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著作権侵害訴訟の手引き|訴える側・訴えられた側の実務対応

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著作権侵害をめぐるトラブルは、時に訴訟へと発展する重大な経営リスクです。自社が加害者または被害者となった際に、訴訟の全体像を把握していなければ、初動対応を誤り事業に深刻な影響を及ぼす可能性があります。適切な判断を下すためには、侵害の成立要件から手続きの流れ、費用、そして訴える側・訴えられる側双方の視点を知っておくことが不可欠です。この記事では、著作権訴訟に関する実務上の知識を網羅的に解説します。

目次

著作権侵害訴訟の前提知識

訴訟前に確認すべき侵害の成立要件

著作権侵害を理由として訴訟を提起するためには、以下の要件をすべて満たしているかを確認することが実務上の大前提となります。

著作権侵害の成立要件
  • 著作物性: 対象が思想または感情を創作的に表現した「著作物」であること。単なるデータやありふれた表現は保護されません。
  • 著作権の存続: 対象となる著作物の著作権が保護期間内(原則、著作者の死後70年)であり、有効に存続していること。
  • 権利侵害行為: 複製権、公衆送信権、翻案権など、著作権法で定められた権利を侵害する態様で著作物が無断利用されていること。
  • 依拠性: 他人の著作物に接し、それに基づいて創作したという事実関係があること。偶然の一致では侵害は成立しません。
  • 類似性: 既存の著作物と利用された側の著作物との間で、表現上の本質的な特徴が共通していること。
  • 無許諾であること: 著作権者から利用の許諾を得ていない、または許諾の範囲を超えて利用していること。
  • 権利制限規定の不適用: 私的使用のための複製や引用など、著作権法で定められた権利が制限される例外規定に該当しないこと。

これらの要件を一つでも欠くと、著作権侵害の主張が認められない可能性が高いため、事前の慎重な法務調査が不可欠です。

「依拠性」と「類似性」の判断基準

著作権侵害訴訟では、依拠性(既存の著作物に基づいて創作したこと)と類似性(両作品が似ていること)の有無が主要な争点となります。これらは客観的な証拠に基づき立証することが実務上の鍵となります。

依拠性は、既存の著作物へのアクセス可能性(作品に触れる機会があったか)や、偶然とは考えにくい表現の一致など、客観的な状況から推認されます。制作者が作品を知っていた可能性が高い状況や、制作過程の記録などが証拠となり得ます。

類似性は、単なるアイデアやコンセプトの共通性ではなく、表現上の本質的な特徴を直接感じ取れるかどうかで判断されます。同じ題材を扱っていても、創作的な表現部分が模倣されていなければ、類似性は否定される傾向にあります。

実務上、この二つの要素は密接に関連して判断されます。例えば、二つの作品が極めて酷似している場合、そこから依拠性が強く推認されることがあります。逆に、依拠の事実が明確でも、独自の創作性が加わり表現の本質的特徴が異なっていれば、類似性が否定され侵害にはあたりません。生成AIによるコンテンツ制作においても、これらの判断基準は同様に適用されるため、制作過程の記録を保存しておくことが重要です。

故意でなくても責任を問われるか

著作権侵害における法的責任は、行為者の故意(わざと)または過失(うっかり)の有無によって、問われる内容が大きく異なります。

請求の種類 故意・過失の要否 概要
損害賠償請求 必要 侵害行為者に故意または過失がなければ、損害賠償請求は認められません。ただし、権利関係の調査を怠った場合は通常「過失あり」と判断されます。
差止請求 不要 侵害の事実が客観的に存在する限り、故意・過失がなくても侵害行為の停止や侵害物の廃棄を求めることができます。
刑事罰 故意のみ 著作権侵害を認識しながら(故意に)行った場合にのみ処罰の対象となり、過失による侵害では刑事責任を問われません。
請求内容と故意・過失の要否

過去の裁判例では、広告制作を事業としない企業が制作会社から提供された写真をそのまま利用したケースで、許諾の有無を確認する注意義務はないとして過失が否定され、損害賠償責任を免れた特殊な事例も存在します。

著作権侵害に対する民事上の請求

侵害行為の差止請求

著作権を侵害された権利者がまず検討すべき強力な手段が、侵害行為の差止請求です。これは、侵害行為の停止や予防を求める法的手続であり、相手方の故意・過失を問わず請求できる点が大きな特徴です。

差止請求を行う際には、将来の再発リスクを断つため、行為の停止だけでなく以下の付随的措置を併せて求めることが実務上の鉄則となります。

差止請求の付随的措置
  • 侵害行為を組成した物(例: 無断複製された商品の在庫)の廃棄
  • 侵害行為によって作成された物(例: 海賊版DVD)の廃棄
  • 侵害行為にのみ使用された機械や器具(例: 不正コピー用の金型)の廃棄

判決で差止請求が認められても相手が従わない場合は、裁判所を通じて履行を強制する間接強制(履行するまで金銭の支払いを命じる制度)を申し立てることができます。また、緊急性が高い場合は、通常の訴訟を待たずに侵害を暫定的に停止させる仮処分命令の申立てが有効な戦略となります。

損害賠償請求の3つの算定方法

著作権侵害による損害額の立証は困難なため、著作権法は被害者の負担を軽減する3つの算定方法(推定規定)を設けています。事案に応じて適切な方法を選択することが重要です。

算定方法 概要 特徴・注意点
① 譲渡数量 × 利益額 侵害者が販売した侵害品の数量に、権利者の正規商品の単位あたり利益額を乗じて算出します。 権利者が自ら商品を販売している場合に適しています。ただし、権利者の販売能力を超える分などは控除されることがあります。
② 侵害者の利益額 侵害者が侵害行為によって得た利益の額を、そのまま権利者の損害額と推定します。 権利者自身が商品を販売していない場合でも利用でき、侵害者の不当な利益を剥奪するのに有効です。
③ ライセンス料相当額 侵害行為がなかった場合に支払われるべきであった、著作物の利用料(ライセンス料)を損害額とみなします。 権利者が設定しているライセンス料率を基準にでき、客観的な算定が容易なため、実務で最も広く活用されています。
損害賠償額の3つの算定方法

これらの方法で損害額の証明が極めて困難な場合、裁判所は口頭弁論の全趣旨および証拠調べの結果に基づき、相当な損害額を認定することもできます。

不当利得返還請求との関係

不当利得返還請求は、法律上の正当な理由なく他人の著作物を利用して得た利益の返還を求める制度で、損害賠償請求と並行して用いられる重要な手段です。一般的には、本来支払うべきであった使用料相当額の返還を求めます。

この請求の最大のメリットは、相手方の故意・過失を立証する必要がない点です。侵害の認識が全くなく過失もなかったと認められる場合でも、客観的に利益を得ていれば返還を求めることが可能です。また、損害賠償請求権の時効(損害および加害者を知った時から3年)が完成してしまった場合でも、不当利得返還請求権の時効(権利を行使できる時から10年など)が完成していなければ、金銭的な回復を図ることができます。

名誉回復等措置請求とは

名誉回復等措置請求は、財産的な損害だけでなく、著作者の精神的な利益や社会的評価を守るための手段です。故意または過失によって著作者人格権(例: 氏名表示権、同一性保持権)を侵害された著作者は、損害賠償に代えて、または損害賠償とともに名誉を回復するための適当な措置を請求できます。

実務上、最も多く求められる措置は、新聞やウェブサイト上での謝罪広告や訂正記事の掲載です。これにより、侵害者が非を認めて正しい事実関係を公表し、著作者の社会的な名誉を回復させることを目的とします。裁判所は、侵害行為の態様や社会的影響などを考慮して、措置の必要性や具体的内容を判断します。

【被害者向け】訴訟を提起する流れ

①証拠の収集と保全

著作権侵害が発覚したら、まず侵害の事実を客観的に証明するための証拠収集と保全を徹底することが最も重要です。相手方が証拠を隠滅すると、権利の主張が極めて困難になります。この初動対応が、その後の法的措置の成否を左右します。

収集・保全すべき証拠の例
  • ウェブ上の侵害: 侵害ページのスクリーンショット(URL、日時を含む)、ページ全体のPDF保存、ソースコードの保存など。
  • 物理的な商品: 侵害品を実際に購入し、現物とともに購入日や販売者がわかる領収書・納品書を保管する。
  • 権利の証明: 自身の著作物の創作過程を示す資料(ラフスケッチ、データ履歴)、公表記録などを整理しておく。

②警告書(内容証明郵便)の送付

証拠の保全が完了したら、次に侵害者へ警告書を送付し、任意の解決を目指します。これは、訴訟を提起する前の一般的なプロセスです。送付の際は、送付の事実と内容を公的に証明できる内容証明郵便(配達証明付き)を利用するのが必須です。

警告書には、以下の内容を明確に記載します。

警告書の主な記載事項
  • 権利者が保有する著作権の特定
  • 相手方による具体的な侵害行為の内容
  • 侵害行為の即時停止と侵害物の廃棄要求
  • 損害賠償請求の旨と金額
  • 上記要求に対する回答期限

弁護士名義で送付することで、相手方に本気度を伝え、交渉のテーブルに着かせやすくする効果が期待できます。また、内容証明郵便による請求は、消滅時効の完成を6ヶ月間猶予させる法的効力も持ちます。

③訴訟提起から判決まで

警告書による交渉が決裂した場合、最終手段として裁判所に民事訴訟を提起します。訴訟は、一般的に以下の流れで進みます。

訴訟提起から判決までの流れ
  1. 訴状の提出: 請求の趣旨や事実関係を記載した訴状と証拠を、管轄の裁判所に提出します。
  2. 口頭弁論期日: 約1ヶ月に1回のペースで期日が開かれ、当事者双方が準備書面と証拠を提出し、争点を整理します。
  3. 人証調べ: 書面での主張が出尽くした段階で、必要に応じて当事者本人や証人への尋問が行われます。
  4. 和解または判決: 審理の途中で裁判所から和解が勧告されることも多く、合意すれば和解で終結します。和解が成立しない場合、裁判官が判決を下します。
  5. 控訴: 第一審の判決に不服がある場合、判決書の送達から2週間以内に上級の裁判所に控訴することができます。

侵害発覚時の社内初動と証拠保全の注意点

自社の著作権侵害を発見した際、最も警戒すべきは、相手方による証拠隠滅です。そのため、社内の初動対応には細心の注意が求められます。

社内初動対応の注意点
  • 情報共有の限定: 事実関係の調査は、経営層や法務担当者など必要最小限の範囲で内密に進める。
  • 慎重な調査: 相手方のウェブサイトを調査する際は、不自然なアクセス履歴を残さないよう配慮する。
  • 外部への発信禁止: SNSなどで不用意に侵害の事実を公表しない。相手に警戒されるだけでなく、名誉毀損で反訴されるリスクもあります。

【加害者向け】訴えられた際の対応

警告書が届いた場合の初期対応

著作権侵害を指摘する警告書が届いた場合、事業停止のリスクに直結するため、冷静かつ迅速な対応が不可欠です。警告書に法的な強制力はありませんが、無視すると訴訟に発展する可能性が極めて高くなるため、決して放置してはなりません。

警告書受領時の初期対応フロー
  1. 回答期限の確認: まず回答期限を確認します。期限が短すぎる場合は、書面受領の旨と調査に時間を要する旨を伝え、回答の猶予を求めます。
  2. 事実関係の調査: 警告書で指摘された製品や表現内容を特定し、開発経緯などの事実関係を正確に調査します。
  3. 関連証拠の保全: 調査に関連する設計図、仕様書、データなどを破棄せずに保全します。
  4. 情報共有範囲の限定: 社内の動揺や情報漏洩を防ぐため、関係者を法務部門や責任者など最小限に絞ります。
  5. 弁護士への相談: 速やかに知的財産に精通した弁護士に相談し、法的なリスク評価と対応方針を協議します。

訴状に対する答弁書の準備

交渉がまとまらず訴訟を提起されると、裁判所から訴状が届きます。これに対し、指定された期限までに必ず答弁書を提出しなければなりません。答弁書を提出せず、期日にも欠席すると、原告の主張をすべて認めたものとみなされ、敗訴判決(欠席判決)が下されてしまいます。

答弁書の作成では、以下の点を明確に記載する必要があります。

答弁書の主要な記載内容
  • 請求の趣旨に対する答弁: 「原告の請求を棄却する」といった、こちらの求める判決内容を記載します。
  • 請求の原因に対する認否: 原告が主張する事実関係の一つひとつに対し、「認める」「否認する」「知らない」のいずれかの態度を明確にします。

一度「認める」とした事実は、後から覆すことが極めて困難な「裁判上の自白」となるため、安易に認めず、慎重に検討することが防御の基本です。詳細な反論が間に合わない場合は、まず「請求については争う」旨の簡潔な答弁書を提出し、具体的な主張は次回期日までに準備書面で提出するのが一般的です。

主張できる主な反論(引用など)

著作権侵害訴訟で被告側となった場合、様々な防御方法が考えられます。原告の主張に対し、的確に反論することが重要です。

被告側が主張できる主な反論
  • 著作物性の否定: 原告のコンテンツが、創作性のない単なるデータやありふれた表現であり、そもそも著作物にあたらないと主張する。
  • 非侵害の主張: 相手の著作物を知らずに独自に創作した(依拠性の否定)、または表現上の本質的な特徴が共通していない(類似性の否定)と主張する。
  • 権利制限規定への該当: 利用行為が、著作権法で認められている「引用」や「私的使用のための複製」などの適法な範囲内であると主張する。
  • 利用許諾の存在: 事前に権利者から利用許諾を得ていた、または黙示の許諾があったと主張・立証する。
  • 消滅時効の援用: 原告の損害賠償請求権が時効によって消滅していると主張する。

これらの法的な主張は高度な専門知識を要するため、弁護士と綿密に戦略を練る必要があります。

従業員による侵害行為と会社の使用者責任

従業員が業務の過程で他人の著作権を侵害した場合、行為者本人だけでなく、雇用主である会社も民法715条の使用者責任に基づき、損害賠償責任を負うことになります。従業員が会社のウェブサイト制作で無断で画像を使用した場合などが典型例です。

会社側は、従業員の選任・監督について相当の注意を払っていたことを立証すれば免責されると定められていますが、実務上この免責が認められることは極めて稀で、事実上、会社の責任は免れないと考えるべきです。会社が被害者に賠償金を支払った後、当該従業員に対してその返還を求めること(求償)は可能ですが、全額が認められるとは限らず、会社の管理体制なども考慮されて金額が制限されるのが一般的です。日頃から著作権に関するコンプライアンス教育を徹底することが、企業にとって最大の防御策となります。

著作権訴訟の費用と期間の目安

裁判所に納める費用(印紙代等)

訴訟を提起する際は、手数料として収入印紙を訴状に貼り、裁判所に納付する必要があります。印紙代の額は、請求する経済的利益の額(訴額)に応じて決まります。

損害賠償請求では、請求金額がそのまま訴額となります。一方、侵害行為の停止を求める差止請求は、訴額の算定が困難な非財産上の請求とみなされ、訴額は一律で160万円として扱われます。この場合の印紙代は1万3,000円です。金銭請求と差止請求を併合して提起する場合は、原則としてそれぞれの訴額を合算して印紙代を計算します。この他に、書類送達のための郵便切手代(数千円程度)の予納も必要です。

弁護士費用の内訳と相場

弁護士に訴訟を依頼する場合の費用は、主に以下の4つで構成されます。

弁護士費用の内訳
  • 相談料: 正式な依頼前に法律相談をする際の費用。30分5,000円程度が相場ですが、初回無料の事務所もあります。
  • 着手金: 事件を依頼する段階で支払う初期費用。結果にかかわらず返金されません。請求額に応じて算定され、300万円以下の部分で8%程度が一般的です。
  • 報酬金: 事件が成功裏に終了した際に支払う成功報酬。得られた経済的利益の16%程度が相場とされています。
  • 実費: 裁判所に納める印紙代や郵便切手代、交通費など、事件処理のために実際にかかった費用。

企業法務では、月額の顧問契約や、弁護士の稼働時間に応じて費用を支払うタイムチャージ方式が選択されることもあります。

訴訟にかかる期間の目安

民事訴訟を提起してから第一審の判決が下されるまでの期間は、事件の複雑さによりますが、統計上の平均では8ヶ月から10ヶ月程度とされています。著作権侵害訴訟は、専門的な判断が必要となることが多く、一般的な事件よりも長期化する傾向にあります。

訴状提出から第1回期日までに約1ヶ月半、その後は約1ヶ月に1回のペースで期日が開かれ、主張・立証が行われます。争点が複雑な場合は、争点整理だけで半年以上を要することもあります。ただし、審理の途中で裁判官から和解が勧告され、当事者が合意に至れば、判決を待たずに早期に解決するケースも少なくありません。

著作権侵害の刑事罰と時効

刑事罰の内容(懲役・罰金)

著作権侵害は、民事上の責任だけでなく、刑事罰の対象ともなる犯罪行為であり、その罰則は非常に重く定められています。故意に著作権を侵害した場合、行為者個人だけでなく、業務として侵害を行った法人も処罰の対象となります。

対象 罰則内容
個人 10年以下の拘禁刑 もしくは 1,000万円以下の罰金 (またはその両方)
法人(両罰規定) 3億円以下の罰金
著作権侵害に対する刑事罰

違法にアップロードされた音楽や映像だと知りながらダウンロードする行為も処罰対象となるなど、規制範囲は広範です。ただし、刑事罰の対象となるのは故意による侵害のみであり、過失による侵害で刑事責任を問われることはありません。

民事・刑事それぞれの時効

著作権侵害に関する法的責任を追及するには、定められた期間内に権利を行使する必要があり、民事と刑事で異なる時効制度が適用されます。

請求の種類 時効期間 起算点
損害賠償請求権 3年 損害および加害者を知った時
(上記に加え) 20年 侵害行為の時(除斥期間)
不当利得返還請求権 5年 権利を行使できることを知った時
(上記に加え) 10年 権利を行使できる時
差止請求権 原則なし 侵害が継続している限り、時効にかかりません。
公訴時効(刑事) 7年 犯罪行為が終わった時
著作権侵害に関する主な時効期間

また、著作権侵害罪は原則として親告罪であり、被害者が犯人を知った日から6ヶ月以内に刑事告訴を行う必要があります。この告訴期間は非常に短いため、注意が必要です。

参考となる著作権訴訟の判例

写真の無断転載に関する事例

インターネット上の画像の無断利用をめぐる裁判例は、判断が分かれるケースがあります。

ある事件では、旅行業者がプロ写真家の風景写真を自社ブログに無断転載した行為が著作権侵害と認定され、約15万円の損害賠償が命じられました。インターネットで公開されている画像でも、安易に商用利用すれば法的責任を問われることを示す事例です。

一方で、別の廃墟写真に関する事件では、原告と被告が同じ廃墟を撮影した写真について、両者の類似性が否定され、著作権侵害は成立しないと判断されました。この判決は、同じ被写体やテーマを扱っているだけでは侵害とはならず、表現上の本質的な特徴が模倣されているかが厳格に問われることを示しています。

プログラム著作物に関する事例

コンピュータープログラムも著作物として保護されますが、その保護対象はアイデアと表現の二分論に基づき限定されます。保護されるのは、ソースコードの具体的な記述という「表現」の部分です。一方、プログラムの機能を実現するためのアルゴリズムやプログラミング言語、規約といった「アイデア」の部分は保護の対象外です。

プログラムの著作権侵害訴訟では、両者のソースコードを比較し、論理構造や記述順序などが酷似しているかが争点となります。機能が同じでも、異なるコードで独自に開発されていれば侵害にはあたりません。開発過程の設計書やバージョン管理システムの履歴が、独自開発を証明する重要な証拠となります。

キャラクターデザインに関する事例

キャラクターデザインの無断利用は、民事だけでなく刑事事件に発展するリスクがあります。人気ゲームのキャラクターイラストを無断でステッカーシールにして販売した男性が、著作権法違反で警察に摘発された事件がその一例です。

キャラクターというアイデア自体に著作権は認められませんが、イラストや漫画のコマとして具体的に描かれた姿形は「美術の著作物」として保護されます。これを無断で商品化し、営利目的で販売する行為は、複製権や譲渡権を侵害する明確な違法行為であり、重い刑事罰の対象となり得ます。企業が商品を開発する際は、フリー素材などと誤認しないよう、厳格な権利確認体制が不可欠です。

よくある質問

Q. 訴訟前の和解は可能ですか?

はい、可能です。著作権侵害トラブルの多くは、訴訟を提起する前の当事者間の交渉によって解決されています。弁護士を通じて警告書を送付し、その後の協議で損害賠償金の支払いや侵害行為の停止について合意し、和解に至るケースは実務上多数あります。その際は、合意内容を明確にした示談書(和解契約書)を書面で作成し、将来の紛争を予防することが不可欠です。

Q. 侵害の証拠として有効なものは?

インターネット上の侵害行為については、侵害が確認できるウェブページのスクリーンショット(URL、アクセス日時がわかるもの)や、ページ全体のPDF保存などが有効な証拠となります。また、自身が正当な権利者であることを証明するためには、作品の創作過程を示す資料(ラフスケッチ、元データ、設定履歴など)や、過去の公表記録が極めて強力な証拠となります。

Q. 弁護士に依頼するタイミングは?

著作権侵害の事実を発見した場合、または第三者から侵害を指摘する警告書を受け取った場合は、その直後のできるだけ早いタイミングで弁護士に相談することが最善です。初動対応を誤ると、相手に証拠を隠滅されたり、交渉で不利な状況に陥ったりするリスクが高まります。専門家が早期に介入することで、法的なリスクを正確に評価し、証拠保全や交渉を有利に進めることが可能になります。

Q. 相手方の弁護士費用も負担しますか?

日本の民事訴訟では、弁護士費用は原則として各自が負担することになっており、敗訴した側が相手方の弁護士費用全額を支払う義務はありません。しかし、著作権侵害のような不法行為に基づく損害賠償請求訴訟では、判例上、裁判所が認めた損害賠償額の1割程度を、弁護士費用相当額の損害として相手方に負担させることが定着しています。したがって、敗訴して賠償を命じられた場合、その賠償金の一部として、実質的に相手の弁護士費用の一部を負担することになります。

まとめ:著作権訴訟のリスクを理解し、適切な初動対応を行うために

本記事では、著作権訴訟の成立要件から、民事・刑事上の請求内容、双方の立場での手続きの流れ、費用や期間までを解説しました。著作権侵害は、故意・過失がなくても差止請求の対象となりうる一方、損害賠償請求では故意・過失の立証が争点となります。訴訟に発展した場合、訴える側は証拠の保全、訴えられる側は答弁書の提出といった初動対応がその後の展開を大きく左右します。万が一、著作権侵害の当事者となった場合は、事実関係を正確に把握し、速やかに知的財産に精通した弁護士へ相談することが重要です。この記事で解説した内容はあくまで一般的な知識であり、個別の事案については専門家のアドバイスに基づき慎重に対応を進めてください。

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