手続

任意整理中の事務所変更、手順と費用は?法務の視点で解説

経営リスクナビ編集部

任意整理を依頼したものの、事務所の対応に不満があり変更を検討してはいませんか。手続き中の事務所変更は可能ですが、手順を誤ると費用が二重にかかる、督促が再開されるなどのリスクも伴います。スムーズに変更手続きを進めるためには、適切なタイミングと正しい手順を理解することが不可欠です。この記事では、任意整理中の事務所変更の可否、具体的な手順、進行度別のリスク、そして失敗しない新事務所の選び方までを詳しく解説します。

任意整理中の事務所変更は可能か

事務所の変更は原則として可能

任意整理の手続き中であっても、弁護士や司法書士事務所の変更は原則として可能です。依頼者と専門家が結ぶ委任契約は、依頼者の意思で原則としていつでも解除できるためです。手続きの進行段階にかかわらず、現在の事務所との契約を終了させ、新たな専門家を探す権利があります。

ただし、権利として可能であることと、実務上それが有利に働くかは別の問題です。特に和解交渉が進んでいる段階や、すでに和解が成立した後の変更は、経済的なデメリットが大きくなる傾向があります。それでも、担当者との信頼関係が著しく損なわれたり、費用説明に重大な疑義があったりする場合には、リスクを理解した上で変更を検討する価値はあります。手続きの進行状況と変更に伴うデメリットを冷静に比較検討することが重要です。

事務所変更を検討する主な理由

事務所の変更を検討するきっかけは、主に費用や対応への不満・不信感です。具体的には、以下のような理由が挙げられます。

事務所変更を検討する主な理由
  • 契約後に着手金や報酬金が相場より著しく高額だと判明した
  • 担当者からの説明が専門用語ばかりで理解できず、質問しにくい
  • 連絡が極端に遅く、手続きがどの程度進んでいるのか全く把握できない
  • 弁護士や司法書士の資格を持たない事務員が主に対応し、専門的な判断に不安を感じる

このようなコミュニケーション不足や透明性の低さが重なると、依頼者は安心して手続きを任せられなくなり、事務所の変更を決断するに至ります。

変更を検討すべきタイミングとは

事務所の変更を検討するなら、手続きの初期段階であるほどリスクは小さくなります。逆に、手続きが進むほどデメリットが大きくなるため、決断は早いほど良いでしょう。

タイミング メリット デメリット 判断
受任通知の発送前 着手金が未発生か返金の可能性が高く、金銭的損失が少ない。債権者との関係にも影響しない。 督促が続いている状態のため、変更に時間をかけると状況が悪化するリスクがある。 最適
和解交渉中 (特になし) 費用の二重払いや、交渉が一時中断するリスクがある。 慎重に検討
和解契約の成立後 (ほぼなし) 成功報酬が発生済みで、返済条件の再交渉は一般的に極めて困難。経済的メリットがない。 原則非推奨
事務所変更のタイミングと影響

現在の事務所に不満や疑問を感じた場合は、手続きが深く進行する前に、できるだけ早く見切りをつけることが重要です。

事務所変更の具体的な手順

事務所を変更する際は、債権者からの督促が再開するリスクを避けるため、正しい手順を踏む必要があります。

ステップ1:新しい依頼先を探す

現在の事務所との契約を解除する前に、必ず新しい依頼先を確保してください。先に解約すると受任通知の効力がなくなり、債権者からの督促が即座に再開されるため大変危険です。

新しい依頼先を探す手順
  1. 債務整理の実績が豊富な事務所を複数リストアップする。
  2. 無料相談を利用し、現在の状況と事務所変更を考えている理由を正直に伝える。
  3. 手続きの途中からの引き継ぎが可能かを確認する。
  4. 新たに発生する費用の総額について、詳細な見積もりを出してもらう。
  5. 司法書士に依頼する場合は、1社あたりの元金が140万円以下という制限に注意する。

新しい事務所から受任を内諾され、手続き移行の見通しが立った段階で、初めて現在の事務所への解約手続きに進みます。

ステップ2:新事務所と委任契約を締結

新しい事務所と正式な委任契約を結びます。契約時には、今後の流れや費用について書面で十分に確認することが不可欠です。

委任契約時の確認事項
  • 着手金、基本報酬、減額報酬など、費用の全体像を正確に把握する。
  • 費用の分割払いや後払いに対応可能かを確認する。
  • 前の事務所への解約通知の進め方について、具体的なアドバイスをもらう。
  • 契約書に不明な点があれば、署名・捺印する前に必ず質問し、解消しておく。

新事務所との契約が完了すると、新事務所から各債権者へ速やかに受任通知が発送されます。これにより、督促が再開される空白期間を作ることなく、スムーズに手続きを引き継ぐことができます。

ステップ3:現事務所へ解約を伝える

新事務所との契約が無事に完了したら、現在の事務所へ解約の意思を伝えます。トラブルを避けるため、記録に残る書面で行うのが最も確実です。

電話での口頭連絡は、引き止められたり、後で「言った・言わない」の争いになったりする可能性があります。解約の意思と解約日を明記した通知書を、内容証明郵便で送付するのが最も安全な方法です。解約理由は「諸般の事情により」といった簡潔なもので構いません。

解約を申し出ると、費用の精算が行われます。未払いの着手金や実費があれば請求され、事務所に預けていた返済用の積立金などがあれば返金を求めます。請求内容が契約書と照らして妥当か、しっかり確認しましょう。

ステップ4:資料等の引き継ぎを依頼

解約手続きと並行して、現事務所が保管している手続き関連資料の返却を依頼します。これらの資料は、新事務所が手続きを迅速に進めるために不可欠です。

引き継ぎを依頼する主要資料
  • 債権者から開示された取引履歴
  • 利息制限法に基づく引き直し計算書
  • 各債権者に送付した受任通知の控え
  • これまでの債権者との交渉記録

これらの資料があれば、新事務所がゼロから情報を集め直す手間が省け、手続きの大幅な遅延を防げます。事務所には依頼者から預かった資料を返却する義務があります。万が一、返却を不当に拒否された場合は、弁護士会や司法書士会に相談することも可能です。

現事務所とのトラブルを避ける解約の伝え方

現事務所とのトラブルを避け、円満に解約するためには、冷静かつ事務的な対応が重要です。

トラブル回避のポイント
  • これまでの不満を感情的にぶつけず、契約を解除するという事実のみを伝える。
  • 引き止めや口論を避けるため、電話ではなく内容証明郵便などの書面で通知する。
  • 不当な費用請求に備え、あらかじめ新事務所に相談し、法的な助言を得ておく。

冷静で隙のない対応を心がけることが、迅速な解約につながります。

【進行度別】事務所変更のリスク

依頼直後〜受任通知発送前の場合

依頼した直後で、まだ債権者へ受任通知が発送されていない段階であれば、事務所変更のリスクは非常に小さいです。この時点では、債権者は代理人がついたことを知らないため、事務所が変わっても混乱は生じません。

費用面でも、着手金が未発生か、支払っていても返金される可能性が高いです。ただし、この間も債権者からの督促は続いているため、変更を決めたら一日も早く新しい事務所を見つけ、受任通知を発送してもらう必要があります。

受任通知発送後〜和解交渉中の場合

受任通知が発送され、すでに債権者との和解交渉が始まっている段階での変更は、複数のリスクを伴います。

主なリスク
  • 旧事務所の解約から新事務所の受任までに空白期間が生じ、督促や取り立てが再開される。
  • 旧事務所に支払った着手金は返金されず、新事務所にも新たに着手金を支払うため、費用が二重にかかる。
  • 代理人が変わることで債権者に不信感を与え、その後の交渉で不利な条件を提示される可能性がある。

現事務所の対応に重大な問題があるなど、費用損失を覚悟してでも変更すべき明確な理由がある場合に限り、実行を検討すべきです。

和解契約が成立した後の場合

和解契約が成立した後に事務所を変更することは、原則として推奨されません。リスクが非常に大きく、メリットはほとんどありません。

主なデメリット
  • 一度合意した返済条件を、事務所変更によってさらに有利にすることは一般的に不可能に近い。
  • 旧事務所への成功報酬と、新事務所への費用が追加で発生し、経済的負担が増えるだけである。
  • 代理人が解約することで、債権者に返済能力への不安を与え、少しでも返済が遅れると即座に一括請求や差し押さえに移行されるリスクが高まる。

例外は、返済代行手数料が異常に高額なケースなどごく一部です。ほとんどの場合、現在の契約を維持し、計画通りに返済を続けることが最も安全です。

変更を思いとどまるべきケースの判断基準

事務所変更を思いとどまるべきかどうかの判断基準は、変更によって得られるメリットと、発生するデメリットの比較によって決まります。

変更を思いとどまるべきケース
  • 着手金をすでに全額支払っており、費用の二重払いが大きな負担になる場合。
  • 和解交渉が最終段階に入っており、まもなく手続きが完了する見込みの場合。
  • 不満が担当者の言葉遣いや連絡頻度など、手続きの結果に致命的な影響を与えないレベルの場合。

まずは担当者に直接不満を伝えて改善を求めるなど、変更以外の解決策を試みることも重要です。

事務所変更にかかる費用

旧事務所への費用精算(着手金等)

事務所を変更する場合、旧事務所との間で費用の精算が必要です。最も注意すべき点は、支払済みの着手金は原則として返金されないことです。着手金は、手続きに着手したことへの対価とされているためです。分割払いの途中で解約した場合、残額を一括で請求されることもあります。

項目 内容
請求される費用 未払いの着手金、交渉の進捗に応じた基本報酬・成功報酬の全部または一部、郵便代などの実費。
返金される費用 返済用に預けていた積立金、未使用の実費(予納金など)。
旧事務所との費用精算の概要

解約を申し出る前に委任契約書を再確認し、中途解約時の精算ルールを把握しておきましょう。不当な請求をされた場合は、弁護士会や司法書士会の紛議調停委員会に相談することもできます。

新事務所で新たに発生する費用

新事務所に依頼する場合、当然ながら新たな費用が発生します。多くの場合、旧事務所への支払いとは別に、新事務所へも着手金を支払う必要があります。任意整理の着手金相場は、債権者1社あたり2万円から5万円程度です。

ただし、事務所によっては、他の事務所からの乗り換えであることを考慮し、着手金を減額したり無料にしたりする料金体系を設けている場合もあります。新しい事務所を選ぶ際は、複数の事務所から見積もりを取り、総額でいくらかかるのかを比較検討することが重要です。費用の支払いが難しい場合は、分割払いに柔軟に対応してくれる事務所を選びましょう。

事務所変更の信用情報への影響

変更自体が直接影響するわけではない

弁護士や司法書士の事務所を変更したという事実そのものが、信用情報機関に事故情報として登録されることはありません。信用情報に登録されるのは、あくまで「返済の延滞」や「任意整理を行った」という客観的な事実のみです。

信用情報機関は、誰が代理人であるかという情報までは管理していません。したがって、事務所の変更が直接の原因で、いわゆるブラックリストの期間が延びるなどの不利益が生じる心配はありません。

手続きの空白期間と遅延のリスク

事務所変更が信用情報に与えるリスクは、変更そのものではなく、手続きの移行に伴う空白期間にあります。旧事務所が解約してから新事務所が受任するまでの間に時間がかかり、その間に返済期日を迎えて支払いができないと、通常の「延滞」として信用情報に記録されてしまいます。

この延滞が2〜3ヶ月続くと、任意整理とは別の新たな事故情報として登録され、信用情報の回復がさらに遅れる原因となります。このような事態を避けるため、新旧事務所間で空白期間が生じないよう、迅速に手続きを移行させることが極めて重要です。

失敗しない新事務所の選び方

コミュニケーションの取りやすさ

二度目の失敗を避けるため、新事務所はコミュニケーションの取りやすさを最優先に選びましょう。無料相談の段階で、以下の点をチェックすることが重要です。

コミュニケーションのチェックポイント
  • 専門用語を避け、分かりやすい言葉で説明してくれるか。
  • こちらの質問に対して、面倒がらずに丁寧に答えてくれるか。
  • 弁護士や司法書士本人が直接面談し、親身に対応してくれるか。
  • 電話やメール以外にも、柔軟な連絡手段が用意されているか。

手続き中の不安を解消するためには、担当者との円滑な意思疎通が不可欠です。

任意整理の実績と専門性

任意整理は、担当者の交渉力によって結果が大きく左右されます。そのため、債務整理、特に任意整理に関する豊富な実績と高い専門性を持つ事務所を選ぶことが成功の鍵となります。

実績・専門性のチェックポイント
  • 公式サイトなどで、具体的な解決実績や取扱件数を公開しているか。
  • 債務整理を主要な業務分野として掲げているか。
  • 各金融機関の交渉傾向などを熟知しているか。

実績が豊富な事務所は、より有利な条件で和解をまとめられる可能性が高まります。

費用体系の明確さ

費用に関する不満が変更の理由であったなら、次の事務所は費用体系の明確さを徹底的に確認すべきです。

費用体系のチェックポイント
  • 初回相談時に、すべての費用項目を含む詳細な見積もりを提示してくれるか。
  • 契約書に、後から追加費用が発生しない旨が明記されているか。
  • 経済状況に応じて、法テラスの利用案内や分割払いに対応してくれるか。

総額でいくらかかるのかを事前に正確に把握でき、納得できる料金体系の事務所を選びましょう。

よくある質問

Q. 解約を伝えると引き止められませんか?

事務所によっては、手続きを継続するよう引き止められる可能性があります。しかし、委任契約は依頼者の意思で原則としていつでも解除できるのが原則です。解約の意思が固いのであれば、毅然とした態度で断ることが重要です。 トラブルを避けるためにも、電話ではなく内容証明郵便などの書面で通知することをお勧めします。

Q. 事務所変更で手続きはどのくらい遅れますか?

旧事務所からの資料引き継ぎがスムーズに進めば、遅れは数週間程度で済むこともあります。しかし、引き継ぎが難航し、新事務所がゼロから債権者とやり取りを始める場合は、数ヶ月単位で遅れる可能性もあります。遅延を最小限にするには、依頼者自身が積極的に動いて、新旧事務所間の連携を促すことが大切です。

Q. 着手金が分割払い中でも変更できますか?

着手金の分割払い中でも、事務所の変更は可能です。ただし、解約した時点で、未払いの着手金残額を一括で請求されるのが一般的です。変更を申し出る前に、委任契約書で精算方法を確認し、支払うべき金額を把握しておきましょう。

Q. 新事務所が決まるまで返済はどうすればいいですか?

旧事務所の解約後、新事務所が受任するまでの空白期間は、返済義務が一時的に本人に戻ります。この期間に返済日が来た場合、絶対に無視してはいけません。債権者に直接連絡し、「現在、新しい代理人を選定中です」と事情を説明し、支払いを待ってもらうよう交渉してください。誠実な対応がトラブルを防ぎます。

まとめ:任意整理中の事務所変更は慎重な判断と正しい手順が鍵

この記事では、任意整理中の事務所変更について解説しました。事務所の変更は原則として可能ですが、費用の二重払いや手続きの遅延といったリスクを伴うため、タイミングの見極めが重要です。特に、手続きが進行しているほどデメリットは大きくなる傾向にあります。変更を決断した場合は、必ず現在の事務所を解約する前に新しい依頼先を確保し、督促が再開される空白期間を作らないようにしましょう。事務所との信頼関係や費用体系の透明性は、安心して手続きを進める上で不可欠です。個別の状況に応じた最適な判断については、信頼できる専門家へ相談することをおすすめします。

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