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民事再生の予納金とは?金額相場から支払えない場合の対処法まで解説

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企業の経営状況が悪化し、事業の再建を目指して民事再生手続をご検討のことと思います。その際、手続の第一歩として必要となるのが「予納金」ですが、その金額や準備方法について不安をお持ちの方も多いのではないでしょうか。この記事では、民事再生手続における予納金の目的や金額相場、内訳、支払い方法といった基本的な知識から、万が一支払えない場合の対処法までを網羅的に解説します。

目次

民事再生手続における予納金とは

裁判所へ納付する手続費用としての予納金の目的と役割

民事再生手続における予納金とは、申立人である債務者が、手続を円滑に進めるために必要な費用として、裁判所に予め納付する金銭を指します。これは民事再生法第11条第2項に基づき裁判所が予納を命じることができる費用であり、実務上は手続開始の前提条件となります。納付された予納金は、手続の公正性を担保するために裁判所が選任する監督委員の報酬や、その他手続に必要な公的な費用に充てられます。これにより、手続費用を税金で賄うのではなく、申立人自身が負担することで、制度の適正な運営が図られています。

予納金の主な使途
  • 監督委員への報酬: 手続全体を監督する弁護士(監督委員)およびその補助者(公認会計士など)への報酬
  • 官報公告費用: 手続開始などを広く知らせるための官報掲載費用
  • 郵券代: 債権者など関係者への書類送付にかかる郵便費用
  • その他の諸費用: 財産評価人の報酬や登記費用など、手続進行に必要な実費

予納金の納付が民事再生手続開始の要件となる理由

予納金の納付は、民事再生手続を開始するための実質的な必須要件です。もし申立人が裁判所の定める予納金を納付しない場合、裁判所は民事再生法第25条に基づき、再生手続開始の申立てを棄却しなければなりません。手続が始まると、監督委員の活動や債権者への通知など、多くの場面で費用が発生します。手続開始後に費用が支払えなくなる事態を防ぎ、公正かつ適正な手続の遂行を担保するため、事前の納付が義務付けられているのです。したがって、予納金を納付することは、申立人に手続を遂行する最低限の資力と意思があることを示す証となります。

民事再生の予納金の金額相場と算定基準

負債総額を基準とした予納金の金額相場

民事再生の予納金額は、主に申立企業の負債総額を基準として算定されます。負債総額が大きくなるほど債権者数が増え、利害関係が複雑化し、監督委員の業務量が増大するため、予納金も高額になる傾向があります。例えば、東京地方裁判所の基準では、負債総額が5,000万円未満の比較的小規模な事案でも最低200万円が必要とされ、負債規模に応じて金額は段階的に増加します。大阪地方裁判所でも類似の基準が採用されている場合が多いですが、個別の裁判所の運用によって異なる場合があります。この金額の大部分は、手続を監督する監督委員への報酬に充てられます。

東京地方裁判所を例にした負債額ごとの予納金基準

東京地方裁判所では、法人の民事再生手続について、負債総額に応じた予納金の基準額を明確に定めており、実務上の目安として広く参照されています。これは標準的な事案を想定したものであり、個別の事情によって増減する可能性があります。

負債総額 基準額
5,000万円未満 200万円
5,000万円以上 1億円未満 300万円
1億円以上 5億円未満 400万円
5億円以上 10億円未満 500万円
10億円以上 50億円未満 600万円
50億円以上 100億円未満 700万円
100億円以上 250億円未満 900万円
250億円以上 500億円未満 1,000万円
500億円以上 1,000億円未満 1,200万円
1,000億円以上 1,300万円以上
東京地方裁判所の予納金基準額(法人)

事業規模や債権者数などが金額に影響するケース

予納金の額は、負債総額という基本基準に加えて、個別の事案の複雑性に応じて増減することがあります。特に、以下のようなケースでは予納金が増額される可能性があります。

予納金が増額される主な要因
  • 債権者数が非常に多い: 多数の債権者への通知や調整に多大な事務コストがかかるため。
  • 多数の関連会社が存在する: 関連会社1社ごとに追加の予納金が求められることがあるため。
  • 財産の評価や換価が複雑: 不動産や特殊な権利関係など、専門的な調査が必要な資産を多数保有しているため。
  • 再生計画が複雑である: 事業譲渡や組織再編など、高度な法的手続を伴う計画を策定するため。

予納金の見積もりと資金計画を立てる際のポイント

民事再生を成功させるには、予納金を含めた手続費用の総額を把握し、周到な資金計画を立てることが不可欠です。手続を検討する際は、以下の点を押さえて準備を進めることが重要です。

資金計画策定のポイント
  • 弁護士への早期相談: 民事再生に精通した弁護士に相談し、管轄裁判所の基準に基づいた予納金の概算額を確認する。
  • 費用総額の把握: 予納金だけでなく、高額になりがちな弁護士の着手金や報酬も含めた費用総額を把握する。
  • 当面の運転資金の確保: 申立て後は取引先から現金取引を求められることが多いため、手続費用とは別に最低3ヶ月分程度の運転資金を確保する。
  • 資金繰り表の作成: 弁護士の支援を受けながら資金繰り表を作成し、資産売却や資金援助の可能性を含めた総合的な資金調達計画を立てる。

民事再生における予納金の主な内訳

官報へ掲載するための公告費用

民事再生手続が開始されると、その事実や再生計画案の提出期限、債権者集会の期日といった債権者の権利に影響する重要事項が、国の機関紙である「官報」に掲載されます。これは、すべての利害関係者に対して手続の進行を知らせ、参加の機会を公平に保障するための法律上の義務です。この官報への掲載にかかる費用が「公告費用」として予納金の中から支払われます。東京地方裁判所の場合、この費用は1万数千円程度が目安となります。

郵券代(裁判所からの郵便費用)

郵券代は、裁判所が手続関係者(特に多数の債権者)に対し、手続開始決定通知や債権者集会の呼出状といった重要書類を郵送するために必要な郵便切手代などの実費です。申立人は、この費用を「予納郵券」として裁判所に予め納付します。必要な金額は債権者の数に比例して大きく変動するため、事案によって異なります。近年は、切手の現物納付に代わり、相当額を金銭で納める運用や電子納付が可能な裁判所も増えています。

手続を監督する監督委員への報酬

予納金の中で最も大きな割合を占めるのが、裁判所によって選任される監督委員への報酬です。民事再生は、原則として従来の経営陣が事業を継続する「DIP(Debtor In Possession)型」の手続です。そのため、手続の公正性を担保する目的で、弁護士が監督委員として選任されます。監督委員は、会社の財産管理や重要な事業活動(借入れ、資産処分など)を監督し、同意権を行使するなどの重要な役割を担います。事案が複雑な場合は、公認会計士などが補助者として選任されることもあり、その報酬も予納金から支払われます。

その他、手続進行に必要となる諸費用

上記の主要な費用のほか、手続を円滑に進めるために必要となる諸費用も予納金から支出されます。例えば、手続開始決定などを公示するための登記費用や、不動産などの財産価値を客観的に評価するために裁判所が選任する評価人(不動産鑑定士など)への報酬などがこれにあたります。これらの費用は、手続の正確性と透明性を確保するために不可欠な経費であり、申立人が事前に納付することで、手続中の資金不足による停滞を防ぎます。

予納金の納付時期と支払い方法

納付のタイミングは申立てと同時の一括払いが原則

民事再生の予納金は、申立てとほぼ同時に全額を一括で納付するのが原則です。予納金の完納は手続開始決定の前提条件であるため、納付が確認されるまで手続は先に進みません。申立て後、裁判所が事案を審査して予納金額を決定し、申立人に納付を指示します。実務上、この指示があり次第、速やかに納付する必要があります。支払いが遅れると、最悪の場合、申立てが棄却される可能性もあるため、申立て前に資金を準備しておくことが極めて重要です。

納付方法は裁判所が指定する口座への銀行振込

予納金の納付は金銭(現金)で行うのが基本で、具体的な方法は裁判所の運用によります。一般的には、裁判所の窓口で直接現金を納付する方法や、裁判所が指定する銀行口座へ振り込む方法が用いられます。近年では、多くの裁判所で電子納付(Pay-easy)が導入されており、インターネットバンキングやATMから24時間納付が可能です。電子納付は手数料が原則無料であるなど利便性が高いため、実務上推奨されています。

予納金の分納が認められる例外的なケースとその条件

予納金は一括納付が原則ですが、申立人の資金繰りが極めて厳しい場合に限り、例外的に分納が認められることがあります。ただし、この運用は東京地方裁判所など一部の裁判所に限られ、その条件は個別の事案や裁判所の運用によって異なります。東京地裁では、申立時に6割、開始決定後2ヶ月以内に残りの4割を納付する運用が示されていますが、重要なのは、分納が認められたとしても、裁判所が定めた期日までに予納金の全額が納付されない場合、再生手続が開始されないか、または開始決定後に廃止される可能性があるという点です。したがって、分納が認められても、手続の進行は一時的に停止する場合があります。

予納金が支払えない場合の資金調達と対処法

弁護士に依頼し債権者への支払いを止めて資金を確保する

予納金が用意できない場合に最も有効な方法は、弁護士に民事再生の申立てを依頼し、債権者への支払いを一時的に停止することです。弁護士が債権者へ受任通知を送付すると、法的な効力により、債権者からの直接の取り立てが止まります。これにより、これまで返済に充てていた資金を、予納金や弁護士費用の積立てに回すことが可能になります。弁護士は資金計画の策定も支援してくれるため、計画的に費用を準備することができます。

不要な事業資産の売却で資金を捻出する

事業の継続に直接必要のない遊休資産(不動産、古い設備、滞留在庫など)を売却し、現金化することも有効な資金調達手段です。資産売却により、予納金などの手続費用を捻出できるだけでなく、固定資産税などの維持コストを削減できるメリットもあります。ただし、資産を不当に安い価格で売却したり、売却代金を特定の債権者への返済に充てたりする「偏頗弁済(へんぱべんさい)」は、法的に厳しく禁じられています。資産売却は、必ず弁護士の指導のもとで公正に進める必要があります。

スポンサーや会社の関係者から資金援助を受ける

資産売却でも資金が不足する場合は、スポンサー候補や経営者の親族・知人など、外部の関係者から資金援助を受けることも選択肢となります。中小企業では代表者個人が立て替えることも多いですが、代表者自身も会社の連帯保証人になっている場合は、その行為が法的に問題ないか弁護士との慎重な協議が必要です。また、再生手続を支援するスポンサーから、DIPファイナンスと呼ばれる手続中の運転資金の融資を受け、その一部を予納金に充てるケースもあります。

予納金準備における偏頗弁済などの禁止行為と法的リスク

予納金を準備する過程で、特定の債権者(例:親族や保証人付きの借入先)にだけ優先して返済する行為は「偏頗弁済」として固く禁じられています。これは、すべての債権者を平等に扱わなければならないという倒産手続の基本原則に反するためです。偏頗弁済を行うと、後日、その支払いが否認されて取り戻されたり、個人再生や自己破産の手続では再生計画における返済額が増額されたり、免責が認められなくなったりするなどの重大な不利益を被るリスクがあります。

民事再生が困難な場合は法人破産への移行も検討する

予納金の確保がどうしても難しい場合や、事業の再建見込みが立たない場合は、無理に民事再生を目指すのではなく、早期に法人破産へ移行することも重要な経営判断です。法人破産は事業を清算する手続ですが、予納金は「少額管財」制度を利用できれば最低20万円程度と、民事再生に比べて大幅に低額です。再生の見込みがないまま手続を進めて失敗するよりも、早期に破産に切り替える方が、結果的に関係者への損害を最小限に抑え、経営者自身の再出発にもつながります。

法人破産手続における予納金との違い

事業再建と清算という目的の違いによる金額の傾向

民事再生と法人破産では、手続の目的が根本的に異なるため、予納金の金額にも大きな差が生じます。

手続の種類 目的 予納金の傾向
民事再生 事業の再建 監督委員の業務が複雑なため、高額(最低200万円~)
法人破産 事業の清算 少額管財制度の適用により、比較的低額(最低20万円~)
民事再生と法人破産の予納金の違い

事業を継続しながら債務を整理する民事再生は、手続が複雑で長期にわたるため、監督委員の負担が大きく、予納金も高額になります。一方、財産を売却して会社を消滅させる法人破産は、比較的簡易な手続で進められる場合があり、予納金も低く抑えられます。

監督委員の報酬と破産管財人の報酬の違い

予納金の主な使途である専門家への報酬も、それぞれの役割が異なります。民事再生で選任される「監督委員」は、事業を継続する経営陣の業務執行や財産管理を後見的に監督する役割を担います。一方、法人破産で選任される「破産管財人」は、経営者に代わって会社の財産管理処分権をすべて引き継ぎ、財産の換価や債権者への配当といった清算業務を自ら執行する主体となります。この役割の違いが、業務量の差、ひいては報酬額(予納金額)の差に反映されます。

少額管財など法人破産に特有の予納金制度

法人破産手続には、予納金の負担を軽減するための「少額管財」という特有の制度があります。これは、比較的簡易な破産事件について、申立代理人の弁護士が事前に十分な調査・整理を行うことを前提に、破産管財人の業務を効率化し、予納金を大幅に引き下げる(多くの裁判所で最低20万円程度)運用です。この制度を利用するには弁護士への依頼が必須となりますが、費用面で破産を躊躇している中小企業にとっては、非常に利用価値の高い制度といえます。

民事再生の予納金に関するよくある質問

民事再生で支払った予納金は返還されますか?

納付した予納金は、監督委員の報酬や公告費用などの実費に充てられるため、原則として返還されません。手続が予定通り進行し完了した場合は、予納金が使い切られることがほとんどです。ただし、ごく稀に、手続が途中で終了(廃止)した場合などで、支払われた費用を差し引いて残額が生じた場合に限り、その余剰分が申立人に返還される可能性があります。

予納金の支払いに消費税はかかりますか?

裁判所に納付する予納金は、公的な手続費用であるため消費税の課税対象外であり、消費税はかかりません。一方で、民事再生の申立てを依頼した弁護士に支払う着手金や報酬金は、役務提供の対価であるため、消費税の課税対象となります。両者は性質が異なるため、混同しないよう注意が必要です。

予納金の会計処理における勘定科目は何ですか?

民事再生の予納金を支払った時点では、費用の内容が確定していないため、会計上は一時的に「仮払金」や「前払費用」などの資産勘定で処理することが一般的です。その後、手続の進行に伴い、監督委員の報酬額などが確定した段階で、その費用を「特別損失」や「支払手数料」といった費用勘定に振り替えます。民事再生に関連する費用は、通常の営業活動とは異なる臨時的な支出であるため、営業外費用や特別損失として計上されるのが通例です。

まとめ:民事再生の予納金は事業再建に向けた重要な初期費用

本記事では、民事再生手続における予納金について、その目的から金額相場、支払い方法、そして資金調達の具体策までを解説しました。予納金は、手続を公正に進める監督委員の報酬などを賄うための必須費用であり、負債総額に応じて最低でも200万円以上が必要となる重要な初期投資です。納付は申立てと同時に一括で行うのが原則であり、この資金を準備できなければ再生手続を開始することはできません。そのため、民事再生を検討する際は、まず弁護士に相談し、債権者への支払いを停止して計画的に資金を確保することが極めて重要です。もし予納金の準備がどうしても困難な場合は、事業清算を目的とする法人破産への切り替えも現実的な選択肢として検討する必要があります。

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