取締役会を設置しない会社の判断軸と移行手続
取締役会非設置会社を選ぶか、または既存の取締役会を廃止するかは、会社法上の要件だけでなく、対外信用や意思決定の運び方まで含めて詰める必要がある論点です。形式面だけで進めると、取締役の最低員数(非設置は1名以上、設置は3名以上)や、変更日から2週間以内の登記申請といった実務要件で手戻りが生じやすくなります。自社の株主構成・資金調達の見込み・取引実務(銀行口座や契約締結)を踏まえ、どこまで統制を制度で担保し、どこを社内規程や証跡で補うかを決めることが重要です。実務で最初に押さえるべきは、会社法上「できる/できない」の線引きです。設置義務の有無から見ていきます。
取締役会非設置会社の基本
株式会社に取締役会は必須か
株式会社では、取締役会は常に必須の機関ではありません。会社法上、まず株主総会は必置であり、あわせて取締役を最低1名置く必要があります(取締役の最低員数:非設置会社は1名以上(会社法第326条))。そのため、最小機関の設計は「株主総会+取締役」となります。
ただし、取締役会を置けない(=設置が任意ではない)会社類型も明確にあります。会社法は、一定の会社に取締役会の設置義務を課しており、代表例は公開会社です(会社法第327条)。
- 公開会社(会社法第327条)
- 監査役会設置会社(会社法第327条)
- 監査等委員会設置会社(会社法第327条)
- 指名委員会等設置会社(会社法第327条)
上記に該当しない会社(典型例として、株式譲渡制限会社として運営する中小企業)では、定款で取締役会を置くことも、置かずに運営することも選択できます。なお、非公開会社でも、株主数や規模が大きくなり意思決定を機動化したい局面では、株主総会から取締役会へ決定事項を委譲する目的で取締役会を設置することも実務上はあります。
取締役会非設置会社の位置づけ
取締役会非設置会社は、会社法が用意する最もシンプルな機関設計として、実務で広く使われています。会社法上の最低限は「株主総会+取締役」で足り、これが運営上の出発点になります。
- 株主総会+取締役
- 株主総会+取締役+監査役
取締役会を置かない場合、経営に関する多くの事項を株主総会で決する設計になりやすく、所有(株主)と経営(取締役)が一致するオーナー企業では、手続の単純さが機動力につながります。一方で、株主が増える・第三者が入るなどして利害調整が必要になると、株主総会の決議事項が増え、逆に運営負荷が上がる局面が生じます。そのため、機関設計は「いまの簡便さ」だけでなく、将来の株主構成や資金調達の見込みも踏まえて選ぶのが実務的です。
取締役会設置会社との違い
取締役と監査役の人数要件
取締役会非設置会社と取締役会設置会社では、法定の最低人数要件が明確に異なります。取締役会設置会社は取締役会という合議体を構成するため、取締役は3名以上が必要です(会社法第331条)。これに対し、取締役会非設置会社は取締役1名以上で足ります(会社法第326条)。
また、取締役会を置く場合は、実務・制度上も代表取締役を1名以上選定して対外代表を一本化して運用するのが通常です(記事内で後述する銀行・契約実務との整合でも重要です)。
監査役については、員数自体は1名でも複数でも構いませんが、監査役会設置会社では監査役が3名以上必要で、その半数以上を社外監査役とする必要があります(会社法第335条)。
- 過去に当該会社または子会社の取締役・会計参与・執行役・支配人その他の使用人になったことがない者(会社法第2条)
株主総会と取締役の権限差
取締役会の有無は、株主総会が決める範囲と、取締役(または取締役会)が決める範囲に直結します。
取締役会設置会社では、株主総会は会社法・定款で定められた事項を中心に決定し、経営方針や具体的な業務執行の意思決定は取締役会で行う整理になります。取締役会には法律上の「専決事項」があり、一定の重要事項は取締役会決議を経る必要があります(会社法第362条)。
- 重要な財産の処分および譲受け(会社法第362条)
- 多額の借財(会社法第362条)
- 支配人その他の重要な使用人の選任および解任(会社法第362条)
- 支店その他の重要な組織の設置・変更・廃止(会社法第362条)
- 社債の募集(会社法第362条)
- 内部統制システムの整備に関する決定(会社法第362条)
- 定款規定にもとづく取締役等の責任の一部免除(会社法第362条)
さらに、大会社である取締役会設置会社では、上記のうち内部統制システムに関する事項は必ず定めなければならないとされています(会社法第362条)。
一方、取締役会非設置会社では、取締役会の専決事項という枠組みがないため、相対的に株主総会が関与する範囲が広くなり、「株主総会で決める」設計に寄りやすい点が大きな違いです。
株主が分散している会社は非設置会社でどこから運営負荷が増えるか
株主が第三者に分散している状態で取締役会非設置のまま運営すると、株主総会で扱う決議・承認が増えやすいため、実務負荷が跳ね上がるポイントが出てきます。取締役会設置会社であれば取締役会の専決事項として処理できる類型(例:多額の借財、重要な財産の譲受け等(会社法第362条))でも、非設置会社では社内の意思決定ルートを別途組み立てる必要があり、株主の同意形成に時間を要しやすくなります。
特に負荷が増えるのは、次のように「取締役会で合議して決める」という運用が使えない場面です。
- 資金調達や借入に関する重要判断が継続的に発生し、都度の同意形成が重くなる(取締役会なら多額の借財は専決事項(会社法第362条))
- 事業譲渡・設備投資等で「重要な財産」の判断が絡み、慎重な手続設計が必要になる(取締役会なら重要な財産の処分・譲受けは専決事項(会社法第362条))
- 重要使用人や拠点(支店等)の人事・組織判断を迅速に回したいが、合意形成の枠が弱くなる(取締役会なら専決事項(会社法第362条))
「重要な財産」や「多額の借財」の判断には画一基準があるわけではなく、会社の規模・業種・取引類型等により個別具体的に判断され、判例も価格・総資産比率・保有目的・処分態様・従来の取扱い等を総合考慮しています。この不確実性があるため、株主が分散している会社ほど、意思決定の証跡(誰が何を決めたか)を厚くしておかないと紛争予防が難しくなります。
非設置会社の業務執行と代表
業務執行の決め方と過半数決議
取締役会非設置会社では、取締役会という合議体がないため、取締役が複数いる場合の業務執行の決定は、会社法の原則に従い取締役の過半数で決める設計になります(定款で別段の定めを置く余地はあります)。
一方、取締役会設置会社の場合は、重要事項について取締役会の決議が必要となり、典型例として「支配人その他の重要な使用人の選任・解任」「支店等の設置・廃止」「多額の借財」「重要な財産の処分・譲受け」等が取締役会の専決事項です(会社法第362条)。非設置会社で同種の重要判断を行う場合、取締役の意思決定プロセス(過半数での決定と、その証跡の作成)をより丁寧に整えることが、対外説明・紛争予防の観点で重要になります。
- 重要使用人の任免や拠点の新設・廃止など、将来紛争になりやすい組織事項(設置会社では取締役会専決事項(会社法第362条))
- 借入や資金繰りに直結する重要な契約(設置会社では多額の借財が取締役会専決事項(会社法第362条))
- 資産売買・事業譲渡など、重要な財産性が問題になりうる取引(設置会社では取締役会専決事項(会社法第362条))
代表取締役を置く場合と置かない場合
取締役会非設置会社では、代表取締役を置くかどうかを機関設計として選べます。代表取締役を置かない場合は、取締役が原則として各自で会社を代表しうる運用(各自代表)となり、対外的には「誰が代表権者か」が見えにくくなります。
一方、取締役会設置会社では、取締役会を設置するために取締役は3名以上必要で(会社法第331条)、さらに対外代表を明確にするため代表取締役を1名以上選定して運用するのが実務の基本です(代表権の帰属が明確なほど、金融機関・取引先の手続が進みやすいためです)。
非設置会社でも、取引の安全や社内の権限統制を重視するなら、代表取締役を選定し、代表権を一本化したうえで、他の取締役の権限・関与(決裁規程、稟議、共同署名ルールなど)で統制するほうが実務に馴染みます。
代表取締役を置かない場合に銀行口座・契約締結で詰まりやすい確認事項
代表取締役を置かない(各自代表)設計は制度としては簡素ですが、銀行口座開設や契約締結の局面で、相手方の確認が重くなり停滞しやすいです。特に銀行については、預金口座開設の申込みに対し、銀行に一般的な承諾義務があるとする法令上の根拠はない、という裁判所判断が示されており、銀行側の審査・確認が厳格化しても、直ちに違法とは言いにくい構造があります(いわゆる「八千代判決」の整理)。
また、東京地判平成23年8月18日(いわゆる「りそな判決」)でも、銀行対応が常に不法行為になるわけではなく、原則として責任は生じず「特段の事情」がある場合に例外的に問題となりうる、という枠組みで語られています。
実務上詰まりやすいのは、次のような「代表権の所在」と「意思決定の適法性」の確認です。
- 商業登記簿謄本(履歴事項全部証明書)等で当該取締役が在任していることの確認
- 他の取締役の異議がないことを示す同意書・委任状や、取締役の決定書面の提示要請
- 大口取引・継続取引では、社内の決裁ルールや意思決定プロセスの説明要求
制度上「できる」設計と、取引実務で「通る」設計は一致しないことがあるため、対外取引が多い会社ほど代表取締役を置いて代表権を明確化する効果が大きいです。
定款と株主総会の実務
株主総会招集と決議の実務
取締役会非設置会社の株主総会実務は、取締役会設置会社と比べて、定款自治(定款での柔軟な設計)を活かしやすい面があります。
一方で、株主総会や会社運営の前提として、定款は一定の事項を記載する必要があり、取締役会等の設置も定款の記載事項に含まれます。定款に記載される事項には、目的・商号・本店所在地(最小行政区画まで)・発行可能株式総数・公告方法・株式譲渡制限・種類株式などがあり、機関設計を変えるときは、これらと矛盾しないように条項全体を点検する必要があります。
また、定款は本店・支店に備え置き、発起人・株主・会社債権者が閲覧できる状態にしなければならないため、機関設計を変えた場合は「最新版の定款管理」がコンプライアンス上の基礎になります。
議事録と取締役決定書の整備
非設置会社では「取締役会議事録」という書類類型は通常登場しませんが、意思決定の証跡を残す重要性はむしろ増します。株主総会については、決議を行った場合の議事録を作成し、本店で10年間保管する運用が必要です(議事録の備置・保存という観点)。
また、設置会社では取締役会議事録が必要となる場面でも、一定の場合には「取締役全員の意見一致を証する書面」(取締役全員の同意書)で足りると整理されることがあります。したがって、非設置会社でも、取締役が複数いるなら、過半数決定の結果を取締役決定書として残し、登記・金融機関対応・監査対応に耐える形にしておくのが実務的です。
- 決定日と決定事項(何を決めたか)
- 決定に同意した取締役の氏名(誰が賛成したか)
- 署名押印(社内統制・対外提出を見据えた形式)
取締役会を置かない会社で定款に先回りして入れておくべき条項の見極め
取締役会非設置会社では、定款に「何を決めておくか」で運用負荷が大きく変わります。定款には、取締役会等の設置の有無だけでなく、役員設計・株式設計・公告方法など幅広い記載項目があり(例:株式譲渡制限、取締役会等の設置、取締役の任期の延長・短縮、取締役の責任の減免等)、機関設計に合わせて整合させる必要があります。
実務で先回りして効く条項は、「意思決定の経路を短くする」か、「対外説明を容易にする」ものです。
- 代表取締役の選定方法(取締役の互選・株主総会決議など、社内の運用に合わせて明確化)
- 株主総会運営に関する基本設計(定時総会の招集時期・事業年度などの整理)
- 株式譲渡制限に関する事項(譲渡承認の機関をどこに置くかを含めて整合)
定款の条文は、将来の資金調達や株主構成の変化により「足かせ」にもなり得ます。機関設計を変える検討をする場合は、機関の条項だけを直すのではなく、定款の記載事項全体を棚卸しして矛盾をなくすことが重要です。
取締役会を設置しない判断軸
非設置会社のデメリット
非設置会社は運営が簡素である反面、ガバナンス(統制・牽制)が弱いと評価されやすい点が実務上のデメリットです。特に、取締役会設置会社では、重要事項について取締役会の専決事項として合議・記録が求められる領域があり(重要な財産の処分・譲受け、多額の借財等(会社法第362条))、大会社の場合は内部統制システムの整備を必ず決定しなければならない(会社法第362条)など、制度として統制の枠が強いです。
一方、非設置会社では、これらを「制度が自動で担保してくれる」わけではないため、
- 重要取引の判断基準(重要な財産・多額の借財等)を社内規程・決定書面で補完しないと、後日の説明責任が重くなる
- 代表権を一本化しない場合、各自代表により対外的な混乱や逸脱リスクが増える
- 外部ステークホルダーから、組織的な監督体制が薄いと見られやすい
といった形で、信用・統制の面で追加コスト(規程整備、証跡整備、外部説明)が発生しがちです。
設置と廃止を検討するタイミング
取締役会の設置・廃止は、会社法上の「できる/できない」を前提に、株主構成・資金調達・経営体制の実態に合わせて判断します。まず、公開会社など取締役会の設置義務がある会社は、そもそも非設置にできません(会社法第327条)。
そのうえで、任意に選べる会社では、株主数が増えて株主総会での調整が重くなってきたときは、機動的経営のために取締役会を設置し、株主総会から決定事項を委譲する設計が検討対象になります。反対に、株式が集約し、意思決定が少人数で完結する局面では、取締役会を維持するための人的・事務的コストを見直し、非設置へ戻す選択肢も現実的です。
検討時には、取締役の最低員数(設置:3名以上(会社法第331条)、非設置:1名以上(会社法第326条))という「固定費化する要件」も、判断材料として明確に織り込む必要があります。
融資・出資・外部招聘の予定がある会社はいつ非設置のままでは限界になるか
外部資金(銀行融資・投資家出資)や外部人材(プロ経営者・社外役員)の導入を具体化すると、非設置会社のままでは「説明・手続・統制」の面で限界が出やすくなります。外部の利害関係者は、資金の安全性と意思決定の適正を確認するため、取締役会設置を求めたり、少なくとも取締役会設置会社と同程度の証跡整備を要求したりします。
特に、取締役会設置会社では、重要な財産の処分・譲受けや多額の借財が取締役会の専決事項であり(会社法第362条)、決議・議事録という形で意思決定の証跡が残りやすいです。非設置会社でこれに匹敵する説明可能性を確保するには、取締役決定書の整備、重要取引の社内決裁基準の設定、代表権の一本化などをセットで運用する必要があります。
また、銀行口座開設など入口の手続でも、銀行には申込みを当然に承諾すべき法令上の根拠がないとする裁判所判断が示されているため(いわゆる八千代判決の整理)、各自代表など「確認が難しい形態」の会社は、書類要求が増えたり審査が長引いたりする現実的なリスクがあります。
取締役会の確認と登記
設置会社から非設置会社への移行
取締役会設置会社から非設置会社へ移行するには、定款変更と登記をセットで行います。取締役会の設置義務がある会社(公開会社等(会社法第327条))は、前提として移行できません。
移行できる会社が手続を行う場合、実務の流れは次のとおりです。
- 現行定款と登記事項を点検し、取締役会設置規定の削除案と関連条項の整合案を作成します。
- 株主総会で定款変更の特別決議を行い、取締役会を置く旨の規定を削除します(特別決議(会社法第309条))。
- 併せて監査役等、移行後の機関設計に不要な機関があれば廃止の決議も同時に行います(機関設計の整合の観点)。
- 決議後、変更日から2週間以内に取締役会廃止等の変更登記を申請します(変更登記の申請期間(会社法第915条))。
非設置会社から設置会社への移行
非設置会社から取締役会設置会社へ移行する場合は、役員体制の確保が先に必要です。取締役会設置会社は取締役3名以上が必要で(会社法第331条)、対外代表の明確化のため代表取締役を1名以上選定して運用するのが通常です。
- 取締役3名以上を充足する候補者を確保し、就任承諾の内諾を取ります(最低員数:会社法第331条)。
- 株主総会で、取締役会設置(必要に応じて監査役等の設置)を内容とする定款変更の特別決議を行います(会社法第309条)。
- 同総会で取締役等の選任決議を行い、就任承諾書等の必要書類を回収します。
- 設置後、取締役会を開催し、代表取締役を選定して取締役会議事録(または全員同意書面)を整備します。
- 変更日から2週間以内に、取締役会設置等の変更登記を申請します(会社法第915条)。
廃止・設置の社内段取りは誰がいつ何を用意するか
社内段取りは、「株主総会(定款変更)」「役員関係書類」「登記」の3点を、登記期限(変更日から2週間以内(会社法第915条))から逆算して組みます。取締役会設置・廃止いずれの場合も、定款の記載事項(機関設計、取締役の員数・任期、株式譲渡制限、公告方法等)を横断的に点検し、整合の取れた改定案を作ることが最初の山場です。
- 最新の定款(機関設計・株式譲渡制限・役員関連条項を確認)
- 最新の登記事項証明書(変動の有無を確認するため、最新を入手)
- 株主総会議事録・株主リスト(決議と株主構成の証跡)
- 役員の就任承諾書(設置移行で新任がいる場合)
- 取締役会議事録または取締役全員の同意書(取締役会設置会社の場合の意思決定証跡)
実務上は、役員候補者の書類回収に時間を要しやすいため、先にひな形を渡して締切を決め、総会日・登記申請日から逆算して回収計画を作ると手戻りが減ります。
よくある質問
取締役会非設置会社でも代表取締役を置くべきですか?
取締役会非設置会社でも、対外取引の円滑さと統制の明確化のため、代表取締役を置く運用が一般的です。代表取締役を置かない場合は各自代表となり、銀行口座開設や契約締結の場面で、相手方から代表権の所在や他の取締役の異議の有無を厳格に確認され、追加書類の提出を求められやすくなります。
また、銀行側には預金口座開設申込みに対する当然の承諾義務があるとする法令上の根拠はない、という裁判所判断が示されているため(いわゆる八千代判決の整理)、会社側が「各自代表でも当然通るはず」と見込むのは危険です。取引の見え方(誰が代表者か)を整える観点では、代表取締役を選定して登記で明確にする実益が大きいです。
自社が取締役会設置会社か手元資料で確認できますか?
確認できます。取締役会の設置は機関設計として定款に反映され、また登記事項でもあるため、次の資料で実務上は足ります。
- 登記事項証明書(履歴事項全部証明書)の「役員に関する事項」等で、取締役会設置会社の記載を確認します。
- 最新の定款で、「取締役会を置く」旨の条項の有無を確認します。
併せて、取締役の最低員数の観点からも整合チェックができます(設置会社は取締役3名以上(会社法第331条)、非設置会社は1名以上(会社法第326条))。
取締役が1人でも株主総会議事録は必要ですか?
必要です。株主総会は株式会社の必置機関であり、決議を行った場合の議事録は作成し、本店で10年間保管する運用が求められます。
株主が1人の会社では、実際に招集・開催の形を取らず、株主の書面同意により決議があったものとみなす方法(書面決議)で手続を簡略化できますが、その場合でも「決議が成立したこと」を示す議事録(またはこれに準ずる記録)を残しておく必要があります。
銀行融資で非設置会社は不利になりますか?
取締役会非設置会社であること自体が直ちに融資不可・一律不利と決まるわけではありません。もっとも、銀行対応の実務では、ガバナンスや意思決定の適正についての確認が入ることがあり、非設置会社は「制度が自動で統制を担保する構造」ではないため、説明資料の整備が重要になります。
具体的には、取締役会設置会社であれば、重要事項(多額の借財など)が取締役会の専決事項として整理され(会社法第362条)、議事録で意思決定の証跡が残りやすいです。非設置会社では、その代替として、取締役決定書や株主総会議事録などを整備し、誰がどの権限で何を決めたかを示せる状態にしておくことが、審査・稟議の円滑化につながります。
また、口座開設を含め銀行には申込みを当然に承諾すべき法令上の根拠がないとする裁判所判断が示されているため(いわゆる八千代判決の整理)、金融機関側の確認に耐える書類整備(登記事項の明確化、代表権者の特定、意思決定証跡の提示)をしておくことが実務上のリスク低減になります。
取締役会非設置会社への対応で次にすべきこと
取締役会非設置会社を選ぶ(または取締役会を廃止する)かは、設置義務の有無(公開会社等(会社法第327条))を確認したうえで、権限配分と証跡の作り方までセットで検討するのが実務的です。人数要件(非設置は取締役1名以上(会社法第326条)、設置は3名以上(会社法第331条))は、体制の固定費に直結するため、将来の株主分散や外部資金導入の見込みと並べて判断軸にします。移行手続を取る場合は、定款変更と登記を前提に、変更日から2週間以内の申請(会社法第915条)に間に合うよう、株主総会議事録・取締役決定書・役員就任承諾書等の回収計画を先に組みます。各自代表を含む代表権設計は、銀行口座開設や契約実務で確認負荷が増えやすいため、取引の見え方を意識して代表取締役の選定や社内決裁ルールの整備もあわせて検討します。個別の会社の状況(株主構成、重要取引、資金調達)により最適解は変わるため、最終判断は会社法務・登記実務に詳しい専門家への相談を前提に進めるのが安全です。

