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会社を破産させずに放置するリスクとは?正規手続きのメリットと対処法

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会社の債務超過に直面し、将来への不安から正規の破産手続きをためらっている経営者の方も少なくありません。手続きの費用や手間を考えると、いっそ会社を放置してしまえばどうなるのか、と考えることもあるでしょう。しかし、会社を放置することには、債権者からの厳しい取り立てや財産の差し押さえ、連帯保証人であるご自身への影響など、深刻なリスクが伴います。この記事では、会社を破産させずに放置した場合の具体的なリスクと、正規の破産手続きを選択するメリットについて詳しく解説します。

目次

会社を破産させずに放置した場合の具体的なリスク

リスク1:債権者からの督促・取り立てが継続する

会社が経営難に陥り、法的な破産手続きをせずに事業活動を停止・放置しても、会社の債務は法的に消滅しません。そのため、金融機関や取引先といった債権者からの督促や取り立ては継続します。債権者は、支払いが滞れば当然、債権回収を試みるためです。

督促は電話や書面から始まりますが、無視し続けると内容証明郵便による催告書や差押予告通知が届き、法的措置へ移行するリスクが高まります。特に、代表者が会社の連帯保証人になっている場合、自宅にも連絡が来るなど、経営者は長期にわたって深刻な精神的負担を強いられます。

弁護士に破産手続きを依頼すれば、送付される「受任通知」によって債権者からの直接の督促は法的に停止されますが、放置している限りはこの法的保護を受けることはできません。

リスク2:遅延損害金が膨らみ続け、負債総額が増加する

債務の返済を怠ったまま放置すると、返済期日の翌日から「遅延損害金」が発生し、負債総額が雪だるま式に増加し続けます。遅延損害金の利率は通常の貸付金利よりも高く設定されることが多く、利息制限法の上限金利の1.46倍(例えば年率20%)に達することもあります。

滞納が長期化すると、債務者は分割で返済できる権利である「期限の利益」を喪失します。その結果、債権者は残りの債務全額の一括返済を請求できるようになり、その元本全額に対して遅延損害金が加算されるため、負債はさらに膨れ上がります。放置を続けることは、最終的な負債額を不必要に増大させる結果を招きます。

リスク3:訴訟を提起され、会社の財産が差し押さえられる

債権者からの督促に応じず長期間にわたり債務を放置すると、債権者は債権を強制的に回収するため、裁判所に訴訟などを提起します。裁判所からの訴状や支払督促を無視した場合、債権者の主張が認められ、強制執行を可能にする「債務名義」が確定します。

債務名義を取得した債権者は、裁判所に強制執行を申し立て、会社の財産を差し押さえることができます。差し押さえが実行されると、事業に必要な資産まで失うことになり、破産手続きの費用を捻出することも一層困難になります。

差し押さえの対象となる主な財産
  • 会社の預貯金
  • 取引先に対する売掛金
  • 機械設備や在庫商品
  • 会社名義の不動産や車両

リスク4:債権者によって破産を申し立てられる可能性がある

会社が「支払不能」や「債務超過」の状態にあるにもかかわらず、経営者が自主的に破産手続きを開始せずに放置していると、債権者側が裁判所に破産を申し立てる「債権者破産」が行われる可能性があります。

債権者破産が開始されると、経営者の意向とは無関係に、裁判所が選任した破産管財人が会社の財産を調査・管理・処分します。会社の財産管理権を完全に失うため、従業員や取引先への対応が後手に回り、混乱を招くリスクが高まります。

債権者が破産を申し立てる主な目的
  • 特定の債権者への不公平な返済(偏頗弁済)を防ぐため
  • 会社の財産を公正に清算し、全債権者へ公平に分配するため
  • 個別の強制執行より、破産手続きを通じた方が回収の確実性が高いと判断した場合

リスク5:社会的信用の失墜と経営者の精神的負担

会社の債務問題を放置することは、会社と代表者個人の社会的信用を著しく損ないます。支払いの遅延が続くと、取引先からの信用を失い、取引停止や新規融資の拒絶など、事業環境がさらに悪化します。この「責任ある対応を取らない会社」という評判は、将来、代表者が新たな事業を始める際の大きな障害となり得ます。

同時に、終わりなき督促や取り立ては、経営者に深刻な精神的ストレスを与え続けます。特に連帯保証人となっている代表者は、個人の生活まで脅かされる状況に追い込まれます。正規の破産手続きによってこの苦痛から解放される機会を、放置によって先送りしているに過ぎません。

リスク6:事業停止後も税務申告の義務は残り、新たな滞納が発生する

事業活動を停止して事実上の「休眠会社」となっても、法人格が存続する限り、税務上の義務は消滅しません。所得がなくても、法人住民税の均等割は原則として課税されます。申告や納税を怠ると、延滞税が課され、新たな滞納が発生するリスクがあります。

事業停止後も残る主な法的義務
  • 法人税や地方税の確定申告義務
  • 法人住民税(均等割)の納税義務
  • 役員変更の登記義務(怠ると過料の対象)

放置するより正規の法人破産手続きを行うメリット

メリット1:債務や債権者からの督促から解放される

正規の法人破産手続きを行う最大のメリットは、会社のすべての債務から法的に解放されることです。破産手続きが完了し法人格が消滅すると、借入金や買掛金など、あらゆる債務の支払い義務がなくなります。

弁護士に破産手続きを依頼し、債権者に受任通知が送付された時点で、債権者からの直接の連絡や督促は法的に禁じられます。これにより、経営者は直ちに精神的なプレッシャーから解放され、再スタートに向けた準備に集中できます。また、裁判所の管理下で財産が公正に清算されるため、債権者間の公平性も保たれます。

メリット2:従業員や取引先への影響を最小限に抑えられる

適切なタイミングで法人破産を決断することは、従業員や取引先といった利害関係者への悪影響を最小限に抑えることにつながります。早期に手続きを開始すれば、会社の資産から従業員の未払い給与などを優先的に支払える可能性が高まります。また、国の「未払賃金立替払制度」を利用しやすくなるという利点もあります。

債務を放置して経営状態が悪化し続ければ、取引先への未払いが拡大し、連鎖倒産を引き起こす危険性も高まります。法人破産によって事業を正式に終結させることは、こうした負の連鎖を断ち切る上でも重要です。

メリット3:経営者自身の経済的な再スタートがしやすくなる

多くの場合、会社の代表者は債務の連帯保証人になっています。法人破産と同時に代表者個人も自己破産の手続きを行うことで、個人が負う保証債務も含め、すべての借金の支払い義務から免れる「免責」を得られます。

免責許可決定が確定すれば、経営者は負債の重荷から解放され、経済的な再スタートを切ることが可能になります。破産後に得た収入や財産は、すべて自身のものとなり、新たな人生を築くための基盤となります。倒産の経験を糧に、再び事業に挑戦する道も開かれます。

代表者が会社の連帯保証人になっている場合の影響

連帯保証人になっている場合:代表者個人に請求が及ぶ

中小企業の融資では、代表者個人が会社の債務の連帯保証人となるのが一般的です。会社が返済不能に陥ると、債権者は会社の返済能力にかかわらず、連帯保証人である代表者個人に債務全額の一括返済を直接請求できます。

連帯保証人には、通常の保証人が持つ「まず会社に請求してほしい」と主張する権利(催告の抗弁権)や、「まず会社の財産を差し押さえてほしい」と主張する権利(検索の抗弁権)がありません。会社を破産させても個人の保証債務は消えないため、放置すれば個人の資産が差し押さえられるリスクに晒され続けます。そのため、多くの場合、法人破産と同時に代表者個人の自己破産も申し立てる必要があります。

連帯保証人になっていない場合:原則として個人資産への影響はない

代表者が会社の債務の連帯保証人になっていない場合、有限責任の原則に基づき、会社の債務を個人資産で返済する義務は原則としてありません。会社が破産しても、代表者個人の預貯金や不動産が差し押さえられることはありません。

ただし、代表者として経営責任を問われる立場にあるため、債権者から説明を求められたり、事実上の取り立てを受けたりする可能性はあります。また、代表者が会社の財産を不当に流用するなど、悪質な行為があった場合は、破産手続きの中で役員としての損害賠償責任を追及されることもあります。

放置期間中の会社資産と個人資産の混同が招く危険性

破産手続きをせずに会社を放置している期間が長引くと、会社の資金と代表者個人の資金の区別が曖昧になる「公私混同」が生じやすくなります。会社の資金を個人の生活費に充てたり、特定の債権者にだけ返済したりする行為は、法的に問題視される可能性があります。

資産混同が招く主なリスク
  • 会社の財産を不当に減少させたとして「財産隠匿」を疑われる
  • 特定の債権者への返済が「偏頗弁済」と見なされ、破産手続きで否認される
  • 悪質な場合は「詐欺破産罪」として刑事罰の対象となる
  • 税務調査で個人の資金の流れも調査され、申告漏れを指摘される

破産手続きの費用が捻出できない場合の対処法

会社の資産を換価して予納金や弁護士費用に充てる

法人破産の申立てには、裁判所に納める予納金や弁護士費用が必要です。会社の現金・預貯金が不足している場合でも、会社が保有する資産を売却して現金化し、その資金を破産費用に充てることが認められています。

ただし、資産の換価は適正な価格で行い、得た資金の使途は破産手続き費用に限定しなければなりません。特定の債権者への返済に充てると偏頗弁済と見なされるため、必ず事前に弁護士に相談し、その指導のもとで進める必要があります。

費用捻出のために換価できる資産の例
  • 未回収の売掛金
  • 解約返戻金のある生命保険など
  • 在庫商品、機械設備
  • 会社所有の不動産や車両

弁護士費用の分割払いや法テラスの利用を検討する

破産費用を一括で用意できない場合でも、対処法はあります。多くの法律事務所では、弁護士費用の分割払いや後払いに対応しています。弁護士に依頼すると債権者への返済が停止するため、その資金を弁護士費用として積み立てることが可能です。

また、資力に乏しい個人を対象に、日本司法支援センター(法テラス)が弁護士費用などを立て替える「民事法律扶助制度」があります。ただし、この制度は法人破産そのものには利用できません。代表者個人が自己破産をする場合に、その個人の手続き費用についてのみ利用できる可能性があります。

会社放置や法人破産に関するよくある質問

休眠会社にして放置するのは有効な手段ですか?

債務を抱えた会社を「休眠会社」として放置することは、有効な解決策ではありません。休眠は単に事業活動を停止しているだけで、法人格も債務も存続します。放置を続ければ、遅延損害金が増え続け、最終的には訴訟や財産差し押さえといった法的措置に至るリスクを抱え続けることになります。

休眠会社として放置するデメリット
  • 債権者からの督促や取り立てが継続する
  • 遅延損害金により負債が増加し続ける
  • 税務申告や納税の義務が残り、新たな滞納が発生する
  • 役員変更登記を怠ると過料が科される場合がある

みなし解散と破産の違いは何ですか?

「みなし解散」と「破産」は、どちらも会社の活動停止に関連しますが、その目的と法的な効果が全く異なります。

みなし解散は、長期間登記の変更がない休眠会社を法務局が職権で整理する登記上の手続きであり、債務は消滅しません。一方、破産は、支払不能または債務超過の会社を裁判所の管理下で清算し、法人格と債務を消滅させる法的手続きです。

項目 みなし解散 破産
目的 登記の信頼性維持、休眠会社の整理 債務の清算、法人格の消滅
手続きの主体 法務局(職権) 裁判所(申立てに基づく)
債務の扱い 消滅しない 消滅する
会社継続の可否 可能(3年以内) 不可
「みなし解産」と「破産」の主な違い

税金や社会保険料を滞納したまま放置するとどうなりますか?

税金や社会保険料の滞納は、金融機関からの借金とは異なり、国や地方自治体が裁判所の手続きを経ずに直接財産を差し押さえる「滞納処分」の対象となります。督促状の送付後、法律で定められた期間内に完納されない場合、預貯金や不動産などが差し押さえられる可能性があります。

さらに、税金や社会保険料は、代表者が自己破産をしても支払い義務が免除されない「非免責債権」にあたります。問題を放置せず、速やかに行政機関の窓口に相談し、分割納付などの交渉を行うことが重要です。

法人破産をすると、経営者は信用情報(ブラックリスト)に影響がありますか?

法人破産そのものが、経営者個人の信用情報(いわゆるブラックリスト)に直接影響することはありません。信用情報機関が管理しているのは、個人の信用情報だからです。

しかし、多くの場合、代表者は会社の債務の連帯保証人になっています。そのため、法人が破産すると、代表者個人も保証債務を整理するために自己破産などの手続きを選択するのが一般的です。この代表者個人の債務整理の情報が、信用情報機関に事故情報として登録されます。その結果、約5年~7年間は新たなローンやクレジットカードの作成が困難になります。

まとめ:会社放置はリスクの先送り。早期の専門家相談が再スタートの鍵

本記事で解説した通り、債務超過に陥った会社を破産させずに放置することは、多くの深刻なリスクを伴い、問題の解決にはなりません。債権者からの督促は止まらず、遅延損害金によって負債は膨らみ続け、最終的には訴訟や財産の差し押さえに至る可能性が高いです。特に、代表者が連帯保証人となっている場合、その影響は個人の生活にまで直接及びます。

一方で、正規の法人破産手続きは、債務から法的に解放され、経営者自身の経済的な再スタートを可能にするための前向きな選択肢です。費用面で不安がある場合でも、弁護士費用の分割払いや資産の換価など、様々な対処法が存在します。現状を放置して事態を悪化させる前に、まずは一度、専門家である弁護士に相談し、適切な解決策を見つけることが重要です。

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