是正処置手順書の作り方|ISO要求と運用手順を自社に落とし込む
是正処置手順書をゼロから整備・改訂する局面では、ISOやJISの要求に沿っているだけでなく、監査・審査で「修正」と「是正処置」を明確に説明できる運用設計が必要になります。特に JIS Q 27001(ISO/IEC 27001)を含むマネジメントシステムでは、証拠保全や見直しの前提が曖昧だと、再発防止が手順に落ちず、是正処置が形骸化しやすくなります。放置すると、起票漏れや原因分析の浅さが差し戻し・期限遅延につながり、経営レビューでの説明負荷も増えます。以下では、是正処置手順書の判断材料として構成要素と運用設計の要点を示します。
是正処置手順書の位置づけ
ISOでの定義と用語の違い
ISO9001や情報セキュリティ分野の JIS Q 27001(ISO/IEC 27001)などのマネジメントシステムでは、不適合は「要求事項を満たしていない状態」を指し、是正処置は「発生した不適合の原因を除去し、再発を防止するための処置」です。実務では、発生した不適合をその場で直す修正(補修・手直し)と、根本原因に手を入れる是正処置が混同されがちですが、監査ではここが明確に見られます。
用語を手順書で定義する際は、現場で判断が割れやすい言葉を補足しておくと運用が安定します。
- 不適合:規格・社内規程・契約・法令・顧客要求などの要求事項からの逸脱です。
- 修正:発生した不適合を暫定的に是正する行為(例:誤記訂正、再作業、交換)です。
- 是正処置:原因分析に基づき再発防止の仕組みを入れる行為(例:手順改訂、システム制御、教育設計の見直し)です。
- 証拠:事実を裏付ける記録(例:監査ログ、誤送信メール、アクセスログ)です。
また、情報セキュリティ領域では「情勢に合うように見直しましょう」という観点が重要で、手順書自体も固定化せず、運用実態・脅威動向・業務変更に合わせて見直す前提(改訂トリガー)を置くと、JIS Q 27001(ISO/IEC 27001)の運用と整合しやすくなります。
対象範囲と対象外の線引き
是正処置手順書は、何でもかんでも是正処置に載せるための文書ではなく、再発防止のために原因除去が必要な事象を確実に管理するためのルールです。対象範囲と対象外の線引きを曖昧にすると、担当者の負担が増える一方で、重大案件の対応が遅れます。
線引きは「起票の要否」を現場が迷わないよう、トリガーを具体例とセットで規定します。
- 内部監査での指摘のうち、仕組み(規程・手順・統制)の欠陥が疑われるものです。
- 顧客苦情・クレームなど、対外信用や契約上の責任に影響しうるものです。
- 情報セキュリティ事故や誤送信など、誤送信されたメール(添付ファイルを含む)やアクセスログ等の証拠保全が必要となるものです。
- 設備・作業の安全に関わり、リスクアセスメントが論点となるもの(安衛法28条の2に基づく努力義務のリスクアセスメントの観点を含む)です。
- その場の修正で完結し、他工程・他部署・顧客・法令遵守への影響が生じない軽微な誤記です。
- 原因除去ではなく、日常管理(監督・指示・当日の再確認)で再発防止が合理的に担保できる一過性の作業ミスです。
ただし「対象外」として扱う場合でも、監査対応上は「なぜ是正処置ではなく日常管理で足りるのか」という判断根拠が問われるため、判断者・判断日・根拠(影響評価)だけは記録に残す運用にしておくと説明可能性が高まります。
是正処置を起票する基準をどう決めるか:単発ミス・軽微逸脱・再発傾向の分かれ目
起票基準は、担当者の感覚ではなく、発生頻度×影響度で統一するのが基本です。参照できる軸として、監査対応実務では「類型別不正・不祥事への初動対応」の考え方(初動の強弱を事故類型で切る)と同様に、是正処置も「どの類型なら強制起票か」を明文化するとブレが減ります。
また、原因分析の品質を上げる観点では、ヒアリングで深層事実を掘り起こす定番質問として、単純ですが強力な「それはなぜですか?」を繰り返すルールを手順に落とし込みます。単発ミスに見えても、同じ問いを重ねることで、手順・教育・設計・統制の欠陥に到達しやすくなります。
- 影響度が高い場合(顧客影響・法令違反・情報漏えい・安全リスク)は発生回数に関わらず起票します。
- 影響度が軽微でも、同種事象が繰り返される場合は再発傾向として起票します。
- 影響度や再発傾向の判断に迷う場合は、品質保証・情報セキュリティ・コンプライアンス等の所管部門が一次判定し、必要なら経営層へエスカレーションします。
- ヒアリングでは「それはなぜですか?」を複数回用い、推測ではなく証拠(ログ、記録、現物)に紐づく事実で因果を組み立てます。
不適合の入力と評価手順
不適合の特定と影響を評価する
不適合の初動では、後工程や顧客影響を止める観点で、事実の特定と影響評価を並行で進めます。記述は「解釈」ではなく「観測された事実」を基準にし、監査で追える粒度に落とします。
- 事象の特定(何が・いつ・どこで・どの要求事項から逸脱したか)を事実ベースで記録します。
- 影響範囲(後工程、顧客、法令遵守、情報セキュリティ、労働安全等)を洗い出します。
- 緊急度が高い場合は封じ込め(隔離、出荷停止、アクセス遮断、暫定設定変更等)を優先します。
- 関係部門へ連絡し、同種の波及有無(他製品・他拠点・他システム)を確認します。
- 次工程(原因分析・是正処置の起票要否判断)に渡すため、証拠と暫定対応の記録を添付します。
安全に関わる事象では、リスク評価の観点を手順書側に明示しておくと判断が揃います。例えば、安衛法28条の2が努力義務として定めるリスクアセスメント(労働安全衛生法第28条の2)の考え方に沿って、危険性・有害性の評価と対策の優先順位を整理する、といった位置づけです(安全衛生の専門手順と矛盾しない範囲で記載します)。
監査指摘・苦情・障害で初動を分ける判断軸と、起票時点で添付すべき証拠
不適合の入口(内部監査、顧客苦情、障害・事故)により、初動の優先順位と「最初に確保すべき証拠」が変わります。手順書には、監査で説明できるように初動の分岐を明示します。
| 入口(トリガー) | 初動の優先順位 | 起票時点で添付する証拠(例) |
|---|---|---|
| 内部監査の指摘 | 要求事項との不整合と統制の欠陥を特定し、是正処置の要否を判断します。 | 監査報告書の該当箇所、指摘根拠となった記録、監査で参照された手順・帳票です。 |
| 顧客苦情・クレーム | 対外影響の最小化を優先し、事実確認と暫定対応を速やかに行います。 | 顧客申告内容、対応履歴、関連する出荷・検査記録、必要に応じて現物写真です。 |
| システム障害・設備トラブル | 業務継続と二次被害防止を優先し、復旧・封じ込めと原因調査の両立を図ります。 | エラー画面の画像、障害ログ、監査ログ、設定変更履歴です。 |
| 情報セキュリティ事故(例:誤送信) | 拡大防止と証拠保全を優先し、関係者と証拠の散逸を防ぎます。 | 実際に誤送信されたメール(添付ファイルを含む)、メール/添付へのアクセスログ(取得できる場合)です。 |
特に情報セキュリティ事故では、事後の原因究明と再発防止策の検討の前提として「証拠の保全」が必要であり、誤送信メールやアクセスログの確保を手順書に明記しておくと、初動の抜け漏れを抑えられます。
原因分析と是正処置の手順
原因調査の進め方と客観性
原因分析では、結論ありきの推測や犯人探しを避け、証拠に基づく説明可能性を確保します。ヒアリングはテクニック次第で深さが変わるため、質問の型を手順書で定めると品質が揃います。
- ヒアリングでは「それはなぜですか?」を繰り返し、表層理由から深層理由へ段階的に掘り下げます。
- 結論は必ず証拠(作業記録、監査ログ、誤送信メール、アクセスログ等)と対応づけ、推測で断定しません。
- 個人要因(注意不足、経験不足)で止めず、手順・教育・設計・承認・権限・レビューなどの統制設計に原因候補を広げます。
- 証拠は事後に散逸しやすいため、原因究明・再発防止検討のために関連証拠を保全してから分析を進めます。
この段階での「事実の厚み」が不足すると、後段の是正処置は説明不能になり、監査で差し戻されやすくなります。
再発防止につながる対策を決める
根本原因が特定できたら、再発防止の観点で「原因を除去する」対策を設計します。対策は、実施可能性だけでなく、他プロセスへの副作用や新たなリスクの有無まで含めて検討する必要があります。
- 対策が根本原因に紐づいていること(現象対処の積み上げになっていないこと)です。
- 実施責任者、完了期限、必要資源(工数・予算・外部調達)が特定されていることです。
- 変更が品質・情報セキュリティ・安全等に与える影響を事前に評価することです。
- 実施後に有効性確認(再発していないことの確認)ができるよう、評価方法と証拠を決めることです。
情報セキュリティマネジメントシステム(JIS Q 27001 / ISO/IEC 27001)の運用を前提にする場合、対策は情勢や運用実態に合わせて見直すことが求められるため、対策の前提条件(対象範囲、運用条件、例外)も記録しておくと、後の再評価がしやすくなります。
『担当者の注意不足』で止めないための承認基準と、差し戻しになる原因分析の典型例
承認基準を曖昧にすると、原因が「注意不足」に収束し、対策が注意喚起・再教育だけになり、再発します。承認者(品質保証、情報セキュリティ責任者、部門長等)が差し戻す条件を明文化しておくと、原因分析の水準が底上げされます。
- 原因が「注意不足」「確認不足」等の個人要因で止まり、「それはなぜですか?」の掘り下げが不足しています。
- 原因と対策の対応関係が示されず、対策が思いつきや一般論になっています。
- 証拠が不足し、誤送信メールやアクセスログ等の保全・添付がないまま結論を出しています。
- 変更の副作用(他工程への影響、情報セキュリティ上の新リスク、安全面のリスク)が評価されていません。
承認の観点は「誰がやっても同じ品質になる仕組みか」であり、属人的な対策に依存する報告書は承認しない運用が重要です。
記録と文書の管理ルール
報告書と手順書の関係を整理する
是正処置の運用では、個別案件の活動履歴である是正処置報告書と、恒常ルールである手順書の役割を分けて管理します。報告書は「何が起き、どう封じ込め、どう分析し、何を変え、結果どうだったか」を残す文書で、手順書は「同じことを再現するための標準」です。
報告書で合意した再発防止策が手順書に反映されないと、改善が組織知として定着しません。したがって、手順書の中で「報告書は手順書改訂のインプットである」ことを明記し、報告書のクローズ条件に「関連文書へ反映済み」を含める設計が実務的です。
また、不正・不祥事対応の実務では、事後的な原因究明・再発防止策の検討のために証拠保全が必要とされますが、是正処置でも同様に、報告書は証拠保全・原因分析・対策決定の一連の証跡をまとめる器として機能させます。
証拠性を保つ文書管理のルール
是正処置の記録は、監査や調査において統制が機能していることを示す証拠になります。証拠性(原本性・完全性・追跡可能性)を落とさないため、最低限の文書管理ルールを手順書に組み込みます。
- 原因究明・再発防止検討に必要な証拠は保全し、後から入手不能にならないようにします。
- 情報セキュリティ事故では、誤送信されたメール(添付ファイルを含む)を保全し、取得できる場合はメール・添付ファイルへのアクセスログも保全します。
- 電子データは入力者・承認者・日時が追跡でき、承認後の改ざんを抑止できる状態で保管します。
- 報告書本体と、原因分析シート、写真、図面、ログ等の関連証拠は案件単位で紐づけ、検索できる状態にします。
誰が、いつ、どの版を改訂するか:是正処置後に手順書へ反映漏れを起こさない社内運用
反映漏れは「担当者が忙しいから」ではなく、手順設計上の抜けで起きます。そこで、責任とタイミングをプロセスに埋め込み、クローズ条件と連動させます。
- 改訂責任者は原則として当該プロセスのオーナー(部門長)とし、所管部門(品質保証・情報セキュリティ等)はレビュー責任を負います。
- 是正処置報告書に「関連手順書名」「改訂予定版(版番号)」「改訂期限」「改訂要否の根拠」を必須項目として設定します。
- 有効性確認が完了しても、関連手順書の改訂・周知が完了するまでは案件をクローズできない運用(システム上の状態管理)にします。
- 手順書の改訂履歴欄に「どの是正処置案件(報告書番号)に基づく改訂か」を明記し、トレーサビリティを確保します。
情報セキュリティマネジメントシステム(JIS Q 27001 / ISO/IEC 27001)を運用している組織では、変更や見直しが情勢に応じて必要になるため、改訂のトリガー(事故・監査指摘・業務変更)を手順書に併記しておくと運用が揃います。
有効性評価と変更管理
有効性確認の方法と終了基準
有効性確認は「対策をやったか」ではなく、「再発防止に効いたか」を確認する工程です。実務では、対策直後ではなく、対象業務が一定回数回った後に評価する設計が必要です。
終了基準は数値を置けるなら数値で定義するのが望ましいものの、本稿の範囲では根拠のない数値は置かず、監査で説明できる形に条件を文章で定義します。
- 評価期間中に同種不適合が再発していないこと(再発があれば原因分析から差し戻します)。
- 監査ログや運用記録等により、対策が設計どおり機能していることが確認できることです。
- 関係者が新手順を理解し、例外処理・権限・承認が逸脱なく運用されていることです。
- 承認者が有効性確認の記録をレビューし、正式にクローズ決裁していることです。
変更管理とマネジメントシステム反映
是正処置で手順・システム・設備を変える場合、変更が新たな不適合を生まないよう変更管理を連動させます。変更管理は、品質・情報セキュリティ・安全などの観点をまたぐため、所管部門の合議(影響評価)を手順として明示すると監査で説明しやすくなります。
特に安全に関わる変更では、危険性・有害性の調査を行う指針に基づくリスクアセスメントの考え方を参照し、安衛法28条の2の枠組み(労働安全衛生法第28条の2)に沿って「影響評価→対策→標準化」の流れを整合させると、品質・安全の統合運用がしやすくなります。
- 変更内容(何を、なぜ、どこまで)と想定影響(他工程・他文書・権限・ログ取得等)を整理します。
- 関係部門で影響評価を実施し、必要な追加統制(レビュー、検証、監視)を決めます。
- 変更を実施し、実施証拠(設定変更履歴、改訂版、検証記録等)を保全します。
- 関連文書の整合を確認し、マネジメントシステムの標準体系に反映します。
教育・システム改修・設備変更のどれまで必要かを見極める判断順序
再発防止の確実性という観点では、「人の注意」に頼らない順に優先度を置くと、対策が形骸化しにくくなります。
- 設備・物理的な仕組みの変更:誤操作が物理的に起こりにくい構造にします。
- システム改修:入力制限や自動チェック等で、誤入力・逸脱を検知し遮断します。
- 手順改訂と教育:上記が困難な場合に限定し、教育だけに依存しない補助統制(記録・レビュー・ログ)を併用します。
情報セキュリティの領域では、変更後にログが取得できない・追跡不能になると監査で問題化しやすいため、対策の選定時点で「監査ログやアクセスログが適切に残るか」を確認項目に入れておくと実務上有効です。
監査で問われる運用上の注意
監査で指摘されやすい不備
監査で見られるのは、文書の体裁よりも運用の実効性です。指摘されやすい不備は、起票漏れ、原因分析の浅さ、期限遅延、有効性確認の欠落、証拠の不備に集約されます。
- 内部監査の指摘があっても是正処置が起票されず、日常修正で流されています。
- 原因が「注意不足」で止まり、「それはなぜですか?」の深掘りが行われていません。
- 誤送信や障害が起きても、誤送信メールやアクセスログ等の証拠が保全されていません。
- 対策の期限が守られず、未完了案件が滞留しています。
- 対策の実施報告で終わり、有効性確認(再発していないことの確認)が記録されていません。
形骸化を防ぐ指標と経営レビュー
是正処置の形骸化を防ぐには、指標で見える化し、経営レビューで是正処置の詰まりを解消する運用が有効です。数値指標は組織ごとに定義すべきですが、ここでは根拠のない閾値は置かず、指標の種類を例示します。
- 起票からクローズまでのリードタイム(部門別・類型別)です。
- 期限内完了率と、期限超過の理由分類(資源不足、承認滞留、技術課題等)です。
- 差し戻し比率(原因分析不足、証拠不足、対策不整合等)です。
- 再発率(同種不適合の再発、類似プロセスでの横展開不足)です。
情報セキュリティマネジメントシステム(JIS Q 27001 / ISO/IEC 27001)を運用している場合は、情勢に応じた見直しが求められるため、経営レビューの議題に「是正処置の傾向(脅威・事故類型の変化)」を含め、必要な統制強化や教育計画の見直しにつなげます。
手順書に盛り込む章立てと記載項目
是正処置手順書は、規格要求を満たすだけでなく、現場が迷わず処理できる粒度で「役割・判断・記録」を接続することが重要です。
- 目的:是正処置の狙い(原因除去と再発防止)と適用するマネジメントシステム範囲を明確にします。
- 適用範囲:対象事象、対象外、入口(監査指摘・苦情・障害・情報セキュリティ事故等)を定義します。
- 用語定義:不適合、修正、是正処置、封じ込め、証拠、変更管理などを定義します。
- 責任と権限:起票者、承認者、原因分析責任者、文書改訂責任者、レビュー部門を定義します。
- 実施手順:検出・報告→暫定対応→影響評価→証拠保全→原因分析→対策立案→承認→実施→有効性確認→標準化を時系列で示します。
- 記録と保管:報告書、原因分析シート、証拠(誤送信メール、アクセスログ等)、変更履歴、クローズ記録の保管ルールを定めます。
- 起票時点で添付すべき証拠(誤送信メール、アクセスログ、監査ログ、写真等)です。
- ヒアリングの進め方(「それはなぜですか?」の深掘りルール)です。
- 承認基準と差し戻し基準(注意不足で止めない、証拠不足は不可等)です。
- 変更管理の要否判断と、影響評価(安衛法28条の2のリスクアセスメント観点を含む)です。
よくある質問
是正処置手順書はISO認証がなくても必要ですか?
ISO認証の有無にかかわらず、是正処置手順書は、内部統制・品質管理・情報セキュリティ管理の観点で有用です。特に情報セキュリティマネジメントシステムの正式名称が JIS Q 27001(ISO/IEC 27001)であることを踏まえると、認証取得を目的としない場合でも、事故・不適合の再発防止を仕組みとして回すこと自体が、監査対応や説明責任の基盤になります。単発の修正に留めず、証拠を保全し、原因を掘り下げ、標準(手順書)に反映していく流れを定めておくことで、属人的運用から脱しやすくなります。
内部監査の軽微な不適合でも起票すべきですか?
軽微に見える内部監査指摘でも、背景に仕組みの欠陥がある場合は是正処置に載せる判断が有効です。ただし「すべてを一律に是正処置へ」では運用負荷が過大になるため、手順書で起票基準を定義し、必要に応じて段階(例:日常是正と是正処置)を分けます。
その際、原因分析の質を担保するために、ヒアリングで「それはなぜですか?」を繰り返し、監査で提示できる事実(記録・ログ等)と結論を結びつける運用にします。軽微指摘の段階で深層原因に到達できれば、重大化する前に統制や手順を修正できます。
是正処置と予防処置は1つの手順にまとめてもよいですか?
統合して管理すること自体は実務上可能です。是正処置も予防処置も「原因(または原因候補)を特定し、仕組みに手を入れる」点は共通しているため、同じ様式や承認フローを流用できます。
一方で、両者はトリガーが異なります。是正処置は発生した不適合が起点ですが、予防処置は未然防止であり、例えば安全面では安衛法28条の2の枠組みに沿うリスクアセスメント(労働安全衛生法第28条の2)を起点に「危険性・有害性の調査等に関する指針」に基づく評価から対策を決める、といった運用に整理できます。手順書内では、起票要件と記録(評価結果・証拠)の違いを明確に書き分けることが重要です。
電子データだけで記録を保存するときの注意は?
是正処置の記録を電子データのみで保存する場合は、原本性(正本がどれか)、非改ざん性(承認後に勝手に書き換えられない)、見読性(将来も読める)を手順として担保します。とくに監査対応では「誰がいつ入力し、誰が承認したか」の追跡可能性が問われるため、監査ログ等が残る仕組みにします。
また、事故対応の観点では、原因究明・再発防止の検討に必要な証拠を保全できることが重要です。参照できる具体例として、誤送信が発生した場合は、誤送信されたメール(添付ファイルを含む)を保全し、取得できる場合は電子メールや添付ファイルへのアクセスに関するログも保全します。これらを案件記録に紐づけて検索できる状態にしておくと、後日の監査・調査でも説明が可能になります。
まとめ:是正処置手順書への対応で次にすべきこと
是正処置手順書は、用語(不適合・修正・是正処置)を区別し、起票基準と初動(封じ込め・影響評価・証拠保全)を分岐まで含めて定義することで、監査での説明可能性が上がります。原因分析は「それはなぜですか?」の深掘りと証拠(誤送信メール、監査ログ、アクセスログ等)への紐づけを前提にし、「注意不足」で止めない承認・差し戻し基準を置くことが判断の軸になります。安全に関わる変更や評価は、労働安全衛生法第28条の2 の枠組みも踏まえ、変更管理と標準体系への反映までをクローズ条件に連動させると反映漏れを抑えられます。まずは、自社で「対象範囲/対象外」「入口別に最初に確保する証拠」「手順書改訂の責任とタイミング」を棚卸しし、品質保証・情報セキュリティ・コンプライアンスの所管部門とすり合わせてください。個別案件の判断はリスクと事実関係に依存するため、必要に応じて社内の責任者や専門家に相談しながら運用設計に落とし込むことが重要です。

