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2回目の法人破産は可能か?手続きの違い・費用・代表者への影響を解説

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一度破産を経験したにもかかわらず、再び経営が立ち行かなくなり二度目の法人破産を検討せざるを得ない状況は、精神的にも極めて厳しいものでしょう。法律上、法人破産に回数制限はありませんが、実務上、手続きは一度目よりも格段に厳格な審査が行われる傾向にあるのが実情です。この記事では、二度目の法人破産が可能である法的根拠から、一度目とは異なる審査のポイント、代表者個人への影響、そして乗り越えるべき注意点までを網羅的に解説します。

目次

2回目の法人破産は可能か?法律上の考え方

法人破産に法律上の回数制限はない

会社の経営が再び行き詰まり、二度目の破産を検討する際、法律上の回数制限はあるのかという疑問が生じます。結論として、日本の破産法には法人破産の回数を制限する規定は存在しません。したがって、「支払不能」や「債務超過」といった破産手続開始の原因となる事実が客観的に認められれば、理論上は何度でも申立てが可能です。

法人破産制度の主な目的は、会社の財産を清算して債権者へ公平に分配し、経済社会の混乱を最小限に抑えることにあります。そのため、一度失敗した経営者が再起を目指して設立した別法人が再び経営難に陥ったとしても、法的な清算手続きを利用する権利は保障されています。ただし、制度上の回数制限がないことと、裁判所が手続きを容易に認めることは同義ではない点には注意が必要です。特に二度目の申立てでは、制度の濫用を防ぐ観点から、破綻に至る経緯がより厳しく審査されます。

1回目の破産とは異なる観点で審査される点に注意

二度目の法人破産を申し立てる場合、裁判所や破産管財人の審査は一度目よりも格段に厳しくなります。特に、前回の破産から短期間での再申立てが、計画的な債務逃れや制度の濫用にあたらないかが重点的に問われます。

一度目の破産で債権者に多大な損失を与えている以上、二度目の破産では経営者としての誠実性や経営姿勢が厳格に評価されます。具体的には、以下のような点が一度目とは異なる観点で審査されます。

2回目の破産で特に厳しく審査される点
  • 短期間での再申立てが制度の濫用にあたらないか
  • 経営者としての誠実性や道徳的危険性(モラルハザード)
  • 前回の破産から得た教訓が経営に活かされていたか
  • 破産を前提とした無謀な取引がなかったか
  • 会計処理の透明性が確保され、前回の管財人からの指導事項が遵守されていたか

1回目の手続きと異なる点:審査・調査の厳格化

裁判所による破産原因の厳格な調査

二度目の法人破産申立てにおいて、裁判所は破産原因の有無を確認するだけでなく、その背景にある経営実態をより深く調査します。特に、経営の透明性や公正性が厳しく問われることになります。

裁判所は、支払不能に陥る直前の不自然な資金の動きを注視します。一度目の破産経験がある経営者は、破綻を早期に予見できたはずだと考えられるため、その後も事業を継続して債権者の損害を拡大させなかったかという点も追及対象となります。このように調査が深化するため、破産手続開始決定までの審査期間が一度目よりも長期化する傾向があります。

裁判所が重点的に調査する項目
  • 決算書等の会計資料が実態を正確に反映しているか(粉飾決算の有無)
  • 破産直前の不自然な資金移動や資産譲渡(資産隠し
  • 特定の役員への過大な報酬や退職金の支払い
  • 破綻を予見後の不適切な事業継続による損害拡大

破産管財人による経営責任の重点的な調査内容

破産手続開始後に選任される破産管財人は、二度目の破産では役員の経営責任について極めて厳しい姿勢で調査に臨みます。管財人の主な職務は、破産財団(会社の資産)を管理・換価して債権者に配当することですが、二度目のケースでは配当原資を確保するため、役員個人への損害賠償請求の可能性を徹底的に探ります。

調査の焦点は、会社法上の「善管注意義務」や「忠実義務」に違反する行為がなかったかという点です。一度目の破産時に同様の指摘を受けていた場合、二度目における同種の行為は重過失とみなされやすく、責任を免れることは通常、極めて困難になります。

破産管財人が重点的に調査する経営責任
  • 善管注意義務忠実義務への違反行為の有無
  • 回収見込みのない取引を継続し会社に損害を与えた行為
  • 多額にわたる不適切な公私混同の支出
  • 破産直前の不適切な事業譲渡(詐害行為や商号続用の疑い)

裁判所へ納める予納金が高額になる可能性

法人破産の手続きを進めるためには、裁判所に予納金を納める必要があります。この予納金は、二度目の法人破産では一度目よりも高額に設定される可能性が非常に高いです。

予納金は、主に破産管財人の報酬や調査費用に充てられます。二度目の破産では、資産隠しの調査や複雑な権利関係の整理など、管財人の業務が煩雑になることが予想されるため、裁判所は業務量に見合った高額な予納金を求める傾向があります。資金が完全に枯渇する前に、予納金の確保を計画的に進めることが不可欠です。

項目 1回目の破産(少額管財の場合) 2回目の破産(通常管財の可能性が高い)
手続きの種類 少額管財手続きが適用されやすい 通常管財手続きとして扱われる可能性が高い
予納金の目安 20万円程度から 70万円以上(負債総額に応じて増加)
背景・理由 資産が少なく債権関係が単純な場合 権利関係の再精査や不正調査に手間を要するため
予納金に関する1回目と2回目の比較(目安)

資産隠しや偏頗弁済を特に厳しく見られるリスク

二度目の破産手続きにおいて、裁判所や破産管財人が最も警戒するのが「資産隠し」と「偏頗弁済」です。資産隠しは破産財団の価値を不当に減少させる行為、偏頗弁済は特定の債権者にだけ優先的に返済する行為であり、いずれも債権者平等の原則に反する重大な不正行為とみなされます。

一度破産を経験した経営者は、手続きの知識を悪用する可能性があると見なされるため、財産の動きは一度目よりもはるかに厳しく調査されます。これらの行為が発覚した場合、最悪のケースでは詐欺破産罪として刑事事件に発展するリスクもあります。

厳しく調査される不正行為の例
  • 直近1~2年間の預金口座の全取引履歴
  • 不動産の登記情報の推移
  • 所有車両の名義変更
  • 親族や知人への不自然な支払いや贈与

代表者個人への影響と2回目の自己破産

代表者個人の過去の破産歴が法人破産に与える影響

法人破産を申し立てる際に、代表者個人に過去の自己破産歴があったとしても、それ自体が法人の破産手続きを直接妨げるわけではありません。しかし、裁判所の審査においては、経営の透明性や公正性がより厳格に問われる要因となります。

裁判所は「今回の法人の破綻も、代表者個人の過去の失敗と同じ原因で生じたのではないか」という視点を持ちます。そのため、一度目の個人破産で得た教訓が法人の経営管理にどう活かされたのか、再び公私混同や無謀な資金運用がなかったかといった点が、管財人の主要な調査項目となります。代表者の破産歴が直近であるほど、法人における任務懈怠の追及が厳しくなる傾向にあります。

2回目の自己破産における免責不許可事由とは

法人の破産と同時に代表者個人も二度目の自己破産を申し立てる場合、借金の返済義務を免除してもらう「免責」を得るためには、高いハードルを越える必要があります。特に、破産法で定められた免責不許可事由に該当しないことが重要です。

最も大きな障壁となるのが、前回の免責許可決定の確定日から7年以内に再び免責を申し立てるケースです。これは明確な免責不許可事由とされており、短期間での安易な破産の繰り返しを防ぐ趣旨の規定です。7年を過ぎていても、一度目と類似した原因(浪費やギャンブルなど)で破産に至った場合、反省が見られないとして免責が認められない可能性が高まります。

2回目の自己破産で問題となりやすい免責不許可事由
  • 前回の免責許可決定の確定日から7年以内の再度の免責申立て
  • ギャンブルや浪費、射幸行為が原因で著しく財産を減少させた場合
  • 破産財団に属すべき財産を隠匿・損壊する行為
  • 特定の債権者に不利益を与える目的での意図的な債権者一覧表への不記載

免責不許可事由に該当しても認められる「裁量免責」の可能性

法律で定められた免責不許可事由に該当する場合でも、裁判所が諸般の事情を総合的に考慮して特別に免責を許可する「裁量免責」という制度があります。例えば、前回の破産から7年が経過していない場合でも、この制度によって救済される可能性はゼロではありません。

ただし、裁量免責はあくまで例外的な措置です。認められるためには、一度目の失敗を真摯に反省し、破綻に至ったやむを得ない事情を客観的に説明するとともに、管財人の調査に全面的に協力する姿勢が不可欠です。裁判所や管財人の信頼を得るための極めて誠実な対応が求められます。

裁量免責の判断で重視される要素
  • 破産手続きへの誠実な協力姿勢
  • 破綻に至った事情や失敗に対する真摯な反省
  • 今後の生活再建に向けた具体的な更生計画の提示
  • 管財人の調査への全面的な協力

2回目の法人破産を申立てる際の準備と注意点

破産に至った経緯を客観的かつ詳細に説明する準備

二度目の法人破産を申し立てる際は、なぜ再び経営が破綻したのか、その経緯を客観的な証拠に基づいて詳細に説明する準備が極めて重要です。「景気が悪かった」といった抽象的な理由だけでは不十分で、具体的なデータに基づいた説明が求められます。

説明にあたっては、代表者個人の主観的な主張ではなく、決算書や資金繰り表などの会計資料を証拠として提示し、第三者が納得できる形で論理的に構成する必要があります。これは、経営責任を自覚し、債権者に対して真摯に向き合う姿勢を示すための重要なプロセスです。

破産に至る経緯の説明に含めるべき内容
  • 具体的な取引先の減少時期と売上高の推移
  • 原材料費の高騰など、利益を圧迫した外部要因のデータ
  • 代表者の傷病など、経営に影響を与えた個人的な事情
  • 破産を回避するために講じた具体的な改善策とその結果

1回目の破産との関連性・事業改善努力の具体的な説明

申立ての際には、一度目の破産から得た教訓を今回の経営にどのように反映させていたのかを具体的に説明することが求められます。前回の失敗原因を分析し、それを克服するために導入した内部管理体制の強化策や、収支改善に向けた具体的な行動計画、経費削減の実績などをデータと共に示すことが重要です。

たとえ結果的に再び破綻してしまったとしても、その過程で事業改善のために真摯な努力を尽くしたことが認められれば、単なる放漫経営とは区別されます。これは、裁判所が裁量免責を判断したり、経営者の責任の度合いを評価したりする上で、有利な事情として考慮される可能性があります。

破産管財人への誠実な説明と協力姿勢の重要性

破産手続が開始されると、破産管財人との面談や調査が中心となります。二度目の破産では、管財人からの質問は一度目よりも厳しく、経営者の資質を問うような内容になることも予想されます。どのような状況であっても、常に誠実な説明と協力姿勢を貫くことが絶対条件です。

求められた資料は期限内に提出し、たとえ自身に不利な事実であっても隠さずに正直に報告することが、最終的に自身の利益に繋がります。管財人は手続き中の申立人の態度を裁判所に報告するため、不誠実な対応は更生の意思がないとみなされ、裁量免責の可能性を自ら閉ざすことになりかねません。

複雑な手続きに対応できる経験豊富な弁護士への早期相談

二度目の法人破産は、法的にも実務的にも一度目とは比較にならないほど複雑です。そのため、倒産実務に精通した経験豊富な弁護士に早期に相談することが成功の鍵を握ります。

相談が遅れると、資金が完全に底をつき、手続きに必要な予納金すら支払えなくなる恐れがあります。経営危機を感じた段階で速やかに行動を起こすことが、円滑な手続きと再起への第一歩となります。

経験豊富な弁護士に相談するメリット
  • 厳格な調査への事前対策と戦略立案
  • 高額になりがちな予納金の交渉
  • 役員責任査定(損害賠償請求)への適切な対応
  • 否認権行使のリスクがある取引の事前特定と助言
  • 従業員の解雇や事務所明渡しなど、実務の計画的なサポート

2回目の法人破産に関するよくある質問

1回目の破産から何年経てば、2回目の手続きは有利になりますか?

法人の破産自体には期間の制約はありませんが、代表者個人も自己破産する場合は、前回の免責確定から7年が経過しているかどうかが大きな分岐点となります。7年を経過していれば、破産法上の免責不許可事由に該当しなくなるため、免責を得られる可能性が高まります。

法人のみの手続きであっても、前回の破産から10年以上の長い期間が経過していれば、一度目の失敗と今回の破綻との直接的な関連性が薄いと判断されやすく、制度濫用の疑念を持たれにくくなる傾向があります。

2回目の法人破産をすると、代表者の信用情報はどうなりますか?

代表者が法人の債務を連帯保証しており、法人と同時に自己破産した場合、個人の信用情報機関に事故情報が登録されます(いわゆるブラックリストの状態)。登録期間は5年から10年程度で、この間は新たにクレジットカードを作成したり、ローンを組んだりすることが極めて困難になります。

多くの中小企業では代表者が連帯保証人となっているため、法人が破産する際は代表者個人の信用情報にも影響が及ぶことが一般的です。

2回目の法人破産後、再び会社を設立することは法律上可能ですか?

法律上、破産手続きが完了して復権すれば、再び会社を設立して取締役に就任すること自体に制限はありません。現在の会社法では、破産者であることは取締役の欠格事由とされていないためです。

しかし、実務上の大きな課題として、個人の信用情報が毀損されているため、新会社として金融機関から融資を受けることは非常に困難です。そのため、自己資金で起業するか、出資者を募るなどの方法を検討する必要があります。また、建設業など許認可が必要な特定の業種では、破産が欠格要件となる場合があるため注意が必要です。

まとめ:2回目の法人破産は可能だが、誠実な対応と専門家の協力が不可欠

本記事で解説した通り、法人破産に法律上の回数制限はなく、二度目の申立ても可能です。しかし、その手続きは一度目とは比較にならないほど厳格化され、裁判所や破産管財人は制度の濫用を警戒し、経営責任や資産状況を徹底的に調査します。特に、資産隠しや偏頗弁済は厳しく追及され、裁判所へ納める予納金も高額になる傾向があります。代表者個人の自己破産も伴う場合、前回の免責から7年以内という大きな障壁が存在しますが、裁量免責の道も残されています。この複雑な手続きを乗り越えるためには、破綻に至る経緯を客観的資料に基づき誠実に説明し、管財人の調査に全面的に協力する姿勢が絶対条件です。資金が完全に枯渇する前に、倒産実務に精通した弁護士へ早期に相談することが、円滑な手続きと再起への重要な第一歩となるでしょう。

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