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民事再生の不認可事由とは?4つの法的要件と回避策、決定後の対応を解説

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民事再生手続を進める中で、再生計画が「不認可」となる可能性は、経営者や担当者にとって最大の懸念事項の一つではないでしょうか。万全を期して準備を進めても、法的な要件を満たさなければ、再建の道は閉ざされてしまいます。この記事では、民事再生が不認可となる4つの法的要件(民事再生法第174条2項)を深掘りし、それを回避するための具体的な対策、そして万が一不認可となった場合の対応フローまでを網羅的に解説します。

目次

民事再生が不認可となる4つの法的要件(民事再生法第174条2項)

再生計画案が債権者の決議によって可決された後でも、裁判所は直ちに認可するわけではありません。民事再生法第174条第2項に定められた不認可事由がないか審査し、問題がない場合に限り再生計画の認可決定を下します。この審査は、手続の適正さを担保し、少数債権者の最低限の利益を保護することを目的としています。

法人の通常民事再生、個人の小規模個人再生、給与所得者等再生のいずれの手続においても、共通して適用される一般的な不認可事由として、主に4つの要件が定められています。再生計画の認可を得るためには、これらのいずれにも該当しないことが必要です。

要件1:手続または再生計画に重大な法律違反がある

再生手続または再生計画が法律の規定に違反し、かつ、その不備を補正することができない場合、再生計画は不認可となります。民事再生は債権者の権利に重大な影響を及ぼすため、手続の全過程で法律を厳格に遵守することが求められます。

ただし、違反の内容によって扱いは異なります。再生手続の過程に軽微な違反があった場合は、裁判所の裁量で不認可とされないことがあります。これは、些細な瑕疵で再生の機会自体を奪うことを避けるためです。

一方で、再生計画の条項自体に法律違反がある場合、債権者の権利に直接関わるため、軽微な違反であっても認可されません。不備が補正可能であれば裁判所から修正が命じられますが、補正不可能な重大な違反があれば不認可は避けられません。

再生計画における法律違反の具体例
  • 法定された弁済期間(原則3年、最長5年)を超えている
  • 再生債権者間で弁済条件が不平等である(債権者平等の原則に違反する
  • 裁判所が指定した重要書類の提出を怠るなど、申立要件に重大な欠落がある

要件2:再生計画が遂行される見込みがない

再生計画に記載された弁済を、計画通りに最後まで実行できる見込みがないと裁判所が判断した場合、再生計画は不認可となります。これは、再生計画の履行可能性(りこうかのうせい)を審査するものです。

裁判所は、債務者の継続的な収入と支出を比較し、毎月の弁済原資を確保できるかを客観的に判断します。収入に対して返済額が過大であるなど、計画に無理があるとみなされれば不認可となります。

特に、住宅資金特別条項(住宅ローン特則)を定めた再生計画では、履行可能性の判断基準がより厳格になります。これは、単に「遂行される見込みがない」場合だけでなく、「遂行可能であると認めることができない」場合に不認可となるもので、再生債務者側が遂行可能性を積極的に立証する必要があります。

遂行可能性を証明するための手段
  • 給与明細や確定申告書、家計簿など、家計状況に関する客観的資料を提出する
  • 多くの裁判所が実施する履行テスト(りこうテスト)で、予定弁済額を滞りなく積み立てる

要件3:再生債権者の一般の利益に反する(清算価値保障原則)

再生計画の決議が、再生債権者全体の利益に反する場合も不認可事由となります。これは、民事再生手続における最も重要な原則の一つである清算価値保障原則(せいさんかちほしょうのげんそく)に基づくものです。

清算価値保障原則とは、再生計画に基づく弁済総額が、仮に債務者が破産手続を行った場合に債権者が受け取る配当総額(清算価値)を下回ってはならない、というルールです。もし再生計画の方が破産よりも不利であれば、債権者にとっては再生手続に協力する意味がなくなってしまいます。

清算価値の算定には、破産した場合に換価される財産が含まれます。一方で、破産法上の自由財産とされる生活必需品などは除外されます。特に注意すべきは、破産手続であれば否認権(ひにんけん)の行使によって取り戻されるはずの財産(偏頗弁済など)も、清算価値に加算して弁済計画を立てなければならない点です。

清算価値に算入される主な財産
  • 不動産の剰余価値(時価から住宅ローン残高などを引いた額)
  • 預貯金や現金(裁判所の基準を超える部分)
  • 自動車(時価が高い場合)
  • 保険の解約返戻金
  • 退職金見込額の一部(通常は8分の1)

要件4:決議が不正な方法によって成立した

再生計画の決議が、詐欺や脅迫といった不正な方法によって成立した場合も不認可となります。この要件は、債権者による決議が必要な法人の通常民事再生や、個人の小規模個人再生(しょうきぼこじんさいせい)に適用されます。

小規模個人再生では、反対した債権者が「総数の過半数」に達するか、「債権総額の2分の1」を超えると計画案が否決されます。このため、大口債権者などに不当な利益供与を持ちかけて同意を促すといった行為が、不正な方法とみなされる可能性があります。

過去の判例では、債権譲渡を利用して議決権を操作し、強引に同意を取り付けようとした行為が、信義誠実の原則に反し不正であると判断されました。ただし、再生手続を円滑に進めるための合理的な和解契約の締結が、直ちに不正と判断されるわけではありません。

なお、債権者の同意が不要な給与所得者等再生(きゅうよしょとくしゃとうさいせい)では、この不認可事由は適用されません。

再生計画の不認可を回避するための具体的な対策

遂行可能性を客観的に示す再生計画の策定

再生計画の不認可を避けるためには、計画が確実に実行できるという履行可能性を客観的な証拠で示すことが不可欠です。債務者の収支状況を正確に把握し、毎月の弁済原資を確保できることを証明する必要があります。

遂行可能性を示すための具体的な対策
  • 収入資料(源泉徴収票など)と支出資料(家計収支表など)を矛盾なく提出する
  • 家計を見直し、食費や通信費などの不要な支出を削減して弁済原資を確保する
  • 裁判所が実施する履行テスト(積立テスト)を毎月確実に実行する
  • 「特別の事情」がある場合、弁済期間を最長5年に延長し、月々の返済額を軽減する計画を検討する

債権者集会に向けた丁寧な説明と事前交渉

小規模個人再生では、債権者の不同意による不認可を回避するため、丁寧な説明と事前交渉が極めて重要です。特に、再生手続に反対する傾向がある信販会社や消費者金融などに対しては、事前の対応が不可欠となります。

不同意による不認可を回避するための対策
  • 反対が見込まれる債権者と個別に事前交渉を行う
  • 計画が清算価値保障原則を満たし、破産よりも有利であることを具体的に説明する
  • 債権者説明会などを開催し、誠実な情報開示と質疑応答を通じて信頼関係を構築する

債権者の同意を得るのが難しい場合は、債権者決議が不要な給与所得者等再生も選択肢となりますが、弁済額が高くなる可能性があるため慎重な検討が必要です。

清算価値の正確な算定と弁済計画への反映

再生計画が認可されるためには、清算価値保障原則を確実に満たす必要があります。そのためには、清算価値を正確に算定し、その結果を弁済計画に反映させることが不可欠です。

清算価値の判断基準は、原則として再生計画案の認可決定時とされます。弁護士は、申立時点の資産状況に将来の変動要因を加えて、正確な清算価値を算定します。

清算価値算定における重要ポイント
  • 基準時(再生計画認可決定時)を想定して不動産などの資産価値を評価する
  • 過去の否認対象行為(ひにんたいしょうこうい)の有無を確認し、あればその額を清算価値に上乗せする
  • 資産価値の増加による弁済額の上昇を抑えるため、資料収集を迅速に行い申立てを急ぐ

これらの算定結果を弁済計画に正確に反映させることで、裁判所の審査をクリアし、不認可を回避します。

弁護士との連携による適正な手続きの遂行

民事再生は、法律の専門知識を要する複雑な手続であり、不認可リスクを最小限に抑えるためには、弁護士との連携が不可欠です。

弁護士は、専門的な業務を代行し、書類の不備や法的な要件の欠落による失敗を防ぎます。特に、清算価値の計算や遂行可能性の立証など、専門的な判断が求められる場面で重要な役割を果たします。

弁護士に依頼する主なメリット
  • 複雑な書類作成や専門的判断(清算価値算定など)を代行し、不認可リスクを低減する
  • 債権者からの督促や裁判所との煩雑なやり取りを一任でき、精神的負担が軽減される
  • 民事再生以外の選択肢(自己破産など)も含め、最適な債務整理方法の提案を受けられる
  • 再生計画の履行中に問題が生じた場合でも、計画変更やハードシップ免責などのサポートを受けられる

スポンサー選定の重要性と再生計画への影響

事業再生において、自力での再建が困難な場合、資金援助や経営ノウハウを提供してくれるスポンサー(支援者)の存在が、再生計画の遂行可能性を大きく左右します。

スポンサーからの支援は、再生計画における債権者への弁済原資となるため、その選定プロセスは公正・公平でなければなりません。特に、再生計画の認可決定前に事業譲渡を行うプレパッケージ型民事再生では、早期のスポンサー選定が事業価値の毀損を防ぐ上で決定的な役割を果たします。

スポンサー型事業再生の主なメリット
  • スポンサーからの資金提供により、確実な弁済原資を確保できる
  • 早期の弁済完了や、市場の評価を反映した高い弁済率を実現しやすくなる
  • 経営ノウハウの提供を受け、抜本的な経営改革を断行できる
  • 事業価値の毀損を防ぎ、再生計画全体の遂行可能性が向上する

万が一、再生計画が不認可となった場合の対応フロー

不認可決定に対する即時抗告の手続きと認容の可能性

再生計画の不認可決定に対して不服がある場合、利害関係者は高等裁判所に即時抗告(そくじこうこく)を申し立て、決定の取り消しを求めることができます。ただし、この申立ては、決定の告知を受けた翌日から2週間という厳格な期間内に行う必要があります。

即時抗告の手続きは以下の流れで進みます。

即時抗告の手続きフロー
  1. 不認可決定の告知を受けた翌日から2週間以内に、抗告状を原裁判所(不認可決定を下した地方裁判所)に提出します。
  2. 抗告状に具体的な理由を記載しない場合は、申立てから14日以内に抗告理由書を別途提出します。
  3. 申立てが受理されると、審理の場は高等裁判所に移ります。
  4. 高等裁判所は、提出された資料に基づき審理を行い、原決定を取り消すか、抗告を棄却するかの決定を下します。

即時抗告によって原決定が覆される可能性はありますが、より不利な結果になるリスクもあるため、弁護士と慎重に協議した上で申し立てる必要があります。

自己破産手続への移行(牽連破産)とその後の流れ

再生計画の不認可決定が確定し、債務者に支払不能などの破産原因が認められる場合、裁判所は職権で破産手続を開始することができます。これを牽連破産(けんれんはさん)と呼びます。

特に法人の場合、再生計画が不認可となると、全件について職権で破産手続が開始される運用が一般的です。不認可決定が確定するまでの間、財産の散逸を防ぐために保全管理命令が発令され、再生手続の監督委員がそのまま保全管理人に選任されるケースが多く見られます。

牽連破産の特徴
  • 裁判所が再生手続に引き続いて職権で破産手続を開始する
  • 財産散逸を防ぐため、破産開始決定前に保全管理命令が発令されることが多い
  • 否認権の行使に関する期間計算などは、再生手続の開始日が基準となる
  • 再生手続中に生じた共益債権は、破産手続において財団債権として優先的に扱われる

特別清算など他の法的整理手続きの選択肢

再生計画が不認可となり、再建を断念する場合、清算型の法的整理手続である特別清算(とくべつせいさん)が選択肢となることがあります。特別清算は、解散した株式会社を対象とする手続で、破産手続よりも簡易・迅速に進められる点が特徴です。

ただし、特別清算は債権者の協力が前提であり、強制力を持つ破産手続とは性質が異なります。

項目 特別清算 破産手続
対象 解散した株式会社のみ 法人・個人を問わない
財産管理権 会社の清算人(元経営陣など) 破産管財人(裁判所が選任)
債権者の同意 協定案に債権額の3分の2以上の同意が必要 不要
手続の性質 協調的・任意的 強制力を持つ
特別清算と破産手続の主な違い

債権者の同意が得られない場合は、結局、破産手続へ移行せざるを得ません。どちらの手続を選択すべきか、弁護士と慎重に検討する必要があります。

不認可決定が事業や取引先に与える即時的な影響と対応

再生計画の不認可決定は、再生の失敗を意味し、通常は職権による破産手続への移行が想定されます。この決定が確定すると、事業や取引先に深刻な影響が及びます。

不認可決定による即時的な影響
  • 再生手続による債務の弁済猶予効果が失われ、債権者による強制執行などが再開される
  • 社会的信用が完全に失墜し、事業活動の継続が困難になる
  • 取引先が売掛金を回収できなくなり、連鎖倒産のリスクが生じる
  • 事業やサービスの提供が急停止し、顧客や従業員に混乱が生じる

これらの影響を最小限に抑えるには、不認可決定に対して速やかに即時抗告を検討するか、破産手続への円滑な移行を前提とした迅速な情報開示と準備が求められます。

【補足】法人の民事再生と個人再生における不認可事由の違い

適用される不認可事由の範囲

民事再生法に定められた不認可事由は、法人の通常民事再生と個人の個人再生で共通する部分と、それぞれの手続に特有の部分があります。

法律違反、遂行見込みなし、清算価値保障原則違反といった基本的な不認可事由は、すべての手続に共通です。これに加え、個人再生には個人の生活再建に特化した要件が追加されています。

また、再生計画案の可決方法も大きく異なります。

手続の種類 決議の要否 可決要件
法人の通常民事再生 必要 賛成した債権者の議決権総額が、全体の2分の1を超えること
個人の小規模個人再生 必要 不同意の債権者数が総数の2分の1未満、かつ不同意の債権額が総額の2分の1以下であること
個人の給与所得者等再生 不要 裁判所の判断のみで認可・不認可が決定される
再生計画案の決議方法の違い

個人再生に特有の要件(収入の安定性や債務上限など)

個人再生手続には、個人の経済的再建を目的として、法人の民事再生にはない特有の利用条件(これを満たさない場合は不認可事由となる)が設けられています。

個人再生に特有の主な要件
  • 住宅ローンを除く無担保債務総額が5,000万円以下であること
  • 将来にわたり継続的または反復して収入を得る見込みがあること
  • 【給与所得者等再生のみ】 給与など定期的収入があり、その変動幅が小さいこと
  • 【給与所得者等再生のみ】 弁済総額が可処分所得の2年分以上であること(可処分所得基準
  • 過去7年以内に給与所得者等再生の認可や破産免責を受けていないこと

これらの要件を満たさない場合、個人再生手続を利用することはできません。

民事再生の不認可に関するよくある質問

民事再生が不認可になる確率はどのくらいですか?

司法統計によれば、民事再生手続において再生計画が不認可となる確率は極めて低い水準です。

令和4年の司法統計年報によると、小規模個人再生において、債権者の不同意によって手続が廃止されたケースは約2%、裁判所の判断で不認可となったケースは約0.2%に過ぎません。個人再生事件全体で見ても、申立ての約91.7%が認可決定で終結しています。

これは、多くのケースで弁護士が代理人となり、申立て前に不認可事由がないか十分に検討し、実現可能性の高い再生計画を策定しているためと考えられます。

主要な債権者が反対した場合、再生計画は必ず不認可になりますか?

小規模個人再生の場合、債権額の大きい主要な債権者が反対すると、再生計画が不認可になる可能性は非常に高くなります。

不認可となるのは、反対した債権者の債権額が「債権総額の2分の1を超えた」場合です。したがって、一社でも債権額のシェアが50%を超える債権者が反対すれば、計画は不認可となります。

このリスクを回避するには、事前に債権者と交渉して理解を求めるか、債権者の同意が不要な給与所得者等再生を選択肢として検討します。ただし、給与所得者等再生は最低弁済額が高くなる傾向がある点に注意が必要です。

一度不認可になった後、再度民事再生を申し立てることはできますか?

はい、可能です。再生計画が不認可となった場合でも、その原因を解消すれば、再度民事再生を申し立てることができます。

小規模個人再生については、申立ての回数や期間に法律上の制限はありません。ただし、給与所得者等再生については、過去に認可決定や破産免責決定を受けている場合、その確定日から7年間は再申立てができないという制限があります。

再申立ての際には、前回の失敗原因を徹底的に分析し、再生計画を抜本的に見直すことが不可欠です。初回での成功を目指すことが最も望ましいですが、万が一の場合でも再挑戦の道は残されています。

不認可が決定した場合、予納金や弁護士費用は返還されますか?

いいえ、再生計画が不認可になっても、裁判所に納めた予納金や弁護士に支払った弁護士費用が返還されることは原則としてありません

費用が返還されない理由
  • 予納金: 裁判所の運営費用や監督委員の報酬として、手続の進行に伴い既に消費されているためです。
  • 弁護士費用: 申立て準備や債権者対応など、不認可決定に至るまでの業務に対して発生する報酬であり、結果の成功・不成功にかかわらず支払い義務が生じるのが一般的です。

不認可となると費用が無駄になってしまうため、申立ての段階で弁護士と綿密に連携し、不認可事由に該当しないよう万全の対策を講じることが極めて重要です。

まとめ:民事再生の不認可リスクを乗り越え、確実な事業再生を目指すために

本記事では、民事再生が不認可となる4つの法的要件と、それを回避するための具体的な対策、そして万が一の対応フローを解説しました。再生計画の認可を得るためには、「遂行可能性」を客観的資料で示し、「清算価値保障原則」を遵守することが絶対条件です。特に債権者の同意が必要な手続では、事前の丁寧な説明と交渉が不認可リスクを大きく左右します。

これらの複雑な要件をクリアし、手続きを適正に進めるためには、経験豊富な弁護士との連携が不可欠です。万が一、不認可となった場合でも、即時抗告や破産手続への移行といった次善策が残されていますが、まずは専門家と相談し、自社の状況に最適な戦略を立てて確実な事業再生への第一歩を踏み出しましょう。

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