405事業(経営改善計画策定支援事業)とは?補助金の対象・要件・申請の流れを解説
資金繰りの悪化に直面し、経営改善計画の策定が急務となっている経営者の方も多いのではないでしょうか。専門家への依頼費用が懸念される中、国の補助制度である「405事業」がその負担を軽減します。この記事では、経営改善計画策定支援事業(405事業)の補助金の対象費用や補助率、上限額、利用条件を正確に理解できるよう、制度の全体像を分かりやすく解説します。
経営改善計画策定支援事業(405事業)とは
資金繰り改善と事業再生を目指す中小企業向け支援制度
多くの中小企業は、金融機関からの借入金が資本の大部分を占め、その返済が経営を圧迫する一因となっています。経営改善計画策定支援事業は、こうした借入金の返済負担などによって資金繰りが悪化した事業者の事業再生を後押しする国の制度です。
この制度は、単なる資金調達の相談ではなく、専門家の支援を通じて根本的な収益力改善を目指すものです。2013年の事業開始時に約405億円の予算が組まれたことから、通称「405事業(よんまるごじぎょう)」と呼ばれています。
認定支援機関による本格的な経営改善計画の策定が対象
本制度を利用するには、国が認定した経営革新等支援機関(認定支援機関)のサポートを受けることが必須です。認定支援機関には、中小企業支援の専門知識と実務経験を持つ税理士、公認会計士、中小企業診断士、金融機関などが登録されています。
事業者は認定支援機関と共に、現状の財務分析や経営課題の抽出を行い、金融機関の合意を得られるレベルの本格的な経営改善計画書を作成します。計画書には、今後の具体的な改善策が盛り込まれます。
- 現状の財務分析と経営課題の抽出
- 今後の具体的な収支計画や資金繰り予定
- アクションプランと呼ばれる具体的な行動計画
- 金融機関への返済計画
計画策定・伴走支援にかかる専門家費用の一部を国が補助
経営改善計画の策定や実行支援には専門家への報酬が発生しますが、405事業ではその費用負担を軽減する仕組みが用意されています。具体的には、認定支援機関に支払う費用のうち3分の2を国が補助します。
補助対象には、計画を立てる際の費用だけでなく、計画策定後に進捗を確認する「伴走支援(モニタリング)」の費用も含まれます。補助金は原則として後払いですが、専門家費用の総額を抑えられるため、資金繰りに悩む事業者にとって大きな支えとなります。
補助の対象となる事業者と主な利用要件
対象となる中小企業・小規模事業者の範囲
本事業の対象は、産業競争力強化法に定められた中小企業者および小規模事業者です。個人事業主も対象に含まれますが、一部対象外となる法人形態もあるため注意が必要です。
- 株式会社、合同会社などの法人
- 個人事業主
- 医療法人、農業、漁業を営む事業者(一定の要件を満たす場合)
- 社会福祉法人、特定非営利活動法人(NPO法人)
- 学校法人、一般社団法人
また、創業後間もない場合は、少なくとも1事業年度(12ヶ月以上)の営業実績があり、確定申告を行っていることが実務上の要件となります。
借入金の返済猶予など金融支援を必要とする経営状況であること
405事業を利用するための最も重要な要件は、金融機関からの金融支援を必要とする経営状況にあることです。金融支援とは、具体的に以下のような措置を指します。
- 元金返済の猶予(リスケジュール)
- 借入金の一本化(借換)
- 新規融資の実行
単に「経営のアドバイスが欲しい」という目的だけでは利用できず、現状のままでは返済が困難で、条件変更などを受けなければ事業継続が難しいという客観的な状況が前提となります。
自社単独での改善計画策定が困難であること
事業者が自力で客観的かつ実効性のある経営改善計画を策定することが難しい、という状況も要件の一つです。特に、財務状況が悪化している場合や複数の金融機関との利害調整が必要な場面では、専門家である認定支援機関の介在が不可欠となります。
専門家が関与することで、事業の実態を精査するデューデリジェンスが行われ、金融機関が納得できる公正な計画書の作成が可能になります。専門家と共に事業再生に取り組む強い意志があることが重要です。
補助対象費用と補助率・上限額
【通常枠】計画策定費用とモニタリング費用の内訳
通常枠における補助対象費用は、大きく「計画策定支援費用」と「伴走支援費用」の2種類に分けられます。
- 計画策定支援費用: 財務・事業調査(デューデリジェンス)、経営改善計画の作成、金融機関調整(バンクミーティング)などにかかる費用
- 伴走支援費用(モニタリング費用): 計画策定後3年間、定期的に進捗を確認し、助言を行うための費用
【通常枠】補助率は費用の3分の2、上限額は最大300万円
通常枠の補助率は、認定支援機関に支払う対象費用の3分の2です。補助上限額は、計画策定支援費用が最大200万円、伴走支援費用が最大100万円で、合計で最大300万円となります。
なお、経営者保証の解除を目指す計画を策定する場合には、弁護士などへの相談費用として別途10万円を上限に加算できます。費用総額は企業の売上規模や負債額に応じて変動しますが、補助によって自己負担を大幅に抑えることが可能です。
【中小版GL枠】利用要件と通常枠との違い
中小版GL枠は、「中小企業の事業再生等に関するガイドライン」に沿った、より抜本的な再生計画の策定を支援する枠組みです。債権放棄など、通常枠よりも踏み込んだ金融支援を要する深刻な状況にある事業者が対象となります。
通常枠との主な違いは、私的整理の手続きに則った厳格な資産査定や、独立した第三者専門家による計画の妥当性検証が必要となる点です。利用するには、対象となる金融機関(債権者)全員の同意を得る必要があります。
【中小版GL枠】補助率は費用の4分の3、上限額は最大400万円
中小版GL枠では、より高度な専門性が求められるため、補助上限額が通常枠よりも高く設定されています。補助率は対象費用の4分の3です。計画策定支援費用は最大600万円、伴走支援費用は最大100万円で、合計で最大700万円となります。
この枠組みを活用することで、事業再生の実務経験が豊富な弁護士や公認会計士といった専門家の手厚い支援を、費用を抑えて受けることが可能になります。
申請から補助金受給までの具体的な流れ
ステップ1:認定支援機関への相談と契約
まず、自社の課題解決に適した認定支援機関を選定し、経営状況を相談します。制度利用が適切と判断されたら、支援内容や費用について説明を受け、業務委託契約を締結します。後の補助金申請を円滑に進めるため、業務開始前に契約手続きを完了させることが重要です。
ステップ2:経営改善支援センターへの利用申請
契約後、事業者は認定支援機関および主要な金融機関と連名で、各都道府県の経営改善支援センターに利用申請書を提出します。申請書には、会社の登記簿謄本や直近3期分の確定申告書などを添付します。センターでの審査を経て利用が承認されると、費用補助の決定通知が届きます。
ステップ3:経営改善計画の策定と金融機関の合意
センターの承認後、認定支援機関と共に本格的な経営改善計画の策定に着手します。計画案が固まったら、取引のある全ての金融機関に説明し、計画への同意を求めます。一般的には、関係者が一堂に会するバンクミーティングを開催して合意形成を図ります。全ての金融機関から書面で同意を得ることで、計画が正式に成立します。
ステップ4:費用の支払いと補助金交付申請
計画が成立したら、事業者は認定支援機関との契約に基づき、費用の全額を支払います。支払い完了後、領収書や成立した計画書、金融機関の同意書などを添えて、経営改善支援センターに補助金の交付申請を行います。書類に不備がなければ、後日、補助金が交付されます。
ステップ5:計画の実行と定期的なモニタリング報告
補助金を受け取った後も、計画に沿った経営改善を継続する必要があります。認定支援機関は計画策定後3年間にわたり、定期的なモニタリングを実施します。モニタリングでは計画の進捗状況を確認し、その結果を金融機関とセンターに報告します。この報告を怠ると補助金の返還を求められることもあるため、事業者と専門家の緊密な連携が不可欠です。
405事業を活用するメリットと注意点
メリット:客観的な視点での経営課題の把握と改善策の立案
自社だけで経営を見直すと、どうしても主観的な判断になりがちです。外部の専門家である認定支援機関が関与することで、財務や事業内容を客観的に分析し、自社では気づけなかった根本的な課題を特定できます。これにより、精神論ではなく、数値に基づいた具体的で実行可能な改善策を立案できるのが大きなメリットです。
メリット:金融機関との円滑な交渉と信頼関係の構築
経営状況が厳しい中で事業者が単独で金融機関に支援を要請しても、論理的な説明が不足し、交渉が難航することが少なくありません。第三者である認定支援機関が作成に関与した精度の高い計画書は、金融機関にとって信頼性の高い判断材料となり、交渉が円滑に進む可能性が高まります。
また、計画策定後のモニタリングを通じて進捗を定期的に報告することで、経営の透明性が高まり、一度損なわれた金融機関との信頼関係を再構築するきっかけにもなります。
注意点:専門家費用の自己負担と一時的な立て替えが発生
本事業は費用の全額が補助されるわけではなく、原則として3分の1は自己負担となります。また、補助金は後払いのため、申請から交付までの間、事業者が費用を一時的に立て替える必要があります。資金繰りが厳しい事業者にとっては、この自己負担分と立替資金の確保が課題となる場合があります。
注意点:計画達成に向けた継続的な取り組みが求められる
計画を策定し金融支援の合意を得ることがゴールではありません。405事業の本質は計画を実行し、経営を改善することにあります。そのため、策定後3年間のモニタリングが義務付けられており、事業者は専門家に対して定期的に経営状況を報告し、指導を受けなければなりません。このプロセスには相応の労力がかかるため、経営者の強い覚悟が求められます。
注意点:補助金ありきの計画ではなく、自社の実態に即した実行可能性が重要
補助金や金融支援を得ることだけを目的として、実現不可能な計画を作成してはなりません。実態とかけ離れた高い目標は、その後のモニタリングで達成できず、かえって金融機関からの信頼を失う原因となります。大切なのは、自社の強みや弱みを冷静に分析し、実行可能性を最優先した計画を立てることです。認定支援機関と真摯に議論を重ね、着実に実行できる計画を練り上げることが成功の鍵です。
制度利用の鍵となる「認定支援機関」の役割と選び方
認定支援機関とは?税理士・公認会計士・中小企業診断士など
認定支援機関とは、中小企業の経営支援に関する専門知識や実務経験が一定レベル以上あるとして、国が認定した専門家や組織のことです。
- 税理士、税理士法人
- 公認会計士、監査法人
- 中小企業診断士
- 弁護士、弁護士法人
- 金融機関(銀行、信用金庫など)
- 商工会、商工会議所
事業者は自社の課題に合わせて、財務、経営戦略、法務など、適切な専門性を持つ支援機関を選ぶことができます。
計画策定から金融機関調整までを担うパートナー
認定支援機関の役割は、単に書類作成を代行することではありません。事業者の戦略的なパートナーとして、経営課題の分析から改善策の立案、そして最も重要な金融機関との利害調整までを一貫してサポートします。
特に、複数の金融機関が関わるバンクミーティングでは、公正な第三者の立場から計画の妥当性を説明し、事業者だけでは困難な合意形成を主導します。計画策定後も定期的なモニタリングを通じて、目標達成まで伴走します。
自社の業種や課題解決の実績で選ぶ際のポイント
最適な認定支援機関を選ぶためには、その専門家の能力や実績を慎重に見極める必要があります。中小企業庁の検索システムで候補を探し、複数の専門家と面談して比較検討することが重要です。
- 405事業の支援実績が豊富か
- 金融機関との交渉経験が十分にあるか
- 自社の業種やビジネスモデルに精通しているか
- 経営者の悩みを真摯に聞き、円滑に意思疎通が図れるか
依頼前の準備:専門家との連携を円滑にする社内資料の整理
認定支援機関に相談する前に、自社の経営状況を示す資料を整理しておくと、その後の手続きがスムーズに進みます。正確な現状分析のために、少なくとも以下の資料は準備しておきましょう。
- 直近3期分の決算書および勘定科目内訳明細書
- 最新の試算表
- 全ての借入金に関する返済予定表
- 納税証明書
- 不動産の登記事項証明書(所有している場合)
- 組織図や事業の沿革がわかる資料
早期経営改善計画策定支援事業(プレ405)との違い
制度目的の違い:本格的な再生か、早期の対策か
405事業と似た制度に「早期経営改善計画策定支援事業(通称:プレ405)」がありますが、目的が異なります。405事業が、金融支援を必要とする企業の本格的な再生を目指すのに対し、プレ405は、まだ深刻な状況ではないものの資金繰りに不安を感じ始めた企業が、問題が大きくなる前に手を打つ早期の予防を目的としています。
対象者の違い:金融支援の要否が大きな判断基準
両制度の最大の違いは、金融支援の必要性です。405事業は、金融機関からの返済猶予(リスケジュール)などを得ることが前提となります。一方、プレ405は、必ずしも金融支援を必要とせず、「自社の経営状況を客観的に把握したい」「資金繰り管理を強化したい」といった段階の事業者が対象です。そのため、手続きも比較的簡素化されています。
補助上限額とモニタリング期間の比較
目的や計画の深度が異なるため、補助上限額やモニタリング期間にも大きな違いがあります。プレ405は、より手軽に利用できる小規模な制度設計になっています。
| 項目 | 経営改善計画策定支援事業(405事業) | 早期経営改善計画策定支援事業(プレ405) |
|---|---|---|
| 制度目的 | 本格的な再生 | 早期の予防 |
| 金融支援 | 必要(リスケジュール等) | 不要 |
| 補助上限額(合計) | 最大300万円(通常枠) | 最大25万円 |
| 補助率 | 費用の3分の2 | 費用の3分の2 |
| モニタリング期間 | 計画策定後3年間 | 計画策定後1年間(決算時に1回) |
経営改善計画策定支援事業(405事業)に関するよくある質問
補助金はいつ支払われますか?
補助金は、原則として専門家による支援業務が完了し、その成果物(計画書や報告書)を提出した後に支払われる「後払い」です。計画策定費用は計画成立後に、伴走支援費用はモニタリング報告ごとに申請し、審査を経て支払われます。申請から入金までは数ヶ月程度かかるのが一般的です。
赤字決算でも申請できますか?
申請可能です。本事業は、そもそも財務状況が悪化し、自力での再建が難しい事業者を支援するための制度です。したがって、赤字決算であること自体が申請の妨げになることはありません。ただし、策定する計画によって将来的に黒字転換し、債務を返済していける合理的な見込みがあることを示す必要があります。
計画策定後のモニタリングでは具体的に何をしますか?
モニタリングは、計画が着実に実行されているかを確認するために行われます。認定支援機関が定期的に事業者と面談し、具体的な活動を通じて進捗を管理します。
- 最新の試算表や資金繰り表に基づく数値目標の達成度検証
- アクションプランの進捗状況の確認
- 計画と実績の差異分析と改善策の検討
- 金融機関や経営改善支援センターへの定期報告
この制度を利用すると、会社の信用情報に影響はありますか?
本制度を利用して返済猶予(リスケジュール)を金融機関に要請した場合、金融機関内部での信用格付けは一時的に引き下げられ、「要注意先」などに分類されるのが一般的です。これは制度利用のペナルティではなく、返済条件を変更したという事実に基づく措置です。しかし、専門家と共に計画を遂行し業績が回復すれば、格付けは再び正常に戻り、将来の新たな融資にも繋がります。
まとめ:専門家と共に事業再生を目指すための第一歩
経営改善計画策定支援事業(405事業)は、金融支援を必要とする中小企業が専門家と事業再生に取り組む際の費用負担を軽減する重要な制度です。補助率は原則3分の2で、計画策定だけでなく策定後の3年間にわたる伴走支援(モニタリング)費用も対象となります。利用には金融機関の同意が不可欠であり、客観的で実行可能性の高い計画の策定が求められます。資金繰りに悩む経営者の方は、まず自社が要件に該当するかを確認し、信頼できる認定支援機関へ相談することから始めてみてはいかがでしょうか。

