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SNS誹謗中傷の損害賠償金|慰謝料相場と企業が取るべき請求手続き

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SNSでの誹謗中傷による風評被害に直面し、損害賠償請求を検討しているものの、慰謝料の相場がわからず判断に迷っている方も多いのではないでしょうか。こうした誹謗中傷を放置すると、企業の信用低下や売上減少といった深刻な事態を招く可能性があります。損害賠償金の額は、権利侵害の種類や投稿の悪質性など複数の要因によって変動するため、適切な相場観を持つことが重要です。この記事では、SNSの誹謗中傷で請求できる損害賠償金の内訳、特に慰謝料の算定相場を類型別に解説し、加害者を特定して請求するまでの具体的な手続きを解説します。

SNS誹謗中傷の損害賠償金とは

請求できる損害賠償金の内訳

SNS上の誹謗中傷に対して請求できる損害賠償金は、複数の要素から構成されます。中心となるのは、被害者が受けた精神的苦痛に対する「慰謝料」です。それに加え、誹謗中傷によって生じた具体的な金銭的損害や、加害者を特定するためにかかった費用なども請求の対象となります。

損害賠償金の内訳
  • 慰謝料: 精神的苦痛に対する賠償金。個人だけでなく、法人の名誉や信用が侵害された場合の無形損害も含まれます。
  • 財産的損害: 売上減少などの逸失利益や、誹謗中傷が原因で通院した場合の治療費など。投稿と損害の明確な因果関係の証明が必要です。
  • 調査費用: 匿名の加害者を特定するために要した発信者情報開示請求にかかる費用など。
  • 弁護士費用: 損害賠償請求訴訟を遂行するためにかかった弁護士費用の一部も、損害として認められる場合があります。

請求の法的根拠となる3つの権利侵害

インターネット上の書き込みに対して損害賠償を請求するには、その投稿が民法上の「不法行為」にあたり、特定の権利を侵害していることを主張・立証する必要があります。SNSの誹謗中傷で問題となる主な権利侵害は、以下の3つです。

権利侵害の類型 内容 具体例
名誉毀損 公然と具体的な事実を摘示して、他人の社会的評価を低下させる行為。内容の真偽は問いません。 「A社の〇〇部長は取引先から不正な金銭を受け取っている」
侮辱 具体的な事実を摘示せずに、公然と他者を侮辱する行為。名誉感情の侵害とされます。 「馬鹿」「無能」といった抽象的な罵詈雑言
プライバシー侵害 私生活上の事実など、一般に公開を望まない個人情報を本人の許可なく公開する行為。 氏名、住所、電話番号、病歴、前科などの暴露
主な権利侵害の類型と内容

【類型別】慰謝料の算定相場

名誉毀損に該当する場合の相場

名誉毀損の慰謝料は、被害者が個人か法人か、また投稿内容の悪質性などによって金額が変動します。定価のように決まっているわけではなく、個別の事情を総合的に考慮して裁判所が判断します。

被害者 慰謝料相場 備考
個人 10万円~50万円 虚偽の内容で犯罪者扱いするなど悪質な場合は100万円以上となることもあります。
法人 50万円~100万円 企業の規模や信用の失墜度合いにより、数百万円以上の賠償が認められるケースもあります。
名誉毀損の慰謝料相場(目安)

侮辱に該当する場合の相場

具体的な事実の摘示を伴わない「侮辱」に対する慰謝料は、社会的評価の低下までには至らないとされるため、名誉毀損に比べて低額になる傾向があります。一般的には、数万円から10万円程度が相場です。

ただし、侮辱行為が極めて執拗かつ大量に行われた場合や、脅迫的・差別的な表現を含む悪質なケースでは、例外的に数十万円の慰謝料が認められることもあります。近年、侮辱罪が厳罰化された影響もあり、民事上の慰謝料も高額化する傾向が見られますが、侮辱単独での請求は弁護士費用を考慮すると費用倒れになるリスクも依然として存在します。

プライバシー侵害に該当する場合の相場

無断で個人情報を公開されたプライバシー侵害の慰謝料相場は、公開された情報の内容や重要度によって大きく異なりますが、一般的には10万円から50万円程度が目安です。

しかし、公開された情報がストーカーなどの二次被害に直結する危険性が高い場合や、病歴のような特に秘匿性の高い情報が暴露された場合は、慰謝料が増額される傾向にあります。特に、性的な画像・動画が流出する「リベンジポルノ」被害は、被害者の精神的苦痛が甚大でデジタルタトゥーとして残り続けるため、100万円から300万円といった高額な慰謝料が認められるケースも少なくありません。

慰謝料の金額が変動する主な要因

慰謝料が増額されるケース

誹謗中傷の慰謝料額は、基本となる相場に加えて、加害行為の悪質性や被害の大きさなどを考慮して算定されます。以下のような事情がある場合、慰謝料が増額される可能性があります。

慰謝料の増額要因
  • 投稿の執拗性: 長期間にわたり、何度も繰り返し誹謗中傷が行われている。
  • 情報の拡散性: 閲覧者が多いサイトやフォロワー数の多いアカウントで発信され、広範囲に拡散した。
  • 表現の悪質性: 差別的・脅迫的な表現や、完全な虚偽の事実で犯罪者扱いするような内容である。
  • 被害の深刻さ: 被害者が精神疾患を患ったり、退職・閉店に追い込まれたりするなどの実害が発生した。
  • 加害者の不誠実な態度: 削除要請を無視したり、反省の色が見られなかったりする。

慰謝料が減額されるケース

一方で、特定の事情がある場合には、相場よりも慰謝料が減額されることがあります。加害者に有利な事情として、裁判で考慮される主なポイントは以下の通りです。

慰謝料の減額要因
  • 被害者側の落ち度: いわゆる「売り言葉に買い言葉」のように、被害者側にも挑発的な言動があった場合(過失相殺)。
  • 影響の限定性: 閲覧者が極めて少ない個人のブログへの投稿など、社会的評価への影響が軽微と判断される場合。
  • 加害者の事後対応: 投稿後、加害者が速やかに投稿を削除し、真摯に謝罪している場合。
  • 他の紛争の存在: 誹謗中傷の背景に別のトラブルがあり、その解決金などが支払われている場合。

損害賠償請求の具体的な手続き

①誹謗中傷の証拠を保全する

SNSで誹謗中傷を発見したら、法的手続きを進めるために、まず証拠を保全することが最も重要です。投稿は簡単に削除される可能性があるため、発見次第すぐに保存しましょう。

証拠として有効性を高めるためには、以下の情報が含まれるようにページ全体をスクリーンショットやPDFで保存します。

証拠として保存すべき情報
  • 誹謗中傷の投稿内容の全文
  • 投稿された日時が分かる部分
  • 投稿ページのURL(アドレスバー全体)
  • 投稿者のアカウント名やID
  • 投稿の前後関係が分かる部分

②発信者情報開示請求で加害者を特定

匿名の相手に損害賠償を請求するためには、「発信者情報開示請求」という法的手続きによって投稿者の身元を特定する必要があります。通信会社が保有するアクセスログの保存期間は3か月から半年程度と短いため、迅速な対応が不可欠です。

2022年に施行された改正プロバイダ責任制限法により、より迅速な「発信者情報開示命令」という手続きも利用可能になりました。

発信者情報開示請求の基本的な流れ
  1. サイト運営者(SNS運営業者など)に対し、投稿に使われたIPアドレスとタイムスタンプ等の開示を請求します。
  2. 開示されたIPアドレスから、投稿者が利用したプロバイダ(携帯キャリアなど)を特定します。
  3. 特定したプロバイダに対し、契約者の氏名・住所・メールアドレス等の開示を請求します。

③加害者との示談交渉

加害者の身元が特定できたら、多くの場合、訴訟の前に示談交渉から開始します。弁護士を通じて内容証明郵便で損害賠償請求の意思を通知し、交渉のテーブルに着かせることが一般的です。

当事者双方が合意に至れば、裁判を経ずに早期かつ柔軟な解決が可能です。

示談交渉で合意する主な項目
  • 慰謝料・損害賠償金の金額と支払方法
  • 謝罪文の要求
  • 対象投稿の完全な削除
  • 今後の誹謗中傷や接触を禁じる再発防止条項
  • 合意内容を第三者に口外しない口外禁止条項

④訴訟提起による損害賠償請求

加害者が交渉に応じない、あるいは条件面で合意に至らない場合は、裁判所に損害賠償請求訴訟を提起します。訴訟では、保全した証拠に基づき、投稿の違法性や損害の程度を主張・立証します。

裁判所が権利侵害を認めれば、加害者に対して賠償金の支払いを命じる判決が下されます。判決が出ても加害者が支払いに応じない場合は、預貯金や給与などを差し押さえる強制執行の手続きに移行することも可能です。

示談交渉と訴訟提起の判断基準

示談と訴訟のどちらを選ぶべきかは、被害者が何を優先するかによって決まります。それぞれのメリット・デメリットを理解し、状況に応じて最適な手段を選択することが重要です。

示談交渉が適しているケース 訴訟提起が適しているケース
目的 早期解決と平穏な日常の回復を優先したい 加害者の責任を公的に明確にし、正当な賠償を得たい
メリット ・解決までの時間が短い<br>・非公開で柔軟な合意が可能<br>・費用を抑えられる可能性がある ・裁判所の客観的な判断が得られる<br>・相手が無視しても手続きが進む<br>・判決には法的強制力がある
デメリット ・相手が応じなければ成立しない<br>・合意内容に法的強制力はない ・解決までに時間がかかる<br>・費用が高額になる傾向がある<br>・手続きが公開される
示談交渉と訴訟提起の比較

企業が受けた誹謗中傷の裁判事例

事例①:口コミサイトでの虚偽投稿

ある整形外科クリニックが、地図サービスの口コミ欄に「理学療法士でもない感じで身体をさすっているだけ」「医師がキレた」といった事実無根の悪質な投稿をされました。これにより社会的信用を傷つけられたとして、クリニックを経営する医療法人が投稿者を提訴しました。

裁判所は、投稿内容が虚偽であり、クリニックの名誉および信用を不当に毀損する違法な行為であると認定。投稿者を特定するための調査費用や弁護士費用の一部を含め、投稿者に対し合計約337万円という高額な損害賠償の支払いを命じる判決を下しました。この事例は、匿名の口コミであっても、企業の信用を毀損する虚偽投稿には厳しい司法判断が下されることを示しています。

事例②:元従業員による転職サイトへの悪評

ある会社を退職した元従業員が、転職情報サイトに「パワハラが横行しており、精神的な治療が必要になる可能性もある」といった趣旨の書き込みを行いました。会社側は、これが事実無根の名誉毀損にあたるとして、損害賠償を請求しました。

裁判では、元従業員がパワハラの事実を主張しましたが、裁判所は客観的証拠から「業務上の指導の範囲内」と判断。元従業員の投稿は、会社の社会的信用を毀損する違法なものとして名誉毀損の成立を認め、36万円の損害賠償の支払いを命じました。退職者が匿名で不満を書き込んだとしても、客観的事実に反し企業の評価を低下させる内容であれば、法的な責任を免れることはできないという教訓となる事例です。

賠償金請求を弁護士に依頼する利点

法的実務を一任できる精神的負担の軽減

損害賠償請求の手続きは非常に複雑で、専門的な知識が求められます。特に、匿名の加害者と直接交渉することは、被害者にとって大きな精神的負担となります。

弁護士に依頼すれば、これらの煩雑な法的手続きをすべて一任できます。被害者は加害者と直接やり取りする必要がなくなり、日常の業務や生活の平穏を保ちながら、専門家による適切なサポートのもとで解決を目指すことが可能です。

適正な賠償金額での交渉・請求が可能

損害賠償額には法的な相場が存在し、個人で交渉すると不当に低い金額で合意してしまったり、逆に過大な請求をしてトラブルを大きくしてしまったりするリスクがあります。

弁護士は、過去の裁判例や事案の悪質性などを踏まえ、法的に妥当な賠償額を算定します。慰謝料だけでなく、調査費用や弁護士費用の一部など、請求可能な損害を漏れなく含めて交渉・請求を行うことで、被害の最大限の回復を目指します。

弁護士費用の内訳と相場

弁護士に依頼する際の費用は、法律事務所によって異なりますが、一般的には「着手金」と「報酬金」で構成されています。依頼前には必ず費用体系について詳細な説明を受け、見積もりを確認しましょう。

弁護士費用の主な内訳
  • 着手金: 事件を依頼する段階で支払う費用。相場は10万円~30万円程度が目安です。
  • 報酬金: 事件が解決し、賠償金を回収できた場合に支払う成功報酬。回収額の10%~20%程度が一般的です。
  • 実費: 裁判所に納める印紙代や、通信費、交通費など、手続きを進める上で実際にかかる費用です。

損害賠償請求と並行して検討すべき社内対応

企業が誹謗中傷の被害に遭った場合、加害者への法的措置と並行して、再発防止や被害拡大を防ぐための社内体制を見直すことも重要です。根本的な対策を講じることで、企業のレピュテーションリスクを低減できます。

検討すべき社内対応策
  • 情報管理・コンプライアンス研修の徹底: 従業員の情報リテラシー向上を図ります。
  • 秘密保持誓約書の取得: 退職者からの情報漏洩リスクを低減します。
  • クレーム対応体制の見直し: 顧客の不満がネット炎上に発展する前に対処するフローを整備します。

よくある質問

加害者の特定にかかった調査費用も請求できますか?

はい、原則として請求可能です。発信者情報開示請求にかかった弁護士費用などは、不法行為と相当因果関係のある損害として、加害者に請求することが裁判実務上認められています。ただし、実際に支出した全額が認められるとは限らず、事案の内容に応じて裁判所が相当と認める範囲内の金額となるのが一般的です。

相手に支払い能力がない場合、回収は不可能ですか?

相手に資力がなく、直ちに支払いが困難な場合でも、回収を諦める必要はありません。相手が会社員であれば給与の一部を差し押さえる「給与差押え」という強制執行手続きによって、継続的に回収できる可能性があります。また、預貯金や不動産などの財産を調査し、差し押さえることも考えられます。

示談と裁判で受け取れる賠償金額は違いますか?

最終的に受け取れる金額は異なる可能性があります。裁判では、過去の判例に基づく相場を基準に金額が算定されます。一方、示談交渉は当事者間の合意で決まるため、加害者が早期解決を強く望んでいる場合などには、裁判の相場を上回る金額で解決できることもあります。逆に、相手の支払い能力に応じて柔軟に金額を調整することも可能です。

損害賠償請求の権利に時効はありますか?

はい、時効があります。不法行為に基づく損害賠償請求権は、原則として「被害者が損害および加害者を知った時から3年間」行使しないと時効により消滅します。また、加害者が分からない場合でも、「不法行為の時から20年間」が経過すると権利は消滅します。

ただし、SNSの誹謗中傷では、加害者特定に必要なアクセスログの保存期間が数か月程度と短いため、3年の時効期間を待つ余裕はありません。被害に気づいたら、可及的速やかに法的措置に着手することが極めて重要です。

まとめ:誹謗中傷の損害賠償相場と請求手続きの要点

本記事では、SNSでの誹謗中傷に対する損害賠償金の相場と請求手続きについて解説しました。損害賠償金は主に慰謝料、財産的損害、調査費用で構成され、慰謝料の相場は名誉毀損で数十万円から、侮辱では数万円からが目安となります。ただし、実際の金額は投稿の悪質性や拡散の程度、被害の深刻さなど個別の事情によって大きく変動します。請求手続きを進める上で最も重要な第一歩は、投稿日時やURLを含む証拠の保全です。その後、発信者情報開示請求で加害者を特定し、示談交渉や訴訟へと移行するのが一般的な流れとなります。特に加害者の特定に不可欠なアクセスログの保存期間は3か月から半年程度と短いため、迅速な対応が求められます。損害賠償請求には時効も存在しますが、それ以前にログ消失のリスクがあるため、被害に気づいたら速やかに弁護士などの専門家に相談し、適切な対応を検討することが重要です。

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