の申し込みなど対策を講じる時間を確保できます。
- 的確な経営判断: 資金に余裕がある時期を把握し、設備投資や人材採用といった戦略を計画的に実行できます。
- 外部からの信頼獲得: 金融機関に対して返済能力と資金管理体制を具体的に示し、融資審査を有利に進められます。
キャッシュフロー計算書との違い
資金繰り表とキャッシュフロー計算書は、作成目的と対象とする時間軸が根本的に異なります。資金繰り表が未来の資金予測を目的とする社内管理資料であるのに対し、キャッシュフロー計算書は過去の資金実績を分析するための公的な財務諸表です。
| 項目 | 資金繰り表 | キャッシュフロー計算書 |
|---|---|---|
| 目的 | 未来の資金過不足を予測し、資金ショートを防ぐ | 過去の活動における資金の流れを分析・報告する |
| 時間軸 | 未来(日次・月次) | 過去(四半期・年次) |
| 主な利用者 | 経営者・管理者(社内向け) | 株主・投資家・金融機関(社外向け) |
| 形式 | 任意(会社の実態に合わせて柔軟に作成) | 会計基準に基づく法定の形式 |
作成前の準備
はじめに用意すべき書類
精度の高い資金繰り表を作成するには、過去の実績と現在の資金状況を正確に把握できる書類が必要です。これらの書類を基に、将来の入出金を予測します。
- 月次試算表: 月ごとの資産・負債や損益を把握し、将来の入出金を予測する土台となります。
- 現金出納帳: 現金での日々の入出金を記録し、小口現金の動きを把握します。
- 預金出納帳: 銀行口座の入出金と残高を管理し、振込や引落しの動向を確認します。
- 借入金返済明細書: 金融機関からの借入がある場合に、元本と利息の返済額を確認します。
- 手形帳: 手形取引がある場合に、支払期日や受取期日を管理します。
基本的な構成項目を理解する
資金繰り表は、資金の性質ごとに「経常収支」「非経常収支」「財務収支」の3つのブロックで構成されます。これにより、資金が増減した要因を正確に分析できます。前月からの繰越金にこれらの収支を加減算し、当月末の現金残高を算出します。
| 区分 | 内容 | 具体例 |
|---|---|---|
| 経常収支 | 本業の営業活動に伴う日常的な現金の増減 | 売上入金、仕入支払、人件費、家賃など |
| 非経常収支 | 営業活動以外で発生する臨時的な現金の増減 | 設備投資、固定資産売却、税金の支払いなど |
| 財務収支 | 資金調達や返済に伴う現金の増減 | 金融機関からの借入、借入金の元本返済など |
Excelでの作り方5ステップ
Step1:フォーマットを作成する
まず、Excelで自社の実態に合ったシンプルなフォーマットを作成します。複雑すぎると継続が困難になるため、必要最低限の項目から始めるのがよいでしょう。縦軸に資金項目、横軸に月別の期間を設定するのが基本です。日本政策金融公庫などが提供する無料テンプレートを参考に、自社用にカスタマイズするのも有効です。
- 期間(横軸): 月ごと(例: 4月、5月、6月…)
- 項目(縦軸): 前月繰越残高、経常収支(収入・支出)、非経常収支、財務収支、翌月繰越残高
Step2:収入項目を入力する
フォーマットが完成したら、収入項目に予測金額を入力します。重要なのは、売上を計上する日ではなく、実際に現金が入金される予定日を基準に記載することです。売掛金は、取引先ごとの回収サイト(例: 月末締め翌月末払い)を正確に把握して入力します。受注が不確実な案件は、保守的に見積もるか、確実になるまで計上しないのが賢明です。
Step3:支出項目を入力する
次に、支出項目に予測金額を入力します。買掛金の支払いや人件費、家賃などの固定費を漏れなく計上します。支払期日を厳守しなければ企業の信用問題に関わるため、正確な入力が求められます。税金や賞与など、特定の月に発生する大きな支出は特に注意が必要です。クレジットカード払いの経費は、利用日ではなく口座の引き落とし日に支出として計上します。
Step4:計算式を設定する
入力した数値を基に、各月の資金残高が自動計算されるようExcelに計算式を設定します。手作業での計算はミスを誘発し、誤った経営判断につながるため避けましょう。翌月繰越残高が、次の月の前月繰越残高に自動で反映されるようにセル参照を設定すると、効率的に管理できます。
- 経常収支 = 営業収入の合計 – 営業支出の合計
- 当月の収支合計 = 経常収支 + 非経常収支 + 財務収支
- 翌月繰越残高 = 前月繰越残高 + 当月の収支合計
Step5:実績と予測値を入力する
フォーマットが完成したら、過去の月には確定した実績値を、未来の月には予測値を入力します。予測は最低でも3ヶ月先、できれば半年先まで作成しましょう。月が替わるごとに、前月の予測を実績に書き換え、差異があれば原因を分析します。この「予実管理」のサイクルを繰り返すことで、予測の精度が高まり、経営の羅針盤として機能します。
資金繰り表の運用ポイント
予測は少し厳しく見積もる
将来の資金予測は、希望的観測を排除し、少し厳しめに見積もるのが鉄則です。楽観的な計画は、予期せぬ事態が起きた際に資金繰りを一気に悪化させます。収入は保守的に、支出は多めに見積もることで、経営の安全性を高め、最悪のシナリオにも耐えうる財務基盤を構築できます。
実績との差異を分析し更新する
資金繰り表は作成して終わりではありません。毎月、予測と実績の差異を分析し、その原因を究明することが重要です。例えば、売掛金の回収遅延や想定外の経費増大といった差異の背景には、経営上の課題が隠れています。原因を特定し、翌月以降の予測に反映させることで、資金計画の精度を継続的に高めていくことができます。
銀行提出を目的とする際の注意点
銀行融資のために資金繰り表を提出する際は、計画の実現可能性と返済の根拠を明確に示す必要があります。銀行は貸し倒れリスクを最も警戒するため、説得力のある説明が不可欠です。
- 資金使途の明確化: 融資を何に使い、どう事業成長に繋げるかを具体的に示します。
- 返済計画の妥当性: 事業のキャッシュフローで無理なく返済できることを論理的に説明します。
- 計画の実現可能性: 売上予測などの根拠を明確にし、希望的観測を排除します。
- 関連書類との整合性: 事業計画書や試算表など、他の提出書類と数値に矛盾がないようにします。
営業部門との連携で収入予測の精度を上げる
精度の高い収入予測には、経理部門と営業部門の緊密な連携が欠かせません。最新の商談状況や顧客の動向を把握しているのは、最前線にいる営業担当者だからです。案件ごとの進捗や入金予定日の変更といった情報をリアルタイムで共有する仕組みを整えることで、資金繰り計画の信頼性が大幅に向上します。
予測が外れる典型的な要因とリスク管理
資金繰り予測が外れる典型的な要因をあらかじめ把握し、対策を講じておくことが重要です。リスクを軽減するためには、楽観的なシナリオだけでなく、売上が減少した場合の悲観的なシナリオも想定し、それぞれの対応策を準備しておくことが有効です。
- 季節による売上変動の見落とし
- 賞与や税金など、年数回の大きな支出の計上漏れ
- 大口取引先の倒産による売掛金の回収不能
- 想定外の設備修繕費や災害による損失の発生
よくある質問
Q. 経理初心者でも作成できますか?
はい、経理初心者でも作成可能です。資金繰り表は複雑な会計知識よりも、現金の出入りという事実を記録・予測することが中心だからです。Excelや、日本政策金融公庫などが無料で提供しているテンプレートを使えば、項目に沿って数値を入力するだけで基本的な表が完成します。まずは家計簿のような感覚で始め、必要に応じて税理士などの専門家に相談するとよいでしょう。
Q. 何ヶ月先まで作成すべきですか?
最低でも3ヶ月先、できれば半年先までの予測を作成することを推奨します。資金不足が判明してから融資を申し込んでも間に合わないケースが多いため、早めに兆候を掴む必要があるからです。半年先まで見通せていれば、問題が発生しても余裕をもって対策を講じることができます。大規模な設備投資などを計画している場合は、1年先までの長期的な視点も重要になります。
Q. 社内の誰が作成を担当しますか?
実務は経理や財務の担当者が担うのが一般的ですが、最終的な管理と運用の責任は経営者が持つべきです。資金繰りは企業の存続に直結する最重要課題であり、経営判断そのものだからです。小規模な企業では経営者自身が作成することもあります。重要なのは、担当者が誰であれ、経営層が常に最新の資金状況を把握し、迅速な意思決定を下せる体制を築くことです。
まとめ:Excelで資金繰り表を作成し、会社の現金を管理する方法
資金繰り表は、将来の現金の出入りを予測し、黒字倒産などの資金ショートを未然に防ぐための重要な経営管理ツールです。作成にあたっては、本業の儲けを示す「経常収支」をプラスに保つことを常に意識することが経営の安定に繋がります。まずはExcelで簡単なフォーマットを作成し、過去の実績と将来の予測を入力して、自社の資金の流れを可視化することから始めましょう。作成後は、毎月実績と予測の差異を分析し、営業部門とも連携しながら予測精度を高めていくことが不可欠です。この記事で解説した内容は一般的なものであり、個別の判断に際しては税理士などの専門家に相談することをおすすめします。

