取締役会設置会社の取締役人数|会社法の下限と変更手続を確認する
取締役会設置会社の取締役人数は、「会社法上何人必要か(3名以上)」を満たしているつもりでも、欠員や社外比率、代表取締役の選定手続まで含めると実務が詰まりやすい論点です。人数要件を見誤ると、取締役会が成立せず代表取締役の選定や重要な意思決定が停滞し、契約・金融機関対応・登記対応まで連鎖的に遅れる不利益が生じ得ます。条文要件とガバナンス・コストのバランスを踏まえ、自社の取締役の人数・構成を維持するのか、機関設計を見直すのかを判断できる状態にしておくことが重要です。以下では、取締役会設置会社の判断材料として人数要件と関連手続の要点を示します。
取締役会設置会社の会社法上の位置づけ
株式会社の機関設計を整理する
株式会社の機関設計は、会社の意思決定(誰が何を決めるか)と監督(誰がチェックするか)を定める枠組みです。会社法は、有限会社と株式会社を統合した制度改正の流れの中で、一定のルールのもとで機関を原則として任意に設計できる考え方を採り(会社法第326条)、公開会社か非公開会社か、また会社規模(大会社かどうか)によって、必須・選択可能な機関の組合せが変わります。
取締役会を置く場合、意思決定の中心が取締役会に移る一方で、権限集中に見合う統制も必要になります。実務では、取締役会の構成員(取締役)は「取締役会という合議体の一員」であり、非設置会社の取締役よりも、権限構造が明確に分化して運用されることが多い点を踏まえて設計します。
取締役会設置会社と非設置会社を比べる
取締役会設置会社と非設置会社の差は、業務執行に関する決定がどこに集約されるか、および代表者選定がどの機関で行われるかに表れます。取締役会設置会社では、取締役会決議により代表取締役および業務執行取締役を選ぶ運用が基本となります(会社法第362条、会社法第363条)。
また、取締役会の決議は、原則として出席取締役の過半数で行い、定款で要件を加重(厳しくする)することも可能です。加えて、取締役は代理人を立てて議決権行使をすることはできない点、そして特別利害関係を有する取締役は決議に参加できない点は、実務上の重要なコンプライアンス論点になります(利益相反・公正性確保の観点)。
| 観点 | 取締役会設置会社 | 取締役会非設置会社 |
|---|---|---|
| 代表者の選定 | 取締役会決議で代表取締役を選定する(会社法第362条、会社法第363条) | 会社の機関設計によって異なるが、取締役会による選定という枠組みは前提にならない |
| 意思決定の方式 | 合議体(取締役会)で決議し、出席取締役の過半数で成立(定款で加重可) | 取締役会がないため、定款・取締役の人数構成に応じた運用設計になる |
| 手続運用の留意点 | 取締役は代理人不可、特別利害関係取締役は決議参加不可 | 取締役会特有の運用ルールは原則として問題にならない |
取締役会設置会社の取締役人数
取締役は3名以上が必要です
取締役会設置会社では、取締役会は3名以上の取締役で構成されます(会社法第331条)。この「3名以上」は、単なる慣行ではなく、取締役会という合議体を成立させるための会社法上の要件です。
取締役会を適法に機能させるうえでは、人数要件だけでなく運用要件も同時に押さえる必要があります。たとえば、取締役会決議は出席取締役の過半数で行うため、欠員で構成が崩れると重要事項の決定が滞り得ます。また、取締役会設置会社では取締役会が取締役の中から1名以上を代表取締役に選定しなければならないため、欠員により取締役会を開けない状態は、代表体制にも直撃します(会社法第362条)。
- 取締役が2名以下になると取締役会が成立せず、取締役会決議事項(代表取締役の選定等)が停滞する
- 取締役会決議の前提として、特別利害関係取締役が議決から外れると可決要件を満たしにくくなる
- 代表取締役を選べない期間が生じると、対外契約・金融機関対応で意思決定・執行が止まりやすい
公開会社や大会社の要件を確認する
取締役会設置が「任意」か「義務」かは、会社区分で変わります。会社法上、公開会社等について取締役会設置義務が定められており(会社法第327条)、該当する場合は取締役3名以上(会社法第331条)の確保が前提になります。
また、会社法の大会社は、資本金額が5億円以上または負債総額が200億円以上の会社をいい(会社法第2条)、どちらか一方に該当すれば大会社です。大会社では会計監査人の設置が強制され(会社法第328条)、会計監査人による会計監査を受ける体制が前提となるため、取締役会を含む機関設計を「人員(社外人材含む)」「監査コスト」「運用負荷」の観点から再点検する必要があります。
3名・4名・6名で何が変わるかを機関設計ごとに線引きする
取締役会設置会社は「取締役3名以上」がスタート地点ですが、採用する機関設計・制度により、実質的に求められる構成が増えます。とくに監査等委員会設置会社や指名委員会等設置会社では、委員の社外比率に法定要件があり、結果として最低限必要となる社外取締役数が明確になります(会社法第331条、会社法第400条)。
| ライン | 典型場面 | 会社法上の要点 |
|---|---|---|
| 3名 | 取締役会設置会社の最低ライン | 取締役会は3名以上で構成(会社法第331条) |
| 4名 | 取締役会+監督機能も確保したい局面 | 取締役会は代表取締役を1名以上選定する必要があり(会社法第362条)、意思決定と監督の役割分担が課題になる |
| 6名 | 社外比率要件・委員会運用が重い設計を検討する局面 | 監査等委員会設置会社・指名委員会等設置会社では委員会の過半数を社外取締役とする必要(会社法第331条、会社法第400条) |
実務的には、委員会の過半数が社外取締役であることを満たすため、取締役の総数が3名であっても社外取締役を最低2名確保する必要が生じ得ます(過半数要件の帰結)。この点は「人数」だけでなく「属性(社外か社内か)」まで含めて機関設計を線引きする場面です。
取締役会と役員構成の要件
監査役と会計参与の設置要件
取締役会設置会社では、業務執行の決定が取締役会に集約されるため、監督側の設計が重要になります。監査役や会計参与は、その会社が「公開会社か非公開会社か」「大会社かどうか」「会計監査人が必置か」といった区分とセットで検討します。
参照すべき基準の一つが大会社該当性です。大会社(資本金5億円以上または負債総額200億円以上:会社法第2条)に該当する場合、会計監査人が強制され(会社法第328条)、会計監査人の監査を前提に監査役の監査が進む運用になりやすいため、「会計参与で代替して体制を軽くする」という発想が取りにくくなります。
監査役会設置会社などの人数整理
機関設計を高度化すると、必要な役員の「人数」だけでなく「社外比率」の確保が人材面の制約になります。とくに委員会型では、委員の過半数を社外取締役とする要件が中核にあり(会社法第331条、会社法第400条)、結果として社外人材の確保が必須のタスクになります。
- 監査等委員会設置会社・指名委員会等設置会社では委員の過半数を社外取締役とする必要がある(会社法第331条、会社法第400条)
- 代表取締役および業務執行取締役は取締役会決議で選定する運用となる(会社法第362条、会社法第363条)
- 取締役会決議では特別利害関係取締役が議決に参加できず、想定より可決要件が厳しくなることがある
監査役を置くか会計参与で足りるかは非公開会社かどうかで分かれる
監査役の要否を「会計参与で代替できるか」という観点で検討する場合でも、前提として自社が公開会社か非公開会社か、また大会社かどうかを切り分ける必要があります。会社法上の公開会社は、株式の全部または一部に譲渡制限が付いていない会社をいい(会社法第2条)、実務上も機関設計の制約が強くなりがちです。
一方で、会計参与は会計の専門家が関与して計算書類作成を支える設計ですが、大会社では会計監査人が必置(会社法第328条)であるため、「誰にどの監督機能を担わせるか」を、公開性・規模とセットで整理することが実務上の近道です。
取締役人数の決め方と定款設計
定款で下限と上限をどう定めるか
取締役の員数(最低人数・上限人数)は、定款で設計できる領域です。取締役会設置会社である以上、取締役会は3名以上で構成されるため(会社法第331条)、定款の員数条項はこの法定下限を下回れません。
また、取締役会設置会社では、定款により取締役の最低員数を増やすことや最高数(上限)を定めることが可能です。実務上、上限を置く定款が多いとされ、上限設定は役員増員の歯止めに加え、外部からの買収局面での防衛的意味合いを意識して設計されることもあります。
- 法定下限(取締役会は3名以上:会社法第331条)を満たす表現になっているか
- 最低員数を高くしすぎると欠員時に機関要件欠缺へ直行するため、欠員リスクと両立できるか
- 上限を置く場合、将来の増員時に定款変更(株主総会特別決議)が必要になる点を織り込めているか
社外取締役と特別取締役制度を検討する
社外取締役の要否は機関設計により変わります。監査等委員会設置会社および指名委員会等設置会社では、監査等委員会または指名・監査・報酬委員会の過半数を社外取締役としなければならず(会社法第331条、会社法第400条)、取締役3名の最小構成を採る場合でも、社外取締役を最低2名確保する必要が生じます。
また、社内取締役(代表取締役・業務執行取締役)と社外取締役の役割分担を明確にすることで、意思決定の機動性と牽制の実効性を両立しやすくなります。なお、取締役会は取締役の中から代表取締役を選定する必要があり(会社法第362条)、代表選定の設計は社外比率の設計と矛盾しないよう注意が必要です。
増員しやすい定款か、欠員で詰まりやすい定款かを員数条項で見分ける
員数条項は、増員局面の「動きやすさ」だけでなく、欠員局面の「詰まりやすさ」に直結します。取締役会設置会社では取締役会が3名以上で構成される必要があるため(会社法第331条)、員数条項が硬直的だと、欠員が出た瞬間に取締役会運営が止まり得ます。
また、取締役会の決議は出席取締役の過半数であり、特別利害関係取締役は議決に参加できないため、形式上3名いても議題によっては可決の見通しが崩れます。したがって、員数条項の検討では「欠員」「利害関係排除」「代表選定(取締役会で代表取締役を選ぶ:会社法第362条)」を同時に想定しておくことが実務的です。
取締役人数を変える手続と登記
選任と解任の手続を株主総会から追う
取締役は株主総会で選任されます。複数名を同一株主総会で選任する場合、一定の条件のもとで累積投票制度を利用でき、株主は「選任される取締役数と同数の議決権」を1株あたり持ち、特定候補に集中投票できます。
累積投票は自動適用ではなく、株主総会の5日前までに株主(持株数は問わない)から書面による請求があった場合に限って適用されます(会社法第342条)。また、定款で累積投票を排除することも可能です(会社法第342条)。
解任については、委任関係としての性質を踏まえ、解任後の紛争(損害賠償請求等)を見据えて、議事録・根拠資料を整備しておくことが実務上の安全策になります。
変更登記の期限と過料リスクを確認する
役員の変更登記を怠ると、過料の対象になり得ます。会社法は、登記を怠った場合などを過料対象行為として規定しており(会社法第976条)、登記手続の遅延は「実務上のうっかり」で済まないコンプライアンスリスクになります。
とくに代表取締役については、登記事項として氏名および住所が登記される運用である点に注意が必要です。代表取締役を取締役会決議で選定した場合も(会社法第362条、会社法第363条)、対外的公示として登記対応が不可欠になります。
増員・減員で先に用意すべき資料は何かを総会前後の時系列で整理する
取締役の増員・減員は、決議そのものだけでなく、前後の書類整備が結果を左右します。とくに累積投票が絡む可能性がある場合、株主からの請求期限(総会の5日前:会社法第342条)を逆算し、招集通知・参考書類の設計や候補者調整を前倒しで進める必要があります。
- 総会前に取締役会で議案を決定し、招集通知・株主総会参考書類の内容を確定させる
- 累積投票の請求があり得るため、総会5日前までの請求受付(会社法第342条)を踏まえて社内締切を設定する
- 株主総会当日は決議内容を正確に反映した株主総会議事録を作成する
- 就任承諾書等の就任関係書類を整備し、代表取締役選定がある場合は取締役会議事録も確定させる
- 登記懈怠が過料リスクになり得るため(会社法第976条)、登記申請に必要な添付書類を揃えて早期に申請する
取締役が3名未満になった場合の対応
要件欠缺による法的リスクを押さえる
取締役会設置会社で取締役が3名未満になると、取締役会が3名以上で構成されるべき要件(会社法第331条)を満たせず、取締役会決議を前提にした代表取締役の選定(会社法第362条、会社法第363条)などが機能不全になり得ます。
また、取締役会運営では、特別利害関係取締役が議決に参加できないため、構成員が少ない状態ほど「実質的に決議できない」場面が増えます。欠員時は、取締役会を開けないこと自体が、資金調達・重要契約・内部統制の面で取引先説明を難しくするため、早期の是正(補充選任または機関設計変更)が重要です。
権利義務取締役と仮取締役を理解する
員数欠缺への応急対応としては、まず「退任しても後任就任まで権利義務が残る」類型があることを理解する必要があります。会社法は、退任により法令・定款の員数を欠く場合に、後任者が就任するまで権利義務を有すると定めています(会社法第346条)。
他方で、死亡等で権利義務関係が継続できない場合や、実務上、権利義務取締役が協力せず取締役会運営ができない場合には、利害関係人の申立てにより裁判所が一時的に職務を行う者を選任する枠組み(いわゆる仮取締役の活用)を検討します。欠員の局面は、法的手当てと実務の可動性を同時に確保することが狙いになります。
取締役会設置会社の維持か廃止かを判断する
欠員により3名未満となった場合の選択肢は、(1)後任を選任して取締役会設置会社を維持する、(2)定款変更等により取締役会を廃止する、のいずれかになります。
判断にあたっては、公開会社や一定の会社形態に取締役会設置義務がある点(会社法第327条)を先に確認することが実務の出発点です。取締役会を維持するのであれば、取締役会が代表取締役を1名以上選定しなければならない(会社法第362条)という要請も踏まえ、代表体制を空白なく再構築する必要があります。
よくある質問
取締役会設置会社でも取締役を2人だけにできますか?
できません。取締役会設置会社では、取締役会は3名以上の取締役で構成される必要があるため(会社法第331条)、取締役を2名にすると取締役会設置会社の要件を満たせません。
2名体制にしたい場合は、「取締役会を置く旨」を定めた定款規定の見直しを含め、機関設計そのものを取締役会非設置会社へ変更する手続を検討することになります(会社区分によっては取締役会設置義務があるため、まず会社法第327条の射程を確認します)。
取締役が3名未満になった場合、いつまでに是正すべきですか?
会社法に「欠員後○日以内に補充」という一律の数値期限はありませんが、取締役会が3名以上で構成される要件(会社法第331条)を欠くと、取締役会決議を前提とする代表取締役の選定(会社法第362条、会社法第363条)などが停滞し、実務上の影響が直ちに生じ得ます。
また、登記を怠った場合は過料の対象となり得るため(会社法第976条)、欠員・選任・代表選定などの会社の状態変化を放置しないことが重要です。可能な限り早期に、補充選任(臨時株主総会の開催等)か、機関設計変更の方針決定へ進める必要があります。
監査役を置かずに会計参与だけを置くことはできますか?
検討にあたっては、まず自社が公開会社かどうか(株式の全部または一部に譲渡制限がない会社が公開会社:会社法第2条)と、大会社かどうか(資本金5億円以上または負債200億円以上:会社法第2条)を確認します。
大会社に該当する場合は、会計監査人が強制され(会社法第328条)、会計監査人による会計監査を前提に監査体制が設計されやすいため、会計参与のみで監督機能を代替する発想は制約を受けます。最終的には、会社区分と目指すガバナンス水準に応じて、監査役・会計参与・会計監査人の組合せを整理して決めるのが実務的です。
社外取締役を置くことは義務ですか?
一律に義務ではありませんが、機関設計によっては社外取締役に関する明確な要件が課されます。監査等委員会設置会社および指名委員会等設置会社では、監査等委員会または指名・監査・報酬委員会の過半数を社外取締役としなければなりません(会社法第331条、会社法第400条)。
この「過半数」要件の帰結として、取締役が3名の最小構成であっても社外取締役を最低2名確保する必要が生じます。したがって、自社で社外人材の確保が難しい場合は、機関設計の選択肢(監査役会設置会社に寄せるのか、監査等委員会設置会社にするのか等)を先に比較することが現実的です。
取締役会設置会社への対応で次にすべきこと
取締役会設置会社では、まず取締役会が3名以上で構成されているか(会社法第331条)を起点に、欠員時に取締役会決議(代表取締役の選定を含む)が回る体制かどうかを点検することが重要です。次に、公開会社・大会社(資本金5億円以上または負債総額200億円以上:会社法第2条)といった会社区分により、取締役会設置が義務となるか(会社法第327条)、会計監査人が必置となるか(会社法第328条)を整理し、機関設計の選択肢を狭めます。人数を増減する場合は、株主総会での選任・解任だけでなく、累積投票の請求期限(総会の5日前まで:会社法第342条)や変更登記の遅延が過料リスクになり得る点(会社法第976条)も含めて、時系列で手続きを組み立ててください。社外取締役比率や欠員時の対応(会社法第346条)は、定款の員数条項と実運用が噛み合っているかの確認とセットで検討するのが安全です。個別の事実関係(定款内容、役員の利害関係、登記状況等)により結論が変わり得るため、必要に応じて法務・登記の専門家にも相談しながら進めることが実務的です。

