手続

民事再生の廃止決定とは?破産移行後の会社・従業員・経営者への影響

catfish_admin

民事再生手続は事業再建を目指す重要な法制度ですが、万が一計画が頓挫し「廃止」となった場合、会社や関係者はどのような運命を辿るのでしょうか。再生の道が閉ざされると、多くの場合、清算を目的とする破産手続へと移行せざるを得ません。この記事では、民事再生手続が廃止された場合の流れ、特にその後の破産手続への移行(牽連破産)について詳しく解説します。さらに、廃止決定が会社、経営者、従業員、債権者といった各ステークホルダーに与える具体的な影響と、実務上の注意点を網羅的に説明します。

目次

民事再生手続における「廃止」とは

民事再生手続の廃止が意味すること

民事再生手続の「廃止」とは、事業再建という本来の目的を達成できないまま、手続が終了することを指します。民事再生は、経営難に陥った企業が再起を図るための法的手続ですが、廃止されると債務問題は未解決のまま残ります。その結果、会社は清算を目的とする破産手続などへ移行せざるを得なくなるのが一般的です。

手続が廃止される主なケースは以下の通りです。

民事再生手続が廃止される主なケース
  • 裁判所が定めた期限内に再生計画案が提出されない場合
  • 再生計画案の作成又は可決の見込みがないと判断された場合
  • 提出された再生計画案が債権者集会の決議で否決された場合

廃止の決定が下されてから、その決定が法的に確定するまでには、通常約1か月の期間を要します。

再生手続開始決定前に廃止となる主な事由

民事再生の申立て後、手続の開始決定がなされる前に事実上終了する場合、法的には「廃止」ではなく「申立ての棄却」となります。棄却は、申立てが法律上の要件を満たしていない場合に下される判断です。

棄却される主な事由には、以下のようなケースがあります。

申立てが棄却される主な事由
  • 債務者が債権者を害する目的で手続を利用しようとした場合
  • 再生計画が遂行される見込みがないと裁判所が判断した場合
  • 再生計画の作成見込みが明らかにない場合

裁判所は、申立てを棄却する際に、破産手続を開始すべき原因となる事実があると認めるときは、職権で破産手続開始決定を出すことができます。これは、再建の見込みがないにもかかわらず手続を継続させることで債権者に不利益が生じるのを防ぐためです。

再生計画案の否決・不認可による廃止

小規模個人再生手続では、提出された再生計画案が債権者の書面決議で否決されると、手続は廃止されます。再生計画案が否決されるのは、以下のいずれかの条件に該当した場合です。

小規模個人再生で再生計画案が否決される条件
  • 再生計画案に同意しなかった再生債権者の数が、議決権を持つ再生債権者総数の半数以上に達した場合
  • 同意しなかった再生債権者の議決権の総額が、全議決権額の2分の1を超えた場合

特に、債権総額の過半数を占める大口債権者が1社でも反対すれば、計画案は否決される可能性が非常に高くなります。また、決議で可決されても、計画内容が法律上の要件(例:債務総額が5,000万円以下であること)を満たしていない場合は「不認可」となり、手続は廃止されます。再生計画案の否決または不認可の決定が確定し、破産の原因となる事実がある場合、裁判所は職権で牽連破産として破産手続を開始することがあります。

再生計画認可後に履行困難となった場合の廃止

再生計画が裁判所に認可された後でも、計画通りに返済を履行できなくなった場合や、債務者に不誠実な行為があった場合には、再生計画の認可決定が取り消されることがあります。計画が取り消されると、減額・免除されていた債務は元の状態に戻ります。

再生計画が取り消される主な事由は以下の通りです。

再生計画の取消事由
  • 再生計画に定められた弁済を著しく怠った場合
  • 再生債務者が不正な手段で再生計画の認可を得ていた場合

再生計画の取消決定が確定し、破産の原因となる事実があると認められる場合、裁判所は職権で破産手続開始決定を出すことがあり、これを牽連破産と呼びます。

再生計画案の否決を避けるための最終調整と実務対応

小規模個人再生において再生計画案の否決を回避するには、債権者の理解を得るための事前の調整が不可欠です。万が一、債権者から不同意の意見が出された場合でも、債権者の同意を必要としない給与所得者等再生手続に切り替えることで、再建の道筋を維持できる可能性があります。

実務上、代理人弁護士は、不同意の意向を示した債権者と個別に交渉し、再生計画の実現可能性や弁済の意思を誠実に説明することで、意見を撤回してもらうよう働きかけます。専門家である弁護士が法的な観点から計画内容を精査・調整し、債権者の納得を得られるようにサポートすることで、再生計画の成立可能性を高めることができます。

民事再生廃止後の流れ:破産手続への移行(牽連破産)

廃止決定から破産手続開始決定までのプロセス

民事再生手続の廃止や再生計画の不認可といった決定がなされても、それが法的に確定するまでは破産手続は開始されません。この確定までの期間は通常約1か月かかり、この間に債務者の財産が散逸するのを防ぐため、裁判所は保全措置を講じます。

裁判所が職権で行う主な保全処分は以下の通りです。

主な保全処分の種類
  • 強制執行、仮差押え、仮処分などの中止命令
  • 全ての債権者による個別の権利行使を禁じる包括的禁止命令
  • 債務者による財産の処分を禁止する命令
  • 財産を管理する保全管理人を選任する保全管理命令

特に、再生債務者が法人の場合、原則として保全管理命令が発令され、民事再生手続で監督委員を務めていた弁護士が保全管理人に選任されるのが一般的です。廃止決定が確定し、破産の原因となる事実が認められると、裁判所は職権で破産手続を開始します。この一連の流れを「牽連破産(けんれんはさん)」と呼びます。

牽連破産の仕組みと破産管財人の選任

牽連破産とは、民事再生や会社更生といった再建型の手続が頓挫した際に、裁判所が職権で速やかに開始する破産手続のことです。東京地方裁判所の運用では、法人の民事再生が廃止等になった場合、原則として全件が牽連破産として扱われます。

牽連破産では、破産法上の一部規定の適用において、民事再生手続の開始申立てがあった時を「破産手続開始の申立てがあった時」とみなすなど、手続を円滑に移行させるための特別な扱いがなされます。破産手続が開始されると、裁判所は破産管財人を選任します。破産管財人は、主に弁護士が務め、破産者の財産を管理・換価し、債権者へ公平に配当する中心的な役割を担います。最終的に法人は清算され、法人格が消滅します。

民事再生手続で提出された書類や債権届の引継ぎ

牽連破産へ移行した場合、先行する民事再生手続で提出された再生債権の届出は、原則として破産債権の届出とみなされます(破産法266条1項)。そのため、債権者は新たに破産債権の届出を行う必要はありません。ただし、民事再生手続開始後に債権者が変動しているケースや、再生債権以外の破産債権がある場合など、債権者の確定が煩雑になることもあります。なお、民事再生の債権調査手続で確定した再生債権は、その後の破産手続において、確定判決と同様の効力が認められます。

【関係者別】民事再生の廃止が及ぼす具体的な影響

会社・事業への影響:事業停止と資産管理の移行

民事再生が廃止され、牽連破産に移行すると、会社は再建から清算へと方針を大きく転換します。事業活動は原則としてすべて停止され、会社は最終的に法人格の消滅に至ります。

破産手続開始決定後は、会社の財産に関する管理処分権はすべて裁判所が選任した破産管財人に専属します。これにより、経営者は会社の財産を自由に処分したり、特定の債権者にだけ返済したりすることは一切できなくなります。破産管財人は、会社の全財産を確保・現金化し、法律に基づいて各債権者に公平に分配(配当)する職務を遂行します。会社の資産が債権者によって勝手に持ち去られるなどの事態を防ぐため、破産管財人への引継ぎが完了するまで、会社の資産を厳重に管理・保全する必要があります。

経営者への影響:経営権の喪失と破産管財人への協力義務

民事再生が廃止され破産手続へ移行すると、経営者は会社の経営権および財産の管理処分権を完全に失います。破産管財人が選任された後は、経営者は会社の重要書類や財産(預金通帳、印鑑、決算書など)を速やかに破産管財人へ引き継がなければなりません。

また、経営者には、破産管財人が行う財産調査や破産に至った経緯の調査に対し、誠実に説明する法的義務(説明義務)があります。この義務を怠ったり、虚偽の説明をしたりすると、個人の自己破産手続において借金の免責が認められなくなる(免責不許可事由)だけでなく、悪質な場合には刑事罰の対象となる可能性もあります。多くの中小企業では経営者が会社の借入金の連帯保証人になっているため、法人の破産と同時に経営者個人も自己破産等の債務整理を行うことが一般的です。

従業員への影響:原則解雇と未払賃金の財団債権としての扱い

会社が破産手続に移行すると事業は停止するため、原則として全従業員は解雇されます。この場合の解雇は「会社都合退職」として扱われるため、従業員は雇用保険(失業保険)において、自己都合退職の場合よりも手厚い給付(給付日数の増加や待機期間の短縮)を受けることができます。

未払いの給与や退職金は、他の一般債権よりも優先的に保護されます。具体的には、破産手続開始前3か月間の給与などは財団債権として最も優先的に支払われます。もし会社の財産が乏しく支払いが受けられない場合でも、「未払賃金立替払制度」を利用することで、未払賃金の一部(原則8割、年齢に応じた上限あり)を国から受け取ることが可能です。

債権者・取引先への影響:新たな債権届出と配当手続き

民事再生が廃止され破産手続へ移行した場合、債権者は破産手続の枠組みの中で債権回収を図ることになります。破産手続開始決定後は、個別に返済を求めたり、訴訟を提起したりすることは原則として禁止されます。

牽連破産の場合、先行する民事再生手続で届け出られた再生債権は、原則として破産債権として届け出られたものとみなされます。しかし、再生手続中に届出をしなかった債権や、再生手続開始後に発生した債権などについては、裁判所が定めた期間内に破産債権の届出を必ず行わなければなりません。届け出られた債権は、破産管財人によって調査された後、法律上の優先順位に従って、換価された財産から公平に配当されます。ただし、不動産に抵当権を設定しているなどの担保権を持つ債権者(別除権者)は、破産手続とは別に担保権を実行し、優先的に債権を回収することが可能です。また、破産者に対して債務も負っている場合は、原則として相殺が認められます。

従業員・主要取引先への説明責任と混乱を避ける告知のポイント

破産手続を円滑に進めるためには、従業員や主要取引先への誠実な説明が不可欠です。告知は、混乱を避けるため、原則として破産申立ての直前に一斉に行います。ただし、手続準備に協力が必要な経理担当者など一部の従業員には、事前に事情を説明し、協力を求めておくことが重要です。

従業員に対しては、生活の不安を和らげるため、以下の点を明確に伝えることが求められます。

従業員への説明ポイント
  • 今回の退職は「会社都合退職」として扱われ、失業保険で有利になること
  • 未払いの給与や退職金は、法律上優先的に保護されること
  • 会社の資産から支払えない場合でも「未払賃金立替払制度」が利用できること

取引先に対しては、破産に至った経緯と今後の手続の方針を丁寧に説明することが、無用な混乱やトラブルを避け、信頼関係のダメージを最小限に抑える上で重要となります。

破産手続へ移行した場合の実務上の注意点

資産・帳簿等の保全と破産管財人への速やかな引継ぎ

法人破産の手続では、債権者への公平な配当の原資となる会社の資産や帳簿類を確実に保全することが最も重要です。代理人弁護士は、依頼を受けた直後から会社の重要財産(預金通帳、不動産権利証、印鑑、決算書類など)を預かり、管理します。

特に、申立ての直前に特定の債権者にだけ返済する行為(偏頗弁済)や、親族などに財産を無償で譲渡する行為(財産隠し)は、後の破産手続で破産管財人によって否認される対象となり、絶対に行ってはなりません。破産手続開始決定後は、速やかに破産管財人との面談を設定し、保全してきたすべての資産・書類を引き継ぐ必要があります。

債権者集会や免責審尋への対応

破産手続が破産管財人の選任を伴う管財事件として進む場合、手続開始から約3か月後に裁判所で債権者集会が開かれます。会社の代表者(破産者)、代理人弁護士、破産管財人の出席が義務付けられています。

債権者集会では、破産管財人から破産に至った経緯や財産状況が報告されます。多くの場合、債権者は出席せず、集会は短時間で終了します。破産者には、破産管財人や裁判官からの質問に誠実に答える説明義務があり、虚偽の説明は免責不許可につながるリスクがあります。個人の自己破産の場合、債権者集会に続いて免責審尋が行われ、裁判官から反省の意や今後の生活再建に向けた姿勢などを問われることがあります。

進行中の訴訟手続きの取り扱い

破産手続開始決定がなされると、破産者の財産に対する新たな強制執行や仮差押えなどはできなくなり、既に進行中のものも効力を失うか中止されます。

一方で、破産者が当事者となっている訴訟(例えば売掛金の回収訴訟など)は、当然には終了しません。これらの訴訟は破産管財人が手続を承継し、会社の財産を増やすために訴訟を続行するか、あるいは訴訟を取り下げるかなどを判断します。破産管財人は、破産財団を保全するために、必要に応じて自ら仮差押えなどの申立てを行うこともあります。

民事再生の廃止に関するよくある質問

民事再生が廃止されたら、従業員の給料や退職金は支払われますか?

はい、支払われる可能性があります。民事再生が廃止され破産手続に移行した場合、未払いの給与や退職金は法律で手厚く保護されています。具体的には、破産手続開始決定前の3か月間に発生した給与などは「財団債権」として、他のどの債権よりも優先的に支払われます。ただし、会社の財産が枯渇していて支払いが困難な場合は、「未払賃金立替払制度」を利用することで、国から未払額の一部(原則8割、年齢に応じた上限あり)を受け取ることができます。

民事再生廃止後、会社は必ず破産手続に移行するのですか?

法人の場合、原則として破産手続に移行します。民事再生が廃止され、会社に支払不能などの破産の原因となる事実がある場合、裁判所は職権で破産手続を開始できます(牽連破産)。東京地方裁判所などでは、法人の民事再生が失敗した場合は全件を牽連破産として扱う運用がなされています。ただし、破産手続を開始するかは最終的に裁判所の判断に委ねられており、常に破産手続開始決定が出されるとは限りません。なお、個人の再生手続が廃止された場合は、必ずしも破産に移行するわけではなく、給与所得者等再生を再度申し立てるなどの選択肢も考えられます。

経営者の個人資産や連帯保証債務はどうなりますか?

会社(法人)と経営者(個人)は法律上別人格であるため、会社が破産しても、経営者の個人資産が直ちに会社の債務弁済に充てられるわけではありません。しかし、多くの中小企業では、金融機関からの借入に際して経営者が連帯保証人になっています。そのため、会社が破産すると、金融機関は連帯保証人である経営者個人に返済を請求します。この保証債務は巨額になることが多く、結果として、経営者も会社と同時に自己破産などの債務整理手続を取らざるを得ず、個人資産を失う可能性が非常に高いのが実情です。

まとめ:民事再生の廃止は破産への移行を意味し、関係者への影響理解が重要です

本記事では、民事再生手続が「廃止」となった場合の流れと、各関係者への影響について解説しました。民事再生の廃止は、単なる手続の終了ではなく、多くの場合、裁判所の職権による破産手続(牽連破産)への移行を意味します。これにより、事業は再建から清算へと方針転換を迫られ、会社は法人格の消滅に至ります。経営者は経営権を失い、破産管財人への協力義務を負う一方、従業員や債権者は破産法の枠組みで一定の保護を受けます。特に経営者は、連帯保証債務を通じて個人も債務整理を迫られるケースが多いため、法人の破産と個人の生活再建を一体で考える必要があります。万が一の事態に備え、廃止後の法的な流れと各ステークホルダーへの影響を正確に理解し、専門家である弁護士と連携しながら、混乱を最小限に抑える準備を進めることが極めて重要です。

Baseconnect株式会社
サイト運営会社

本メディアは、「企業が経営リスクを正しく知り、素早く動けるように」という想いから、Baseconnect株式会社が運営しています。当社は、企業取引や与信管理における“潜在的な経営リスクの兆候”を早期に察知・通知するサービス「Riskdog」も展開し、経営判断を支える情報インフラの提供を目指しています。

記事URLをコピーしました