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東京地方裁判所での法人破産申立て手続き|民事第20部の運用と必要書類

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会社の経営状況が悪化し、法人破産を検討されている経営者やご担当者もいらっしゃるでしょう。特に東京地方裁判所で手続きを行う場合、その独自の運用を理解しておくことが重要です。この記事では、東京地裁の倒産専門部である民事第20部における法人破産申立ての流れ、費用、必要書類、そして実務上の注意点について網羅的に解説します。

目次

東京地方裁判所 民事第20部(破産再生部)の概要

民事第20部の役割と管轄範囲

東京地方裁判所の民事第20部は、法人・個人の破産や民事再生といった倒産事件を専門に扱う部署です。通称「倒産部」として知られています。この部署は、会社の清算を目的とする破産手続きだけでなく、事業再建を目指す民事再生や会社更生など、幅広い倒産手続きを管轄しています。2022年4月からは、それまで別部署が担当していた会社更生事件なども移管され、すべての倒産手続きがワンストップで処理される体制となりました。これにより、事案に応じて最適な手続きを柔軟に選択しやすくなっています。

管轄範囲は、東京都の23区および島しょ部です。多摩地域については立川支部が管轄となりますが、大規模で複雑な事件は本庁が担当することもあります。倒産実務に精通した裁判官や書記官が配置されており、迅速かつ適正な事件処理が期待されます。

主な取扱業務
  • 破産手続(清算型)
  • 民事再生手続(再建型)
  • 会社更生手続(再建型)
  • 特別清算手続(清算型)

所在地・アクセスと窓口の受付時間

民事第20部は、東京都目黒区中目黒にある中目黒庁舎(ビジネス・コート)内にあります。2022年10月に霞が関から移転しました。最寄り駅は東急東横線・東京メトロ日比谷線の「中目黒駅」で、駅から庁舎までは徒歩約10分です。

倒産部の受付窓口は庁舎1階にあり、申立書類の提出や相談を受け付けています。受付時間は平日の午前8時30分から午後5時までですが、正午から午後1時までは昼休みとなるため注意が必要です。来庁する際は、時間に余裕を持つことをお勧めします。

来庁時の注意点
  • 庁舎内に収入印紙や郵便切手を購入できる売店はありません。
  • 申立てに必要な印紙・切手は、事前に郵便局などで購入して持参する必要があります。
  • 申立ては郵送でも可能ですが、窓口での提出を希望する場合は受付時間を厳守してください。

東京地裁で法人破産を申し立てる主なメリット

破産管財人の予納金を低く抑える「少額管財制度」

東京地裁で法人破産を申し立てる最大のメリットは、「少額管財」という運用制度が確立されている点です。通常の管財事件では、破産管財人の報酬などに充てる予納金として最低でも50万円以上の費用が必要ですが、少額管財制度を利用すれば、この予納金を原則20万円に抑えることができます。

この制度が適用されるのは、申立代理人の弁護士が事前に財産や負債の状況を詳細に調査・整理し、裁判所に報告することが前提となっているためです。弁護士が管財人の業務の一部を先取りすることで、管財人の負担が軽減され、予納金が低く設定されています。資金繰りが厳しい中小企業にとって、この制度は破産手続きを利用する上で大きな助けとなります。原則は一括納付ですが、弁護士が代理人の場合は分割払いが認められることもあります。

迅速な手続きを可能にする「即日面接」の運用

「即日面接」は、東京地裁の迅速な手続きを象徴する独自の運用です。これは、弁護士が破産申立書を提出した当日、または数日以内に、裁判官が代理人弁護士と直接面談する仕組みです。他の裁判所では申立てから開始決定まで数週間を要することも珍しくありませんが、即日面接により、申立てから最短で当日、通常は数日以内に破産手続開始決定を得ることが可能になります。

この迅速性は、債権者による強引な取り立てや資産の散逸といった混乱を未然に防ぐ上で極めて重要です。面接では、裁判官が代理人から直接事情を聴き、緊急性や事案の概要を即座に把握します。なお、この面接に経営者本人が出席する必要はなく、事情を熟知した弁護士のみで対応します。

少額管財と即日面接を利用するための条件

少額管財や即日面接は、すべての事件で自動的に利用できるわけではなく、いくつかの条件を満たす必要があります。これらの有利な運用を受けるためには、事前の準備が重要となります。

少額管財・即日面接の主な利用条件
  • 弁護士を代理人として申し立てること(本人申立ては対象外)。
  • 申立て時点で、資産や負債の状況が適切に整理されていること。
  • 申立書類(財産目録、債権者一覧表など)に不備がないこと。
  • 著しい財産隠しや複雑な法律問題など、管財人の高度な調査を要する事情がないこと。
  • 東京地裁が指定する標準書式を用いて申し立てること。

東京地裁における法人破産申立ての手続きフロー

1. 弁護士への相談と申立ての準備

法人破産手続きは、まず倒産実務に詳しい弁護士へ相談することから始まります。弁護士は、会社の経営状況から破産が最適な選択肢であるかを判断します。方針が固まると、弁護士は全債権者へ「受任通知」を発送し、会社への直接の取り立てを停止させます。同時に、申立てに必要な資料(決算書、預金通帳、契約書など)の収集や、資産・負債の調査を進めます。この段階で、特定の債権者にだけ返済するなどの行為は、後の手続きで否認権行使の対象となるなど、問題が生じる可能性があるため避けるべきです。

2. 申立書一式の作成と裁判所への提出

弁護士による調査と資料収集が完了したら、裁判所に提出する「破産手続開始申立書」を作成します。申立書には、破産に至った経緯を説明する「陳述書」、会社の全資産を記載した「財産目録」、全債権者を網羅した「債権者一覧表」などを添付します。東京地裁が定める書式に従い、正確に作成することが求められます。完成した申立書一式に、手数料(収入印紙)、郵便切手、予納金を添えて、民事第20部の窓口に提出します。

3. 代理人弁護士による破産審尋(即日面接)

申立書が受理されると、裁判官と申立代理人弁護士との間で破産審尋(即日面接)が行われます。この面談には経営者本人が出席する必要はありません。面接では、裁判官から破産に至った経緯や資産状況、緊急性の有無などについて質問がなされ、代理人弁護士がこれに回答します。この場で事案の問題点が少ないと判断されれば、予納金20万円の少額管財手続きとして扱われることが事実上決まります。

4. 破産手続開始決定と破産管財人の選任

即日面接の内容を踏まえ、裁判所が破産の要件を満たしていると判断すると、「破産手続開始決定」が出されます。東京地裁の少額管財では、運用上、申立てから数日後、特定の曜日に開始決定が出ることが多いです。この決定と同時に、裁判所は中立的な立場で業務を行う「破産管財人」(申立代理人とは別の弁護士)を選任します。開始決定により、会社の財産を管理・処分する権利はすべて破産管財人に移り、個別の債権者による強制執行なども禁止されます。

5. 破産管財人への業務引継ぎ

開始決定後、速やかに経営者と申立代理人は破産管財人の事務所を訪れ、初回面談と業務の引継ぎを行います。この場で、会社の実印、銀行印、預金通帳、帳簿類、事務所の鍵などをすべて管財人に引き渡します。経営者には、管財人が行う財産調査などに対して誠実に説明・協力する義務があります。管財人は引き継いだ資料や資産をもとに、売掛金の回収や不動産の売却といった換価業務を進めていきます。

6. 債権者集会の開催と配当手続き

開始決定から約3ヶ月後、裁判所で第1回債権者集会が開かれます。集会には裁判官、破産管財人、経営者、代理人弁護士が出席し、管財人から財産の換価状況や配当の見込みなどが報告されます。債権者も出席できますが、実際に出席するケースは多くありません。すべての財産が現金化され、配当に充てる資金が確保できた場合は、税金や労働債権などを優先して支払い、残りを一般の債権者に債権額に応じて按分して配当します。

7. 破産手続の終結と法人の消滅

配当が完了した、または配当できる財産がなかった場合、裁判所は「破産手続終結決定」または「破産手続廃止決定」を出します。この決定をもって、一連の破産手続きは完了です。その後、裁判所が法務局に登記閉鎖の嘱託を行い、会社の登記記録が閉鎖され、法人は法律上完全に消滅します。法人が消滅することで、残っていた債務の支払義務もなくなります。少額管財の場合、申立てから法人消滅までの期間は、およそ半年から1年程度が目安です。

破産管財人との初回面談で準備すべきこと・質問されること

破産管財人との初回面談は、開始決定後すぐに行われる重要な手続きです。事前に準備を整え、誠実に対応することが求められます。

準備すべき物の例
  • 法人の代表印、銀行印
  • すべての預金通帳(過去数年分)
  • 決算書、総勘定元帳などの会計帳簿
  • 事務所や店舗の鍵
  • 自動車の車検証
  • 重要な契約書一式(賃貸借契約書、リース契約書など)
主な質問事項の例
  • 資金繰りが悪化した具体的な原因と時期
  • 申立て直前の現金の使途
  • 帳簿に記載されていない資産や負債の有無
  • 特定の債権者にだけ優先的に返済した事実の有無
  • 親族や役員に対する貸付・借入の状況

申立てに必要な費用(予納金・印紙代・郵便切手)の詳細

裁判所に納める予納金の金額と基準

予納金は、破産管財人の報酬や官報公告の費用などに充てるために、申立て時に裁判所へ納める費用です。東京地裁では、弁護士が代理人となることで、予納金を大幅に抑えることができます。

手続きの種類 予納金の目安(負債額5,000万円未満) 主な条件
少額管財 20万円 弁護士が代理人となる場合
通常管財 70万円以上 本人申立てなどの場合
予納金の比較(東京地裁の目安)

※少額管財の予納金20万円には、官報公告費(約1万5千円)が含まれています。 ※事案の複雑さによっては、少額管財でも増額されることがあります。

申立手数料として必要な収入印紙の金額

申立ての際に、手数料として申立書に収入印紙を貼付します。金額は申立ての内容によって異なります。

収入印紙の金額
  • 法人の自己破産申立て:1,000円
  • 法人の代表者個人も同時に申し立てる場合:法人分1,000円+個人分1,000円=合計2,000円
  • 債権者が破産を申し立てる場合:20,000円

中目黒庁舎内では印紙を購入できないため、事前に郵便局などで準備する必要があります。

通知等に使用する郵便切手(郵券)の内訳

裁判所が債権者への通知などを発送するために使用する郵便切手(郵券)を、あらかじめ納める必要があります。東京地裁の法人自己破産では、合計で4,950円分の切手を、指定された組み合わせで提出します。この内訳は、2024年4月の郵便料金改定を反映したものです。

郵便切手(郵券)の内訳(合計4,950円)
  • 500円切手:4枚
  • 180円切手:1枚
  • 110円切手:22枚
  • 50円切手:4枚
  • 10円切手:15枚

手続き終了時に切手が余った場合は、申立人に返還されます。

法人破産申立てに必要な書類と書式の準備

申立書と同時に提出する主要な添付書類

法人破産の申立てには、会社の状況を正確に証明するための様々な書類が必要です。特に重要となるのは以下の書類です。

主要な添付書類
  • 登記事項証明書:法人の存在と代表者の資格を証明します(発行後おおむね1ヶ月以内)。
  • 債権者一覧表:金融機関、取引先、従業員、公租公課などすべての債権者を記載します。
  • 財産目録:現金、預金、不動産、売掛金、保険などすべての資産を記載します。
  • 取締役会議事録:破産申立てを取締役会で承認したことを証明します。
  • 陳述書(報告書):破産に至った事情を具体的に説明します。

会社の状況を示す追加資料(決算書・登記簿謄本など)

主要な添付書類に加え、会社の財務状況や資産内容をより詳しく示すために、以下の資料も提出が求められます。

主な追加資料
  • 決算報告書:直近2期分(貸借対照表、損益計算書、勘定科目内訳明細書など)。
  • 確定申告書:直近2期分の控え。
  • 預金通帳の写し:すべての口座について、過去2年分程度。
  • 不動産の登記事項証明書:不動産を所有している場合。
  • 車検証の写し:自動車を所有している場合。
  • 各種契約書の写し:事務所の賃貸借契約書、リース契約書など。

東京地裁指定の公式書式の入手先と注意点

東京地裁では、手続きの迅速化・定型化のため、標準書式の使用を強く推奨しています。書式は、裁判所のウェブサイトからダウンロードできますが、実務上は弁護士が最新のものを準備します。

書式準備の注意点
  • 常に最新の書式を使用する:法改正や運用変更で書式が更新されることがあります。
  • 独自の形式で作成しない:指定の書式以外では受理されない可能性があります。
  • 法人の種類を確認する:株式会社用、一般社団法人用など、法人の形態に合った書式を選びます。
  • 弁護士と連携し正確に作成する:記載内容の不備は手続きの遅延につながります。

東京地裁での法人破産申立てにおける実務上の注意点

代理人弁護士の選任が手続きに与える影響

法人破産において弁護士を代理人に選任することは、手続きを円滑に進める上で不可欠です。東京地裁の運用では、弁護士が代理人であることが、予納金を低額に抑える「少額管財」や、迅速な手続きを可能にする「即日面接」を利用するための大前提となります。弁護士が関与しない本人申立ての場合、原則として通常管財となり、予納金が高額になるだけでなく、手続き開始までの時間も長引く傾向にあります。

予納金が準備できない場合のリスクと対処法

予納金が納付できなければ、破産申立ては裁判所に受理されないか、却下される可能性があります。その場合、債権者からの取り立ては止まらず、法的な整理も進みません。資金が尽きる前に、費用を確保する方法を検討する必要があります。

予納金確保の主な方法
  • 会社の資産(在庫、車両など)を適正価格で売却して費用に充てる。
  • 弁護士の受任通知発送後、債権者への支払いを停止し、その間に資金を準備する。
  • 経営者の個人資産から支出する、または親族から支援を受ける。

申立てのタイミングを慎重に判断すべきケース

破産申立ては一度行うと原則として取り下げられないため、タイミングの判断が非常に重要です。弁護士と相談の上、最適な時期を見極める必要があります。

申立てタイミングの検討が必要なケース
  • 多額の売掛金の入金が直近に予定されている場合:入金後に申し立てることで費用を確保できる可能性があります。
  • 手形の決済日や事務所の賃料支払日が迫っている場合:不渡りなどの混乱を避けるため、早急な申立てが必要です。
  • 債権者による給与や売掛金の差押えが迫っている場合:差押えを回避するため、迅速な申立てが求められます。
  • 事業譲渡を検討している場合:譲渡価格の妥当性などを確保し、管財人から否認されないよう慎重な計画が必要です。

従業員への告知と解雇手続き|適切なタイミングと説明の要点

従業員への解雇告知は、情報漏洩や混乱を避けるため、事業停止の当日に行うのが一般的です。説明の際は、経営者として誠実に謝罪し、正確な情報を提供することが、後のトラブルを防ぐ上で重要です。

従業員への説明のポイント
  • 会社の経営状況を正直に伝え、破産せざるを得ないことを説明し、謝罪する。
  • 未払賃金や退職金の扱いについて明確に伝える(未払賃金立替払制度の案内など)。
  • 解雇予告手当の支払いや、離職票の発行手続きについて具体的に説明する。
  • 雇用保険の失業給付など、従業員の生活に関わる公的支援制度の情報を提供する。

東京地裁の法人破産に関するよくある質問

民事第20部の問い合わせ先と受付時間を教えてください。

民事第20部は中目黒庁舎(ビジネス・コート)にあります。電話での問い合わせも可能ですが、個別の事件に関する相談はできません。窓口の受付時間は、平日の午前8時30分から午後5時までです(正午から午後1時の昼休みを除く)。庁舎内に印紙・切手の販売所はないため、来庁前に準備が必要です。

申立てから破産手続開始決定までどのくらいかかりますか?

弁護士が代理人となる少額管財の場合、申立てから数日~1週間程度で開始決定が出ることが一般的です。東京地裁の「即日面接」運用により、極めて迅速な手続きが可能です。一方、弁護士を立てない通常管財では、申立てから開始決定まで1ヶ月以上かかることもあります。

必要な郵便切手(郵券)の具体的な組み合わせは?

法人自己破産の場合、合計4,950円分の郵便切手が必要です。内訳は裁判所によって厳密に定められています。

郵便切手(郵券)の内訳(合計4,950円)
  • 500円切手:4枚
  • 180円切手:1枚
  • 110円切手:22枚
  • 50円切手:4枚
  • 10円切手:15枚

裁判所の事件記録を閲覧・謄写するにはどうすればよいですか?

破産事件の記録を閲覧・謄写できるのは、破産者本人、代理人弁護士、債権者などの利害関係人に限られます。申請は、中目黒庁舎2階の民事訟廷記録係で行います。申請の際には、身分証明書、印鑑、利害関係を証明する資料(債権者であれば契約書など)が必要です。謄写(コピー)には別途手数料がかかります。

まとめ:東京地裁での法人破産を円滑に進めるための要点

東京地方裁判所の民事第20部は、倒産事件を専門に扱い、独自の運用が確立されている専門部署です。特に、予納金を原則20万円に抑える「少額管財」と、迅速な開始決定を可能にする「即日面接」は、申立人にとって大きなメリットと言えます。これらの有利な制度を利用するには、倒産実務に精通した弁護士を代理人に立て、事前に資産や負債状況を正確に整理しておくことが不可欠です。申立てには多数の書類が必要となり、手続きも複雑なため、まずは専門家である弁護士に相談し、最適なタイミングと準備について助言を求めることが、円滑な手続きへの第一歩となるでしょう。

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