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簡易再生とは?通常の民事再生との違い、要件や手続きの流れを解説

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経営状況が悪化し、迅速な事業再生の道を模索されている経営者やご担当者にとって、法的手続の選択は極めて重要です。特に、通常の民事再生よりも短期間かつ低コストで再建を図れる可能性がある「簡易再生」は、有力な選択肢の一つとなり得ます。この記事では、簡易再生手続を利用するための具体的な要件や流れ、通常の民事再生との違いを明確にしながら、自社での活用可能性を判断するためのポイントを詳しく解説します。

目次

簡易再生手続とは?通常の民事再生との関係性

簡易再生の概要と迅速な事業再生を目指す目的

簡易再生とは、民事再生法に定められた特則の一つで、通常の民事再生手続を簡略化し、より迅速な事業再生を目指す制度です。最大の特徴は、手続の中で多くの時間を要する「再生債権の調査・確定」のプロセスを省略できる点にあります。

経営危機に陥った企業にとって、再建手続の長期化は事業価値を大きく損なう原因となります。そこで、申立て前に再生計画案などについて一定割合以上の債権者から同意を得ていることを条件に、手続を大幅に短縮することが認められています。これにより、企業は早期に経営の立て直しに集中でき、取引先の信用不安や顧客離れといった悪影響を最小限に抑えることが可能となります。

通常の民事再生手続を簡略化した制度としての位置づけ

通常の民事再生手続では、申立て後に債権の届出、債務者による認否、異議のある債権の確定といった厳格な調査手続が段階的に行われます。これに対し簡易再生は、届出があった再生債権の総額のうち、裁判所が評価した額の3分の2以上を有する債権者から事前に同意を得ていれば、これらの調査手続をすべて省略し、直ちに再生計画案の決議に進むことができます。

実務上は、事業再生ADR(裁判外紛争解決手続)などの私的整理で大多数の同意を得ながらも、一部の反対により不成立となった案件を法的手続へ円滑に移行させる受け皿としての役割も担っています。ただし、債権調査を省略する代わりに、再生債権者表の記載に確定判決と同一の効力である執行力が付与されないという点には注意が必要です。

簡易再生を利用するための法的要件

再生債権者の事前同意(議決権者の総数の半数以上かつ議決権総額の5分の3以上)

簡易再生を申し立てるための最も重要な要件は、申立て前に届出再生債権者から書面による同意を得ることです。この同意には、再生計画案の内容だけでなく、債権の調査・確定手続を省略することへの同意も含まれます。

具体的には、届出があった総債権額のうち、裁判所が評価した額の3分の2以上に相当する債権を持つ債権者の同意が必要となります。これは金額を基準とする要件です。なお、最終的に再生計画案を可決する際には、通常の民事再生と同様に「出席した議決権者の過半数」かつ「議決権総額の2分の1以上」の賛成が必要となりますが、申立時点で高いハードルを越えているため、決議で否決されるリスクは極めて低いと言えます。

同意の対象となる再生債権者の範囲と確認方法

同意を得るべき対象は、裁判所が定めた期間内に債権を届け出た「届出再生債権者」です。手続開始後、債権届出期間が満了した時点で債権者の構成が確定します。

再生債務者は、提出された届出書を基に各債権者の議決権額を算出し、その合計額の3分の2以上に達するまで、個別に書面で同意を取り付けなければなりません。この際、不動産担保権などの別除権を持つ債権者については、担保でカバーされないと見込まれる不足額の部分のみが、同意の対象となる再生債権として扱われます。集めた同意書を裁判所に提出し、要件を満たしていると認められることで、簡易再生の手続が開始されます。

金融機関など大口債権者との事前交渉の重要性

簡易再生を成功させるには、申立て前の段階で、金融機関をはじめとする大口債権者と綿密な交渉を行うことが不可欠です。債権額で3分の2以上という高い同意要件をクリアするためには、主要な取引金融機関などの協力が絶対に欠かせません。

交渉を円滑に進めるためには、以下の点を丁寧に説明し、信頼関係を築くことが求められます。

交渉で説明すべき主要なポイント
  • 経営状況や再生手続に至った原因を誠実に開示する
  • 再生計画案の合理性や実現可能性を具体的な数値で説明する
  • 破産による清算よりも民事再生による弁済の方が、債権者にとって経済的利益が大きいことを明確に示す

これらの事前調整が不十分な場合、同意を得られず、簡易再生の利用は困難となります。

簡易再生の利用が特に有効なケースとは?

簡易再生は、特に以下のようなケースでそのメリットを最大限に発揮します。

簡易再生が特に有効なケース
  • 事業再生ADRなど、先行する私的整理で大多数の同意が既に得られている場合
  • 債権者が数社の金融機関のみなど、債権者構成が単純で調整が容易な場合
  • 風評被害を最小限に抑え、ブランドイメージや技術力といった事業価値の維持が最優先される場合

簡易再生のメリットとデメリット(注意点)

メリット:手続き期間の大幅な短縮と予納金の削減

簡易再生の最大のメリットは、手続期間を大幅に短縮できる点です。通常の民事再生が認可決定までにおおむね半年程度かかるのに対し、簡易再生では債権調査を省略することで、これをおおむね2か月程度短縮できる可能性があります。この迅速性は、取引先の信用維持や従業員の不安解消に大きく貢献します。

また、手続が簡略化されることで、裁判所に納める予納金が低額になる可能性があります。監督委員の業務負担が軽減されるため、裁判所の裁量により費用が抑えられる傾向にあり、資金繰りが厳しい企業にとっては大きな利点となります。

メリット:事業価値の毀損を最小限に抑えやすい点

再建手続が長期化すると、倒産の事実が広く知れ渡り、取引先からの受注減少や人材流出など、事業価値が毀損されるリスクが高まります。簡易再生は、極めて短期間で再生計画を確定させ、早期に正常な経営状態への復帰を目指せるため、こうした事業価値の低下を最小限に食い止めることができます。会社の収益力を損なわずに再建を図る上で、非常に有効な選択肢です。

デメリット:担保権(別除権)の実行を阻止できない

簡易再生を含む民事再生手続では、担保権(別除権)の実行を原則として阻止できません。別除権は再生手続とは関係なく行使できる権利であるため、例えば事業に必要な工場や機械に抵当権が設定されている場合、担保権者である金融機関との合意がなければ、手続中であっても競売を申し立てられるリスクがあります。

事業継続に不可欠な資産を確保するためには、担保権者と個別に交渉し、権利行使を待ってもらう「別除権協定」などを結ぶ必要があります。

デメリット:債権者からの事前同意を得る交渉が難航するリスク

簡易再生を利用するための前提となる「総債権額の3分の2以上」という高い同意要件をクリアできないリスクがあります。債権者によっては、債権調査を省略することに懸念を示したり、再生計画案の内容に納得しなかったりする場合があり、交渉が難航する可能性があります。

期限までに必要数の同意書が集まらなければ、簡易再生の利用を断念し、通常の民事再生手続に移行せざるを得ません。その場合、それまでに費やした時間と労力が再建スケジュールの遅延につながってしまいます。

同意を前提とする手続きゆえの見落としがちな注意点

簡易再生には、その簡略化された性質ゆえの特有の注意点が存在します。

同意を前提とする手続きゆえの見落としがちな注意点
  • 債権者表の記載に確定判決と同一の効力(執行力)が付与されない
  • 手続終了後に債権の存否をめぐる紛争が再燃する可能性がある
  • 手続の迅速さから詳細な資産調査が不十分となり、後で問題が発覚するリスクがある

これらの点を理解した上で、同意取得を急ぐあまり、事業の実態把握を疎かにしないよう慎重に進めることが重要です。

簡易再生の申立てから認可決定までの手続きフロー

ステップ1:事前準備(弁護士への相談・債権者への同意取り付け)

まず、事業再生に精通した弁護士に相談し、簡易再生の利用が可能かどうかの見通しを立てます。次に、実現可能な再生計画案を策定し、金融機関などの主要債権者に対して個別に説明を行い、手続への協力と同意の取り付けを開始します。この段階で、総債権額の3分の2以上の同意を得られる目処を立てることが極めて重要です。

ステップ2:再生手続開始の申立てと開始決定

債権者との調整がつき次第、管轄の地方裁判所に民事再生手続の開始を申し立てます。申立てと同時に、債権者による差押えなどを防ぐための保全処分も要請します。裁判所が申立てを認めると、再生手続開始決定が下され、債権届出期間が定められます。この期間満了後、取得した同意書が要件を満たしていることを示して簡易再生の申立てを行い、裁判所がこれを認めることで簡易再生の決定がなされます。

ステップ3:再生計画案の提出と書面による決議

簡易再生の決定が下されると、債権調査手続を経ずに再生計画案を裁判所に提出します。決議は、債権者が一堂に会する債権者集会に代わり、書面投票で行われるのが一般的です。申立ての際に同意書を提出した債権者は、再生計画案の内容に既に同意しているため、決議で否決されるリスクは極めて低いと言えます。

ステップ4:裁判所による再生計画の認可決定

再生計画案が決議で可決されると、裁判所が計画の適法性や実現可能性などを最終審査し、問題がなければ再生計画認可決定を下します。この決定が官報に公告され、確定すると、再生計画はすべての債権者に対して法的な拘束力を持ちます。以降、会社は計画に従って弁済を開始し、事業の再建を進めていくことになります。

【比較表】簡易再生と通常の民事再生手続の主な違い

簡易再生と通常の民事再生手続の主な違いを以下にまとめます。

比較項目 簡易再生 通常の民事再生
開始要件 届出再生債権額の3分の2以上の事前同意が必須 事前同意は不要
債権調査手続 原則として省略される 債権届出、認否、調査など厳格な手続が必要
手続期間の目安 申立てからおおむね4か月程度 申立てからおおむね5~6か月程度
決議方法 書面投票が原則(債権者集会は任意) 債権者集会の開催が必要的
予納金 業務量軽減により低額になる傾向がある 負債総額に応じた基準額が必要
債権者表の効力 確定判決と同一の効力(執行力)はない 確定判決と同一の効力(執行力)がある
簡易再生と通常の民事再生手続の比較

手続き開始の要件(債権者の事前同意の有無)

通常の民事再生は、債権者の同意がなくても申立てが可能ですが、簡易再生では、届出再生債権額の3分の2以上という極めて高い割合の事前同意が絶対的な利用条件となります。この同意があるからこそ、その後の手続の大幅な簡略化が認められています。

債権者集会の開催と手続きに要する期間の比較

通常の民事再生では、厳格な債権調査手続が必要であり、認可決定までにはおおむね5〜6か月を要します。また、決議のために債権者集会を開催する必要があります。一方、簡易再生はこれらのプロセスを省略するため、おおむね2か月ほど期間を短縮でき、決議も書面投票で済ませられるため、迅速かつ効率的に手続を進めることが可能です。

裁判所に納める予納金の目安

民事再生手続では、裁判所に予納金を納付する必要があります。この金額は負債総額によって決まり、例えば負債額5,000万円未満の場合でもおおむね200万円程度が目安となります。簡易再生では、監督委員の業務負担が軽減されることから、裁判所の裁量によってこの予納金が減額されるケースがあり、費用面でのメリットが期待できます。

簡易再生に関するよくある質問

簡易再生にかかる費用の目安はどのくらいですか?

簡易再生にかかる費用は、主に裁判所に納める予納金弁護士費用です。予納金は負債総額に応じて変動しますが、おおむね最低でも200万円程度からが目安となり、事案によっては通常より減額される可能性があります。弁護士費用は企業の規模や債権者数によって異なりますが、着手金と成功報酬を合わせて数百万円以上になるのが一般的です。手続が簡略化される分、通常の民事再生よりは費用を抑えられる傾向にあります。

簡易再生の申立ては弁護士に依頼する必要がありますか?

事実上、弁護士への依頼は必須です。簡易再生は民事再生法の特則であり、高度な法的知識と実務経験が求められます。特に、手続の成否を分ける債権者との事前交渉や、裁判所に提出する専門的な書類の作成は、専門家でなければ極めて困難ですし、迅速かつ確実に手続を進めるためにも、事業再生の実績が豊富な弁護士に相談することが不可欠です。

債権者の同意が得られず簡易再生が失敗した場合、その後はどうなりますか?

申立てまでに必要な「3分の2以上」の同意が集まらなかった場合、簡易再生としての手続は進められません。しかし、直ちに破産となるわけではなく、多くの場合、そのまま通常の民事再生手続に移行して再建を目指すことになります。ただし、その場合は省略するはずだった債権調査手続をすべて行う必要があるため、再建までのスケジュールは大幅に遅れることになります。

まとめ:簡易再生の活用は債権者との事前交渉が成功の鍵

本記事では、迅速な事業再生を実現する簡易再生手続について、その要件やメリット・デメリットを解説しました。この手続の最大の特徴は、届出再生債権額の3分の2以上という高いハードルの事前同意を条件に、債権調査を省略し、手続期間を大幅に短縮できる点にあります。これにより、事業価値の毀損を最小限に抑えつつ、予納金を削減できるメリットが期待できます。一方で、同意を得るための事前交渉が難航するリスクや、担保権の実行を阻止できないといった注意点も存在します。自社での簡易再生の利用を検討する際は、まず主要な金融機関など大口債権者との関係性を踏まえ、同意形成の見込みを慎重に評価することが第一歩となります。その上で、事業再生に精通した弁護士に早期に相談し、最適な再建戦略を立てることが不可欠です。

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