合同会社の清算手続き|解散から結了までの流れ・費用・必要書類を解説
合同会社の事業活動を停止し、法人格を消滅させる清算手続きは、法的な手順が多く複雑に感じられるかもしれません。具体的にどのような手順で、どれくらいの期間や費用がかかるのか、正確な情報を把握することが重要です。この記事では、合同会社の解散から清算結了までの一連の流れを、必要な書類や費用、注意点とあわせてステップバイステップで網羅的に解説します。
合同会社の「解散」と「清算」の違いと手続きの全体像
法人格の消滅に向けた2つの段階「解散」と「清算」
合同会社が活動を終了し、法人格を消滅させるまでには、「解散」と「清算」という2つの法的な段階を経る必要があります。
「解散」とは、会社の本来の目的である営業活動を停止し、財産整理の期間に入ることを指します。解散によって会社が即時に消滅するわけではなく、以後は清算手続きを行う目的の範囲内でのみ存続する「清算会社」として扱われます。
一方、「清算」は、解散した会社の財産関係を整理し、法人格を完全に消滅させるための具体的な手続きです。清算手続きが完了し、法務局で「清算結了」の登記を行うことで、会社の法人格は法的に消滅します。
- 現務の結了: 進行中の契約や取引を完了させる
- 債権の取立て: 売掛金などを回収する
- 債務の弁済: 借入金や買掛金などを支払う
- 残余財産の分配: 全ての債務を支払った後に残った財産を社員へ分配する
解散から清算結了までの手続きのロードマップ
合同会社の廃業手続きは、解散の決定から始まり、登記、各種届出、債権者保護、財産整理を経て清算結了登記で完了します。以下に大まかな流れを示します。
- 総社員の同意による解散の決定: 出資者である全社員の同意を得て解散を決定し、同時に清算人を選任します。
- 解散・清算人選任登記: 解散日から2週間以内に法務局へ登記申請を行います。
- 関係各所への届出: 登記完了後、税務署や自治体などに解散の届出を行います。
- 解散確定申告: 解散日から2ヶ月以内に税務申告を行います。
- 債権者保護手続き: 官報公告と個別の催告により、債権者に2ヶ月以上の申出期間を設けます。
- 債権取立・債務弁済: 会社の資産を現金化し、債務の支払いを完了させます。
- 残余財産の分配: 全ての支払い後に残った財産を社員に分配します。
- 決算報告書の作成・承認: 清算人は決算報告書を作成し、総社員の承認を得ます。
- 清算結了登記: 決算報告の承認日から2週間以内に法務局へ登記申請を行います。
- 清算確定申告と廃止届出: 残余財産確定日から1ヶ月以内に最終の税務申告を行い、各所へ廃止の届出をします。
なお、株式会社と同様に、合同会社も解散後は通常の事業年度とは異なる清算事業年度の考え方が適用されるため、税務申告のタイミングには注意が必要です。
手続き開始から完了までにかかる期間の目安
合同会社の解散から清算結了までには、最低でも2ヶ月半から3ヶ月程度の期間が必要です。これは、法律で債権者保護のための官報公告期間を2ヶ月以上設けなければならないと定められているためです。
書類準備や登記手続き、財産整理の時間を含めると、スムーズに進んでも3ヶ月程度は見込むのが一般的です。会社の規模が大きく不動産等の資産処分に時間がかかる場合や、債権債務関係が複雑な場合は、半年から1年以上を要することもあります。従業員がいる場合は社会保険手続きなども並行して進めるため、余裕を持ったスケジュールを組むことが重要です。
【ステップ別】合同会社の清算手続きの流れ
ステップ1:解散事由の発生と総社員の同意
合同会社の解散は、定款で定めた存続期間の満了や合併、破産など会社法で定められた事由によって発生します。実務上、最も多いのは出資者である社員が自主的に廃業を決める「総社員の同意」による解散です。
株式会社の株主総会決議とは異なり、合同会社の自主解散は原則として出資者全員の同意が必要です。一人でも反対する社員がいると、この方法では解散できません。解散の合意が成立したら、その証拠として解散日を明記した「総社員の同意書」を作成し、全社員が記名押印します。
ステップ2:清算人の選任と就任手続き
解散した会社では、それまでの代表社員に代わり、清算事務を執行する「清算人」を置かなければなりません。一般的には、従来の代表社員がそのまま清算人に就任しますが、定款の定めや社員の過半数の同意により、弁護士などの第三者を選任することも可能です。
清算人が決まったら、選任を証明する「清算人選任決定書」と、本人が就任を承諾したことを示す「就任承諾書」を作成します。清算人は会社の財産調査や債権債務整理を主導する重要な役割を担うため、就任にあたり清算人の印鑑証明書を準備し、必要に応じて法務局へ法人実印の届出も行います。
ステップ3:法務局への解散・清算人選任の登記申請
解散の効力が発生した日から2週間以内に、本店所在地を管轄する法務局へ「解散の登記」と「清算人選任の登記」を同時に申請します。この登記により、会社が営業活動を停止したことと、清算人の氏名などが公に示されます。
登記申請には、登録免許税として解散登記に30,000円、清算人選任登記に9,000円の合計39,000円が必要です。登記が受理されると、以前の代表社員などの登記は抹消され、以降は清算人が会社の法的な代表者となります。
ステップ4:官報公告と債権者への個別催告
登記と並行して、債権者を保護するための手続きを開始します。まず、国の機関紙である官報に解散の事実を掲載(解散公告)し、債権者に対して一定期間内に債権を申し出るよう呼びかけます。この申出期間は法律で2ヶ月以上と定められており、期間中は原則として債務の弁済が制限されます。
さらに、会社が把握している債権者(知れたる債権者)には、個別に書面で通知(個別催告)する義務があります。官報だけでは情報が届かない可能性があるため、この個別催告を怠ると、後で損害賠償などを請求されるリスクがあります。
ステップ5:財産目録および貸借対照表の作成と社員の承認
清算人は就任後すみやかに、解散日時点での会社の財産状況を調査し、「財産目録」と「貸借対照表」を作成します。この際の資産評価は、通常の会計基準とは異なり、資産を売却した場合の処分価格を基準とするのが原則です。
作成したこれらの書類は各社員に通知し、承認を得なければなりません。このプロセスを通じて、社員は会社の財産状況を正確に把握し、清算手続きの透明性が確保されます。承認された書類は、清算が結了するまで会社に保管する義務があります。
ステップ6:現務の結了(債権取立・債務弁済)
清算事務の中心となるのが、「現務の結了」です。清算人は、進行中の取引を完了させ、在庫商品を売却するなど資産の現金化を進めます。同時に、売掛金や貸付金などの債権を回収します。
回収した資金や資産の売却代金を使って、借入金や買掛金などの債務を弁済していきます。債務の弁済は、原則として2ヶ月間の債権申出期間が経過した後に行います。もし、会社の全資産をもってしても負債を完済できない「債務超過」の状態が判明した場合は、通常の清算手続きを中止し、破産手続などの法的な倒産手続きに移行しなければなりません。
ステップ7:残余財産の確定と社員への分配
全ての債務を支払い、清算費用や税金も納付し終えた後に残った財産を「残余財産」と呼びます。清算人は、この残余財産を各社員に分配します。
分配割合は、原則として各社員の出資比率に応じますが、合同会社では定款で別途定めることも可能です。分配は金銭で行うのが一般的ですが、不動産などを現物のまま分配することもできます。ただし、現物分配の場合は時価に応じた税務処理が必要になるため注意が必要です。
ステップ8:決算報告書の作成と総社員による承認
清算に関する全ての手続きが完了したら、清算人はその結果をまとめた「決算報告書」を作成します。この書類には、収入、支出、そして社員へ分配した残余財産の額などが詳細に記載されます。
作成した決算報告書は、総社員の承認を得る必要があります。全社員が内容を承認した日をもって、会社の清算が法的に結了したとみなされます。この承認により、清算人の任務は完了し、原則としてその責任も解除されます。
ステップ9:清算結了の登記申請と関係各所への届出
決算報告書が総社員によって承認された日から2週間以内に、法務局へ「清算結了の登記」を申請します。この登記が完了すると、会社の登記記録は閉鎖され、法人格が完全に消滅します。申請には登録免許税2,000円が必要です。
登記完了後は、税務署や自治体へ「清算結了届」などを提出します。また、残余財産が確定した日から1ヶ月以内に最終の「清算確定申告」を行い、納税を済ませます。これらの手続きをすべて終えることで、合同会社の廃業に関する全工程が完了します。
合同会社の清算手続きで必要となる主な書類
解散・清算人選任登記で提出する書類一覧
解散および清算人選任の登記を法務局へ申請する際には、以下の書類が必要です。
- 合同会社解散及び清算人選任登記申請書
- 総社員の同意書: 解散について全社員が同意したことを証明する書面
- 清算人選任決定書: 社員の過半数などで清算人を選任した場合
- 就任承諾書: 選任された清算人が就任を承諾したことを示す書面
- 定款: 会社の基本規則を確認するために必要
- 印鑑届書: 清算人が使用する新たな法人実印を登録するための書類
- 清算人の印鑑証明書: 発行後3ヶ月以内のもの
清算結了登記で提出する書類一覧
清算手続きがすべて完了し、会社を消滅させるための清算結了登記では、以下の書類を提出します。
- 合同会社清算結了登記申請書
- 決算報告書: 清算期間中の収支や残余財産の分配状況を記載した書類
- 総社員の同意書(清算結了承認書): 決算報告書を全社員が承認したことを証明する書面
税務署や都道府県税事務所などへ提出する書類
法務局への登記手続きと並行して、税務署や自治体へも段階的に各種届出が必要です。
- 異動届出書: 解散時と清算結了時にそれぞれ提出
- 解散確定申告書: 解散日から2ヶ月以内に提出
- 清算確定申告書: 残余財産確定日から1ヶ月以内に提出
- 給与支払事務所等の廃止届出書: 従業員へ給与を支払っていた場合に提出
- 消費税の納税義務者でなくなった旨の届出書: 該当する場合に提出
合同会社の清算にかかる費用の内訳と目安
合同会社の清算には、登記や公告に必要な法定費用と、手続きを専門家に依頼する場合の報酬が発生します。主な費用の内訳と目安は以下の通りです。
| 費用の種類 | 金額の目安 | 概要 |
|---|---|---|
| 登録免許税 | 41,000円 | 解散・清算人選任登記(39,000円)と清算結了登記(2,000円)の合計 |
| 官報公告掲載費用 | 約30,000円~40,000円 | 債権者保護手続きのための公告掲載料。行数により変動します |
| 司法書士への報酬 | 70,000円~150,000円 | 登記申請代理、議事録作成などを依頼した場合の費用 |
| 税理士への報酬 | 100,000円~300,000円 | 解散・清算確定申告書の作成などを依頼した場合の費用 |
| 合計 | 約240,000円~530,000円 | すべて専門家に依頼した場合の総額目安 |
法定費用①:登録免許税(解散・清算結了)
合同会社の清算では、法務局での登記申請時に登録免許税の納付が必要です。内訳は、「解散及び清算人選任登記」で合計39,000円、「清算結了登記」で2,000円となり、合計で41,000円の法定費用がかかります。この費用は、収入印紙を購入し申請書に貼付して納付します。
法定費用②:官報公告の掲載費用
解散時には、債権者保護を目的とした官報公告が法律で義務付けられており、その掲載費用が発生します。費用は掲載する行数によって決まり、一般的な内容であれば30,000円から40,000円程度が目安です。官報への申し込みから掲載までには1~2週間程度かかるため、早めに手続きを行う必要があります。
専門家への依頼報酬(司法書士・税理士)の相場
清算手続きは法務・税務の専門知識を要するため、司法書士や税理士に依頼するのが一般的です。
司法書士には、解散から清算結了までの登記申請代理や関連書類の作成を依頼します。報酬相場は7万円から15万円程度です。
税理士には、解散確定申告と清算確定申告という特殊な税務申告を依頼します。報酬相場は会社の規模にもよりますが、10万円から30万円程度が目安となります。両方に依頼する場合、総額で20万円から50万円程度の予算を見込んでおくとよいでしょう。
合同会社の清算における主な注意点
債務超過が判明した場合の対応(特別清算・破産手続き)
清算手続き中に、会社の資産をすべて処分しても負債を完済できない「債務超過」の状態が判明した場合、通常の清算手続きは続行できません。この場合、裁判所の監督下で行う法的な倒産手続きに移行する必要があります。
株式会社であれば特別清算という選択肢もありますが、合同会社は特別清算を利用できません。そのため、合同会社が債務超過の場合は原則として破産手続を申し立てることになります。例外的に、代表者が私財で負債を補填したり、債権者から債権放棄の同意を得たりして債務超過を解消できれば、通常清算を継続できる場合もあります。
清算中に必要となる税務申告(解散・清算事業年度)
合同会社は清算中に、通常の事業年度とは異なるタイミングで複数回の税務申告が必要です。
- 解散確定申告: 事業年度開始日から解散日までの期間を対象とし、解散日から2ヶ月以内に申告します。
- 清算事業年度の確定申告: 清算手続きが1年以上にわたる場合、解散日の翌日から1年ごとに申告が必要です。
- 清算確定申告: 残余財産が確定した日までの期間を対象とし、残余財産確定日から1ヶ月以内に申告します。
特に最後の清算確定申告は期限が1ヶ月と短いため、迅速な対応が求められます。
「知れたる債権者」の範囲と個別催告を怠るリスク
法律で個別催告が義務付けられている「知れたる債権者」とは、会社がその存在を把握しているすべての債権者を指します。金融機関や主要な取引先はもちろん、少額の買掛先や未払金のある従業員なども含まれます。
この個別催告を怠ると、後からその債権者への弁済義務が残ってしまったり、清算人個人が損害賠償を請求されたりする可能性があります。手続きを確実に履行した証拠を残すためにも、内容証明郵便など配達記録が残る方法で通知を送付することが賢明です。
清算結了後も続く帳簿資料の保存義務と保存者
清算結了登記が完了し法人格が消滅した後も、会社の帳簿や事業に関する重要資料は、法律で定められた期間保存しなければなりません。会社法では、清算結了の登記から10年間、これらの資料を保存する義務を定めています。
保存義務を負うのは原則として清算人です。保存すべき資料には、総勘定元帳、契約書、計算書類、総社員の同意書などが含まれます。税務調査などで提示を求められる可能性もあるため、保管場所を確保し、適切に管理する必要があります。
合同会社の清算に関するよくある質問
Q. 合同会社の清算手続きは自分で行うことは可能ですか?
法律上、専門家に依頼せず社員自身で清算手続きを行うことは可能です。特に小規模で債権債務関係が単純な会社であれば、法務局や税務署に相談しながら進めることで費用を抑えられます。
しかし、官報公告の手配や複数回にわたる特殊な税務申告など、専門知識がなければ難しい手続きも多く含まれます。書類に不備があれば手続きが滞り、かえって時間と手間がかかることもあります。重要な部分だけでも専門家のアドバイスを受けながら進めるのが現実的です。
Q. 会社が債務超過の場合、通常の清算手続きはできますか?
会社の資産をすべて換金しても負債を完済できない債務超過の状態では、原則として通常の清算手続きはできません。通常の清算は、すべての債務を支払えることが前提だからです。
この場合、裁判所が関与する破産手続きに移行するのが基本です。ただし、代表者個人からの借入金が大半を占める場合など、その債権を放棄してもらうことで債務超過を解消できれば、通常清算が可能になるケースもあります。その際は債務免除益に対する法人税課税に注意が必要です。
Q. 残余財産を社員に分配する際に税金はかかりますか?
はい、社員と会社の両方で税金が発生する可能性があります。
社員が受け取る分配額のうち、当初の出資額を超える部分は「みなし配当」とみなされ、所得税の課税対象となります。会社側は、このみなし配当に対して源泉徴収を行い、税務署へ納付する義務があります。
また、会社側では、清算中に土地などの資産を売却して利益(譲渡益)が出た場合、その利益に対して法人税が課されます。分配前に納税資金を確保しておくことが重要です。
Q. 清算手続き中の社会保険・労働保険の手続きはどうすればよいですか?
会社を解散し従業員を解雇した場合、速やかに社会保険・労働保険の資格喪失手続きが必要です。清算人はこれらの手続きも責任をもって行わなければなりません。
- 健康保険・厚生年金保険: 解散日から5日以内に、年金事務所へ「被保険者資格喪失届」と「適用事業所全喪届」を提出します。
- 雇用保険: 従業員の離職日の翌日から10日以内に、ハローワークへ「雇用保険被保険者資格喪失届」と「適用事業所廃止届」を提出します。
- 労働保険料の精算: 事業を廃止した日から50日以内に、「確定保険料申告書」を提出し、保険料を納付します。
まとめ:合同会社の清算手続きを円滑に進めるための要点
本記事では、合同会社の解散から清算結了までの具体的な手続きについて解説しました。このプロセスは、総社員の同意から始まり、登記、債権者保護手続き、財産整理を経て清算結了登記で完了し、最低でも3ヶ月程度の期間を要します。清算中に債務超過が判明した場合は破産手続きへ移行する必要がある点や、複数回の税務申告、帳簿資料の10年間保存義務といった重要事項を必ず押さえておきましょう。手続きは複雑なため、少しでも不安があれば司法書士や税理士などの専門家へ相談し、円滑な清算を目指すことが賢明です。

