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清算人選任登記の手続きを解説|必要書類から費用、期限まで網羅

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会社の解散・清算手続きは、多くの経営者にとって初めての経験であり、特に清算人が決まった後の法務局への登記申請は、正確さが求められる重要なステップです。いざ手続きを進めようとしても、具体的な流れや必要書類、費用、そして「解散日から2週間以内」という短い期限など、押さえるべきポイントが多く、戸惑うこともあるでしょう。この記事では、会社の清算人を選任した後の登記手続きについて、その役割の基本から具体的な申請方法、ケース別の必要書類、費用、注意点までを網羅的に解説します。

目次

清算人とは?会社の解散後に行う職務と役割

会社の清算手続きにおける清算人の位置づけ

会社が解散すると、それまで経営を担っていた取締役は原則としてその地位を失います。解散後の会社は「清算株式会社」となり、法人格は残りますが、その活動目的は会社の法人格を消滅させるための清算事務に限定されます。この清算事務を執行する機関が清算人です。

清算人は、清算事務を執行する機関として、解散前の取締役と同様に会社を代表し、内部的には清算事務に関する意思決定と業務執行を担います。会社は、清算人が全ての事務を完了させ、清算結了の登記を申請するまで、清算の目的の範囲内で存続します。つまり清算人とは、会社の最終的な後始末を行う責任者であり、債権者や株主といった利害関係者の利益を調整しながら、会社を法的に消滅させるための重要な役割を担う存在です。

清算人が担う具体的な職務内容(現務の結了・債権取立・財産分配)

清算人が行う職務は、会社の財産関係を整理し、最終的に会社を消滅させるための一連の手続きです。主な職務は以下の通りです。

清算人の主な職務
  • 現務の結了: 解散時点で残っている業務を完了させます。具体的には、進行中の契約の解除や完了、従業員との雇用関係の整理などを行います。
  • 債権の取立てと財産の換価: 売掛金や貸付金など、会社が持つ債権を回収します。また、不動産、車両、備品といった会社の資産を売却し、現金化(換価)します。
  • 債務の弁済: 会社の債権者に対して、回収・換価した資産から負債を支払います。
  • 残余財産の分配: 全ての債務を弁済した後に財産が残った場合、その残余財産を株主の持株数に応じて分配します。

これらの職務を遂行するにあたり、清算人には特定の債権者を不当に優遇することなく、公平かつ透明性の高い手続きを進めることが求められます。

清算人になれる人の資格と条件

清算人に就任するために、弁護士や司法書士といった特別な国家資格は必要ありません。原則として自然人であれば誰でも就任可能ですが、会社法で定められた欠格事由に該当する人は清算人になれません。

清算人になれない主なケース(欠格事由)
  • 法人
  • 成年被後見人または被保佐人
  • 会社法などの法律に違反し、刑の執行を終えてから2年が経過していない者

実務上は、会社の事情を最もよく理解している解散前の代表取締役や取締役がそのまま清算人に就任するケースが一般的です。ただし、債務超過の疑いがある場合や利害関係が複雑な場合には、中立的な立場から専門的な知見を持つ弁護士や司法書士が選任されることもあります。なお、会社の業務執行を監査する立場にある監査役は、役割が利益相反するため清算人を兼任することはできません。

清算人が負う法的責任と注意すべきリスク

清算人は、会社とその利害関係者に対して重大な法的責任を負います。職務を遂行する上で、特に注意すべき義務やリスクは以下の通りです。

清算人が負う主な法的責任
  • 善管注意義務: 善良な管理者の注意をもって、清算事務を行う義務があります。この義務に違反して会社や第三者に損害を与えた場合、個人として損害賠償責任を負う可能性があります。
  • 任務懈怠責任: 職務を怠ったことで会社に損害を生じさせた場合、その損害を賠償する責任を負います。
  • 第三者に対する責任: 職務を行うにあたり、悪意または重大な過失によって第三者に損害を与えた場合も、損害賠償責任の対象となります。
  • 公告・催告義務違反の責任: 債権者保護手続きである官報公告や個別の催告を怠ったまま財産を分配した場合、それによって損害を受けた債権者に対して賠償責任を負うことがあります。
  • 帳簿資料の保存義務: 清算結了の登記後も、帳簿や重要資料を10年間保存する義務があります。

これらの責任は非常に重いため、清算人は法令を遵守し、慎重に職務を進める必要があります。

清算人の主な選任方法

定款の定めによって選任されるケース

会社の設立時に作成する定款において、あらかじめ解散時の清算人を指定しておくことができます。定款に特定の氏名が記載されていたり、「解散時の代表取締役を清算人とする」といった規定があったりする場合、株主総会での選任決議を経ずに、解散と同時にその者が清算人に就任します。

ただし、将来の状況変化に対応しにくいため、実際に定款で清算人を定めている会社は多くありません。また、定款で指名されていても、その本人が就任を承諾しなければ清算人にはなれません。指定された人物が辞退した場合や死亡していた場合には、他の方法で清算人を選任する必要があります。

株主総会の決議によって選任するケース

実務上、最も一般的に用いられるのが株主総会の決議による選任です。通常、会社を解散するための株主総会と同時に、清算人を選任する決議も行われます。

会社の解散決議は、議決権の3分の2以上の賛成が必要な特別決議ですが、清算人の選任は議決権の過半数の賛成で可決される普通決議で足ります。この方法の利点は、解散時の状況に応じて、元役員だけでなく弁護士や司法書士といった外部の専門家など、最も適任な人物を柔軟に選べる点です。選任された人物の就任承諾を得た上で、その内容を記載した株主総会議事録は、法務局への登記申請に不可欠な添付書類となります。

取締役がそのまま就任する法定清算人

定款に定めがなく、かつ株主総会でも清算人が選任されなかった場合には、会社法の規定により、解散時の取締役が自動的に清算人に就任します。これを法定清算人と呼びます。

この仕組みにより、清算人が誰もいないという事態が回避されます。取締役が複数いた場合は、原則として取締役全員が清算人となります。この場合、解散前の代表取締役が代表清算人として会社を代表するのが一般的です。特別な選任手続きが不要で簡便ですが、複数の取締役がいると全員が清算人として登記され、事務が煩雑になる可能性があります。そのため、実務上は株主総会で改めて清算人を一人に絞る決議を行うことも多くあります。

会社の解散登記と清算人選任登記の申請手続きの流れ

会社の解散および清算人の選任が決定したら、法務局へ登記申請を行う必要があります。手続きの基本的な流れは以下の通りです。

解散・清算人選任登記の申請フロー
  1. 株主総会での解散および清算人選任の決議: まず株主総会を招集し、会社の解散を特別決議で、清算人の選任を普通決議で決定します。選任された清算人から就任承諾を得て、決議内容を証明する株主総会議事録を作成します。
  2. 登記申請書類の作成と準備: 法務局に提出する登記申請書を作成します。添付書類として、株主総会議事録、定款、清算人の就任承諾書、株主リストなどを準備します。代表清算人については、個人の印鑑証明書が必要になる場合があります。
  3. 法務局への登記申請: 会社の解散日から2週間以内に、本店所在地を管轄する法務局へ登記を申請します。申請時には、解散登記(30,000円)と清算人選任登記(9,000円)の合計39,000円の登録免許税を収入印紙で納付します。

【ケース別】清算人選任登記の必要書類

登記申請書など共通で必要な書類

清算人の選任方法にかかわらず、登記申請時に必ず必要となる基本的な書類があります。

全てのケースで共通して必要な書類
  • 登記申請書: 解散の事由や年月日、清算人の氏名などを記載した申請書本体です。
  • 登録免許税納付用台紙: 規定額(合計39,000円)の収入印紙を貼り付けた台紙です。
  • 定款: 会社の機関設計や清算人の選任方法などを確認するために必要です。
  • 株主リスト: 株主総会での決議の正当性を証明するため、議決権上位の株主情報などを記載したリストです。

株主総会で清算人を選任した場合の添付書類(議事録・就任承諾書など)

株主総会の決議で清算人を選んだ場合は、共通書類に加えて、決議の事実を証明するための以下の書類が必要になります。

株主総会で選任した場合の追加書類
  • 株主総会議事録: 解散および清算人選任の決議が適法に行われたことを証明する書類です。
  • 清算人の就任承諾書: 選任された人物が清算人への就任を承諾したことを示す書面です。
  • 印鑑証明書: 代表清算人が登記所に印鑑を届け出る場合に必要となることがあります。

清算人会を設置する場合の追加書類

清算人が3名以上いる場合などで、定款の定めに基づき清算人会を設置する際には、さらに以下の書類が必要となります。

清算人会を設置する場合の追加書類
  • 代表清算人を選定したことを証する書面: 清算人会で代表清算人を選定した場合は、その清算人会議事録を添付します。
  • 定款: 定款に「清算人会を置く」旨の定めがあることが必要です。

書類準備における注意点(印鑑証明書の要否など)

登記申請で添付する印鑑証明書は、発行から3ヶ月以内のものである必要があります。取得時期には十分注意してください。

また、代表清算人が法務局に印鑑を届け出る際には、「印鑑届書」を提出します。この届書には、代表清算人個人の実印を押印し、市区町村長が発行した印鑑証明書を添付する必要があります。書類の記載内容、特に氏名や住所は、印鑑証明書や住民票の表記と一字一句違わないように正確に転記することが重要です。

清算人選任登記にかかる費用の内訳

法務局に納める登録免許税(解散・清算人選任で合計39,000円)

登記申請時には、法務局に登録免許税を納付する必要があります。これは手続きに必ずかかる実費です。

登記の種類 税額
解散の登記 30,000円
清算人選任の登記 9,000円
合計 39,000円
(参考)清算結了の登記 2,000円
登録免許税の内訳

通常、解散登記と清算人選任登記は同時に申請するため、合計39,000円を収入印紙で納めます。清算手続きがすべて完了した後の清算結了登記には、別途2,000円が必要です。

司法書士など専門家に依頼する場合の報酬相場

登記手続きを司法書士などの専門家に依頼する場合、登録免許税とは別に報酬が発生します。解散登記と清算人選任登記の代行を依頼した場合の報酬相場は、5万円から8万円程度が一般的です。

書類作成の正確性が求められる手続きであり、不備があると修正に手間と時間がかかるため、専門家への依頼は有効な選択肢です。その後の官報公告の手配や清算結了登記まで含めて一括で依頼する場合は、総額で10万円以上になることもあります。複数の事務所から見積もりを取り、サービス内容と費用を比較検討するとよいでしょう。

清算人の報酬はいつ、どのように決めるのか?

清算人の報酬は、定款に定めがあるか、株主総会の決議によって決定されます。解散前の取締役が清算人に就任し、役員報酬と同額程度に設定されることもあれば、無報酬とされるケースもあります。

報酬額は、解散を決議する株主総会で併せて決議するのが一般的です。支払時期は、清算事務がすべて完了し、残余財産を分配するタイミングで支払われることが多いですが、清算期間が長期化する場合には月額で支払うことも可能です。ただし、会社の財産が債務の支払いに不足するような状況で清算人が報酬を受け取ることは、債権者に対する責任問題に発展する可能性があるため、慎重な判断が求められます。

清算人選任登記の申請期限と提出先

登記申請の期限:解散日から2週間以内

会社の解散および清算人選任の登記は、解散日から2週間以内に申請しなければならないと法律で定められています。この期限は非常に短いため、株主総会の決議後、速やかに手続きを進める必要があります。

正当な理由なくこの期限を過ぎてしまうと、登記懈怠(とうきけたい)となり、代表者個人に対して裁判所から100万円以下の過料が科される可能性があります。数日の遅れでも対象となり得るため、期限遵守は極めて重要です。

登記の申請先:本店所在地を管轄する法務局

登記申請は、会社の本店所在地を管轄する法務局(支局・出張所を含む)に対して行います。管轄の法務局は、法務局のウェブサイトで確認できます。

申請方法は、窓口への持参、郵送のほか、専用ソフトとマイナンバーカードを利用したオンライン申請も可能です。不慣れな場合は、書類を直接窓口に持参するか、司法書士に依頼するのが確実です。

清算人選任登記を自分で行う際のポイントと注意点

登記申請書の記載項目と作成時の留意点

登記申請書を自分で作成する場合、記載内容の正確性が受理の鍵となります。商号、本店所在地、登記の事由(解散、清算人選任など)、解散年月日といった情報を正確に記載します。特に、清算人の氏名や住所は、印鑑証明書などの公的書類と完全に一致させる必要があります。「丁目、番、号」をハイフンで省略することはできません。

申請書が複数ページにわたる場合は、ページのつなぎ目に割印(契印)を押す必要があります。法務局のウェブサイトには記載例が掲載されているため、それを参考にしながら、細心の注意を払って作成してください。

手続きの複雑さから専門家への依頼も選択肢に

登記申請は、単に書類を提出するだけの手続きではありません。株主総会議事録の内容が会社法の要件を満たしているか、添付書類に漏れがないかなど、法的な知識が求められる場面が多々あります。

書類に不備があると、法務局から補正の指示があり、平日の日中に何度も法務局へ足を運ぶ必要が生じかねません。また、清算手続きには、登記以外にも税務申告や社会保険手続きなど、多岐にわたる事務が伴います。これらの負担や法的なリスクを考慮すると、費用をかけてでも司法書士などの専門家に依頼することは、結果的に時間と労力を節約する合理的な選択肢となり得ます。

清算人選任登記に関するよくある質問

Q. 清算人の登記をしないとどうなりますか?

清算人の登記を期限内に行わない「登記懈怠」の状態になると、法的なペナルティや実務上の不利益が生じます。

登記を怠った場合の主なリスク
  • 過料の制裁: 裁判所から会社の代表者個人に対して、100万円以下の過料が科される可能性があります。
  • 取引上の不利益: 金融機関での口座名義変更ができない、契約手続きが進められないなど、外部との取引に支障が出ます。
  • 法的なトラブル: 債権者から適正な手続きを経ていないとして、責任を追及されるリスクがあります。
  • 清算手続きの停滞: 清算人の登記が完了しないと、最終的な清算結了登記もできず、会社を完全に消滅させることができません。

Q. 清算人が一人の場合、代表清算人の登記は必要ですか?

いいえ、必要ありません。 清算人が一人の場合は、その一人が当然に会社を代表するため、登記簿には単に「清算人」としてその氏名と住所が記載されます。

「代表清算人」という登記が必要になるのは、清算人が複数いる場合に、その中から特定の者を会社の代表として定めるケースです。複数いるにもかかわらず代表清算人を定めなかった場合は、原則として清算人全員がそれぞれ会社を代表する権限を持つことになり、全員の氏名と住所が登記されます。

Q. みなし解散の場合、清算人登記はどのように進めますか?

みなし解散とは、最後の登記から12年以上が経過した株式会社に対し、法務局が職権で解散の登記を行う制度です。この場合、会社は法律上解散したとみなされますが、清算手続きが自動的に完了するわけではありません。

みなし解散となった後、会社を完全に畳む場合は、通常の解散手続きと同様に清算人を選任し、その登記を申請する必要があります。一般的には株主総会で清算人を選任しますが、それが困難な場合は解散時の取締役が法定清算人となります。いずれにせよ、清算人選任の登記は、会社側から能動的に申請しなければなりません。

なお、みなし解散の登記から3年以内であれば、株主総会の特別決議によって会社を継続させることも可能です。みなし解散の通知を受けたら、放置せずに速やかに清算か継続かを判断し、必要な手続きを進めることが重要です。

まとめ:清算人選任登記は2週間以内が鉄則!専門家の活用も視野に

本記事では、会社の解散に伴う清算人の役割から、選任後の登記手続きまでを詳しく解説しました。最も重要なのは、解散日から2週間以内に法務局へ解散および清算人選任の登記を申請する必要があるという点です。この登記には、株主総会議事録や就任承諾書といった複数の書類が必要となり、登録免許税として合計39,000円の実費がかかります。期限内に手続きを完了しないと「登記懈怠」として過料の対象となるリスクがあるため、迅速な対応が求められます。手続きの正確性や煩雑さに不安を感じる場合は、ミスや遅延を防ぐためにも、司法書士などの専門家へ速やかに相談することを検討しましょう。

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