民事再生と破産の違いとは?手続きの流れ、メリット・デメリットをわかりやすく解説
経営状況が悪化し、事業の再生か清算かという重大な岐路に立たされている場合、どの道を選択すべきか判断に迷うのは当然です。特に、事業の継続を目指すのか、あるいは会社を畳むのかによって、選ぶべき法的手続きは大きく異なります。この記事では、事業再生を目指す「民事再生」と事業を清算する「破産」を中心に、それぞれの法的整理手続きの違い、メリット・デメリット、手続きの流れをわかりやすく解説します。
法的整理手続きの全体像:再建型と清算型の違い
事業の継続を目指す「再建型」手続き(民事再生・会社更生)
再建型手続きは、経営難に陥った企業が事業を継続しながら、裁判所の監督下で負債の整理を行い、経営の立て直しを目指す制度です。事業が持つ技術やノウハウ、雇用、取引関係を維持できる点が大きな特徴です。
| 手続きの種類 | 根拠法 | 主な対象 | 経営陣の処遇 |
|---|---|---|---|
| 民事再生 | 民事再生法 | 法人・個人を問わず、中小企業から大企業まで | 原則として現経営陣が留任し、自主的に再建を進める |
| 会社更生 | 会社更生法 | 主に大規模な株式会社 | 経営陣は退任し、裁判所が選任した管財人が経営権を掌握する |
いずれの手続きも、債権者の多数の同意を得て裁判所に認可された計画に基づき、企業の経済的再生を支援します。
資産を分配し会社を消滅させる「清算型」手続き(破産・特別清算)
清算型手続きは、事業継続が困難な場合に、会社の全資産を現金化して債権者に公平に分配し、法人格を消滅させることを目的とする制度です。事業活動に終止符を打ち、法的に会社をなくすための手続きといえます。
| 手続きの種類 | 根拠法 | 主な対象 | 手続きの特徴 |
|---|---|---|---|
| 破産 | 破産法 | すべての法人・個人 | 裁判所が選任した破産管財人が資産の換価・配当を行う |
| 特別清算 | 会社法 | 株式会社のみ | 破産より手続きが簡易・迅速だが、債権者の協力が得られやすい場合に適す |
清算型手続きが完了すると、会社は法的に消滅し、残った債務の支払い義務もなくなります。
【比較】民事再生と自己破産の5つの本質的な違い
違い1. 目的:事業再建か、事業清算か
民事再生と自己破産の最も本質的な違いは、その目的にあります。民事再生が事業の継続と再建を目指す「再建型」の手続きであるのに対し、自己破産は事業を停止し会社を消滅させる「清算型」の手続きです。
民事再生では、再生計画に基づき時間をかけて債務を返済していくことで、企業の存続を図ります。一方、自己破産は、会社の全資産を債権者への配当に充て、法人格を消滅させることで法的な後始末をつけます。
違い2. 事業の継続性:事業は存続するか、消滅するか
民事再生では、手続き開始後も原則として事業活動を継続します。従業員の雇用や取引先との契約関係も基本的に維持され、営業しながら再建を目指します。
対照的に、自己破産では申立てと同時にすべての事業を停止します。会社は消滅するため、従業員は全員解雇となり、事業拠点は閉鎖されます。民事再生が事業を治療する手続きなら、自己破産は社会から円滑に退場するための手続きです。
違い3. 経営陣の処遇:経営権は維持されるか、失われるか
経営陣の処遇も大きく異なります。民事再生では、原則として従来の経営陣が留任し、引き続き経営の指揮を執ります。会社の事情を熟知した経営者が、自らの主導で再建計画を進められる点が強みです。
一方、自己破産では、手続き開始と同時に経営陣は会社の管理処分権を完全に失います。裁判所が選任した破産管財人が財産を管理し、清算業務のすべてを取り仕切ります。
違い4. 手続きの対象者:法人・個人を問わない民事再生
民事再生は、株式会社などの法人だけでなく、医療法人、学校法人、個人事業主まで、規模や形態を問わず幅広い債務者が利用できます。
自己破産も同様に、法人・個人を問わず対象となりますが、手続き後の結末が異なります。個人が破産した場合は「免責」により借金がゼロになりますが、法人が破産した場合は会社そのものが消滅して終結します。
違い5. 担保権の扱い:別除権として行使されるか
民事再生では、抵当権などの担保権は「別除権」として扱われます。これは、担保権を持つ債権者が、再生手続きとは無関係に権利を行使して債権を回収できることを意味します。
このため、事業に必要な工場や設備が競売にかけられるリスクがあり、再建を進めるには担保権者との個別交渉が不可欠です。自己破産でも別除権は認められますが、事業継続が前提となる民事再生では、この権利の存在が再建の成否を分ける重要な論点となります。
【比較】民事再生と会社更生法の主な相違点
対象となる企業の違い(株式会社への限定)
民事再生と会社更生は、どちらも再建型の手続きですが、利用できる対象が異なります。
| 手続き | 対象範囲 |
|---|---|
| 民事再生 | 株式会社、合同会社、医療法人、個人など、法人格や規模を問わず広く利用可能 |
| 会社更生 | 株式会社に限定される。費用が高額なため、実務上は上場企業などの大企業が中心 |
経営陣の処遇と管財人の権限
経営の主導権を誰が握るかという点も、両者の明確な違いです。
| 手続き | 経営の主体 |
|---|---|
| 民事再生 | 原則として現経営陣が留任し、経営を継続する(裁判所から選任される監督委員が監督) |
| 会社更生 | 経営陣は総退陣し、裁判所が選任する更生管財人が経営権を完全に掌握する |
経営者の手腕が事業に不可欠な中小企業では、経営権を維持できる民事再生が選択されやすい傾向にあります。
手続きの柔軟性と担保権の扱い
担保権の扱いと、それに伴う手続きの性格も大きく異なります。
| 手続き | 担保権の扱いと特徴 |
|---|---|
| 民事再生 | 担保権は別除権として扱われ、手続き外での権利行使が可能。担保権者との個別交渉が必要で、柔軟性が高い |
| 会社更生 | 担保権も更生担保権として手続き内に取り込まれ、権利行使が制限される。厳格で強力な手続き |
民事再生は、債権者との合意をベースに、より迅速かつ実情に即した再建を目指す手続きといえます。
民事再生手続きを選択するメリット
事業を継続しながら自主的な再建を目指せる
民事再生の最大のメリットは、事業を止めずに経営の立て直しを図れる点です。法的な保護を受けながら、本来の事業活動に集中できます。
- 営業活動を続けながら、債務を大幅に圧縮したり、返済期間を延長したりできる
- 債権者による給与や預金口座の差し押さえ(強制執行)を停止できる
- 事業継続に必要な運転資金を確保しやすくなる
- 顧客やブランドイメージの毀損を最小限に抑えられる
経営陣が原則として留任できる
現経営陣が経営権を維持したまま、再建の舵取りを続けられる点も大きな利点です。これにより、現場の混乱を防ぎ、円滑な再建活動が期待できます。
- 会社の事業や内情を熟知した経営者が引き続き指揮を執れる
- 経営者の交代による現場の混乱や、取引先・従業員の動揺を防げる
- 経営者の持つ人脈やノウハウを再建に直接活かすことができる
- 状況に応じた迅速かつ柔軟な経営判断が可能になる
企業のブランド価値や許認可を維持しやすい
民事再生は法人格を存続させるため、会社がこれまで築き上げてきた有形・無形の資産を引き継ぐことができます。
- 会社の商号やブランドイメージをそのまま維持できる
- 建設業や運送業などで必要な事業上の許認可を失わずに済む
- 特許権や商標権などの知的財産権を維持できる
- 培ってきた技術や顧客との信頼関係といった無形資産を再建の土台にできる
民事再生手続きに伴うデメリットと注意点
社会的信用の低下と取引への影響は避けられない
民事再生は法律上の倒産手続きであるため、申立ての事実が公になると社会的な信用は低下します。これにより、事業運営に様々な影響が及びます。
- 官報公告や報道により、倒産の事実が広く知られてしまう
- 取引先から契約を解除されたり、取引条件を現金払いに変更されたりする
- 新規の借入れやリース契約が極めて困難になる
- ブランドイメージが悪化し、売上が減少する可能性がある
担保権が実行され事業用資産を失うリスクがある
民事再生では、担保権の実行を自動的に阻止できません。事業に必要な資産に担保が設定されている場合、競売にかけられて失うリスクがあります。
- 担保権は別除権として扱われ、手続きとは別に権利行使される
- 工場や店舗、機械などが売却されると、事業継続が不可能になる恐れがある
- 資産を守るには、担保権者と個別に交渉し、弁済に関する合意(別除権協定)を結ぶ必要がある
- 裁判所の中止命令制度もあるが、その効力は一時的・限定的である
手続き費用の確保と資金繰りの悪化
民事再生を申し立てるには、多額の費用を現金で準備する必要があります。また、手続き中は資金繰りがさらに厳しくなります。
- 裁判所に納める予納金(負債額に応じ数百万円以上)が必要になる
- 弁護士費用や公認会計士への報酬など、専門家への支払いが発生する
- 金融機関からの新規融資が受けられなくなり、運転資金の確保が難しくなる
- 債務免除益に対して法人税が課税されるリスクがある
主要取引先・金融機関への説明責任と関係維持の要点
民事再生を成功させるには、債権者の理解と協力が不可欠です。再生計画案の可決には、債権者の頭数の過半数かつ債権総額の2分の1以上の賛成が必要です。
- 経営状況や再建計画について、誠実かつ具体的に説明する責任がある
- 大口債権者である金融機関などの協力が得られなければ、計画の可決は困難になる
- 破産した場合より多くの返済を受けられるという経済的合理性を丁寧に説明する
- 認可後も計画の進捗を報告し、信頼関係の再構築に努める
民事再生手続きの開始から終結までの流れ
申立てと保全処分・監督委員の選任
まず、債務者である企業が管轄の地方裁判所に再生手続開始の申立てを行います。同時に、債権者による個別の権利行使を禁じる保全処分を申し立て、会社の財産を保全します。申立て後、裁判所は手続きを監督する監督委員(通常は弁護士)を選任します。
民事再生手続開始決定
申立てから1~2週間程度で、裁判所は書類審査を経て再生手続開始決定を下します。この決定は官報に公告され、債権届出期間や再生計画案の提出期限といった今後のスケジュールが定められます。この決定により、法的な再建プロセスが正式にスタートします。
債権の届出・調査・確定
開始決定後、債権者は定められた期間内に、自らの債権額やその内容を裁判所に届け出ます。会社側は、届け出られた債権の内容を精査し、認めるか否かの認否書を作成します。この手続きを通じて、再生計画の基礎となる負債の総額が法的に確定します。
財産状況の評定と報告
会社は、手続き開始時点での全資産(不動産、売掛金、在庫など)を時価で評価し、財産目録と貸借対照表を作成して裁判所に報告します。あわせて、再生に至った経緯や事業の状況をまとめた報告書も提出します。これらの資料は、再生計画の妥当性を判断する重要な基礎となります。
再生計画案の作成・提出
確定した負債額と資産状況に基づき、具体的な再建計画を示す再生計画案を作成し、裁判所に提出します。計画案には、債務のカット率、残債務の返済方法、事業の改善策などを具体的に盛り込みます。スポンサーの支援を受ける場合は、その内容もここで確定させます。
再生計画案の決議と認可決定
提出された再生計画案は、債権者集会または書面投票による決議に付されます。計画が可決されるには、議決権を持つ債権者の過半数の賛成と、議決権総額の2分の1以上の賛成が必要です。可決後、裁判所が内容を審査し、法的な問題がなければ認可決定を下します。これが手続きの最大の山場です。
再生計画の遂行と手続きの終結
認可決定が確定すると、会社は再生計画に従って債権者への弁済を開始します。返済期間は計画によりますが、最長で10年です。計画どおりの返済が完了するか、計画の遂行に支障がないと認められた場合(認可から原則3年後)、裁判所は再生手続終結の決定を下し、一連の法的手続きがすべて完了します。
どの手続きが最適か?自社の状況に応じた判断基準
事業に収益性や将来性が見込めるか
再建型手続きを選択する大前提は、事業そのものに収益を上げる力があることです。財務上の問題さえ解決すれば本業で利益を出せるか、あるいは事業改革によって黒字化できる見通しがあるかが最初の判断基準です。
事業モデル自体が成り立たず、将来的な収益が見込めない場合は、事業を清算する破産を選択する方が合理的な場合があります。
経営陣の継続が再建に不可欠か
現在の経営者が持つ手腕、人脈、ノウハウが事業の中核を担っている場合、経営陣が留任できる民事再生が適しています。経営者が交代すると事業価値が大きく損なわれる中小企業などがこれに該当します。
逆に、経営の行き詰まりの原因が経営陣自身にある場合は、経営者が交代する会社更生や、第三者に事業を譲渡する形での再建を検討すべきです。
債権者の協力が得られる見込みはあるか
民事再生は、債権者の多数の賛成がなければ成立しません。特に、融資額の大きい金融機関などの主要な債権者から再建への理解と協力が得られるかは、極めて重要な判断基準です。
債権者との信頼関係が既に崩壊しており、協力が見込めない場合は、より強制力の強い会社更生や、清算を前提とした手続きを考えざるを得ないこともあります。
スポンサーによる資金援助の可能性があるか
自社の資金力だけでは再建が難しい場合でも、事業の価値を評価してくれるスポンサー(支援企業)が見つかれば、再建の可能性は大きく高まります。スポンサーからの資金注入により、債務の一括弁済や事業への投資が可能になります。
近年では、申立て前にスポンサーを確保しておくプレパッケージ型の民事再生も増えており、スポンサーの存在は最適な手続きを選ぶ上で有力な判断材料となります。
申立て決断前に整理すべき情報と社内体制のポイント
民事再生の申立てを決断する前に、周到な準備が必要です。特に、以下の情報の整理と社内体制の構築が成功の鍵を握ります。
- 資金繰りの確認:申立て後の運転資金を賄えるだけの現金を確保する
- 資産・負債の正確な把握:すべての資産と負債を洗い出し、法的な問題をクリアにする
- 情報管理体制の構築:情報漏洩による混乱を防ぐため、秘密裏に準備を進めるチームを組織する
- 専門家(弁護士)の選任:倒産実務に精通した弁護士を選び、最適な戦略を立てる
民事再生に関するよくある質問
Q. 民事再生を選ぶと従業員の雇用はどうなりますか?
民事再生は事業継続を前提とするため、従業員の雇用は原則として維持されます。ただし、再生計画の過程で不採算部門の縮小などに伴う人員整理(リストラ)が行われる可能性はあります。なお、未払いの給与や退職金は、他の一般債権よりも優先的に支払われるよう法律で保護されています。
Q. 民事再生が失敗した場合、破産に移行しますか?
はい。再生計画案が債権者集会で否決されたり、裁判所に認可されなかったりして手続きが頓挫した場合は、裁判所の判断で破産手続きに移行するのが一般的です。また、一度認可された計画が履行できなくなった場合も、計画が取り消されて破産に至ることがあります。
Q. 「民事再生」と「倒産」は同じ意味ですか?
「倒産」は、債務の支払いができなくなった状態を指す一般的な言葉であり、法律用語ではありません。一方、「民事再生」は法律(民事再生法)に基づく具体的な手続きの名称です。したがって、民事再生は数ある倒産手続きの一つですが、会社の消滅を意味する「破産」とは異なり、事業を立て直すための前向きな手続きと位置づけられます。
Q. スポンサー型の民事再生とは何ですか?
自社の資金力だけでなく、外部の支援企業(スポンサー)から資金や経営ノウハウの提供を受けて再建を図る手法です。スポンサーが事業を譲り受けたり、新株を引き受けたりして資金を投入し、その資金を債務の弁済に充てます。自力での再建に比べ、より確実かつ迅速に再生を進められるメリットがあります。
Q. 手続きにはどれくらいの期間がかかりますか?
標準的なケースでは、裁判所への申立てから再生計画の認可決定まで、およそ半年程度かかります。ただし、事案の複雑さによって期間は変動します。認可決定後の再生計画に基づく返済期間は、計画内容によりますが、原則として最長10年の範囲で設定されます。
まとめ:自社に最適な法的整理手続きを見極めるために
本記事では、民事再生と破産を中心に、再建型と清算型の法的整理手続きを比較・解説しました。両者の最大の違いは、事業を継続して再建を目指すのか(民事再生)、事業を停止して法人格を消滅させるのか(破産)という根本的な目的にあります。民事再生は経営陣が留任し自主再建を図れる強力な手段ですが、信用低下や資金繰りの問題など、乗り越えるべき課題も存在します。自社の事業に将来性が見込めるか、債権者の協力は得られるか、そしてスポンサーの支援は期待できるかといった点を総合的に評価することが重要です。どの手続きを選択するにせよ、判断が遅れると選択肢が狭まる可能性があります。速やかに倒産実務に精通した弁護士に相談し、専門的な視点から最適な方針を決定することが、最善の結果につながります。

