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市役所による銀行口座差し押さえの流れと回避・解除のための対処法

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市役所から税金滞納に関する督促状や差押予告通知書が届き、いつ銀行口座が差し押さえられるかと、強い不安と焦りを感じていらっしゃるかもしれません。このまま放置すれば、ある日突然、生活や事業に不可欠な資金が引き出せなくなるという深刻な事態に陥る可能性があります。この記事では、市役所が銀行口座を差し押さえるまでの具体的な流れと、差し押さえを回避・解除するための即時かつ実用的な対処法を詳しく解説します。

目次

市役所が税金滞納で銀行口座を差し押さえるまでの流れ

差し押さえの主な原因は住民税・固定資産税などの地方税滞納

地方税の滞納は、自治体の行政サービスを支える財源を脅かすため、厳格な対応が取られます。特に、住民税や固定資産税の滞納は、差し押さえの主要な原因となります。

差し押さえの主な原因となる地方税
  • 住民税:前年の所得に基づいて課税されるため、失業や減収によって支払いが困難になりやすい性質があります。
  • 固定資産税:不動産の所有そのものに課税されるため、所有者の支払能力に関わらず納税義務が生じます。

一般の債権者が財産を差し押さえるには裁判所の判決が必要ですが、自治体は自力執行権という強力な権限を持っています。これにより、裁判手続きを経ずに、自らの判断で滞納処分(差し押さえ)を開始できます。したがって、督促を無視して滞納を続けると、速やかに財産が差し押さえられる可能性があります。納税の公平性を保つため、支払能力があるにもかかわらず納税しない滞納者には、特に厳しい措置が講じられます。

【第1段階】納期限後に督促状が送付される

税金の納付期限を一日でも過ぎると、法律上の滞納者となります。自治体は、地方税法に基づき、納期限から20日以内に督促状を発送しなければなりません。この督促状の送付は、単なる支払いの催促ではなく、差し押さえを実行するための法的な必須要件です。

法律では「督促状を発した日から起算して10日を経過した日までに完納されないときは、財産を差し押さえなければならない」と定められています。この10日間が過ぎると、自治体はいつでも財産を差し押さえる法的な権利を得ることになります。督促状が届いた時点で、事態は法的措置の開始段階に入ったと認識すべきです。延滞金も納期限の翌日から日々加算されるため、放置は禁物です。

【第2段階】電話や訪問による催告と差押予告通知書

督促状を送付しても納付が確認できない場合、自治体は電話や文書による催告、あるいは徴収職員が自宅を訪問して直接納付を指導することもあります。この段階で、滞納者の納税意思や経済状況を確認し、相談に応じる姿勢を見せます。

しかし、誠実な相談がなかったり、約束した納付が履行されなかったりすると、差押予告通知書が送付されます。これは、差し押さえ実行が間近に迫っていることを示す最終通告であり、多くの場合、赤色や黄色の封筒で送られ、緊急性を伝えます。この通知書には、差し押さえの対象となる財産や実行予定日などが記載されていることもあります。この通知を無視すると、財産調査と差し押さえの実行が本格化します。

【第3段階】金融機関や勤務先への財産調査が実施される

差し押さえを円滑に実行するため、自治体は国税徴収法に基づく強力な権限を行使し、滞納者の財産を徹底的に調査します。この財産調査は、滞納者本人の同意なしに実施されます。

主な財産調査の対象
  • 金融機関:すべての銀行や信用金庫などに対し、預貯金口座の有無や残高を照会します。金融機関は守秘義務を理由に回答を拒否できません。
  • 勤務先:給与の支払い状況や金額について照会します。
  • 保険会社:生命保険の契約の有無や解約返戻金の額を照会します。
  • 取引先:売掛金などの債権の有無を照会します。

この調査によって、滞納の事実が銀行や職場に知られることになり、社会的な信用を大きく損なう可能性があります。調査で差し押さえ可能と判断された財産は、換価のしやすさなどを考慮して差し押さえ対象としてリストアップされます。

【最終段階】預金口座などへの差し押さえが実行される

財産調査によって預金口座が特定されると、自治体は金融機関に対して差押通知書を送達します。この通知書が金融機関に届いた瞬間に、差し押さえの効力が発生します。滞納者への事前連絡は一切ありません。これは、預金が引き出されて財産を隠されるのを防ぐためです。

銀行は通知書を受け取ると、直ちに対象口座からの払い戻しを停止し、滞納額に充当する金額を確保します。通帳には「サシオサエ」などの文言が記帳されます。その後、約1週間程度で銀行は確保した預金を自治体へ送金し、納税に充当します。一度差し押さえられた預金は、それが生活費や事業資金であっても、返還を求めることは極めて困難です。

複数の銀行口座がある場合、差し押さえはどのように実行されるか

自治体が複数の銀行口座を把握している場合、どの口座を差し押さえるかは、徴収職員が効率性を考慮して判断します。特定の口座を指定して差し押さえを待ってもらう、といった交渉は原則としてできません。

複数口座がある場合の差し押さえのポイント
  • 徴収効率を最優先し、残高の多いメインバンクなどが最初の対象になりやすいです。
  • 一つの口座で滞納額に満たない場合、他の口座も順次差し押さえられます。
  • 滞納額を大幅に超える過剰な差し押さえ(差押超過)は法律で禁止されています。
  • どの口座を差し押さえるかは行政の判断であり、滞納者が指定することはできません。

差し押さえの対象となる財産と法律で保護される財産

預貯金:銀行口座の残高が差し押さえの主な対象

預貯金は、現金化の手続きが不要で換価が容易なため、差し押さえの最優先対象となります。普通預金、定期預金、当座預金など、種類を問わず対象です。

差し押さえの効力は、差押通知書が金融機関に届いた時点の預金残高にのみ及びます。そのため、差し押さえ実行後に新たに入金された資金は、原則として引き出すことが可能です。ただし、滞納が解消されない限り、繰り返し差し押さえを受けるリスクがあります。

注意すべきは、年金や児童手当、生活保護費など、本来は差し押さえが禁止されている公的給付金も、銀行口座に入金された瞬間に法的な性質が「預金」に変わるため、差し押さえの対象となってしまう点です。

給与債権:勤務先から支払われる給料の一部

給与所得者の場合、勤務先から支払われる給与も有力な差し押さえ対象です。給与の差し押さえは、一度きりではなく、滞納額が完納されるまで毎月の給与から継続的に行われます。差押通知書は勤務先に直接送付されるため、滞納の事実を職場に隠し通すことはできません。

ただし、労働者の生活を保障するため、給与の全額を差し押さえることは法律で禁止されています。原則として、差し押さえができるのは手取り額の4分の1までです。ただし、手取り月額が44万円を超える場合は、33万円を差し引いた残りの全額が対象となります。ボーナスや退職金も同様に差し押さえの対象です。

不動産・自動車・生命保険なども対象となり得る

預貯金や給与だけでは滞納額に満たない場合や、これらの財産がない場合には、不動産や自動車といった他の資産も差し押さえの対象となります。

預貯金・給与以外の差押対象財産の例
  • 不動産:登記簿に差押の事実が記載され、売却や担保設定が制限されます。最終的には公売にかけられ、売却代金が税金に充てられます。
  • 自動車:タイヤロックなどで使用を制限された上、公売の対象となることがあります。
  • 生命保険:解約返戻金が債権として差し押さえの対象となり、行政によって強制的に解約させられる可能性があります。
  • 動産:貴金属、骨董品、有価証券など、換価価値のある物品も家宅捜索の上で差し押さえられることがあります。

法律で差し押さえが禁止されている財産(差押禁止財産)とは

差し押さえは、あくまで滞納された税金を徴収するための手段であり、滞納者の生活を破綻させることを目的としていません。そのため、日本の法律では、個人の生存権を保障する観点から、最低限の生活や職業の継続に必要な一部の財産を差押禁止財産として定めています。

これには、生活に不可欠な衣服や寝具、家具、食料のほか、職業を続けるために必要な道具などが含まれます。これらの規定は、国税徴収法や民事執行法で具体的に定められており、国家による強制的な徴収であっても、個人の尊厳や最低限度の生活基盤を奪ってはならないという理念に基づいています。

給与の手取り額の一部や生活に不可欠な動産など

法律で差し押さえが禁止されている財産の具体的な例は以下の通りです。ただし、標準的な水準を大幅に超える高価なものや、複数所有しているものは差し押さえの対象となる場合があります。

主な差押禁止財産(国税徴収法・民事執行法に基づく)
  • 給与など:手取り額の4分の3(ただし、手取り月額が44万円を超える場合は、33万円
  • 現金:66万円まで
  • 生活必需品:衣服、寝具、家具、台所用具、冷蔵庫、洗濯機など
  • 食料・燃料:1ヶ月分の食料と燃料
  • 職業上の道具:業務の遂行に欠くことができない器具や道具
  • その他:仏壇・位牌などの祭祀具、義手・義足など身体補助器具、学習に必要な書籍・器具など

銀行口座の差し押さえを回避するための具体的な方法

督促状や予告通知書が届いたら速やかに市役所の担当窓口へ連絡する

差し押さえを回避するための最も重要で効果的な第一歩は、行政との対話を絶たないことです。督促状や差押予告通知書を無視することは、納税の意思がないと見なされ、差し押さえ手続きを加速させる原因となります。

通知書を受け取ったら、記載されている市役所の納税担当窓口へ速やかに連絡し、支払いが困難な経済状況を正直に説明してください。誠実な相談姿勢を示せば、担当職員もすぐに差し押さえを実行するのではなく、解決策を共に探る姿勢を見せてくれる可能性があります。電話一本でも構いません。無視をせず、まずは連絡することが、事態の悪化を防ぐ鍵となります。

資力がある場合は滞納税を一括で納付する

もし手元資金や資産の売却などで納税資金を準備できるのであれば、一括での納付が最善の解決策です。税金の滞納には、消費者金融の金利に匹敵することもある高い利率の延滞金が課されます。一括で納付すれば、それ以降の延滞金の発生を止め、差し押さえのリスクから完全に解放されます。精神的な負担が解消されるだけでなく、将来の金融取引における信用毀損も最小限に食い止められます。

分割での納付(分納)が可能か相談・交渉する

一括での納付が困難な場合は、分割での納付(分納)が可能かを相談してください。分納を認めてもらうには、現在の家計の収支状況を客観的な資料で示す必要があります。給与明細や家計簿などを持参し、生活に最低限必要な経費を差し引いた上で、毎月確実に支払える無理のない金額を提示することが重要です。分納の合意が得られ、その計画通りに納付を続けている限り、原則として差し押さえは実行されません。ただし、一度でも約束を破ると信頼を失い、即座に差し押さえに移行する可能性が高まります。

納税の猶予制度(徴収猶予・換価の猶予)の適用を申請する

法律には、特定の事情がある場合に納税を待ってもらえる猶予制度が設けられています。これらの制度を活用することも、差し押さえを回避する有効な手段です。

制度名 概要 主な適用要件
徴収猶予 納税そのものを原則1年間待ってもらう制度 災害、病気、事業の休廃止など特別な事情がある場合
換価の猶予 差し押さえた財産の売却(換価)を待ってもらう制度 一度に納付すると事業継続や生活維持が困難になる場合
納税の猶予制度の比較

これらの制度が適用されると、差し押さえが猶予されるだけでなく、期間中の延滞金が一部または全部免除されるメリットもあります。ただし、これらの制度は自動的に適用されるものではなく、自ら申請し、要件を満たしていることを証明する必要があります。

失業や病気などの事情がある場合は減免制度を確認する

失業、長期療養、災害など、納税が著しく困難になった原因が本人に責任のないやむを得ない事情による場合、税額そのものが軽減または免除される減免制度の対象となる可能性があります。多くの自治体が条例で独自の減免制度を設けており、生活保護の受給者や所得が激減した人などが対象となります。この制度も申請が必須であり、通常、納期限を過ぎてからの申請は認められないため、納税が困難だと分かった時点で速やかに相談することが重要です。

分納相談を成功させるための準備と注意点

分納の交渉を円滑に進め、担当者の理解を得るためには、事前の準備が不可欠です。感情的に窮状を訴えるだけでなく、客観的なデータに基づいて誠実に交渉に臨む姿勢が求められます。

分納相談を成功させるための準備と心構え
  • 客観的な資料の準備:家計の収支一覧表、給与明細、預金通帳のコピー、その他借入金の返済予定表などを用意する。
  • 協力的な姿勢で臨む:徴収職員と対立するのではなく、納税の意思があることを明確に伝え、共に解決策を探る姿勢を示す。
  • 正直に状況を申告する:財産を隠したり、嘘の申告をしたりすると、後の財産調査で発覚し、信頼を失って交渉が打ち切られる原因となる。

すでに口座が差し押さえられた場合の解除に向けた対処法

差し押さえ解除の原則は滞納税の全額納付

一度実行された差し押さえを解除するための最も確実な方法は、滞納税と延滞金の全額を納付することです。差し押さえは税金を回収するための手段ですので、その原因である滞納が解消されれば、差し押さえを続ける理由がなくなります。完納が確認されると、自治体は速やかに金融機関へ差押解除通知書を送り、口座の利用制限が解除されます。親族などから一時的に資金を借りてでも完納できれば、それが最も早く経済活動を正常化させる方法です。

市役所と交渉し、今後の納税計画を誠実に示す

全額の納付がすぐに不可能な場合でも、諦めずに市役所の窓口で交渉しましょう。差し押さえによって家賃が払えず住居を失う、子供の学費が払えないなど、生存権に関わる深刻な事態に陥ることを客観的な資料で証明できれば、差し押さえられた財産の一部解除や、今後の分納計画に応じてもらえる可能性があります。その際は、単に困っていると訴えるだけでなく、今後の具体的な納税計画を誠実に示すことが不可欠です。自治体との信頼関係を再構築する姿勢が重要となります。

差押禁止財産の範囲を超えている場合は不服申し立てを検討する

万が一、実行された差し押さえが法律で定められた差押禁止財産の範囲を超えていると考えられる場合は、不服申し立てを行うことができます。例えば、法律で保護されるべき給与の4分の3を超える額が差し押さえられた場合や、生活保護費として支給された金員であることが明らかな預金が差し押さえられた場合などです。この不服申し立ては、差し押さえ処分があったことを知った日の翌日から3ヶ月以内に行う必要があり、法的な専門知識も求められるため、弁護士などの専門家に相談することをお勧めします。

差し押さえ解除後、口座が再び使えるようになるまでの注意点

差し押さえが解除されても、いくつかの点に注意が必要です。解除を一時しのぎと捉えず、根本的な家計改善のきっかけとすることが大切です。

差し押さえ解除後の注意点
  • 反映までの時間差:自治体が解除通知を送付してから、銀行のシステムに反映され、実際に口座が自由に使えるようになるまで数日かかることがあります。
  • 信用の記録:一度差し押さえを受けた事実は金融機関の内部記録に残り、将来のローン審査などに影響を与える可能性があります。
  • 再差押のリスク:滞納が一部でも残っている状態で再び納付を怠れば、同じ口座が再度差し押さえられるリスクがあります。

市役所の税金滞納と差し押さえに関するよくある質問

差し押さえについて、市役所のどこに連絡すればよいですか?

税金の滞納や差し押さえに関する相談窓口は、市役所の納税課、収納課、徴収課といった名称の部署が担当しています。送られてきた納税通知書や督促状に担当部署の連絡先が記載されていますので、そちらをご確認ください。書類が見当たらない場合は、市役所の代表電話に連絡し、「税金の納付相談をしたい」と伝えれば、適切な部署につないでもらえます。

差し押さえられた預金は原則として返金されませんか?

はい、一度差し押さえられ、自治体の税収として処理された預金は、原則として返金されません。差し押さえは法律に基づく正当な行政処分であるため、その後に生活が苦しくなったと訴えても、返還義務は生じないのが通常です。ただし、自治体側の計算ミスで滞納額より多く差し押さえた(過誤納)場合や、手続きに重大な誤りがあった場合など、例外的なケースでは返還(還付)されます。

口座を差し押さえられた後、その口座自体は使えますか?

はい、使えます。差し押さえの対象となるのは、あくまで差押通知書が銀行に届いた時点での預金残高です。口座そのものが閉鎖されるわけではありません。したがって、差し押さえが実行された後に新たに入金されたお金については、通常通り引き出しや振り込みが可能です。ただし、滞納額が残っている限り、その口座に入金したお金が再び差し押さえられるリスクは常に存在します。

年金や生活保護費が振り込まれる口座も差し押さえられますか?

法律上、年金や生活保護費を受け取る権利(受給権)そのものを差し押さえることは禁止されています。しかし、これらの給付金が一度銀行口座に振り込まれると、法的な性質が「預金債権」に変わります。そのため、現状の法律解釈と実務運用では、預金として差し押さえが可能とされています。もし、これらの生活に不可欠な資金が差し押さえられた場合は、速やかに自治体へ相談し、その資金が差押禁止財産に該当する旨を主張するか、または差押処分の取消しや変更を求める不服申立てを検討する必要があります。迅速な対応が求められるため、弁護士などの専門家へ相談することを強く推奨します。

滞納者本人以外の家族名義の口座も差し押さえの対象になりますか?

納税義務は滞納者本人にあるため、原則として配偶者や子供など、家族名義の口座が差し押さえられることはありません。しかし、滞納者が差し押さえを免れる目的で、意図的に自分の財産を家族の口座に移したと判断されるような場合は、その口座が実質的に滞納者のもの(借名口座)と見なされ、例外的に差し押さえの対象となる可能性があります。

まとめ:税金の差し押さえは「早期相談」が回避の鍵

本記事では、市役所による税金滞納を原因とした銀行口座差し押さえの流れと、その回避・解除方法について解説しました。差し押さえは、督促状の送付から始まり、財産調査を経て、ある日突然、事前連絡なく実行されます。最も重要な対策は、督促状や差押予告通知書を受け取った段階で、決して無視せず速やかに市役所の担当窓口へ連絡し、誠実に納税相談を行うことです。分納や猶予制度の活用も視野に入れ、まずは対話の機会を持つことが差し押さえを回避する最大の鍵となります。もし既に差し押さえられてしまった場合や、ご自身での交渉が困難な場合は、弁護士などの専門家へ相談することも検討してください。

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