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民事再生とは?手続きの流れからメリット・デメリット、関係者への影響まで解説

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自社の経営状況が悪化し、事業の立て直しを模索する中で、民事再生という選択肢を検討されている経営者の方もいらっしゃるのではないでしょうか。民事再生は、事業を継続しながら再建を目指すための強力な法的手段ですが、その仕組みは複雑で、会社更生や破産といった他の手続きとの違いも正確に理解しておく必要があります。この記事では、民事再生制度の基本的な概要から、具体的な手続きの流れ、メリット・デメリット、そして成功させるためのポイントまで、実務判断に不可欠な情報を網羅的に解説します。

目次

民事再生とは?事業再建を目指すための法的整理の概要

民事再生制度の目的と特徴

民事再生とは、経済的に困窮している債務者が、事業や経済生活を立て直すことを目的とした再建型の法的整理手続です。支払不能や債務超過に陥るおそれがある場合に利用できます。

この制度の最大の特色は、破産のように法人格を消滅させる「清算型」とは異なり、事業を継続しながら債務を整理する点にあります。再生計画に基づき債務を大幅に圧縮し、原則として最長10年の範囲で分割して弁済していきます。適用対象が広く、株式会社だけでなく、合同会社、医療法人、個人事業主、さらには個人まで利用できる汎用性の高さも特徴です。

民事再生制度の主な特徴
  • 裁判所の監督のもとで進められる法的な再建手続である
  • 会社を消滅させず、事業を継続しながら再建を目指す
  • 債権者の多数の同意を得て策定した再生計画に基づき債務を整理する
  • 株式会社だけでなく、あらゆる法人や個人が利用できる

会社更生手続きとの主な相違点

民事再生と会社更生は、どちらも事業の再建を目指す法的整理ですが、その仕組みには重要な違いがあります。

項目 民事再生 会社更生
対象 すべての法人・個人 株式会社のみ
手続の主体(経営権) 原則として現経営陣が継続(DIP型) 裁判所が選任する更生管財人
担保権の扱い 手続外で権利行使が可能(別除権) 手続内で権利行使が制限される(更生担保権)
民事再生と会社更生の主な違い

このように、民事再生は会社更生に比べて手続が簡素で、経営の自由度も高いため、特に中小企業の再建で広く活用されています。

破産手続きとの根本的な違い

民事再生と破産は、同じく裁判所を介した法的整理ですが、その目的は正反対です。

項目 民事再生(再建型) 破産(清算型)
目的 事業を継続し、経済的に再生すること 全資産を換価・配当し、法人格を消滅させること
事業の継続 原則として継続する 原則として停止する
債務の扱い 大幅に圧縮し、残りを計画的に弁済する 法人格の消滅により債務も消滅する(配当後)
法人格の扱い 維持される 消滅する
民事再生と破産の根本的な違い

事業に収益力や価値があり、清算するよりも再建した方が債権者にとってもメリットが大きいと判断される場合に、民事再生が選択されます。

民事再生の主な手法とそれぞれの特徴

自社の経営資源で再建する「自力再建型」

自力再建型とは、外部からの資金援助に頼らず、自社の事業が生み出す将来の収益(キャッシュフロー)を原資として債務を弁済していく手法です。この手法を成功させるには、本業が黒字であるか、不採算部門の整理やコスト削減などによって早期に黒字化できる確実な見通しがあることが大前提となります。

自力再建型のメリット・デメリット
  • メリット: 現経営陣が引き続き経営を主導でき、株主の地位も維持されやすい。
  • デメリット: 金融機関からの新規融資が困難な中、運転資金を自力で確保し続ける必要がある。

独自の技術や強固な顧客基盤を持つ企業に適した手法ですが、資金繰りの管理は極めてシビアになります。

スポンサーの支援を受けて再建する「スポンサー型」

スポンサー型とは、外部の企業や投資ファンドなど(スポンサー)から資金援助や経営支援を受けて事業再建を図る手法です。スポンサーが提供する資金は、債権者への弁済原資や事業継続に必要な設備投資などに充てられます。

具体的な手法としては、スポンサーが再生会社の株式を引き受けたり、収益性の高い事業のみをスポンサーが設立した新会社へ譲渡する「第二会社方式」などが用いられます。

スポンサー型のメリット・デメリット
  • メリット: 債権者への弁済率を高めやすく、スポンサーとの相乗効果も期待できる。
  • デメリット: 多くの場合、現経営陣の退任や既存株主の権利喪失を伴う。

自力での再建が困難なほど財務状況が悪化している場合でも、スポンサーの力を借りることで事業を存続させられる可能性が広がります。

民事再生を選択するメリットと注意すべきデメリット

【メリット】現経営陣が事業を継続できる(DIP型)

民事再生の最大のメリットは、原則として現在の経営陣が退陣せず、引き続き経営の主導権を握れる点です。これを「DIP(Debtor in Possession)型」手続と呼びます。事業内容や取引関係を熟知した経営者が残ることで、業務の混乱を最小限に抑え、迅速な意思決定が可能になります。もちろん、裁判所が選任する監督委員の監督下に置かれますが、経営の主体性を維持できることは、再建を進める上で大きな強みとなります。

【メリット】柔軟な再生計画を策定できる

民事再生では、会社の状況に応じて自由度の高い再生計画を策定できます。債務の減免率や弁済期間、弁済スケジュールなどを実態に合わせて細かく設計することが可能です。また、計画に事業譲渡や会社分割といった組織再編を盛り込むこともできます。計画の可決には債権者の多数決(頭数で過半数、議決権額で2分の1以上)で足りるため、一部の反対者がいても、法的な強制力をもって再建を進められる点も強みです。認可された計画は法的に確定し、安定した状態で事業を再スタートできます。

【デメリット】担保権の実行により事業用資産を失うリスク

民事再生手続において、最も注意すべき点の一つが担保権の扱いです。抵当権などを持つ担保権者は「別除権者」として扱われ、再生手続とは関係なく、担保となっている資産を差し押さえたり競売にかけたりする権利を持っています。本社ビルや工場、主要な機械設備などが担保に入っている場合、これを実行されると事業継続が不可能になる恐れがあります。これを避けるためには、担保権者と個別に交渉して弁済に関する合意(別除権協定)を結ぶなどの対応が不可欠です。交渉が不調の場合、担保権消滅請求という制度もありますが、多額の資金が必要となりハードルは高くなります。

【デメリット】社会的信用の低下と資金調達の困難化

民事再生を申し立てると、その事実は官報公告などを通じて公になり、社会的信用の低下は避けられません。これにより、事業運営に様々な支障が生じます。

信用低下による主な影響
  • 取引先から現金前払いを要求されるなど、取引条件が悪化する
  • 金融機関からの新規融資が原則として受けられなくなる
  • 従業員が将来を不安に感じて離職したり、新規採用が困難になったりする

こうした影響を最小限に食い止めるには、申立てと同時に主要な取引先や従業員に対し、誠実な説明を行い、協力関係を維持していく努力が不可欠です。

申立てから終結まで|民事再生手続きの具体的な流れ

申立ての準備と裁判所への提出

民事再生手続は、弁護士などの専門家への相談から始まります。現状の財務状況を正確に分析し、再生の可能性があるかを慎重に判断します。準備段階では、債権者一覧表や財産目録など膨大な書類を作成し、裁判所に納める予納金を準備します。情報漏洩は債権者による資産の差押えなどを誘発するリスクがあるため、準備は秘密裏に進めるのが鉄則です。取締役会での決議を経て、管轄の地方裁判所に申立書を提出します。

保全処分・監督委員の選任と手続き開始決定

申立てが受理されると、裁判所は直ちに弁済禁止の保全処分を出します。これにより、債権者への支払いが一時的にストップし、会社の資産が保全されます。同時に、手続を監督する監督委員(通常は弁護士)が選任され、以降、重要な財産処分などには監督委員の同意が必要となります。申立てから1〜2週間程度で、裁判所は再生手続開始決定を下します。この決定により、本格的な再生プロセスがスタートします。

債権届出、財産評定、債権調査

開始決定後、債権者は定められた期間内に、自らの債権額を裁判所に届け出ます。一方、債務者側は、全財産を時価で評価する財産評定を行い、財産目録を作成します。これは、仮に会社を清算した場合の配当額(清算価値)を算定するために重要であり、再生計画での弁済額はこれを下回ってはならないという清算価値保障原則があります。その後、債務者は届け出られた債権の内容を精査し、認めるか否かを記載した認否書を提出します。この一連の調査手続を経て、再生計画の対象となる債務の総額が法的に確定します。

再生計画案の作成と提出

確定した債権額と資産状況を踏まえ、債務者は具体的な再生計画案を作成し、裁判所に提出します。計画案には、債務をどの程度免除してもらうか、残りの債務をどのような方法・期間で弁済していくか、そして事業をどう立て直すかの具体的な方策を盛り込みます。計画は客観的なデータに裏付けられた、実現可能性の高いものでなければなりません。提出期限は厳格に定められており、遅れると手続が廃止され破産に移行するリスクがあります。

債権者集会での決議と裁判所の認可

提出された再生計画案の是非を問うため、債権者集会が開催されます。計画案が可決されるには、「出席した議決権者の過半数の同意」と「議決権総額の2分の1以上の同意」という2つの要件を同時に満たす必要があります。そのため、特に大口債権者からの理解を得ることが不可欠です。無事に可決されると、裁判所は内容を審査し、再生計画の認可決定を下します。この決定が確定すると、計画は法的な効力を持ちます。

再生計画の遂行と手続きの終結

再生計画が認可されると、会社は計画に沿って事業を運営し、債権者への弁済を開始します。認可後も通常3年間は監督委員による監督が続き、会社は定期的に履行状況を裁判所に報告する義務を負います。計画通りに弁済が進み、再建の目処が立ったと裁判所が判断した時点で、再生手続終結の決定がなされます。これにより、会社は法的な管理下から完全に離れ、通常の企業活動に復帰します。ただし、計画に基づく残りの弁済義務は、完済まで継続します。

民事再生が関係者(ステークホルダー)に与える影響

従業員の雇用と給与・退職金の取り扱い

民事再生は事業継続を前提とするため、従業員の雇用は原則として維持されます。ただし、不採算部門の閉鎖などに伴い、やむを得ず人員削減(整理解雇)が行われる場合もあります。 給与については、手続開始後の労働に対する賃金は共益債権として全額が優先的に支払われます。開始前の未払い給与も、一定の範囲で優先的に保護されるため、生活への影響は最小限に抑えられます。退職金については、将来の負担を軽減するため、減額などが労働組合等に提案されることがあります。

取引先との契約関係と債権の扱い

申立て前に発生した買掛金などの商取引債権は再生債権となり、再生計画によって大幅にカットされる対象となります。これにより、取引先には多大な迷惑をかけることになります。一方で、手続開始後の新たな取引で発生した代金は共益債権となり、最優先で支払われるため、法的に保護されています。既存の契約関係が自動的に解消されるわけではありませんが、今後の取引を継続してもらえるかどうかは、誠実な説明と交渉によって新たな信頼関係を築けるかにかかっています。

株主の権利と株式価値への影響

民事再生手続において、株主の権利は大きく制限され、株式の価値は著しく毀損されます。債務超過状態の企業では、株式の資産価値は実質的にゼロとなります。上場企業の場合は上場廃止となります。再生計画の中で、既存の株式を100%減資(無償で消却)し、スポンサーに新たな株式を発行する手法がとられることも多く、その場合、既存株主は株主としての権利をすべて失います。これは、事業を存続させるために不可避の措置として扱われます。

主要取引先との関係を維持するための実務対応

事業の生命線を維持するためには、主要な取引先との関係を繋ぎ止めることが極めて重要です。そのためには、迅速かつ誠実な対応が求められます。

主要取引先への実務対応のポイント
  • 申立て直後に経営トップ自らが訪問し、謝罪と事業継続への協力を要請する
  • 今後の取引代金は「共益債権」として法的に保護されることを丁寧に説明する
  • 一時的に現金決済などの条件変更を受け入れ、信頼回復に努める
  • 将来的な発注増など、取引継続のメリットを提示し、長期的な関係構築を目指す

民事再生を成功に導くための重要なポイント

早期の意思決定と迅速な申立ての重要性

民事再生を成功させる最大の鍵は、申立てのタイミングです。資金が完全に尽きてからでは、裁判所への予納金や弁護士費用が支払えず、申立て自体が不可能になります。資金に余力がある早い段階で決断すれば、事業価値の毀損を最小限に抑え、運転資金を確保しつつ再建プロセスを開始できます。経営状況の悪化を見て見ぬふりせず、手遅れになる前に専門家に相談し、迅速に意思決定する勇気が求められます。

債権者への丁寧な説明と協力関係の構築

再生計画の可決には、債権者の理解と協力が不可欠です。債権者も大きな損失を被るため、不信感を抱くのは当然です。申立てに至った経緯や今後の再建方針について、情報を隠さず誠実に説明し、信頼関係を再構築する必要があります。特に、金融機関などの大口債権者とは事前に協議を重ね、内諾を得ておくことが実務上重要です。破産した場合の配当見込み額(清算価値)よりも、再生計画による弁済額の方が多いことを客観的なデータで示し、再建が双方にとっての利益になることを理解してもらう努力が不可欠です。

実現可能性の高い再生計画案の策定

再生計画案は、客観的な根拠に基づいた、実現可能性の高いものでなければなりません。希望的観測や非現実的な目標を掲げた計画は、債権者の同意を得られず、裁判所にも認可されません。仮に認可されても、計画が頓挫すれば破産手続に移行するリスクがあります。

実現可能性の高い計画の要件
  • 過去の失敗原因を分析し、その対策が具体的に盛り込まれている
  • 売上予測は保守的に、経費削減は実行可能な範囲で設定されている
  • 資金繰りの裏付けが明確で、弁済計画に無理がない

公認会計士など財務の専門家とも連携し、誰が見ても納得できる緻密な計画を策定することが成功の条件です。

申立て前に確認・準備すべき事項と相談先の選び方

民事再生の申立てを決断する前に、必ず確認・準備すべきことがあります。また、手続の成否は、相談する専門家の能力に大きく左右されます。

申立て前の確認・準備事項
  • 裁判所に納める予納金と、当面の運転資金を現金で確保する
  • 主要な事業用資産に設定された担保権の状況を把握し、担保権者との交渉方針を立てる
  • 民事再生(事業再生)の実務経験が豊富な弁護士を選定する

相談先の弁護士を選ぶ際は、法律知識だけでなく、企業の再生実務に関する実績、金融機関などとの交渉力、自社の事業への理解度などを総合的に判断し、信頼できるパートナーを見つけることが極めて重要です。

民事再生に関するよくある質問

民事再生の手続きにはどのくらいの期間がかかりますか?

裁判所への申立てから再生計画が認可されるまでの標準的な期間は、おおよそ5ヶ月から6ヶ月程度です。ただし、事案の複雑さやスポンサー選定の状況によっては、これより長くなることもあります。認可後、計画に基づく弁済が完了し、手続が完全に終結するまでには、さらに数年を要するのが一般的です。

従業員の給与や退職金はどのように扱われますか?

手続開始後の給与は共益債権として、再生手続とは関係なく全額が優先的に支払われます。開始前の未払い給与も、法律で定められた範囲内であれば優先的に保護されます。退職金については、会社の財務状況に応じて、再生計画の中で減額を伴う制度見直しが提案されることがあります。

民事再生後、既存の取引先との取引は継続できますか?

取引を継続できるかどうかは、個々の取引先の判断によります。申立て前の債権がカットされるため、関係が悪化するリスクはあります。しかし、手続開始後の取引代金は「共益債権」として法的に支払いが保証されることを丁寧に説明し、誠実に対応することで、多くの場合は取引を継続できます。

民事再生にかかる費用(予納金・弁護士費用)の目安は?

費用は、会社の負債総額によって大きく変動します。裁判所に納める予納金は、中小企業でも最低200万円程度から始まり、負債額が大きくなれば数千万円に及ぶこともあります。これに加えて、申立てを依頼する弁護士への費用が数百万円以上かかります。これらの費用は原則として事前に現金で準備する必要があるため、資金繰りが完全に悪化する前の決断が重要です。

まとめ:民事再生の選択は、事業再生に向けた重要な経営判断

民事再生は、事業を清算するのではなく、経営を継続しながら再建を目指すための法的な手続きです。現経営陣が経営の主導権を維持できる(DIP型)という大きな利点がある一方で、担保権の実行リスクや社会的信用の低下といった厳しい現実にも直面します。手続きを成功させるには、資金に余力があるうちの迅速な意思決定、債権者の理解を得るための誠実な対話、そして実現可能性の高い再生計画の策定が不可欠です。会社更生や破産といった他の選択肢との違いを正しく理解し、自社の状況に最も適した道筋を見極めることが重要となります。もし民事再生を本格的に検討される場合は、事業再生の実務経験が豊富な弁護士など、信頼できる専門家へ早期に相談することをお勧めします。

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