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法人破産で法テラスは利用できない?費用がない場合の対処法を解説

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会社の経営が悪化し、法人破産という厳しい決断を迫られている状況は、精神的にも経済的にも大きな負担となります。特に、手続きに必要な弁護士費用や裁判所への予納金をどう準備するかは、多くの経営者が直面する切実な問題です。公的機関である法テラスの費用立替制度の利用を検討する方も多いですが、法人の破産手続きの場合は利用できるのでしょうか。この記事では、法人破産における法テラス利用の可否とその理由、そして費用が用意できない場合の具体的な対処法について詳しく解説します。

目次

【結論】法人破産の手続きで法テラスは利用できない

法テラスの民事法律扶助は「個人」を対象とする制度

法テラス(日本司法支援センター)が提供する民事法律扶助制度は、経済的に困窮している方が法的なトラブルを解決するために、弁護士費用や裁判費用を立て替える公的な制度です。しかし、この制度の対象は、日本国民または国内に在留する「個人(自然人)」に限定されています。

株式会社や合同会社といった営利法人はもちろん、特定非営利活動法人(NPO法人)なども法人格を持つため、制度の対象外となります。したがって、会社名義で破産を申し立てる際に、法テラスの立替制度を利用して費用を準備することはできません。法人の経営破綻に伴う手続き費用は、会社の資産や代表者自身の努力によって賄うことが、法制度上の原則とされています。

法人が対象外となる理由と根拠

法人が法テラスの民事法律扶助の対象外となる理由は、制度の設立趣旨と関連法規にあります。法テラスは、経済的な理由で司法へのアクセスが妨げられることがないよう、個人の基本的な権利を保障することを目的としています。

一方で、法人は利益追求を目的として設立された組織であり、その破産手続きは法人格を消滅させるための清算活動です。これは、個人の生活再建を支援するという民事法律扶助の理念とは異なります。また、法人破産は破産管財人による財産調査や換価処分など、専門的で複雑な手続きを伴い、多額の費用を要します。こうした手続き費用は、法人の残余資産から支出されるべきとの考え方が基本にあり、公的な扶助の対象とはなっていないのが実情です。

代表者個人の自己破産であれば法テラスを利用できる可能性

利用の条件となる収入・資産の基準

会社の代表者個人が自己破産を申し立てる場合は、法テラスが定める資力基準を満たせば、弁護士費用等の立替制度を利用できる可能性があります。資力基準には「収入要件」と「資産要件」の2つがあり、両方を満たす必要があります。

家族構成 手取り月収の基準額(上限) 保有資産の基準額(上限)
単身者 約20万円 180万円
2人家族 約27万円 250万円
3人家族 約29万円 270万円
4人家族 約33万円 300万円
法テラスの資力基準(東京・大阪などの大都市圏の例)

収入要件の判定では、家賃や住宅ローンの支出を一定額まで収入から控除して計算することができます。資産要件では、現金・預貯金の合計額が審査されますが、現在居住している自宅不動産や、今後の生活に必要な一定の財産は資産合計に含めずに判断される場合があります。これらの資力基準を満たし、かつ裁判で免責が認められる見込みがある場合に、法テラスの援助を受けられます。

法人破産と同時に代表者個人の破産で利用する際の注意点

中小企業では、代表者が会社の債務を連帯保証しているケースが多く、法人破産と代表者個人の自己破産を同時に進めるのが一般的です。この場合、代表者個人の手続きについてのみ法テラスを利用できる可能性がありますが、いくつか注意点があります。

法人破産と同時に代表者個人の破産で法テラスを利用する際の注意点
  • 法人破産の手続き費用は、法テラスの対象外であり別途準備する必要がある。
  • 法テラスが立て替えた費用は、原則として事件終了後に月々5,000円から10,000円程度の分割払いで返済(償還)しなければならない。
  • 破産管財人が選任される管財事件の場合、裁判所に納める引継予納金(通常20万円以上)は、原則として法テラスの立替え対象外となる。

特に引継予納金は、別途現金で用意する必要があるため、早い段階で資金確保の計画を立てることが重要です。

法人と個人の破産を同時に進める際の弁護士選びのポイント

法人と代表者個人の破産を同時に進める場合、企業の倒産実務に精通した弁護士を選ぶことが極めて重要です。法テラスと契約している弁護士の中にも、専門性の高い弁護士はいますが、選定にあたっては以下の点を確認するとよいでしょう。

弁護士選びのポイント
  • 法人破産手続きの申立て実績が豊富であるか。
  • 資産の評価、従業員への対応、債権者集会の運営などを円滑に進める知見があるか。
  • 法テラスの利用手続きに理解があり、スムーズに案内してくれるか。

複数の法律事務所に相談し、これまでの処理実績や費用体系を比較検討した上で、信頼できる弁護士に依頼することをお勧めします。

法テラスが使えない場合の法人破産費用の捻出方法

弁護士に費用の分割払いや後払いを相談する

自己資金で法人破産費用を一括で用意できない場合でも、弁護士に相談することで費用の分割払いや後払いに応じてもらえる可能性があります。多くの法律事務所は、資金繰りに窮した経営者の状況を理解しており、柔軟な支払い計画を提案してくれます。

弁護士費用を分割で支払う流れ
  1. 弁護士に現在の資金状況を正直に伝え、分割払いの計画について合意する。
  2. 弁護士が債権者に対し受任通知を発送し、会社への直接の取り立てや返済を一時的に停止させる。
  3. これまで金融機関等への返済に充てていた資金を、弁護士費用や裁判所予納金として積み立てる。
  4. 必要な費用全額の準備が完了した段階で、裁判所へ破産手続開始の申立てを行う。

無理な支払い計画は手続きの遅延につながるため、弁護士と綿密に打ち合わせることが大切です。

会社の資産を売却して現金化する(不動産・車両・在庫など)

破産費用を捻出するための最も確実な方法は、会社が保有する資産を売却して現金化することです。弁護士の監督のもと、適正な価格で資産を処分し、その代金を費用に充てることは法的に認められています。

売却対象となる主な会社資産
  • 土地や建物などの不動産
  • 営業車やトラックなどの車両
  • 工場の機械設備やオフィスの什器備品
  • 在庫商品や原材料
  • 有価証券(株式など)

ただし、親族や関係者に市場価格より著しく安い価格で売却すると、後に破産管財人から財産隠しを疑われるリスクがあります。必ず弁護士と相談し、査定書を取得するなど、取引の透明性を確保しながら進めましょう。

売掛金や未回収の債権を回収して費用に充てる

取引先に対する売掛金や未収金も、破産費用の重要な原資となります。弁護士に依頼し、会社の代理人として取引先に支払いを督促してもらうことで、回収の確実性を高めることができます。

回収した金銭を破産申立ての費用に充てることは、清算を円滑に進めるための正当な行為として認められます。ただし、回収した資金を代表者個人の生活費などに流用することは絶対に許されません。あくまで破産手続きという公的な目的のために使用することが前提となります。

会社名義の保険を解約し解約返戻金を利用する

会社名義で加入している保険契約も、見落としがちな資産の一つです。解約することで得られる解約返戻金を破産費用に充当できます。短期間で現金化できるため、迅速な資金確保に有効です。

解約により費用を捻出できる可能性のある契約
  • 経営者や役員を被保険者とする生命保険や養老保険
  • 中小企業倒産防止共済(経営セーフティ共済)

これらの解約返戻金は会社の資産であり、手続き費用に充てることは正当な行為です。ただし、保険契約を担保に貸付を受けている場合は、返戻金から借入残高が差し引かれる点に注意が必要です。

費用捻出のための資産売却等で注意すべき「否認権」のリスク

破産費用を捻出するために資産を処分する際、最も注意すべきなのが「否認権」のリスクです。否認権とは、破産手続きの開始前に会社が行った不公平な財産処分や財産隠しと疑われる行為を、破産管財人が後からその効力を否定し、財産を取り戻す権利のことです。

否認権の対象となりうる行為の例
  • 特定の取引先や金融機関にだけ優先的に借金を返済する(偏頗弁済)。
  • 会社の資産を親族などに不当に安い価格で売却する(詐害行為)。
  • 会社の財産を代表者個人の名義に書き換えるなどの財産隠し。

こうした行為は、債権者間の平等を害するものと見なされ、代表者個人の免責(借金の免除)が認められない原因にもなり得ます。財産の処分は、必ず事前に弁護士に相談した上で、その指示に従って進めなければなりません。

法テラス以外で活用できる無料の相談窓口

各都道府県の弁護士会が設ける法律相談センター

全国の弁護士会が運営する法律相談センターでは、法人破産に関する相談も受け付けています。公的な機関が運営しているため、安心して相談できるのが特徴です。

弁護士会法律相談センターの特徴
  • 全国の都道府県に設置されている。
  • 企業の倒産問題に詳しい弁護士が相談員として対応する。
  • 初回30分程度の相談を無料または低廉な料金で実施している場合が多い。
  • 相談内容に応じて、そのまま案件を依頼できる弁護士を紹介してもらえることもある。

中小企業活性化協議会(旧:再生支援協議会)

中小企業活性化協議会は、経済産業省の施策に基づき、各都道府県の商工会議所などに設置されている公的な支援機関です。事業再生だけでなく、円滑な廃業や破産についても相談に乗ってくれます。

中小企業活性化協議会の特徴
  • 窓口での初回相談は原則無料。
  • 弁護士、公認会計士、税理士などの専門家が常駐している。
  • 財務状況の分析や、金融機関との調整についても中立的な立場で助言を行う。
  • 破産を選択する前に、他の選択肢がないか多角的に検討できる。

地方自治体が提供する専門家相談や支援制度

多くの市区町村では、地域の中小企業を支援するため、弁護士や中小企業診断士による無料の専門家相談会を定期的に開催しています。また、より広域的な支援窓口も存在します。

地方自治体等による主な支援
  • 市区町村役場の窓口で実施される無料法律相談会。
  • 都道府県が設置する「よろず支援拠点」での経営全般に関する相談。
  • 地域の商工会や商工会議所での経営指導員による相談対応。
  • 自治体によっては、専門家派遣や廃業費用の一部を補助する制度がある場合も。

これらの公的窓口をうまく活用することで、費用を抑えながら情報収集を進めることが可能です。

法人破産と法テラスに関するよくある質問

Q. 法テラスで法人破産に関する「相談のみ」は可能ですか?

A. 法人そのものの破産に関する相談は、原則として法テラスの無料法律相談の対象外です。法テラスの相談業務は、あくまで個人の民事・家事事件などを対象としているためです。ただし、代表者個人が会社の債務を連帯保証しており、その個人の債務整理に関する相談であれば、資力基準を満たすことで利用できる場合があります。法人破産そのものについては、弁護士会の法律相談センターや中小企業活性化協議会などをご利用ください。

Q. 会社の規模が小さくても、法テラスは利用できないのでしょうか?

A. はい、利用できません。会社の規模や資本金の大小にかかわらず、株式会社や合同会社といった法人格を持つ組織は、法テラスの民事法律扶助の対象外となります。法律上、法人は代表者個人とは別人格として扱われるため、一人社長の会社であってもこの原則は変わりません。

Q. 弁護士費用が全くなくても法人破産の手続きは開始できますか?

A. 事実上、不可能です。破産手続きを開始するには、弁護士費用とは別に、裁判所に破産手続開始の申立てに際して予納金を納める必要があります。この予納金は、破産管財人の報酬などに充てられるもので、これが確保できなければ裁判所は破産手続開始決定を出しません。資金が完全に枯渇する前に弁護士に相談し、資産の売却や売掛金の回収によって費用を捻出する計画を立てることが不可欠です。

Q. 破産せずに会社を放置した場合、どのようなリスクがありますか?

A. 法的な破産手続きを経ずに会社を放置すると、多くのリスクが残ります。放置は問題の先送りにしかならず、代表者個人の生活再建を著しく困難にします。

会社を破産させずに放置する主なリスク
  • 法人格が存続するため、税金や社会保険料の延滞金が加算され続ける。
  • 債権者から訴訟を提起され、判決に基づいて会社の財産が差し押さえられる。
  • 代表者が連帯保証人である場合、その個人の給与や預金、自宅などが差し押さえられる可能性がある。
  • いつまでも債権者からの督促が続く精神的な負担を負い続ける。

法的に債務を整理し、けじめをつけることが、健全な再スタートを切るための第一歩です。

まとめ:法人破産で法テラスは使えないが、費用捻出の道筋はある

本記事で解説した通り、法人格を持つ会社は、その規模にかかわらず法テラスの民事法律扶助制度を利用できません。制度の目的が個人の権利擁護にあるためです。ただし、代表者個人が連帯保証人として自己破産する場合は、資力基準を満たせば法テラスを利用できる可能性があります。法人破産の費用が捻出できない場合でも、弁護士に相談すれば、資産売却や売掛金回収などの方法で費用を確保する道筋を立てることが可能です。その際は、破産管財人から不当な財産処分と見なされる「否認権」のリスクを避けるため、必ず弁護士の監督下で進めなければなりません。資金が完全に尽きてしまう前に、弁護士会や中小企業活性化協議会などの無料相談窓口も活用し、速やかに専門家へ相談することが円滑な手続きと再出発への鍵となります。

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