法人破産とは?経営者の自己破産の必要性や手続きの流れを解説
会社の資金繰りが悪化し、事業の継続が困難になったとき、経営者として会社の破産という選択肢を考えざるを得ない状況は、非常に大きな精神的負担を伴います。会社の破産を検討する上で、手続きの具体的な流れはもちろん、経営者自身がどうなるのか、特に会社の連帯保証人になっている場合に個人としても破産が必要なのかは、最も大きな懸念事項ではないでしょうか。この記事では、法人破産の手続きの全体像と、経営者個人の自己破産との関連性、そして従業員や取引先など関係者への影響について、実務的な観点から詳しく解説します。
会社(法人)破産と経営者個人の自己破産の関連性
法人破産と個人の自己破産の基本的な違い
法人破産と個人の自己破産は、どちらも債務の返済が困難になった際の法的な救済手段ですが、その目的や仕組みには根本的な違いがあります。
法人破産は、支払不能や債務超過に陥った会社(法人)を法的に清算し、消滅させるための手続きです。手続きが完了すると法人格が消滅するため、会社が負っていた債務もすべて消滅します。個人のように破産後の生活再建を想定していないため、借金の支払義務を免除する「免責」という制度はありません。
一方、個人の自己破産は、個人の経済的な再出発を目的としており、裁判所から免責許可決定を受けることで、税金などの一部を除くほとんどの借金の支払義務が免除される手続きです。
両者の主な違いは以下の通りです。
| 項目 | 法人破産 | 個人自己破産 |
|---|---|---|
| 目的 | 法人格の清算・消滅 | 個人の経済的再建・再出発 |
| 免責制度 | なし(法人格の消滅により債務も消滅) | あり(免責許可決定により債務の支払義務が免除) |
| 財産の扱い | 原則としてすべての資産が換価処分の対象 | 生活に必要な最低限の財産(自由財産)は手元に残せる |
| 公租公課(税金等) | 法人格の消滅とともに支払義務も消滅 | 免責の対象外(非免責債権)となり、支払義務は残る |
| 破産管財人 | 原則として必ず選任される(管財事件) | 財産が少ない場合は選任されないことがある(同時廃止事件) |
会社が破産する場合、経営者個人の自己破産は必須か
会社が法人破産をしても、経営者個人が必ずしも自己破産をしなければならないわけではありません。法律上、会社と経営者個人は別人格として扱われるため、会社の債務が直接個人の責任になることは原則としてありません。
しかし、現実には多くの中小企業で、金融機関から融資を受ける際に経営者個人が会社の連帯保証人になっています。この連帯保証債務は、会社が破産しても消滅せず、経営者個人に重くのしかかります。債権者は、会社からの返済が見込めなくなった時点で、連帯保証人である経営者個人に対して残債務の全額一括返済を求めてきます。
会社の負債は多額であることが多く、個人資産で返済できるケースは稀です。そのため、多くの場合、経営者は法人破産と同時に個人としても自己破産を申し立てることになります。これが実務上の一般的な対応です。
もし個人破産をせず、連帯保証債務が残った場合には、以下のようなリスクが生じます。
- 債権者からの訴訟提起や給与・財産の差し押さえ(強制執行)を受ける可能性がある。
- 会社の経営において不正行為や重過失があった場合、破産管財人や債権者から損害賠償責任を追及される可能性がある。
法人破産を検討する際は、ご自身が連帯保証人になっているかどうかを必ず確認し、弁護士と個人の手続きについても相談することが極めて重要です。
経営者が会社の連帯保証人になっている場合の影響
中小企業の経営者が会社の連帯保証人になっている場合、法人破産は経営者個人の生活に直接的かつ重大な影響を及ぼします。
会社が破産しても、連帯保証人としての返済義務は消滅しません。連帯保証人は、通常の保証人と異なり、「まず会社に請求してほしい(催告の抗弁権)」や「まず会社の財産から回収してほしい(検索の抗弁権)」と主張する権利がありません。そのため、債権者は会社の状況にかかわらず、直ちに連帯保証人である経営者個人へ残債務全額の一括返済を請求できます。
この請求に応じられなければ、経営者個人の自宅や預貯金、有価証券といった私財が差し押さえられるリスクに直面し、生活基盤が根底から覆される危険性があります。
このような事態を避けるため、連帯保証債務の返済が現実的に不可能な場合は、法人破産と並行して経営者個人も自己破産を申し立てるのが一般的です。個人の自己破産で免責許可決定を得られれば、この連帯保証債務も法的に支払義務が免除され、経済的な再出発を図ることが可能になります。弁護士に依頼すれば、法人と個人の破産手続きを一体的に進めることで、手続きの重複を避け、費用や時間を節約できるメリットもあります。
会社(法人)破産のメリットとデメリット
破産手続きによって得られる主なメリット
法人破産は、経営が立ち行かなくなった会社を法的に清算し、経営者を過大な負債のプレッシャーから解放するための手続きです。主なメリットは以下の通りです。
- 債務返済義務からの解放: 手続きが完了し法人格が消滅すると、滞納していた税金や社会保険料を含め、会社が負っていたすべての債務の支払義務が法的に消滅します。
- 債権者からの督促停止: 弁護士に依頼し、債権者に受任通知が送付された時点で、会社や経営者への直接の取り立てが原則として停止します。これにより、精神的な平穏を取り戻し、手続きに専念できます。
- 財産の公平な清算: 裁判所が選任した破産管財人が、法に則って会社の財産を管理・換価し、全債権者へ公平に配当します。これにより、特定の債権者だけを優遇するなどのトラブルを避けられます。
- 経営者個人の再出発: 経営者が連帯保証人である場合、法人破産と同時に自己破産を行うことで、個人が負う保証債務からも解放され、経済的な再起を図る道が開かれます。
破産手続きに伴う主なデメリット
法人破産は債務を清算できる一方で、避けられないデメリットも存在します。
- 法人格の消滅: 会社そのものが消滅するため、同じ会社名で事業を継続することはできません。築き上げてきた事業や信用、ブランド、取引関係はすべて失われます。
- 従業員の解雇: 事業を停止するため、雇用している従業員は原則として全員解雇しなければなりません。これは経営者にとって大きな精神的負担となります。
- 全資産の処分: 会社名義の不動産、預貯金、車両、設備など、すべての資産が破産管財人によって換価処分されます。個人破産のような自由財産制度はなく、財産を残すことはできません。
- 費用の発生: 申立てには、裁判所に納める予納金や弁護士費用など、まとまった費用が必要です。資金繰りが厳しい中でこの費用を捻出しなければなりません。
- 社会的信用の低下: 破産の事実は官報に掲載され、社会的な信用が低下します。これにより、破産後に経営者が新たな事業を始める際に、融資や取引で困難が生じる可能性があります。
会社(法人)破産の申立て手続きの具体的な流れ
ステップ1:弁護士への相談・依頼
会社の資金繰りに行き詰まり、事業継続が困難になった場合、まず弁護士などの専門家に相談することが手続きの第一歩です。破産以外の民事再生や私的整理といった再建型の選択肢がないか、専門的な見地からアドバイスを受けることが重要です。
弁護士に正式に依頼すると、直ちに各債権者へ受任通知が送付されます。この通知により、債権者からの直接の取り立てが停止するため、経営者は精神的なプレッシャーから解放され、落ち着いて破産申立ての準備を進めることができます。この期間を利用して、弁護士費用や裁判所への予納金を準備することも可能になります。
弁護士は、複雑な法人破産手続きを円滑に進めるための専門家です。特に、経営者個人の連帯保証問題も同時に解決する必要があるため、法人破産に精通した弁護士への早期の相談が不可欠です。
ステップ2:破産申立ての準備と裁判所への提出
弁護士への依頼後、裁判所へ破産を申し立てるための準備を本格的に開始します。この段階では、会社の財産や負債の状況を正確に示すための書類収集と作成が中心となります。
具体的には、以下のような書類が必要となります。
- 作成が必要な書類: 債権者一覧表、財産目録、破産申立書、破産に至る事情を説明した陳述書、取締役会の議事録など。
- 収集が必要な書類: 会社の商業登記簿謄本、決算報告書(直近2期分など)、確定申告書の控え、預金通帳のコピー(過去2年分など)、不動産登記簿謄本、賃貸借契約書、車検証など。
これらの書類は、会社の財産状況を正確に把握し、手続きを公正に進めるための基礎資料となります。特に、債権者に漏れがあると手続きが遅延する原因となるため、慎重な確認が必要です。
すべての書類が整ったら、弁護士が申立書を完成させ、管轄の裁判所に提出します。同時に、裁判所が定める予納金(破産管財人の報酬などに充てられる費用)を納付する必要があります。
ステップ3:破産手続開始決定と破産管財人の選任
裁判所は、提出された申立書と添付書類を審査し、破産の原因となる事実(支払不能など)があるかを判断します。必要に応じて、裁判官が代表者と面談する「審尋(しんじん)」が行われることもあります。
審査の結果、破産要件を満たしていると認められると、裁判所は「破産手続開始決定」を下します。この決定により、法的な破産手続きが正式にスタートします。
開始決定と同時に、裁判所は中立的な立場の弁護士を「破産管財人」として選任します。この瞬間から、会社の財産を管理・処分する権利はすべて破産管財人に移り、経営者はその権限を失います。また、この決定により会社は法的に解散したものと扱われます。破産手続が開始された事実は、官報に公告されるとともに、債権者にも通知されます。
ステップ4:破産管財人による財産の管理・換価処分
破産管財人が選任されると、会社の財産(破産財団)に関する管理処分権は、すべて管財人に一元化されます。代表者や従業員が会社の資産を勝手に処分したり、持ち出したりすることは固く禁じられています。
破産管財人の主な職務は、債権者へ公平に配当するための原資を確保することです。そのために、以下のような業務を行います。
- 財産調査: 提出された財産目録を基に、預金、不動産、売掛金、在庫など、会社の資産を徹底的に調査します。
- 管理: 会社の資産が失われないように管理・保全します。
- 換価処分: 不動産や車両、機械設備などを任意売却や競売といった方法で売却し、現金化します。
- 債権回収: 未回収の売掛金などがあれば、取引先に対して請求・回収を行います。
この過程において、会社の代表者には、破産管財人の調査に全面的に協力し、財産状況について正確に説明する説明義務が法律で課されています。
ステップ5:債権者集会の開催と債権者への配当
破産手続開始決定から約3ヶ月後を目安に、裁判所で第1回の債権者集会が開催されます。債権者集会は、破産管財人が債権者に対して、破産に至った経緯、会社の財産状況、換価処分の進捗などを報告し、債権者の意見を聞くための場です。
会社の代表者には出席義務があり、破産管財人の報告内容を補足したり、債権者からの質問に答えたりする責任があります。ただし、実際に債権者が出席することは多くなく、集会は事務的に進行することがほとんどです。
破産管財人による財産の換価がすべて完了し、配当に充てる資金が確保できた場合、法律で定められた優先順位に従って債権者への配当が実施されます。まず、税金や労働債権などの優先的な債権に支払われ、残額があれば一般の債権者(金融機関や取引先など)に債権額に応じて案分されます。しかし、多くの中小企業の破産では、資産が乏しく、一般債権者への配当がほとんど、あるいは全く行われないまま手続きが終了するケースも少なくありません。
ステップ6:破産手続の終結と法人格の消滅
破産管財人による財産の換価と配当がすべて完了すると、破産手続きは終わりを迎えます。手続きの終了には、主に以下の2つのパターンがあります。
| 終了事由 | 内容 |
|---|---|
| 破産手続終結 | 会社の財産を換価し、債権者への配当が完了した場合に下される決定。破産の目的が達成されたことによる終了。 |
| 破産手続廃止 | 会社の財産が乏しく、手続き費用を賄うことすらできない場合や、配当する原資がないことが明らかになった場合に下される決定。目的を達成できないことによる終了。(異時廃止) |
いずれかの決定が出ると、その旨が官報に公告され、法務局で会社の登記簿が閉鎖されます。この登記をもって、会社の法人格は法律上完全に消滅し、会社が負っていたすべての債務も消滅します。
申立て準備中における偏頗弁済・資産隠しのリスク
破産を目前にして、「お世話になった取引先にだけは支払いたい」「家族に迷惑をかけたくない」といった思いから、特定の債権者にだけ返済する偏頗弁済(へんぱべんさい)や、会社の財産を個人名義に移すなどの資産隠しを行うことは、絶対に避けなければなりません。
これらの行為は、全債権者を平等に扱うという破産法の基本原則に反するため、厳しく禁じられています。発覚した場合、以下のような重大なリスクを招きます。
- 破産管財人による否認: 管財人はその行為(弁済や財産移転)の効力を否定し、金銭や財産を受け取った相手方に対して返還を請求します。結果的に、返済を受けた相手にも多大な迷惑をかけることになります。
- 個人の免責不許可: 代表者個人も自己破産を申し立てている場合、これらの行為は重大な免責不許可事由に該当し、個人の借金が免除されない可能性が極めて高くなります。
- 刑事罰の対象: 特に悪質なケースでは、詐欺破産罪として刑事責任を問われる可能性があります。
- 手続きの長期化・複雑化: 管財人による調査が長引き、手続き全体の期間や費用が増大します。
会社破産が関係者に与える影響
従業員への影響(解雇手続きと未払賃金の扱い)
会社が破産する場合、事業を停止するため、雇用している従業員は原則として全員解雇することになります。この解雇手続きは、従業員の生活に直結するため、法的なルールに従い、誠実に行う必要があります。
従業員の未払賃金(給料)や退職金は、破産手続きにおいて手厚く保護されています。特に、破産手続開始の申立て前3ヶ月間の給料などは「財団債権」として扱われ、他の一般債権よりも優先的に、破産管財人が会社の財産から弁済されます。
しかし、会社の財産が乏しく、未払賃金を全額支払えないケースもあります。その場合、従業員は国の「未払賃金立替払制度」を利用できる可能性があります。これは、国が会社に代わって未払賃金の一部(上限あり)を支払う制度で、破産管財人の協力のもとで手続きが進められます。
また、従業員が失業後の生活を速やかに再建できるよう、会社は離職票の発行など、雇用保険の失業手当を受給するための手続きに協力する必要があります。
取引先・債権者への影響
会社の破産は、金融機関や仕入先といった取引先・債権者にも大きな影響を与えます。破産手続開始決定が出されると、債権者は個別に返済を求めたり、訴訟を起こしたりすることができなくなり、すべての債権回収行為は法的な破産手続きの枠内で行われます。
債権者が配当を受けるためには、定められた期間内に裁判所へ「債権届出」を行う必要があります。破産管財人は、届け出られた債権を調査し、配当の対象となる債権額を確定させます。
しかし、会社の財産を換価しても、手続き費用や税金、労働債権などが優先的に支払われるため、一般の取引債権者への配当率は極めて低いのが実情です。多くの場合、配当が全くないか、あっても数パーセント程度にとどまります。これにより、取引先が売掛金を回収できずに経営が悪化し、「連鎖倒産」に至るリスクもあります。
株主への影響(株式の価値)
会社が破産する場合、その会社の株式を保有する株主も影響を受けます。株主には、会社が解散・清算される際に、すべての債務を支払った後に残った財産(残余財産)の分配を受ける権利(残余財産分配請求権)があります。
しかし、法人破産は、会社の資産をもって債務の全額を支払えない「債務超過」の状態を前提としています。会社の資産はすべて債権者への配当に充てられ、それでもなお債務が残るため、株主にまで財産が分配されることは事実上ありません。
したがって、会社が破産手続きによって清算され、法人格が消滅すると、株主が保有していた株式の価値はゼロになり、投資した資本は回収できなくなります。
経営者自身と家族の生活への影響
会社の破産は、経営者本人と家族の生活に多岐にわたる影響を及ぼします。特に経営者が会社の連帯保証人になっている場合、法人破産と同時に自己破産をすることが多く、その影響は深刻です。
- 住居: 経営者名義の持ち家は原則として処分されるため、家族は引っ越しを余儀なくされます。
- 財産: 家族名義の財産は原則として処分の対象外ですが、実質的に経営者の財産とみなされる場合はこの限りではありません。
- 信用情報: 経営者個人が自己破産すると、信用情報機関に事故情報が登録され(いわゆるブラックリスト)、約5〜7年間はローンやクレジットカードの利用が困難になります。家族カードも利用できなくなります。
- 家族への直接的な影響: 破産した事実が家族の就職や結婚に法的な影響を与えることはありません。戸籍や住民票に記載されることもありません。
- 家族が保証人の場合: もし配偶者などの家族が会社の債務の保証人になっている場合、その家族にも返済義務が及び、債務整理が必要になる可能性があります。
破産管財人への説明義務と協力の重要性
破産手続が開始されると、会社の代表者(破産者)には、破産法に基づき、裁判所が選任した破産管財人に対して誠実に説明を行う義務(説明義務)が課されます。
破産管財人は、会社の財産を調査・換価し、債権者に公平な配当を行うという重要な役割を担っています。そのため、代表者は管財人の調査に全面的に協力し、財産の状況や破産に至った経緯など、質問された事項について正直かつ正確に説明しなければなりません。
もし、正当な理由なく説明を拒んだり、虚偽の説明をしたりすると、個人の自己破産手続きにおいて免責が認められない(免責不許可事由)可能性があります。破産管財人との信頼関係を築き、手続きに真摯に協力することが、円滑な手続き進行と自身の経済的再起のために不可欠です。
会社破産にかかる費用と期間の目安
手続きにかかる費用の内訳(予納金・弁護士費用など)
法人破産の手続きには、大きく分けて「裁判所費用」と「弁護士費用」の2種類の費用がかかります。費用の総額は、会社の負債総額や資産状況、債権者数などによって変動します。
| 費用の種類 | 内訳 | 金額の目安 |
|---|---|---|
| 裁判所費用 | 予納金 | 20万円〜。破産管財人の報酬等に充てられる費用。負債総額に応じて変動し、複雑な案件では数百万円になることも。 |
| 申立手数料(印紙代) | 1,000円 | |
| 予納郵券代(切手代) | 案件により数千円〜数万円程度 | |
| 弁護士費用 | 着手金、成功報酬など | 50万円〜150万円程度。会社の規模や事案の複雑さにより変動。 |
特に予納金は、納付できなければ手続きが開始されない重要な費用です。弁護士に依頼することで、裁判所の運用によっては予納金が比較的低額な「少額管財事件」として扱われ、費用負担を抑えられる可能性があります。
申立てから手続き終結までにかかる期間の目安
法人破産の手続きにかかる期間は、事案の複雑さによって大きく異なりますが、弁護士への相談から手続きが完全に終了するまで、全体で8ヶ月から1年半程度が一般的な目安です。
手続きの各段階で要する期間の目安は以下の通りです。
- 弁護士への相談・申立て準備: 約2〜3ヶ月。必要書類の収集状況により変動します。
- 申立て〜破産手続開始決定: 約数週間〜2ヶ月。裁判所の審査期間です。
- 開始決定〜手続き終結・廃止: 約3ヶ月〜1年以上。この期間が最も変動します。換価する財産がほとんどなければ短期間で終わりますが、不動産の売却や訴訟などが絡むと1年を超えることも珍しくありません。
会社の代表者が手続きに直接関わるのは、主に最後の債権者集会までとなります。
会社破産後の再起について
破産後の生活における信用情報や資格の制限
会社の代表者が法人破産と同時に自己破産をした場合、個人の生活にいくつかの制限が生じます。
まず、個人の信用情報機関に事故情報が登録されます(いわゆるブラックリスト)。登録期間は約5年〜7年で、この間は新たにクレジットカードを作成したり、ローンを組んだり、携帯電話を分割払いで購入したりすることが原則としてできなくなります。
また、破産手続中は、一部の職業や資格に就くことが制限されます。これを資格制限といい、以下のような職業が対象となります。
- 弁護士、税理士、公認会計士などの士業
- 警備員
- 生命保険募集人
- 宅地建物取引士
- 株式会社の取締役、監査役など
この資格制限は、裁判所から免責許可決定が確定すれば解除され、再びこれらの職業に就くことが可能になります(復権)。
再起業や会社役員への就任は可能か
法人破産や自己破産を経験したからといって、法律上、新たに起業したり、会社の役員に就任したりすることが禁止されるわけではありません。破産手続きが完了すれば、誰でも再チャレンジする権利があります。
ただし、再起業にはいくつかの事実上のハードルが存在します。
- 資金調達の困難さ: 自己破産後は信用情報に事故情報が登録されるため、金融機関からの新規融資を受けることが非常に難しくなります。事業資金の確保が大きな課題となります。
- 信用の回復: 過去の破産の経緯から、取引先や関係者からの信用を再構築するには時間と努力が必要です。
- 役員就任のタイミング: 破産手続き中は役員に就任できませんが、免責許可決定が確定し復権すれば、再び取締役に就任することが法的に可能になります。
これらのハードルはありますが、破産の経験を教訓とし、綿密な事業計画を立てて再起を果たしている経営者も少なくありません。
会社破産に関するよくある質問
滞納している税金や社会保険料の支払義務はどうなりますか?
法人が滞納していた税金や社会保険料は、法人破産手続きが完了し、法人格が消滅すると同時に、その支払義務も消滅します。支払うべき主体である法人がなくなるためです。
ただし、経営者個人が自己破産をする場合、個人自身が滞納している税金や社会保険料は、破産しても支払義務が免除されない「非免責債権」にあたります。そのため、免責許可決定を得た後も、これらの公租公課は支払い続ける必要があります。
また、例外的に、法人の滞納税金の一部(源泉所得税など)について、代表者個人が第二次納税義務者として支払いを求められるケースもあるため、注意が必要です。
破産申立ての費用が用意できない場合でも手続きは可能ですか?
破産費用、特に裁判所への予納金が用意できないと、手続きを開始できません。しかし、資金繰りが厳しい状況でも、費用を捻出するためのいくつかの方法があります。
- 弁護士費用の分割払い: 多くの法律事務所では、弁護士費用の分割払いに応じています。弁護士に依頼して受任通知を送付すれば、債権者への返済が一時的にストップするため、その間に費用を積み立てることが可能です。
- 親族などからの援助: 返済義務のない贈与として、親族などから資金援助を受ける方法です。
- 法テラスの利用: 経営者個人の破産について、収入や資産が一定基準以下の場合、法テラス(日本司法支援センター)の民事法律扶助制度を利用して、弁護士費用を立て替えてもらえる可能性があります。
- 財産の換価: 破産申立て前に、弁護士の管理のもとで会社の資産の一部を売却し、その代金を申立て費用に充当できる場合があります。
破産手続きが始まると、会社の資産はすぐに差し押さえられますか?
「差し押さえ」というよりは、より正確には「破産管財人による管理」下に置かれる、と理解するのが適切です。
裁判所から破産手続開始決定が出された瞬間から、会社名義のすべての財産(不動産、預貯金、車両など)を管理・処分する権利は、経営者から破産管財人に移ります。以降、経営者は会社の財産を自由に動かすことはできなくなり、すべて管財人の指示に従うことになります。
破産管財人は、これらの財産を調査・確保した上で、最終的に売却などの方法で現金化(換価)し、債権者への配当原資とします。なお、破産手続開始決定前に個別の債権者から受けていた差し押さえ(強制執行)は、開始決定によってその効力を失うか、停止します。
会社の破産手続きを依頼する弁護士選びのポイントはありますか?
法人破産は手続きが複雑で、関係者も多岐にわたるため、弁護士選びは非常に重要です。以下のポイントを参考に、信頼できる弁護士を選ぶことをお勧めします。
- 法人破産・倒産処理の実績が豊富か: 個人の債務整理だけでなく、法人破産に関する専門知識と経験が豊富な弁護士を選びましょう。
- 破産以外の選択肢も提案してくれるか: 状況によっては民事再生など他の選択肢が適している場合もあります。多角的な視点から最適な解決策を提案してくれることが望ましいです。
- 費用体系が明確で、説明が丁寧か: 依頼前に費用の見積もりを明確に提示し、手続きの流れやリスクについて分かりやすく説明してくれる弁護士を選びましょう。
- 破産管財人との連携や裁判所の運用に詳しいか: 破産管財人の経験がある弁護士などは、手続きを円滑に進めるノウハウを持っています。
- 経営者の精神的な負担に配慮してくれるか: 破産は経営者にとって精神的に大きな負担となります。親身に寄り添い、迅速に対応してくれる弁護士であることも重要です。
まとめ:法人破産は経営者個人の再出発に向けた重要な選択肢
本記事では、法人破産の手続きの流れや経営者個人への影響について解説しました。法人破産は、債務超過に陥った会社を法的に清算し、経営者を過大な債務のプレッシャーから解放するための手続きです。多くの中小企業では経営者が会社の連帯保証人となっているため、法人破産と同時に経営者個人も自己破産を選択することが、経済的再起を図る上で現実的な解決策となります。手続きにはメリット・デメリットがあり、従業員や取引先など関係者にも大きな影響が及びますが、弁護士に依頼することで債権者からの督促を止め、落ち着いて準備を進めることが可能です。会社の破産という決断は非常に重いものですが、手遅れになる前に法人破産に精通した弁護士へ相談することが、ご自身の生活を守り、新たな一歩を踏み出すための最も確実な方法です。

