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合同会社は特別清算できない?債務超過時の清算手続きと破産との違いを解説

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合同会社の経営状況が悪化し、債務超過に陥った際、会社の清算方法を検討する必要があります。その中で「特別清算」という手続きを知り、株式会社以外の形態である合同会社でも利用できるのか、正確な情報を求めている経営者の方も多いのではないでしょうか。この記事では、合同会社が特別清算を利用できない法的な理由を明確にし、その上で債務超過時に選択すべき現実的な法的手続きである「破産」について、その流れや注意点を詳しく解説します。

目次

結論:合同会社は特別清算を利用できない

特別清算は株式会社に限定された手続き

合同会社は、法的に特別清算の手続きを利用することはできません。特別清算とは、債務超過の疑いがあるなど、清算の遂行に著しい支障がある株式会社を対象として、裁判所の監督下で行われる清算型の手続きです。この制度は、債権者の多数の協力が得られる場合に、破産よりも簡易かつ迅速な解決を図る目的で設けられています。

合同会社のような持分会社には、会社法上の特別清算に関する規定が準用されません。したがって、債務超過に陥った合同会社が法人格を消滅させるためには、原則として破産法に基づく破産手続を選択する必要があります。この組織形態による制度の適用範囲を正確に理解しておくことが、清算実務の第一歩となります。

会社法に定められた法的根拠と対象範囲

特別清算の手続きは、会社法の「株式会社」に関する編で規定されており、同法第510条以下でその要件や手続きが定められています。条文の対象が明確に株式会社に限定されているため、他の会社形態には適用されません。

合同会社を含む持分会社に関する規定は別の編にまとめられていますが、そこには特別清算に関する条文や、株式会社の規定を準用する旨の記載はありません。これは、不特定多数の株主や債権者を抱える株式会社とは異なり、持分会社の内部関係は社員間の自治に委ねられる部分が大きいためです。しかし、債権者が関与する倒産処理の局面では、法律で定められた手続きに従う必要があり、合同会社の場合は破産法がその役割を担います。

債務超過に陥った合同会社が選択すべき清算手続き

実質的な選択肢は「破産手続」が中心となる

資産を上回る負債を抱え、事業継続が不可能な債務超過状態に陥った合同会社が選択すべき法的な清算方法は、実質的に破産手続が中心となります。破産手続とは、裁判所が選任した破産管財人が会社の全財産を管理・換価(金銭化)し、法に従って各債権者へ公平に分配(配当)する法的な清算手続きです。

破産手続が開始されると、会社の財産管理権は経営者から破産管財人に移り、経営者は財産を自由に処分できなくなります。最終的に配当が完了、または配当する財産がない場合は手続きが終了し、会社の法人格は消滅します。残った債務の支払義務も、法人格の消滅とともに無くなります。法的に負債を整理し、経営者が再スタートを切るための確実な手段です。

任意整理は債権者全員の同意が必要で現実的ではない

裁判所を介さずに債権者と直接交渉して負債を整理する任意整理も考えられますが、会社を清算する場面では現実的ではありません。その最大の理由は、債権者全員の同意が必要となるためです。一人でも合意しない債権者がいれば、手続きは頓挫します。

また、債務超過の状態で特定の債権者にだけ返済する行為は、他の債権者への公平を害する「偏頗弁済(へんぱべんさい)」とみなされる可能性があります。後に破産手続へ移行した場合、破産管財人がその返済を否認し、返金を求められるなど、さらなる法的トラブルに発展するリスクがあります。そのため、債権者が複数いる場合は、最初から法的強制力のある破産手続を選択することが賢明です。

破産手続を検討する前に経営者が確認すべきこと

破産手続の準備に着手する前に、経営者は会社の財務状況と権利関係を正確に把握しておく必要があります。弁護士へ相談する前に、少なくとも以下の点を整理しておくことが望ましいです。

破産申立て前に経営者が確認すべき事項
  • 資産と負債の全体像(最新の試算表や決算書に基づく正確な金額)
  • 代表社員個人による会社の債務に対する連帯保証の有無と内容
  • リース物件や担保設定されている資産の詳細
  • 従業員に対する未払給与や社会保険料の金額
  • 回収見込みのある売掛金や処分可能な在庫の状況

合同会社の破産手続の概要と流れ

弁護士への相談と破産手続開始の申立て準備

破産を決断した場合、まず倒産実務に精通した弁護士に相談します。方針が固まると、弁護士は全債権者に対して「受任通知」を送付します。この通知が届けば、債権者から会社への直接の取り立ては停止され、交渉窓口は弁護士に一本化されます。これにより経営者は精神的な負担から解放され、手続き準備に専念できます。

申立て準備では、決算書、債権者一覧表、資産目録など膨大な書類を収集・作成します。また、事業を停止するタイミング(Xデー)を弁護士と慎重に協議し、従業員への解雇通知や事務所の明け渡しなども計画的に進めます。

裁判所への申立てから破産手続開始決定まで

準備が整うと、管轄の地方裁判所へ破産手続開始の申立書を提出します。裁判所は提出書類を審査し、支払不能または債務超過という破産原因があるかを判断します。必要に応じて、裁判官が申立代理人弁護士と面接(審尋)を行うこともあります。

要件を満たしていると認められると、裁判所は破産手続開始決定を下し、同時に中立な立場の弁護士を破産管財人として選任します。この決定により、会社の財産管理権はすべて破産管財人に移り、経営者が会社の財産を処分することは一切できなくなります。

破産管財人による財産の管理・換価・配当

選任された破産管財人は、会社の財産(預貯金、不動産、売掛金、在庫など)を調査・管理し、売却などを通じて金銭に換える「換価」業務を行います。また、過去の不適切な財産処分や特定の債権者への優先的な返済がなかったかを調査し、もしあれば否認権を行使して財産を取り戻すこともあります。

換価によって得られた金銭は、法律で定められた優先順位(税金、労働債権、一般債権など)に従って、各債権者へ公平に分配(配当)されます。

債権者集会と破産手続の終結(廃止・終結決定)

破産手続きの過程で、裁判所で債権者集会が開催されます。この集会では、破産管財人が財産の換価状況や配当の見込みなどを報告し、代表社員は債権者からの質問に答える義務を負います。

全ての財産が換価され、配当が完了すると、裁判所は破産手続終結の決定を下します。一方、配当するほどの財産が形成できなかった場合は、手続きの途中で破産手続廃止(異時廃止)の決定がなされます。いずれの場合も、この決定をもって合同会社の法人格は完全に消滅します。

破産手続を円滑に進めるための破産管財人への協力義務

破産手続中、代表社員には破産管財人の業務に協力する法的義務があります。これには、財産に関する情報を正直に開示する説明義務も含まれます。財産を隠したり、虚偽の説明をしたりする行為は、手続きの遅延を招くだけでなく、最悪の場合、破産法上の詐欺破産罪などの刑事罰の対象となる可能性もあります。破産管財人は、手続きを適正かつ円滑に進めるためのパートナーであり、誠実な協力が代表社員自身の早期の再スタートにつながります。

特別清算と破産手続の主な違いを比較

手続きの主体(清算人か破産管財人か)

両手続きの大きな違いは、誰が主導権を握るかです。特別清算では、会社が選任した清算人(通常は元代表者など)が主体となり、会社側の意向を反映させやすい手続きです。一方、破産手続では、裁判所が選任した利害関係のない第三者である破産管財人が主体となります。破産管財人は、債権者の利益を最大化する視点から、独立して強力な権限を行使します。

債権者の同意の要否と手続きの進行方法

特別清算を完了させるには、債権者集会で議決権者の過半数かつ総債権額の3分の2以上の同意を得るなど、債権者の協力が不可欠です。多数の反対があれば、手続きは破産手続に移行します。

これに対し、破産手続は債権者の同意を一切必要としません。裁判所が破産原因を認めれば、たとえ全債権者が反対しても、法的な強制力をもって手続きが進行します。これにより、交渉が難航する債権者がいても、確実に会社を清算することが可能です。

費用の目安(裁判所への予納金・弁護士費用)

費用面では、一般的に特別清算の方が破産手続よりも低額です。特別清算の予納金は数万円程度で済むケースもありますが、法人の破産手続では、破産管財人の報酬を確保するため、最低でも20万円の予納金が必要となります(少額管財の場合)。負債総額や事案の複雑さによっては、予納金だけで数百万円に上ることもあります。弁護士費用も、破産手続の方が高額になる傾向があります。

手続きにかかる期間の目安

特別清算は、債権者との合意が前提となるため、スムーズに進めば半年以内に完了することも多く、比較的短期間で終結します。一方、破産手続は、破産管財人による厳格な財産調査や換価手続きが必要なため、長期化する傾向があります。小規模な会社でも半年から1年、複雑な案件では数年を要することもあります。

対外的な企業イメージへの影響

「破産」という言葉にはネガティブなイメージが伴いますが、「特別清算」は会社法上の手続きであり、「倒産」という印象が相対的に薄いとされています。そのため、親会社が子会社を整理する際など、グループ全体の評判への影響を考慮して選択されることがあります。

合同会社は特別清算を利用できないため、債務超過の清算では破産という選択しかありません。以下に両者の違いをまとめます。

比較項目 特別清算(株式会社のみ利用可能) 破産手続(合同会社が利用)
手続きの主体 会社が選任した清算人 裁判所が選任した破産管財人
債権者の同意 必要(債権者集会での多数決等) 不要
進行方法 会社の主導性が高い 破産管財人が主導(強制力が強い)
裁判所予納金 比較的低額(5万円程度~) 比較的高額(最低20万円~)
手続き期間 比較的短期(半年以内が多い) 比較的長期(半年~数年)
企業イメージ 「倒産」の印象が相対的に薄い 「倒産」という印象が強い
特別清算と破産手続の主な違い

補足:債務超過でない場合の「通常清算」とは

通常清算の概要と適用できる条件

通常清算は、会社の資産で全ての負債を完済できる「資産超過」の状態にある会社が、自主的に廃業する場合に用いる手続きです。裁判所の監督を受けない私的な整理手続きであり、総社員の同意によって選任された清算人が、債権の取り立て、債務の弁済、そして残った財産(残余財産)の社員への分配を行います。

取引先に迷惑をかけることなく円満に会社を閉じることができる理想的な方法ですが、資産の売却価格が帳簿価格を下回る可能性も考慮し、資産超過であるかの判断は慎重に行う必要があります。

清算中に債務超過が判明した場合の破産手続への移行

通常清算の手続きを進める中で、隠れた負債が発覚したり、資産が想定価格で売却できなかったりして、債務超過に陥ることがあります。この場合、清算人は通常清算を中止し、直ちに裁判所へ破産手続開始の申立てを行う法的義務を負います。

債務超過の状態で一部の債権者にだけ弁済を続けると、債権者平等の原則に反します。この義務を怠り、無理に通常清算を続行しようとすると、清算人個人が債権者から損害賠償を請求されるリスクがあるため、速やかに法的手続きへ移行しなければなりません。

合同会社の清算・破産に関するよくある質問

合同会社の破産にかかる費用(予納金・弁護士費用)はどのくらいですか?

費用は大きく分けて、裁判所に納める「予納金」と、申立てを依頼する「弁護士費用」の2つです。

  • 予納金: 会社の規模や負債額によりますが、弁護士が申立てを行うことで利用できる「少額管財」制度が適用されれば、20万円程度からとなるのが一般的です。
  • 弁護士費用: 会社の規模や事案の複雑さによりますが、50万円~150万円程度が相場です。

合計で、最低でも80万円から100万円程度の資金が必要となります。この費用は、破産申立て前に会社の資産から確保しておく必要があります。

債務超過になったら、すぐに清算や破産の手続きをすべきですか?

事業継続の見込みがない債務超過状態に陥った場合は、できるだけ早く専門家である弁護士に相談すべきです。事業資金が完全に底をついてしまうと、破産申立てに必要な予納金や弁護士費用すら捻出できなくなります。また、無理な資金繰りを続ける中で特定の債権者にだけ返済すると、後に問題となる偏頗弁済にあたる可能性もあります。会社にまだ現金が残っているうちに相談することで、より円滑で計画的な手続きが可能となり、経営者自身の再スタートにもつながります。

会社の破産手続きにおいて、代表社員の個人資産はどうなりますか?

合同会社の社員は有限責任であるため、原則として、会社が破産しても代表社員が個人資産で会社の債務を弁済する義務はありません。会社と個人は別人格であり、個人資産は守られます。

ただし、以下の例外には注意が必要です。

  1. 個人としての連帯保証: 金融機関からの借入等で代表社員が個人として連帯保証人になっている場合、会社が返済できなければ、保証人として個人が返済義務を負います。返済できなければ、代表社員自身も自己破産等を検討する必要があります。
  2. 公私の混同: 会社の資金を個人的に流用するなど、会社と個人の財産が明確に区別されていない場合、破産管財人から責任を追及される可能性があります。

代表社員が無限責任社員の場合、個人資産への影響はどう変わりますか?

その前提が誤りです。合同会社の社員は、法律上、全員が出資額の範囲内でのみ責任を負う「有限責任社員」です。合同会社に無限責任社員は存在しません。

会社の債務に対して個人資産を含めて無制限に責任を負う「無限責任社員」が存在するのは、合名会社や合資会社といった別の会社形態です。合同会社では、前述の通り連帯保証人になっていない限り、会社の破産によって個人資産が直接影響を受けることはありません。

まとめ:合同会社は特別清算を利用できず、破産手続が現実的な選択肢となる

本記事では、債務超過に陥った合同会社の清算方法について解説しました。最も重要な点は、会社法上の「特別清算」は株式会社に限定された手続きであり、合同会社は利用できないという事実です。したがって、債務超過状態の合同会社が法人格を消滅させるための法的な手段は、実質的に「破産手続」が中心となります。破産手続は、裁判所が選任した破産管財人が主導し、債権者の同意を必要とせず、法に基づいて財産を公平に分配する強制力のある手続きです。手続きには費用と時間がかかりますが、確実に債務を整理し、経営者自身の再スタートを切るための重要な制度です。会社の資金が尽きる前に、早期に弁護士などの専門家へ相談し、計画的に準備を進めることが賢明な判断といえるでしょう。

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