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法人破産の費用相場|弁護士・司法書士への依頼費用と払えない時の対処法

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会社の資金繰りが悪化し、法人破産を考え始めたものの、手続きにかかる費用がどれくらいか、そもそも支払えるのかと不安に感じている経営者の方は少なくありません。特に、手続きを依頼する弁護士や司法書士といった専門家への報酬は大きな割合を占め、どちらに依頼すべきか迷う要因となるでしょう。この記事では、法人破産にかかる費用の全体像と内訳、弁護士と司法書士の役割と費用相場の違い、そして費用が用意できない場合の対処法までを網羅的に解説します。

目次

法人破産にかかる費用の全体像と内訳

費用は大きく「専門家への報酬」と「裁判所への実費」に分かれる

法人破産にかかる費用は、大きく分けて「専門家への報酬」と「裁判所へ納める実費」の2種類です。法人の破産手続きは個人に比べて複雑なため、これらの費用を事前に把握し、資金を確保しておくことが極めて重要です。資金が完全に尽きてしまうと、破産手続き自体を開始できなくなる恐れがあります。

法人破産にかかる費用の主な内訳
  • 専門家への報酬: 手続きの代理や書類作成を依頼する弁護士などへ支払う費用。
  • 裁判所への実費: 破産手続きを進めるために裁判所へ納める費用で、破産管財人の報酬となる予納金が大部分を占める。

専門家への報酬の内訳(相談料・着手金・成功報酬など)

弁護士などの専門家へ支払う報酬は、業務内容やタイミングに応じて複数の項目に分かれます。弁護士費用は2004年に自由化されており、法律事務所ごとに独自の料金体系が設定されているため、依頼前に内訳をよく確認することが大切です。

専門家報酬の主な項目
  • 相談料: 破産すべきかどうかの判断を仰ぐための費用。初回相談は無料の事務所も多い。
  • 着手金: 弁護士が業務を開始するための費用。債権者への受任通知発送や申立書類作成の対価で、通常は返金されない。
  • 成功報酬: 手続きが無事に終了した際に支払う費用。ただし、法人破産では着手金に全ての報酬を含む料金体系も多い。
  • 実費: 書類のコピー代、交通費、公的書類の取得費用など、業務遂行に要した細かな経費。

中小企業の場合、弁護士報酬は少なくとも50万円から100万円程度が目安となります。見積もりを取る際は、どの業務範囲までが含まれているかを詳細に確認しましょう。

裁判所へ納める費用の内訳(予納金・申立手数料・官報公告費)

裁判所に納める費用は、主に破産管財人の活動費用や手続きの実費に充てられます。これらの費用は、原則として破産申立時に一括で納付する必要があり、支払えなければ申立てが却下される可能性もあります。

裁判所へ納める費用の内訳
  • 予納金: 破産管財人の報酬や調査費用に充てられる最も高額な費用。会社の負債総額に応じて変動する。
  • 申立手数料: 裁判所を利用するための手数料で、収入印紙で納付する(法人破産は1,000円)。
  • 官報公告費: 破産手続きの開始を官報(国の機関紙)に掲載するための費用(1万5,000円前後)。
  • 郵便切手代(予納郵券): 裁判所が債権者へ通知を発送するための切手代。債権者の数に応じて変動する。

特に予納金は、負債額5,000万円未満の会社でも通常は50万円以上(東京地裁では70万円)が必要ですが、弁護士が代理人となる少額管財事件では20万円程度に抑えることが可能です。

法人破産手続きにおける弁護士と司法書士の役割の違い

弁護士:代理人として破産手続きの全てを遂行可能

弁護士は、法人破産手続きにおいて代理人として全ての法的手続きを遂行できる唯一の専門家です。依頼者の盾となり、複雑な実務を全面的にサポートします。

弁護士の主な役割と権限
  • 完全な代理権: 債権者への受任通知送付から裁判官との面談(破産審尋)、債権者集会まで、全ての手続きを代理人として担当できる。
  • 取り立ての停止: 弁護士が受任通知を送付すると、法的に債権者からの直接の取り立てが停止する。
  • 少額管財の利用: 弁護士が代理人となることで、多くの裁判所で予納金を大幅に減額できる「少額管財制度」の利用が可能になる。
  • 包括的なサポート: 従業員の解雇問題や未払賃金の対応、代表者個人の同時破産まで、関連する法務を一体的に処理できる。
  • 債権者との交渉: 訴訟を含め、債権者からの法的な追及に対して窓口となって交渉や対応を行うことができる。

司法書士:申立書類の作成が主業務で代理権に制限がある

司法書士の主な業務は、裁判所に提出する申立書類の作成代行です。法人破産手続きにおける代理権には大きな制限があり、弁護士とは役割が異なります。

司法書士の役割と制限
  • 書類作成の専門家: 財産目録や債権者一覧表など、膨大な申立書類を正確に作成する。
  • 代理権の制限: 地方裁判所が管轄となる法人破産では代理人になれないため、手続きは「本人申立」扱いとなる。
  • 裁判所への本人出頭: 裁判官との面談や債権者集会での説明は、経営者自身が行わなければならない。
  • 少額管財の適用外: 本人申立扱いとなるため、原則として少額管財制度が適用されず、予納金が高額になる可能性が高い。

司法書士への報酬は弁護士より安価な場合がありますが、高額な予納金を加味した総額では、弁護士に依頼する方が経済的負担が軽くなる「費用の逆転現象」が起こり得るため注意が必要です。

【専門家別】法人破産の費用相場と変動要因

弁護士に依頼する場合の費用相場

弁護士に法人破産を依頼する場合、費用総額は100万円~300万円程度が一般的な相場です。この金額には、弁護士報酬と裁判所への予納金が含まれます。

項目 金額の目安 備考
弁護士報酬(着手金) 50万円~150万円 負債総額や債権者数に応じて変動。
裁判所への予納金 20万円~ 少額管財が適用された場合の最低額。
弁護士依頼時の費用内訳の目安

弁護士に依頼する最大のメリットは、予納金を低く抑えられる少額管財を利用できる点にあります。通常70万円以上かかる予納金が20万円程度に減額されるため、弁護士報酬を支払っても総費用を抑えられるケースが多くなります。会社の状況(事業継続中か、拠点の数など)によって費用は変動するため、事前に詳細な見積もりを確認することが重要です。

司法書士に依頼する場合の費用相場

司法書士に法人破産の書類作成を依頼する場合、報酬の相場は20万円~50万円程度です。これは弁護士報酬に比べて安価ですが、裁判所への予納金を含めた総額で比較検討する必要があります。

司法書士に依頼した場合、手続きは本人申立扱いとなり、原則として少額管財が適用されません。その結果、裁判所へ納める予納金が最低でも50万円~70万円程度必要となり、弁護士に依頼した場合よりも総費用が高くなる可能性があります。法人破産で、予納金がほとんどかからない同時廃止となるケースは極めて稀なため、司法書士への依頼は総額費用を慎重に試算した上で判断すべきです。

会社の負債総額や債権者数による費用変動の目安

法人破産の費用は、事件の規模や複雑さに応じて変動します。特に、負債総額と債権者数は、専門家の業務量に直結するため、報酬額を決定する重要な指標となります。

費用が変動する主な要因
  • 負債総額: 負債額が大きくなるほど、法律関係が複雑になり、専門家の責任も重くなるため報酬は高くなる傾向がある。
  • 債権者数: 債権者の数が多いほど、通知の発送や債権調査、集会での対応といった事務作業が増加する。
  • 従業員数: 従業員の解雇や未払賃金の精算、社会保険手続きなど、労働法関連の業務が増える。
  • 資産・拠点の状況: 不動産や多数の動産(在庫、設備等)の売却、複数拠点の明け渡し交渉などは、手間と時間がかかるため費用に反映される。
  • 会社の状態: すでに事業を停止し、資産整理も済んでいる休眠会社のような状態であれば、費用は比較的安価になることがある。

少額管財事件として扱われると予納金を大幅に抑えられる

少額管財は、法人破産における費用負担を大幅に軽減できる実務上の運用です。通常の管財事件(通常管財)では最低でも50万円以上の予納金が必要ですが、少額管財が適用されれば20万円程度にまで抑えられます。

この制度を利用するためには、以下の条件を満たすことが一般的です。

少額管財の主な適用条件
  • 弁護士が申立代理人であること: 弁護士が事前に十分な調査・整理を行うことが信頼の基礎となる。
  • 手続きの複雑性が低いこと: 資産状況が比較的単純で、短期間(3~6ヶ月程度)での終結が見込まれる事件であること。

少額管財は、費用の軽減だけでなく、手続き期間の短縮にも繋がるため、経営者の精神的・経済的負担を大きく減らすメリットがあります。ただし、裁判所によっては運用が異なるため、依頼する弁護士に管轄裁判所での取り扱いを確認することが不可欠です。

弁護士費用の見積もりを依頼する際のチェックポイント

弁護士に費用の見積もりを依頼する際は、総額だけでなく、その内訳と業務範囲を明確に確認することがトラブル防止の鍵となります。

見積もり依頼時の確認事項
  • 業務範囲の明確化: 着手金に債権者集会への同席や従業員対応などが含まれるかを確認する。
  • 予納金の前提条件: 見積もりが少額管財(予納金20万円)を前提としているかを確認する。
  • 追加費用の有無: 想定外の事態が発生した場合に追加費用がかかるか、その条件を確認する。
  • 実費・消費税の記載: 交通費などの実費概算や消費税が含まれているかを書面で確認する。
  • 支払い方法: 一括払いが困難な場合、分割払いに対応可能か相談する。

代表者個人の自己破産を同時に行う場合の費用

法人破産と同時に申し立てる際の追加費用相場

中小企業では、代表者が会社の債務を連帯保証していることが多く、法人破産と代表者個人の自己破産を同時に申し立てるのが一般的です。この場合、法人破産の費用に加えて、個人破産のための追加費用として20万円~40万円程度が相場となります。

個人の自己破産を単独で依頼すれば50万円程度の費用がかかるため、同時に申し立てることで費用を大幅に節約できます。特に、裁判所に納める個人の予納金は、法人の管財人が兼任することで、官報公告費などの実費(1万~2万円程度)のみで済む運用が多く、経済的メリットは非常に大きいです。

セットで依頼する実務上のメリットと注意点

法人と代表者個人の破産をセットで依頼することには、費用面以外にも多くのメリットがありますが、同時に注意すべき点も存在します。

セットで依頼するメリット
  • 手続きの整合性と効率化: 関連性の高い法人と個人の財産調査を一つの窓口で進められ、手続きが迅速かつ矛盾なく進む。
  • 経営者の負担軽減: 弁護士や破産管財人とのやり取りが一本化され、資料提出などの事務的負担が軽くなる。
セットで依頼する際の注意点
  • まとまった費用の準備: 法人と個人の費用を合わせた金額を、申立時に一括で準備する必要がある。
  • 厳格な財産管理: 弁護士の指示に従い、会社の資産を個人的に流用したり、特定の債権者にだけ返済したりする行為は厳禁。
  • 他の連帯保証人への影響: 代表者以外の親族などが連帯保証人になっている場合、その人への影響も考慮する必要がある。

法人破産の費用が用意できない場合の対処法

会社の資産(売掛金回収・在庫処分など)を費用に充当する

手元に現金がなくても、会社に残っている資産を法的に適切な方法で現金化し、破産費用に充てることができます。

費用捻出のための資産現金化の方法
  • 売掛金の回収: 取引先に残っている未回収の売掛金を回収する。
  • 在庫商品・原材料の売却: 専門の買取業者などに適正価格で売却する。
  • 車両・機械設備等の売却: 事業で使用していた動産を売却する。
  • 事務所・店舗の保証金回収: 賃貸物件を明け渡して、敷金や保証金の返還を受ける。

これらの資産処分を行う際は、適正価格で売却した証拠を残すことが重要です。不当に安く処分すると、後に破産管財人から問題視される可能性があります。また、得た資金を特定の債権者への返済に充てる「偏頗弁済」は固く禁じられています。

弁護士に依頼し受任通知を送付、債権者への支払いを止めて資金を確保する

費用を捻出するための最も効果的かつ一般的な方法は、弁護士に依頼して債権者への支払いを停止し、その間に資金を積み立てる方法です。

支払停止による費用確保の手順
  1. 弁護士への正式依頼: 弁護士と委任契約を締結する。
  2. 受任通知の発送: 弁護士が全債権者に対して、代理人となった旨の受任通知を一斉に送付する。
  3. 支払いの全面停止: 受任通知が届くと、金融機関への返済や買掛金の支払いなど、全ての支払いが法的に停止される。
  4. 費用の積立て: 支払いを停止して浮いた資金を、数ヶ月かけて弁護士費用や裁判所への予納金として積み立てる。

この方法は、資金繰りが限界に達した会社にとって、破産手続きを進めるための生命線となり得ます。ただし、受任通知を送付すると銀行口座が凍結されるため、事前に弁護士とタイミングを十分に協議する必要があります。

費用の分割払いや後払いに対応している法律事務所に相談する

多くの法律事務所は、依頼者が資金難であることを理解しており、弁護士費用の分割払いに柔軟に対応しています。最初に支払える金額を支払い、残りを月々の分割で支払うことで、手続きを開始できる場合があります。

裁判所に納める予納金は原則として一括ですが、弁護士報酬を分割にすることで、手元の資金を予納金の支払いに優先的に充てることが可能になります。費用がないからと諦めず、まずは支払い方法について相談できる法律事務所を探すことが重要です。

代表者個人の資産から費用を支払う場合の留意点

会社の資産が全くない場合、代表者個人の資産から法人破産の費用を支払うこともあります。ただし、代表者自身も自己破産を予定している場合、その個人の資産も破産財団の一部となるため注意が必要です。個人の債権者を害する行為と見なされないよう、どの資産から支払うかは、必ず弁護士に相談の上で決定してください。生活に必要な自由財産(99万円以下の現金など)から支払うのであれば、通常は問題となりません。

法人破産の費用に関するよくある質問

費用の安さだけで専門家を選ぶとどのようなリスクがありますか?

費用の安さだけを基準に専門家を選ぶと、手続きの失敗に繋がりかねない重大なリスクを伴います。

低価格を謳う専門家を選ぶリスク
  • 総費用の増大: 司法書士に依頼した場合など、少額管財が適用されず、高額な予納金により総費用が高くつくことがある。
  • 不十分なサポート: 債権者対応や複雑な調査を自分で行う必要が生じ、手続きが滞る可能性がある。
  • 不適切なアドバイス: 経験不足から不適切な財産処分を指示され、後の手続きで否認権を行使されたり、代表者の免責不許可に繋がったりする恐れがある。

法人破産は会社の最終的な整理であり、経営者の再起をかけた重要な手続きです。費用だけでなく、倒産実務に関する経験や信頼性を重視して専門家を選ぶべきです。

法人の破産手続きで法テラスは利用できますか?

いいえ、原則として法人の破産手続きでは法テラスの民事法律扶助制度(費用立替)は利用できません。この制度は経済的に困窮している「個人」を対象としているため、営利目的の法人格は対象外となります。

ただし、代表者が会社の連帯保証人になっており、代表者個人の自己破産を申し立てる場合には、その個人分の手続きについてのみ法テラスの利用が可能な場合があります。それでも法人破産自体の費用は別途用意する必要があります。

滞納していた税金や社会保険料は破産によって免除されますか?

法人と個人で扱いが異なります。

  • 法人: 破産手続きが完了し法人格が消滅すれば、法人が滞納していた税金や社会保険料の支払い義務も消滅します
  • 代表者個人: 代表者個人の自己破産では、滞納した税金や社会保険料は「非免責債権」とされ、支払い義務は免除されません。破産後も、役所などと分割納付の相談を続ける必要があります。

代表者が納税保証をしている場合などを除き、法人の滞納分が個人に請求されることはありませんが、個人の滞納分はなくならないと理解しておくことが重要です。

専門家に依頼せず、会社が自ら破産を申し立てることは可能ですか?

法律上、会社が自ら破産を申し立てる「本人申立」は可能ですが、実務上は極めて困難です。

本人申立が困難な理由
  • 書類作成の専門性: 申立には高度な会計・法務知識が必要で、不備があれば受理されない。
  • 高額な予納金: 弁護士による事前調査がないため、裁判所は通常管財として扱い、高額な予納金(50万円以上)を求められる。
  • 煩雑な対応: 債権者集会での説明や裁判所とのやり取りを全て自分で行う必要があり、精神的負担が大きい。

手続きの確実性、スピード、経済的メリットの全てにおいて、倒産実務に精通した弁護士に依頼することが賢明な選択です。

まとめ:法人破産の費用は総額と専門家の役割で判断を

法人破産の手続き費用は、専門家への報酬と裁判所への予納金から成り立っており、その総額は専門家の選択によって大きく変動します。弁護士に依頼すれば、代理人として包括的なサポートを受けられるだけでなく、「少額管財制度」の適用により裁判所予納金を大幅に圧縮できる可能性が高まります。一方、司法書士は報酬が安価に見えても、予納金が高額になり総費用ではかえって高くなるケースがあるため注意が必要です。手元に資金がない場合でも、弁護士に相談し債権者への支払いを停止することで費用を捻出できる可能性があります。費用がないと諦める前に、まずは倒産実務に精通した弁護士に相談し、総額費用と支払い方法を含めた具体的な見積もりを取ることが、会社の適切な清算と経営者の再スタートに向けた重要な一歩となるでしょう。

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