手続

会社更生手続の申立て要件と流れを解説|民事再生との違いもわかる

経営リスクナビ編集部

経営不振に陥り、事業再生の最終手段として会社更生手続を検討されている経営者や法務・財務担当者の方もいらっしゃるでしょう。会社更生は強力な再建手法ですが、手続きは非常に複雑で、申立てには厳格な要件が課せられます。適切な判断を下すためには、手続きの全体像や民事再生との違いを正確に理解しておくことが不可欠です。この記事では、会社更生を申し立てるための具体的な手続き、要件、費用について、実務的な観点から詳しく解説します。

会社更生手続の基本概要

会社更生法の目的と再建の仕組み

会社更生法は、経営危機に陥った株式会社の事業を維持し、その再建を図ることを目的とした、裁判所の関与のもとで行われる法的な倒産手続です。事業が消滅すると債権者や従業員など多くの利害関係者に不利益が生じるため、裁判所が選任した更生管財人が経営陣に代わって経営権を掌握します。管財人は、債権者や株主などの権利を更生計画によって調整し、債務の大幅な減額や支払猶予を実現します。同時に、不採算事業の整理やスポンサーの選定などを通じて、企業の収益力を根本から立て直すことを目指します。このように、会社更生法は単なる債務整理ではなく、企業価値を保全しながら事業を再生させるための強力な仕組みです。

手続の対象となる会社

会社更生手続の対象となるのは株式会社に限定されています。これは、会社更生法が、株主の権利を消滅させる100%減資や新株発行といった、株式会社特有の資本構成の変更を前提として設計されているためです。したがって、合同会社や医療法人、学校法人など、株式会社以外の法人はこの手続を利用できません。また、手続が非常に複雑かつ厳格であり、裁判所に納める予納金もおおむね数千万円から数億円と高額になるため、事実上、社会的な影響力が大きい大規模な株式会社が利用の対象となっています。

更生管財人の役割と選任

会社更生手続では、申立て後に裁判所によって更生管財人が選任され、会社の経営権と財産の管理処分権を全面的に掌握します。これは、旧経営陣から完全に独立した中立的な立場で、客観的に事業再建を主導する必要があるためです。旧経営陣は原則として経営から退き、弁護士などの専門家である管財人がその任に当たります。

更生管財人の主な役割と権限
  • 会社の事業経営と、国内外の全財産の管理および処分権の掌握
  • 会社の財産を評価し、債権者からの届出を調査して負債総額を確定させること
  • スポンサー企業との交渉や、実現可能な更生計画案の策定および提出
  • 旧経営陣による不適切な財産流出があった場合にそれを取り戻す否認権の行使
  • 旧経営陣の経営責任を調査し、必要に応じて損害賠償を請求すること

このように、更生管財人は裁判所の監督のもとで強力な権限を行使し、手続全体を主導する最高責任者として機能します。

会社更生申立ての要件

申立てが可能となる法的要件

会社更生手続は債権者の権利を強力に制限するため、申立てが認められるには厳格な法的要件を満たす必要があります。具体的には、破産手続開始の原因となる事実(支払不能や債務超過)が生じるおそれがある場合や、弁済期にある債務を支払うと事業の継続に著しい支障を来すおそれがある場合に申立てが可能です。単に資金繰りが苦しいというだけでは足りず、裁判所は以下の点も厳しく審査します。

会社更生申立てが棄却される主なケース
  • 更生計画の作成や可決の見込みが明らかにない場合
  • 裁判所に納めるべき高額な予納金が納付されない場合
  • 破産手続など他の手続による方が、債権者全体の利益にかなうと判断される場合
  • 債務の支払いを先延ばしにするなど、不当な目的で申立てがなされた場合

したがって、申立てにあたっては、法的な要件を満たすことと、事業再建に向けた現実的な展望を示すことが不可欠です。

申立てができる者(申立権者)

会社更生手続の申立ては、経営危機にある株式会社自身だけでなく、一定の要件を満たす債権者や株主も行うことができます。これは、経営陣が適切な経営判断を下せない状況でも、外部の利害関係者が主導して企業価値の毀損を防ぎ、再建の道筋をつけられるようにするためです。

会社更生手続の申立権者
  • 債務者である株式会社自身(取締役会の決議による)
  • 会社の資本金の10分の1以上に相当する債権を有する債権者
  • 総株主の議決権の10分の1以上を有する株主

実務上は、会社自身が申し立てるケースが大半ですが、大口債権者である金融機関などが、融資先企業の価値が失われる前に再建を促す目的で申し立てることもあります。

申立て前の検討事項と社内体制の構築

会社更生の申立て前には、周到な事前準備と社内体制の構築が極めて重要です。手続が開始されると事業環境は激変し、初動の遅れは事業価値の致命的な毀損につながりかねません。申立てを決断する前に、少なくとも以下の準備を専門家と連携して進める必要があります。

申立て前の主な検討・準備事項
  • 詳細な資金繰り予測に基づき、資金が枯渇する時期を正確に把握すること
  • おおむね数千万円規模の予納金や、当面の事業継続に必要な運転資金を確保すること
  • 取引先、金融機関、従業員など、各利害関係者への説明方針を固めておくこと
  • 申立て後の混乱を最小限に抑えるための初動対応マニュアルを準備すること
  • 申立て代理人弁護士などの専門家を中心としたプロジェクトチームを組成すること

会社更生手続の流れ

申立てから開始決定まで

裁判所への申立てから更生手続の開始決定までの期間は、会社の財産を守り、再建の基盤を固めるための重要な初期段階です。申立ての事実が公になると信用不安が広がり、債権者による権利行使が殺到するおそれがあるため、裁判所は迅速に財産保全の措置を講じます。

申立てから開始決定までの流れ
  1. 申立権者が管轄の裁判所に会社更生手続の申立てを行う。
  2. 裁判所は申立てと同時に保全処分命令を発令し、会社の財産処分や弁済行為を禁止する。
  3. 多くの場合、裁判所は保全管理人を選任し、暫定的に会社の財産管理を行わせる。
  4. 保全管理人は会社の財産状況や事業内容を調査し、再建の見込みについて裁判所に報告する。
  5. 裁判所は報告書などを審査し、要件を満たしていると判断した場合に更生手続開始決定を下す。

財産状況の調査と債権届出

更生手続が開始されると、正式に選任された更生管財人が中心となり、会社の資産と負債の全容を確定させる作業に着手します。これは、実態に即した公正な更生計画を策定するための不可欠なプロセスです。

財産調査と債権確定の流れ
  1. 更生管財人が、手続開始時点の会社の全資産を時価で評価し、貸借対照表と財産目録を作成して裁判所に提出する。
  2. 裁判所が定めた期間内に、債権者は自らの債権額やその原因を裁判所に届け出る。
  3. 更生管財人は、届け出られたすべての債権について内容を調査し、その債権を認めるか否かの判断(認否)を行う。
  4. 管財人が認めなかった債権や金額に争いがある債権は、最終的に裁判所の債権調査確定手続によってその存否や額が確定される。

更生計画案の作成と決議

会社の資産と負債が確定した後、更生管財人は事業再建の具体的な計画である更生計画案を作成します。この計画案には、債務の大幅なカットや事業の再編など、利害関係者の権利に重大な変更をもたらす内容が含まれるため、法律で定められた多数の同意を得る必要があります。

主な債権者グループの可決要件
  • 更生債権者(無担保の一般債権者)の組:議決権総額の過半数の同意
  • 更生担保権者(担保を持つ債権者)の組:権利変更の内容に応じ、議決権総額の3分の2以上の同意

管財人は、この計画案を債権者などが集まる関係人集会に提出し、可決を目指します。可決のためには、計画の経済的合理性や、会社を清算(破産)するよりも多くの弁済を受けられることを丁寧に説明し、理解を求める交渉が不可欠です。

更生計画の認可と終結

関係人集会で可決された更生計画案は、裁判所による認可決定を受けて初めて法的な効力が生じます。裁判所は、計画の内容が法律に違反しておらず、公正かつ衡平で、実行可能性が高いかを最終的に審査します。認可決定が確定すると、計画に従って債務の免除や株主権利の消滅といった強力な効果が発生し、管財人の下で計画の遂行が始まります。計画に沿った弁済が順調に進み、今後の遂行にも支障がないと裁判所が判断した時点で、更生手続の終結決定がなされ、企業は裁判所の管理下から離れます。

再建計画の鍵となるスポンサーの役割と選定

自力での再建が困難な大企業の会社更生において、資金面や事業面で支援を提供するスポンサーの存在は、再建の成否を分ける極めて重要な要素です。スポンサーは、更生計画の中で会社の新たな株主となり、その出資金は債権者への弁済原資や事業継続のための運転資金に充てられます。更生管財人は、企業の価値を最大化できる最適なスポンサー候補を、競争入札などの公正かつ透明性の高い手続を通じて選定する責任を負います。

申立てに必要な費用と書類

裁判所への予納金と弁護士費用

会社更生の申立てには、極めて高額な資金の準備が必要です。これは、手続が長期間にわたり、管財人をはじめとする多くの専門家が関与するための実費や報酬を賄うためです。これらの費用を確保できなければ、申立て自体が困難となります。

会社更生申立てにかかる主な費用
  • 裁判所への予納金:会社の負債総額に応じて定められ、おおむね数千万円、大企業では数億円に達することもある。
  • 弁護士費用:申立てを代理する法律事務所への着手金や成功報酬で、事案の規模によりおおむね数千万円から数億円に上る。
  • 当面の運転資金:申立て後も事業を継続するために、手元に確保しておく必要がある現金。

申立て時の主な添付書類

会社更生の申立てにあたっては、会社の財務状況や経営実態を正確に証明するため、膨大な量の書類を裁判所に提出する必要があります。これらの書類は、裁判所が手続開始の要否を迅速に判断するための基礎資料となります。

主な申立添付書類
  • 申立書
  • 商業登記簿謄本、定款、株主名簿
  • 直近数事業年度分の決算報告書(貸借対照表、損益計算書など)
  • 申立て時点の財産状況を示す財産目録および貸借対照表
  • すべての債権者を網羅した債権者一覧表
  • 資金繰りの実績と今後の見込みを示す資金繰り表
  • 申立てに関する取締役会の議事録

会社更生のメリット・デメリット

事業継続における主なメリット

会社更生手続の最大のメリットは、事業を停止させることなく、他の倒産手続にはない強力な法的権限を用いて、抜本的な事業再建を図れる点にあります。

会社更生手続の主なメリット
  • 金融機関などが持つ担保権の実行を全面的に禁止でき、事業に必要な資産(工場や不動産など)を確実に保全できる。
  • 株主総会の決議なしに、合併、会社分割、100%減資、新株発行といった組織再編行為を機動的に実行できる。
  • 滞納している税金などの公租公課も手続の対象となり、法律の要件を満たせば徴収猶予や換価の猶予を受けられる場合がある。
  • 第三者である更生管財人が中立的な立場で手続を主導するため、利害関係者の感情的な対立を排し、合理的な再建を進めやすい。

経営者が留意すべきデメリット

会社更生は強力な再建手法である反面、特に現経営陣や株主にとっては、非常に厳しい結果を伴うデメリットが存在します。これは、債権者に多大な協力を強いる代償として、経営責任の明確化などが法律上求められるためです。

会社更生手続の主なデメリット
  • 経営破綻の責任を明確にするため、原則として現経営陣は全員退任し、経営権を完全に失う。
  • スポンサーによる新たな資本注入を可能にするため、通常は100%減資が行われ、既存株主はその権利をすべて失う。
  • 手続が極めて厳格かつ複雑なため、申立てから終結まで数年単位の長期間を要することが多い。
  • 手続中は裁判所と管財人の厳格な監督下に置かれ、経営の自由度が著しく制限される。
  • 申立てに必要な予納金や弁護士費用がおおむね数千万円以上と極めて高額である。

民事再生手続との主な違い

会社更生と民事再生は、どちらも事業の再建を目指す「再建型」の倒産手続ですが、その仕組みや対象には下表のような根本的な違いがあります。

項目 会社更生手続 民事再生手続
対象企業 株式会社のみ 法人・個人すべて
経営陣の処遇 原則退任(管財人が経営を掌握) 原則継続(経営者が主体で再建)
遂行主体 裁判所が選任する更生管財人 債務者である経営者自身(監督委員の監督下)
担保権の扱い 権利行使は全面的に禁止される 原則として手続外での自由な行使が可能
株主の権利 原則として100%減資により失権 原則として権利は維持される
手続費用・期間 高額・長期にわたる 比較的低額・短期で進むことが多い
会社更生と民事再生の主な違い

対象企業と経営陣の処遇

会社更生は株式会社のみを対象とし、経営破綻の責任を明確にする観点から、原則として現経営陣は退任し、裁判所が選任する更生管財人が経営を引き継ぎます。これに対し、民事再生は法人・個人を問わず利用でき、現経営陣が経営を続けながら自ら再建計画を遂行することを基本としています(DIP型:Debtor in Possession)。このため、一般的に、経営陣を刷新して抜本的な改革を目指す大企業は会社更生、経営者の知見を活かして自力再建を目指す中小企業は民事再生を選択する傾向があります。

担保権の取り扱いの相違点

担保権の扱いは、両手続の最も決定的な違いの一つです。会社更生では、金融機関などが持つ不動産担保権なども更生担保権として手続内に取り込まれ、担保権の実行(競売など)は全面的に禁止されます。これにより、事業に必要な工場や設備などの資産を確実に保全できます。一方、民事再生では、担保権は別除権として扱われ、手続とは関係なく権利行使が可能です。したがって、主要な事業資産が担保に入っている場合、その資産を守るという観点では会社更生が圧倒的に強力な手続といえます。

手続の遂行主体(管財人か経営者か)

会社更生では、裁判所が選任する更生管財人が会社の全権を掌握し、強力なリーダーシップで再建を主導します。利害関係が複雑に絡み合う大規模な再建において、第三者である管財人が客観的な立場でトップダウンの意思決定を行う仕組みです。対照的に、民事再生では債務者である経営者自身が手続の遂行主体となり、裁判所が選任する監督委員の監督を受けながら、債権者と交渉し、自主的に再建策を進めていきます。どちらの手続が適しているかは、企業の規模や経営陣の状況、利害関係の複雑さによって異なります。

会社更生に関するよくある質問

従業員の雇用は維持されますか?

会社更生は事業の継続を前提とするため、再建に不可欠な人材である従業員の雇用は、原則として維持されます。ただし、更生計画の中で不採算部門の閉鎖や事業譲渡が行われる場合など、経営合理化のためにやむを得ず人員削減(整理解雇)が行われる可能性はあります。その場合でも、法律で定められた厳格な要件に従って実施されます。

取引先への支払いはどうなりますか?

取引先への支払いは、その原因となった取引が手続開始決定の前か後かによって扱いが全く異なります。開始決定前の取引に基づく買掛金などの債務は「更生債権」となり、法律により支払いが一旦禁止されます。これらの債務は、更生計画で定められた減額率や分割払いのスケジュールに従って弁済されます。一方、開始決定後の新たな取引で発生した代金は「共益債権」として扱われ、更生手続とは関係なく、随時全額が支払われます。これにより、事業継続に必要な取引は維持されます。

手続が終結した後の事業はどうなりますか?

更生手続が終結すると、会社は裁判所や管財人の管理から完全に離れ、健全な財務体質を持つ通常の株式会社として事業活動を再開します。多くの場合、スポンサー企業が新たな株主となり、その支援の下で選任された新経営陣が事業を運営していきます。手続終結は再建のゴールではなく、厳しい市場競争を勝ち抜いていくための新たなスタートラインとなります。

申し立てた事実は公表されますか?

はい、会社更生の申立てを行った事実は必ず公表されます。裁判所は、申立てがあると官報にその旨を公告する法的義務を負っています。また、会社更生を利用するのは社会的な影響力が大きい大企業がほとんどであるため、通常は報道機関によって広くニュースとして報じられます。したがって、申立ての事実を秘密にしたまま手続を進めることは不可能です。

申立て公表後のステークホルダー対応はどうすればよいですか?

申立ての公表直後は、関係者の間に不安や混乱が広がりやすいため、迅速かつ誠実な情報提供が極めて重要です。情報の空白は憶測を呼び、事業価値を大きく損なう二次被害を引き起こしかねません。パニックを防ぎ、事業継続への信頼を繋ぎ止めるためには、以下のような対応が求められます。

申立て公表後の主な対応
  • 取引先向けの説明会を速やかに開催し、手続の目的や今後の取引代金の支払ルールを丁寧に説明する。
  • 従業員に対して集会を開き、雇用の見通しや給与の支払いについて正確な情報を提供し、不安を払拭する。
  • 金融機関や大口債権者とは個別に面談し、再建計画への理解と協力を要請する。
  • 事業継続に不可欠な主要取引先を個別に訪問し、取引継続を真摯にお願いする。

まとめ:会社更生手続を正しく理解し、適切な事業再生の判断を下すために

本記事では、会社更生手続の概要から申立ての要件、具体的な流れ、民事再生との違いまでを解説しました。会社更生は、更生管財人の主導のもと、担保権の実行を禁止するなど強力な権限を用いて事業再建を目指す手続きですが、経営陣の退任や100%減資といった厳しい側面も伴います。自社の再建を検討する際には、経営陣が主体となる民事再生との違いを明確に理解し、どちらが状況に適しているかを慎重に判断することが重要です。手続きは極めて専門的かつ複雑であり、高額な予納金も必要となるため、少しでも可能性を検討する段階で、速やかに倒産法務に詳しい弁護士などの専門家へ相談することをおすすめします。本記事で解説した内容は一般的な情報であり、個別の状況に応じた最適な判断は必ず専門家にご相談ください。

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