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自賠責保険(自動車責任保険)とは?任意保険との違いや補償内容をわかりやすく解説

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自動車の購入や車検の際に必ず耳にする「自賠責保険」ですが、任意保険との違いや具体的な補償内容について、よくわからないと感じる方も多いのではないでしょうか。この保険は、交通事故の被害者を救済するための重要な制度であり、すべてのドライバーに加入が義務付けられています。この記事では、自賠責保険の基本的な役割から任意保険との違い、補償の範囲、未加入の場合の罰則まで、知っておくべき必須知識を分かりやすく解説します。

目次

自動車責任保険(自賠責保険)とは?その目的と役割

すべての自動車に加入が義務付けられた強制保険

自動車損害賠償責任保険(自賠責保険)は、自動車損害賠償保障法に基づき、公道を走行するすべての自動車と原動機付自転車に加入が義務付けられている保険です。一般的に「強制保険」と呼ばれ、未加入のまま公道を走行すると法律違反となり罰則が科されます。

この義務は、一般的な乗用車だけでなく、以下の車両も対象となります。

自賠責保険の加入対象となる車両の例
  • 普通自動車、軽自動車
  • バイク(自動二輪車)
  • 原動機付自転車(原付)
  • 特定の条件を満たす電動キックボード

車検制度のある自動車は、車検時に有効期間をカバーするように更新するのが一般的です。しかし、車検のない250cc以下のバイクや原付は、所有者自身が有効期限を管理し、忘れずに更新手続きを行う必要があります。

交通事故の「被害者救済」を第一の目的とする

自賠責保険の最も重要な目的は、交通事故による被害者の救済です。万が一、加害者に十分な賠償能力がない場合でも、被害者が治療費や賠償金を受け取れず泣き寝入りする事態を防ぐために設けられました。国がすべての車両所有者に加入を義務付けることで、被害者が最低限の補償を受けられる社会保障的な仕組みを構築しています。

また、ひき逃げや無保険車による事故で自賠責保険からの補償が受けられない被害者を救済するため、「政府保障事業」という制度も用意されており、救済の網羅性が確保されています。

補償対象は相手方の身体的損害(対人賠償)のみ

自賠責保険の補償対象は、交通事故で他人を死傷させてしまった場合の「対人賠償」に限定されています。具体的には、事故の相手方(歩行者、他の車の運転者・同乗者など)がケガをしたり亡くなったりした場合の損害が補償されます。

一方で、以下の損害は補償の対象外となるため、注意が必要です。

自賠責保険で補償されない損害の例
  • 相手の自動車や建物、ガードレールなどを壊した場合の損害(対物賠償)
  • 運転者自身のケガや死亡による損害
  • 自分の車両の修理費

このように、自賠責保険はあくまで被害者の身体的損害に対する基本的な補償を確保するためのものです。物損事故や運転者自身の損害に備えるには、別途、任意保険への加入が必要です。

【徹底比較】自賠責保険と任意保険の5つの違い

違い①:加入義務の有無(強制か任意か)

自賠責保険と任意保険の最も大きな違いは、法律上の加入義務の有無です。自賠責保険は、自動車損害賠償保障法により加入が強制されており、未加入での運転には厳しい罰則が科されます。一方、任意保険はその名の通り加入は任意であり、加入しなくても法律で罰せられることはありません。

しかし、自賠責保険だけでは補償が不十分なケースが多いため、多くのドライバーは任意保険に加入して、万が一の事故に備えています。

違い②:補償される対象範囲の違い

自賠責保険は被害者の身体的損害(対人賠償)しか補償しませんが、任意保険は契約内容に応じて幅広い損害をカバーできます。

損害の種類 自賠責保険 任意保険(契約内容による)
対人賠償(相手の死傷) ◯ (上限あり) ◯ (無制限が一般的)
対物賠償(相手の物の損害) ×
運転者・同乗者の死傷 × (運転者)
自分の車両の損害 ×
自賠責保険と任意保険の主な補償範囲の比較

このように、任意保険は対物賠償や運転者自身のケガ、車両の修理費など、自賠責保険ではカバーできない部分を補う重要な役割を果たします。

違い③:保険金(補償)の支払限度額

支払われる保険金の限度額にも大きな差があります。自賠責保険は被害者への最低限の補償を目的とするため、損害の種類ごとに法律で上限額が定められています。

自賠責保険の支払限度額
  • 傷害による損害:被害者1名につき最高120万円
  • 後遺障害による損害:被害者1名につき最高4,000万円(等級による)
  • 死亡による損害:被害者1名につき最高3,000万円

これに対し、任意保険の対人・対物賠償では、保険金額を「無制限」に設定することが一般的です。死亡事故などでは賠償額が数億円にのぼるケースもあり、自賠責保険の上限額だけでは到底足りません。高額な賠償責任に備えるためには任意保険が不可欠です。

違い④:保険料の決まり方

保険料の算出方法も異なります。自賠責保険は社会保障的な性格が強く、保険会社の利益を含まない「ノーロス・ノープロフィットの原則」に基づいています。そのため、保険料は車種や保険期間、地域区分に応じて国が定めた一律の金額であり、どの保険会社で加入しても同じです。

一方、任意保険の保険料は「リスク細分型」が主流です。契約者の事故リスクに応じて、以下の要素などを組み合わせて個別に算出されます。

任意保険の保険料に影響する主な要素
  • 運転者の年齢
  • 運転免許証の色(ゴールド、ブルーなど)
  • ノンフリート等級(過去の事故歴)
  • 車両の型式
  • 車の使用目的(日常・レジャー、通勤・通学、業務用)
  • 年間走行距離

違い⑤:示談交渉サービスの有無

事故後の対応における大きな違いが、示談交渉サービスの有無です。自賠責保険には示談交渉サービスは付帯していません。そのため、自賠責保険しか加入していない場合、加害者は自分で被害者側と賠償に関する交渉を行う必要があります。

一方、多くの任意保険には「示談代行サービス」が付帯しています。事故が起こると、保険会社の専門スタッフが加害者に代わって被害者側との交渉を進めてくれるため、精神的・時間的な負担を大幅に軽減できます。これは任意保険に加入する大きなメリットの一つです。

自賠責保険の補償範囲と支払限度額の詳細

傷害による損害:治療費や休業損害など(最高120万円)

交通事故によるケガ(傷害)の補償は、被害者1名あたり最高120万円が限度額です。この範囲内で、以下の費用が支払われます。

傷害による損害の主な補償項目
  • 治療関係費:診察料、手術料、入院費、通院交通費、文書料など
  • 休業損害:ケガで仕事を休んだことによる減収分(原則1日6,100円)
  • 慰謝料:精神的苦痛に対する補償(1日4,300円)

これらの費用の合計が120万円に達するまで支払われますが、治療が長期化すると限度額を超えてしまう可能性があります。

後遺障害による損害:逸失利益や慰謝料など(等級に応じ最高4,000万円)

治療を続けても完治せず、身体に障害が残った場合(症状固定)、後遺障害として等級認定を受けることで別途補償が受けられます。後遺障害は症状の重さに応じて第1級から第14級までに区分され、等級ごとに支払限度額が定められています。

補償内容は、後遺障害によって将来得られなくなる収入(逸失利益)と精神的苦痛に対する慰謝料です。

後遺障害等級別の支払限度額(例)
  • 第1級(常時介護を要する最も重い障害):最高4,000万円
  • 第2級(随時介護を要する障害):最高3,000万円
  • 第14級(最も軽い障害):最高75万円

死亡による損害:葬儀費や逸失利益など(最高3,000万円)

被害者が亡くなった場合の補償は、被害者1名あたり最高3,000万円が限度額です。これには以下のものが含まれます。

死亡による損害の主な補償項目
  • 葬儀費:原則100万円
  • 逸失利益:被害者が生きていれば将来得られたはずの収入
  • 慰謝料:被害者本人分(400万円)と、配偶者や子などの遺族の人数に応じて支払われる遺族分

なお、死亡に至るまでの治療費などの「傷害による損害」は、この3,000万円の枠とは別に、最高120万円の範囲で支払われます。

補償の対象外となる主なケース(物損事故や自損事故)

自賠責保険は対人賠償に特化しているため、補償の対象外となるケースが明確に定められています。

自賠責保険の補償対象外となる主なケース
  • 物損事故:相手の車やガードレール、建物などを壊した場合
  • 自損事故:電柱への衝突など、運転者自身の過失で単独で起こした事故による運転者本人の損害
  • 無責事故:被害者側の過失が100%の事故(例:センターラインオーバー、赤信号無視)

ただし、自損事故であっても、同乗者が死傷した場合は「他人」とみなされ、運転者の自賠責保険から補償を受けることができます(同乗者が車両の保有者である場合などを除く)。

被害者側にも過失がある場合、補償はどうなる?(過失相殺の考え方)

交通事故では、被害者側にも一定の過失(不注意)が認められる場合があります。この場合、民事上の損害賠償では過失割合に応じて賠償額が減額(過失相殺)されますが、自賠責保険では被害者保護の観点からこのルールが緩和されています。

具体的には、被害者の過失が7割未満であれば、保険金は一切減額されません。減額されるのは、被害者に7割以上の重大な過失がある場合に限られます。

被害者の過失割合 減額率
7割未満 減額なし
7割以上 損害の種類に応じて2割~5割の範囲で減額
自賠責保険における過失割合と減額率

このように、被害者に多少の過失があっても、最低限の補償が受けられるよう配慮されています。

自賠責保険に未加入・期限切れの場合の罰則

法律違反による刑事罰(1年以下の懲役または50万円以下の罰金)

自賠責保険に未加入、または有効期限が切れた状態で公道を走行すると、自動車損害賠償保障法違反として「1年以下の懲役または50万円以下の罰金」という刑事罰が科されます。これは非常に重い罰則であり、万が一の事故で被害者が救済されない事態を未然に防ぐための措置です。

交通違反としての行政処分(違反点数6点・免許停止処分)

刑事罰とは別に、道路交通法上の行政処分も科されます。無保険での運転は交通違反となり、違反点数として6点が付されます。過去に行政処分の前歴がない場合でも、違反点数6点は「一発で30日間の免許停止処分」の対象となります。一度の違反で運転ができなくなる、極めて厳しい処分です。

自賠責保険証明書の不携帯も罰金の対象となる

自賠責保険に加入していても、「自動車損害賠償責任保険証明書」を車に備え付けずに運転した場合、証明書不携帯として「30万円以下の罰金」が科されます。証明書は車検証などと一緒に保管し、紛失しないよう注意が必要です。また、原付や250cc以下のバイクでは、有効期限を示すステッカー(保険標章)をナンバープレートに貼り付ける義務もあります。

自賠責保険の加入・更新手続きの方法と場所

加入・更新ができる場所(保険会社・代理店・カーディーラーなど)

自賠責保険の手続きは、車両の種類によって便利な場所が異なります。

主な加入・更新場所
  • 車検が必要な自動車・バイク:車検と同時に手続きを行うことが多く、損害保険会社やその代理店(自動車ディーラー、整備工場、中古車販売店など)で加入します。
  • 車検が不要な原付・バイク:上記の場所に加え、コンビニエンスストア、郵便局、インターネットでも手軽に手続きが可能です。

手続きに必要な書類と準備するもの

加入・更新手続きの際には、以下のものを準備しておくとスムーズです。

手続きに必要なもの
  • 現在の自賠責保険証明書(更新の場合)
  • 車両情報が確認できる書類(自動車検査証、軽自動車届出済証、標識交付証明書など)
  • 保険料

車検のタイミングで更新するのが一般的

車検対象の自動車は、車検の有効期間をすべてカバーできるように自賠責保険に加入していることが、車検を受けるための条件です。そのため、通常は車検の手続きと同時に自賠責保険の更新も行います。

このとき、車検の有効期間(例:24ヶ月)と保険期間に隙間ができて無保険状態になるのを防ぐため、少し長めの保険期間(例:25ヶ月)で契約するのが一般的です。一方、車検のない原付やバイクは、所有者自身が有効期限をしっかりと管理し、期限が切れる前に更新手続きを行う必要があります。

自賠責保険に関するよくある質問

原付やバイクも自賠責保険への加入は必須ですか?

はい、排気量を問わず、すべての原付やバイクに加入が義務付けられています。特に車検のない250cc以下の車両は所有者自身で期限を管理する必要があるため、ナンバープレートに貼られたステッカー(保険標章)で有効期限を定期的に確認し、更新忘れのないように注意してください。

自賠責保険証明書を紛失した場合、どうすれば再発行できますか?

加入している保険会社や代理店の窓口で再発行の手続きができます。手続きには、契約者の本人確認書類(運転免許証など)や印鑑が必要になる場合があります。近年では、保険会社のウェブサイトからオンラインで再発行申請ができることもあります。

車を廃車にした場合、自賠責保険料は返金されますか?

はい、廃車(抹消登録)の手続きをした後、保険会社に解約を申し出ることで、保険期間が1ヶ月以上残っていれば、未経過分の保険料が月割りで返金されます。返金額は解約の申し出があった日から計算されるため、廃車後は速やかに手続きを行いましょう。

自賠責保険だけで事故への備えは十分といえますか?

いいえ、十分とは言えません。自賠責保険は、相手の身体的損害(対人賠償)しか補償されず、支払限度額も定められています。相手の車や物を壊した際の対物賠償、運転者自身のケガ、自分の車の修理費などは一切補償されません。安心して運転するためには、これらの損害を幅広くカバーできる任意保険への加入が不可欠です。

事故を起こしたら、自賠責と任意どちらの保険会社に連絡する?

任意保険に加入している場合は、まず任意保険の保険会社に連絡してください。多くの任意保険には、自賠責保険の支払い分も含めて任意保険会社が被害者に一括で賠償金を支払い、後日、自賠責保険会社に請求する「一括払制度」があります。そのため、事故対応の窓口は任意保険会社に一本化するのがスムーズです。

まとめ:自賠責保険は最低限の対人補償。任意保険との組み合わせが必須

この記事では、自動車を運転するすべての人に加入が義務付けられている自賠責保険の基本的な仕組みを解説しました。自賠責保険は、交通事故の被害者救済を目的とした強制保険であり、補償は相手方の身体的損害(対人賠償)に限定され、支払限度額も定められています。そのため、相手の物や自分の車、運転者自身のケガなどを補償するには、任意保険への加入が欠かせません。自賠責保険はあくまで社会保障的な最低限の備えであり、任意保険と組み合わせることで初めて、万が一の事故に対する十分な備えが整うと理解しておきましょう。未加入や期限切れには厳しい罰則もあるため、特に車検のないバイクや原付に乗る方は、更新手続きを忘れないよう注意が必要です。

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