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法人破産ができない4つのケースとは?認められない場合の対処法と放置するリスクを解説

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自社の経営が悪化し、法人破産を検討する中で、「何らかの理由で手続きが認められないのではないか」と不安に感じている経営者の方は少なくありません。実際に、破産には法的な要件があり、費用不足や不当な目的など、特定の状況下では申立てが棄却されることがあります。この記事では、法人破産が認められない具体的なケースと、その場合の対処法、そして会社を放置した場合のリスクについて詳しく解説します。

目次

法人破産が法的に認められない4つのケース

ケース1:破産の要件である「支払不能」または「債務超過」に該当しない

法人破産の手続きを開始するには、破産法で定められた破産手続開始原因に該当する必要があります。具体的には、「支払不能」または「債務超過」のいずれかの状態にあることが法的な要件となります。

支払不能とは、会社の支払能力が欠如しているために、弁済期にある債務を一般的かつ継続的に返済できない客観的な状態を指します。支払能力の有無は、単に手元の現預金だけでなく、以下の要素を総合的に考慮して判断されます。

支払能力を判断する3つの要素
  • 財産: 不動産や売掛金など、換価可能な資産の状況
  • 信用力: 新規の融資を受けられるかといった資金調達能力
  • 労務: 事業活動によって収益を生み出す能力や技術力

たとえ高額な資産を保有していても、すぐに現金化できなければ「支払能力を欠く」と判断されることがあります。逆に、一時的な資金不足であっても、将来的に返済できる見込みがあれば「支払不能」とは認められません。

一方、債務超過とは、会社の負債総額が資産総額を上回っている状態です。この計算には、弁済期がまだ到来していない債務も含まれます。裁判所が、支払不能・債務超過のいずれにも該当しないと判断した場合、破産手続開始の申立ては棄却されます。

ケース2:裁判所に納める予納金(破産手続費用)が不足している

法人破産の申立てが認められるには、破産手続の進行に必要な費用である予納金を裁判所に納付することが必須です。予納金が納付されない場合、裁判所は申立てを棄却します。

予納金は、申立人が事前に納める費用で、その大部分は裁判所が選任する破産管財人の報酬や活動経費に充てられます。法人破産は、個人の自己破産と比べて財産関係が複雑なため、原則として破産管財人が選任される「管財事件」として扱われ、予納金も高額になる傾向があります。

たとえば、東京地方裁判所の場合、負債総額が5,000万円未満のケースでも、原則としておおむね70万円の予納金が目安となります。資金繰りが完全に破綻した後では、この費用を捻出することが困難な場合も少なくありません。

ただし、弁護士を代理人として申立てを行うことで、手続きを簡素化・迅速化する少額管財制度を利用できる場合があります。この制度が適用されれば、予納金を最低20万円程度まで軽減できる可能性があります。

ケース3:債権者を害するなどの不当な目的による申し立てと見なされる

破産手続開始の申立てが、破産制度を濫用する不当な目的で行われたと裁判所に判断された場合、その申立ては棄却されます。これは、破産制度が債務の整理と債権者への公平な配当を目的としているためです。

具体的には、以下のようなケースが不当な目的による申立てと見なされる可能性があります。

不当な目的と見なされる申立ての例
  • 債権者からの督促や強制執行を一時的に逃れるための時間稼ぎ
  • 破産手続きの裏で、会社の資産を隠匿・散逸させる目的
  • 当初から返済する意思なく多額の借入れを行い、その債務を免れる目的
  • 換価可能な資産があるにもかかわらず、それを隠して破産を申し立てる行為

これらの行為は、破産手続の公正性を害するだけでなく、発覚した場合には詐欺破産罪などの刑事罰の対象となる可能性もあるため、絶対に行ってはなりません。

ケース4:すでに民事再生など他の法的整理手続きが開始されている

会社の倒産処理手続きには破産以外にも種類があり、すでに他の法的な整理手続きが開始されている場合、それは破産障害事由に該当し、後から申し立てられた破産手続は開始されません。具体的には、以下の手続きが優先されます。

破産手続より優先される主な法的整理手続き
  • 会社更生手続: 主に大企業を対象とした再建型の手続き
  • 民事再生手続: 中小企業も利用可能な再建型の手続き
  • 特別清算手続: 株式会社を対象とした簡易的な清算型の手続き

民事再生や会社更生は、事業の再建を目指す手続きであるため、法人格を消滅させる清算型の破産手続よりも優先されます。また、特別清算は破産よりも簡易な手続きで、債権者の協力が得られる場合に利用される清算手続きです。ただし、特別清算が債権者の同意不足などで遂行困難となった場合には、破産手続に移行することがあります。

法人破産ができない場合の具体的な対処法

会社の資産売却や債権回収を行い費用を捻出する

法人破産に必要な予納金や弁護士費用が不足している場合、まずは会社の資産を現金化し、費用を捻出することを検討します。具体的な方法は以下の通りです。

破産費用を捻出するための主な方法
  • 資産の売却: 土地・建物などの不動産、機械設備、社用車、在庫商品、有価証券などを適正価格で売却する。
  • 保険の解約: 会社名義で加入している生命保険などを解約し、解約返戻金を受け取る。
  • 債権の回収: 取引先に対して未回収となっている売掛金などを回収する。

これらの方法で得た資金は、破産費用に充当できます。ただし、注意点として、特定の債権者(親族や知人など)にだけ優先的に返済する行為は「偏頗弁済(へんぱべんさい)」と見なされ、破産手続上問題となるため、絶対に行ってはいけません。

弁護士に依頼すると、債権者に受任通知が送付され、一時的に返済や督促がストップします。その期間を利用して、計画的に費用を準備することも可能です。

資産売却で費用を捻出する際の注意点|不当な処分と見なされないために

破産費用を捻出するために会社の資産を売却する際は、その行為が法的に「不当な処分」と見なされないよう、細心の注意が必要です。特に以下の点に留意してください。

資産売却における主な注意点
  • 適正価格での売却: 資産を市場価値より著しく低い価格で売却する行為は、財産を不当に減少させるものとして問題視されます。取締役の善管注意義務違反や、場合によっては背任罪に問われるリスクもあります。
  • 売却相手の選定: 役員やその親族、関連会社などへの売却は、利益供与と疑われる可能性があるため、特に慎重な判断が求められます。
  • 客観的な証拠の確保: 第三者機関による価格査定書を取得したり、売却の経緯や理由を株主総会議事録などに明確に記録したりして、取引の公正性を証明できるようにしておくことが重要です。

破産直前の不当な資産処分は、破産管財人がその効力を否定する「否認権」を行使し、売却が取り消される可能性があります。資産売却を進める際は、必ず事前に弁護士に相談してください。

民事再生や特別清算といった他の法的整理を検討する

法人破産が困難な場合や、事業の存続を希望する場合には、他の法的整理手続きを検討する選択肢があります。代表的な手続きとして、再建型の「民事再生」と、清算型の「特別清算」が挙げられます。

手続きの種類 目的 主な対象 特徴
民事再生 事業の再建 全ての法人 裁判所の監督下で再生計画を策定し、事業を継続しながら債務を整理する。現経営陣が経営を続けられるのが原則。
特別清算 会社の清算 株式会社のみ 破産よりも簡易・迅速な清算手続き。債権者の3分の2以上の同意が必要で、協力的な場合に利用しやすい。
主な法的整理手続きの比較(民事再生 vs 特別清算)

民事再生は、支払不能や債務超過の「おそれ」がある段階でも申し立て可能で、早期の事業再生を目指せます。一方、特別清算は、債権者の協力が得られれば、破産に比べて社会的なイメージの低下を抑えつつ、会社を円滑に清算できるメリットがあります。ただし、債権者の同意が得られない場合は、最終的に破産手続に移行します。

私的整理(任意整理)で債権者と交渉し再建を目指す

私的整理(任意整理)は、裁判所を介さずに債権者と直接交渉し、債務の減額や返済スケジュールの変更(リスケジュール)について合意を目指す方法です。事業再生を目指す上で、まず検討すべき選択肢の一つです。

私的整理には、以下のようなメリットとデメリットがあります。

私的整理(任意整理)のメリット・デメリット
  • メリット
  • 非公開での手続き: 手続きが公にならないため、会社の信用低下や風評被害を最小限に抑え、事業価値の毀損を防ぎやすい。
  • 柔軟かつ迅速な進行: 裁判所の厳格な手続きに縛られず、当事者間の合意に基づいて柔軟かつ迅速に進めることができる。
  • 費用の抑制: 法的整理に比べて、弁護士費用や裁判所への予納金などがかからず、費用を低く抑えられる可能性がある。
  • デメリット
  • 法的強制力がない: あくまで任意の交渉であるため、債権者に交渉に応じる義務はない。
  • 全債権者の同意が原則: 一部の債権者でも反対すれば、手続きが成立しないリスクがある。

金融機関などの主要な債権者との信頼関係が良好で、協力が得られる見込みが高い場合に、特に有効な手段となります。

法人破産できないまま会社を放置した場合のリスク

債権者からの督促や資産の差し押さえが続く

法人破産の申立てをせず会社を放置すると、債権者からの督促が止まらず、最終的には法的な回収手段が取られます。弁護士に依頼して受任通知を送付しない限り、貸金業者からの取り立ては続きます。

特に深刻なのが、税金や社会保険料といった公租公課の滞納です。これらの債権を持つ行政機関には、裁判所の手続きを経ずに直接財産を差し押さえる「自力執行権」が認められています。そのため、税務署や年金事務所は、会社の預金口座や売掛金を突然差し押さえることが可能です。

資産が差し押さえられると、事業に必要な資金が枯渇するだけでなく、取引先に滞納の事実が知られて信用を失い、経営状況がさらに悪化するという悪循環に陥ります。

遅延損害金により債務総額が増加し続ける

債務の返済を滞納したまま放置すると、支払期日の翌日から元金に対して遅延損害金が発生し続けます。遅延損害金の利率は通常の貸付利率よりも高く設定されていることが多く、滞納期間が長引くほど債務総額は雪だるま式に増加していきます。

また、滞納が一定期間続くと、分割払いの権利である「期限の利益」を喪失し、債権者から残りの債務全額について一括返済を求められます。この一括請求額にも遅延損害金が加算されるため、返済はますます困難になります。

代表者個人への責任追及や請求を受ける可能性がある

会社を放置した場合、会社の債務について代表者個人が責任を追及されるリスクが極めて高くなります。特に中小企業では、以下の2つの点で代表者が責任を負うケースがほとんどです。

代表者個人が負う可能性のある主な責任
  • 連帯保証人としての責任: 金融機関から融資を受ける際に、代表者個人が会社の債務の連帯保証人になっている場合、会社が返済不能になると、債権者は代表者個人に直接、債務全額の返済を請求します。この保証債務は、会社が消滅してもなくなりません。
  • 取締役としての損害賠償責任: 会社の経営判断に「悪意または重大な過失」があった場合、取締役は第三者(債権者など)に対して損害賠償責任を負うことがあります(会社法第429条第1項)。例えば、倒産が確実な状況で、返済の見込みがないことを知りながら新たな取引を行った場合などが該当します。

債務を残したまま「休眠会社」にすることの危険性

法人破産などの法的手続きを経ずに、事業活動を停止しただけの「休眠会社」として会社を放置することには、以下のような危険が伴います。

休眠会社として放置する主なリスク
  • 債務の存続: 会社が休眠状態でも法人格は存続するため、債務の支払い義務はなくならず、債権者からの督促や訴訟のリスクは続きます。
  • 登記懈怠による過料: 役員の任期が満了しても変更登記を怠ると、代表者個人が裁判所から100万円以下の過料の制裁を受ける可能性があります。
  • みなし解散: 最後の登記から12年が経過した株式会社は、法律の規定により、実態のない会社とみなされ、法務局の職権で強制的に解散させられる「みなし解散」となることがあります。

法人破産と代表者個人の自己破産手続きの関係性

法人と代表者個人の破産は原則として別の手続き

法律上、会社(法人)と代表者個人は別人格として扱われるため、法人破産と代表者個人の自己破産は、それぞれ独立した別の手続きとなります。両者には、目的や制度において明確な違いがあります。

項目 法人破産 個人の自己破産
対象 会社などの法人 自然人(個人)
目的 法人の財産を清算し、法人格を消滅させること 個人の債務の支払義務を免除し、経済的再生の機会を与えること
免責制度の有無 なし(法人格の消滅により債務も消滅) あり(裁判所の免責許可決定により債務の支払いが免除される)
手続き後の人格 法人格は消滅する 人格は存続し、生活が続く
法人破産と個人自己破産の主な違い

したがって、代表者個人が会社の債務の連帯保証人になっていないなど、個人的な負債がない場合には、会社が破産しても代表者個人が自己破産をする必要は原則としてありません。

代表者が連帯保証人である場合の同時申し立ての必要性

中小企業の場合、金融機関からの融資において、代表者個人が会社の債務を連帯保証していることがほとんどです。この場合、会社が破産すると、金融機関などの債権者は連帯保証人である代表者個人に返済を請求します。

代表者個人がこの巨額な保証債務を支払うことは通常困難であるため、結果として、代表者も自己破産を選択せざるを得ません。このような状況から、実務上は、法人破産と代表者個人の自己破産を同時に申し立てることが一般的です。

同時申立てには、以下のようなメリットがあります。

法人・代表者の破産を同時に申し立てるメリット
  • 手続きの効率化: 裁判所が同一の破産管財人を選任することが多く、手続きが一体的に進むため、時間や労力が削減できる。
  • 費用の軽減: 弁護士費用や、裁判所に納める予納金が、別々に申し立てる場合よりも低額に抑えられることが多い。
  • 精神的負担の軽減: 債務問題の解決に見通しがつき、早期に経済的再スタートを切りやすくなる。

法人破産に関するよくある質問

Q. 破産費用が全くない状態でも弁護士に相談可能ですか?

はい、可能です。手元に破産費用が全くない状態でも、まずは弁護士に相談することをお勧めします。多くの法律事務所では、借金問題に関する初回相談を無料で行っています。

弁護士に相談・依頼することで、費用を捻出するための具体的な道筋が見えてきます。

費用がない場合の対応ステップ
  1. 弁護士に正式に依頼する: 弁護士が債権者へ受任通知を送付し、会社への直接の督促を一時的にストップさせ、債務整理の準備期間を確保しやすくなります。
  2. 費用を積み立てる: これまで返済に充てていた資金を、弁護士費用や予納金として積み立てることが可能になります。
  3. 資産を現金化する: 弁護士の助言のもと、売掛金の回収や会社の資産売却を進め、費用を捻出します。
  4. 分割払いを相談する: 多くの法律事務所では、着手金の分割払いや後払いに柔軟に対応しています。

資金がないからと諦めず、まずは専門家である弁護士に現状を相談することが解決への第一歩です。

Q. 法人破産と代表者個人の自己破産は、同時に申し立てるべきですか?

代表者個人が会社の債務の連帯保証人になっている場合は、同時に申し立てることを強くお勧めします。中小企業の経営者のほとんどが連帯保証人になっているため、実務上は同時申立てが一般的です。

同時申立てを推奨する理由
  • 手続きの負担軽減: 申立書類の準備や裁判所とのやり取りが一元化され、時間的・精神的な負担が大幅に軽減されます。
  • 経済的メリット: 弁護士費用や裁判所への予納金が、個別に申し立てるよりも低く抑えられることがほとんどです。
  • 円滑な進行: 手続きが長期化したり、資産の移動などを疑われて調査が複雑化したりするリスクを避けられます。

個別の事情にもよるため、まずは弁護士に相談し、最適な申立て方法についてアドバイスを受けるのがよいでしょう。

Q. 税金や社会保険料を滞納していても、法人破産は認められますか?

はい、税金や社会保険料などの公租公課を滞納していても、法人破産の手続きは認められます。

法人破産の手続きが完了し、法人格が消滅すると、納税義務者である法人が存在しなくなるため、滞納していた税金や社会保険料の支払い義務も原則として消滅します。破産管財人によって会社の財産が換価された場合、滞納税金は他の一般債権よりも優先的に配当されますが、配当しきれなかった分については支払う必要がなくなります。

ただし、これは法人の場合に限られます。個人の自己破産の場合、税金や社会保険料は「非免責債権」とされており、破産手続きで免責許可決定を受けても支払い義務は免除されず、生涯残ります。この違いには注意が必要です。

まとめ:法人破産が困難でも放置は厳禁。専門家への早期相談が解決の鍵

この記事では、法人破産が法的に認められない4つのケースと、その場合の具体的な対処法について解説しました。破産の要件を満たさない場合や予納金が不足している場合でも、民事再生や私的整理など、他の選択肢が残されています。最も重要なのは、いかなる理由があっても会社を放置しないことです。放置は、債務の増加や資産の差し押さえ、代表者個人への責任追及など、事態をさらに悪化させるだけです。手元に資金がない場合でも、弁護士に相談することで費用を捻出する方法が見つかる可能性があります。自社だけで抱え込まず、まずは倒産処理に詳しい専門家へ速やかに相談し、状況に応じた最適な解決策を見つけましょう。

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